2021.06.16
音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.076は、90~00年代のポストロックやアンビエント、シューゲイザーを独自のセンスで昇華する東京発の4人組バンドbutohesを取り上げる。
6月16日にリリースされた1st EP『Lost in Watercycle』には、ディレイやリヴァーブを多用した浮遊感のある全6曲を収録。先行シングルとして配信された「T.O.L」のミュージックビデオは、バンド名の由来である「暗黒舞踏」へのオマージュも込めて、メンバー全員が奇妙な踊りを見せる一風変わった作品に仕上がっている。
レコーディングエンジニアを志すようになり、好きな音楽を録りたいと思った時に、「自分で曲を書く継続的なバンドを組めば手っ取り早いぞ」と思い、今のメンバーに声をかけたのが始まりです。僕たちはもともとそれぞれが違うバンドのメンバーでした。ドラムのKateとは高校の軽音部で、ベースのFgとは別のバンドで共演した時に知り合いました。ギターのKanjuは血を分けた実の弟ですが、彼の大学のサークルライブを見に行った時に一緒にバンドをやることを決めて、今のbutohesになりました。
いわゆるロックギタリストらしいフレーズよりも、ソングライターが楽曲のために作った緻密なバッキングギターラインに惹かれます。初めて聞いたときは衝撃でした。
大きなジャンルで言うと、特にUKロックが好きで、それに限らず、Slowdive、Ride、The Smiths、The Cure、Kyte、Sigur Rós、Oval、U2、David Bowie、bloodthirsty butchers、Merzbow、Akira Kosemura、Fennesz、Chapterhouse、the Radio Dept.、Radiohead、toe、American Football、Enemies、Tycho、Travis、Manic Street Preachers、Keane、Cocteau Twins、The Jesus and Mary Chain、Warpaintなどが大好きです。傾向としては低体温で遠い音像の音楽が好きです。
Kate Yonnesz(Dr):blink-182のドラマーTravis Barkerからとても強い影響を受けています。音楽を始めた当時はパンクやメロコアが大好きで、Wikipediaの「ポップパンク」のページに載ってるバンドを片っ端からYouTubeで聴きまくってました。そんな中でBlink-182は高校1年生の時に出会ったのですが、タトゥーバリバリのTravis Barkerがドラムをぶっ叩いてる姿や、今まで聴いたことのないフレーズの数々に衝撃を受けました。以来自分のドラム観の中心となる人物です。1st EPでもリスペクトを込めてTravis風なドラムを叩いているので、ぜひドラムにも注目して聴いてもらいたいです。
Naoto Fg(Ba):ベースプレイヤーとして、特に影響を受けた人物は、
・日向秀和さん(ストレイテナー、Nothing's Carved In Stone、killing Boy、FULLARMORなど)
ベースを始めたのが遅く、出会った直後に聴いたのがこのアルバムでした。
・高橋涼馬さん(Seebirds、mol-74、ex.urema)
和音、アルペジオ、ルーパーでフレーズをリアルタイムで重ねていくなど、超人としか思えません。屈指の名盤です。
・福井健太さん(People In The Box)
『Talky Organs』は、作詞面でも非常に影響を受け、畏敬の念を抱き続けているPeople In The Boxの中で特に好きなアルバムです。
以上の3名です。他にもたくさん尊敬している方はいますが、日本のベーシストばかりで、海外のベーシストからの影響は直接的にはほぼゼロと言えます。
3名ともスーパーヒーローで、とても真似できたものではありません。そのため、あくまで彼らのようなフレージングを目指し、かつ楽曲の中での立ち位置を考慮しながら、プレイをしているつもりですが、程遠いです。
また、特別意識していませんでしたが、ライブを観に行って、無意識のうちにdownyの仲俣和宏さんのフレージングに似たものを感じると、メンバーから指摘がありました。downyも高校時代から聴き込んでいる大好きなバンドです。
復活の少し前に知り、アルバムを集め、聴き込んでいます。歌詞のあり方がdownyに近いとの指摘もありますが、畏れ多いです。遠い憧れです。
Kanju Inatsug(Gt/Cho):記憶している限りで、初めて好きになったアーティストがU2で、彼らからは影響を受けていると思います。小学生だった頃、よく両親の職場について行ったのですが、退屈している自分に、母がiPodを貸してくれて、『U218 Singles(Deluxe Edition)』に収録されている「Window In the Skies」という曲を繰り返し聴いていました。ボノの声やギターのサウンドを気に入っていたことを覚えています。大学生くらいになってから、改めてU2のカッコ良さを再認識することになり、バンドに加入した後でも、ギタリストであるエッジのプレイに影響を受け続けていると思います。
また、The Jesus and Mary Chainから受けた影響は計り知れず、Gibson ES-335を買う決め手となったのも、彼らのサウンドが大好きだったからです。今作に収録されている「zero gravity」や2ndシングル『T.O.L』にて随所に使われているファズのサウンドは、メリーチェインから着想を得ています。
この曲はもともとインストでしたが、メロディをつける前にベースのFgに作詞をしてもらった、ある種「詞先」の1曲です。サウンド的な着想で言うと、先述のOvalやFennesz、Brian Eno、Apex TwinやTychoといったアンビエントやエレクトロニカにヒントを得ています。
それ以外にも、ミックス期間中にご縁があって、blgtzのマニピュレーターをやらせていただく機会があったのですが、田村昭太さんが蹴り飛ばすバスドラムに一生終わらないリヴァーブをかけるのがその時の僕の主な仕事でした。本曲中のリヴァービーなバスドラムは田村さんに影響されています。
他にもドラムンベースやダブを意識して、生ドラムにかなり派手にディレイやリヴァーブをかけたりもしてます。そういった様々な影響をバンドの楽曲にフィードバックすることができたと思うのでぜひ聴いていただきたいです。
butohes以外の活動で言うと、6月30日リリースの、愛知出身のSSW・ナリタジュンヤさんの1stアルバム『0630』にも2曲ほど参加させていただいています。「Just Drive」という曲は僕が全てエレキギターを弾いています。僕の思い描くサウンドスケープを、彼の日本人離れした豊かな声とキャッチーなメロディのバッキングとしてレイヤーしていく作業がとても楽しかったので、ぜひ聴いていただきたい1曲です。
Kate Yonnesz:1st EPに収録される「W/N/W/D」では、自分のルーツとなるドラマーTravis Barkerから影響を受けたフレーズをbutohes風に再解釈して叩きました。その他にも16ビートでサビを刻むところはFoo FightersのTaylor Hawkinsのようなドライブ感ある前乗りのビートになるように意識し、かなりこだわってドラムを叩いた1曲になっています。
Naoto Fg:1st EPの5曲目「zero gravity」です。これは生まれて初めて、バンドで作曲段階から関わった曲です。Michiroとふたり、思想を共有しながら12時間くらいぶっ通しで作曲しました(とはいえ、僕はDAW音痴なのでMichiro任せで、感覚でYES、NOと言っていたくらいです)。通底して鳴っているベースリフは、あらかじめこの楽曲で使用したいと思って持ち込みました。
作詞、ベース、楽曲制作で、かつての自分を超えること、楽曲、ひいてはMichiro自身の持つ本当の部分を具現化することに尽力しました。極私的に何かを尽くして作られたものこそ、ある個人の心に届くものになると信じています。
この曲で、誰かの何かが変わればいいなあ、と思います。
butohes以外の活動では、大学時代、manentというバンドでがむしゃらにベースを弾き続けました。そのおかげでMichiroと出会い、いまもなんとか命を現世に繋ぎとめてもらっています。次回作のシングルのエンジニアはMichiroです。いずれリリースすると思います。
Kanju Inatsug:1stシングル「Hyperblue」では、プリプロの段階で完成していた印象的なディレイのギターフレーズを元に、曲の雰囲気を損なわず、かつメロディアスなギターの佇まいを意識していくつかのフレーズをアレンジしました。音像に重きを置くbutohesならではのギターワークに注目していただきたいです。
Kate Yonnesz:メンバーとここ最近「フェスに出たい」とか「このアーティストと対バン、オープニングアクトで出たい」なんて話をしました。今はまだ大きな目標ですが、実現できるようbutohesのドラマーとしてバンドを支えられる存在になりたいです。
Naoto Fg:愛を知り、愛知県に行きたい。
あと海外でもライブがしたいです。
Kanju Inatsug:作曲をしたことがないので、是非ともやってみたいです。また、自分が作るギターのフレージングがワンパターンになりがちなので、多様なリズムや音色を用いて、試行錯誤していきたいです。
Kate Yonnesz:影響を受けたアーティストのところでも書いたんですが、元々パンクやメロコアが好きで、ファッションなんかは特にアメリカ西海岸系のスケートパンク(blink-182、NOFX)の影響を強く受けました。ブランドで言うと、Hurley、Dickies、VANS、adidasあたりです。大学時代はエモやポストハードコアなどのラウド系の影響で毎日ブラックスキニーばかり履いていたり、原宿のキャットストリートにある、音楽と関わりのあるブランドのショップとかに友だちとよく行っては洋服を探したりしてましたね。今は全然やらなくなってしまったんですけど、スケートボードとかも一時期どハマりして毎日練習してました。
Naoto Fg:もともとアニメは好きで、ジャンプ漫画のアニメ(特に『家庭教師ヒットマンREBORN!』『NARUTO』『BLEACH』)や『メジャー』『ツバサ・クロニクル』を、親にあまり許しを得られず、ときたま観ていました。漫画家に憧れがあって、しかし基礎を学ばないまま、授業中など毎日のように落書き帳にどこかで見たようなキャラクターを、さもオリジナルかのようにして、キャラ名、武器名、技名などと一緒に描き溜める日々を過ごしていました。といっても一日の大半はぼーっとしていました。
中学の時、友人から深夜アニメ、ライトノベルなどのカルチャーを教えられ、何の前情報もなく『Fate/stay night』の劇場版に行き、あらゆる意味で開眼します。万華鏡写○眼、直視の○眼、邪王○眼、思えば、キャラの顔を描くとき、まっさきに眼から描いていました。それからロックバンドもアニメ経由で知ることが多く、約89秒に込められるエネルギーと、作品と共鳴して生まれるカタルシスに感動してきました。今でもロックバンドがアニソンで生み出す勢いのようなものに憧れはあります。
当時の電撃文庫の作品でアニメ化されていた「デュラララ!」シリーズをはじめとする成田良悟作品、「禁書目録」シリーズ、それから西尾維新(作品によってはまったくライトノベルではない気がしますが)作品全般、入間人間作品を買っては読み、買っては読み、アニメを観、という感じで、それらに100%影響を受けたラノベ風の何かを描いていました。今読むと散文として最低限のことができておらず、全身鳥肌がたってしまいます。そのまま翼まで生えてくれたら何か違う道もあったかもしれません。
他にも根底にある鎌谷悠希先生の『隠の王』やヤスダスズヒト先生『夜桜四重奏』などの作品にも出会い、BS11などで再放送される昔のアニメなどもよく観ていました。
高校時代はあらゆるインプットから生み出される、実におぞましい小説もどきを書くことと、高校で始めたベース以外何もしたくなくて、ろくに勉強もせずにそのまま物書き全般を志す(とはいえ実際は自由すぎて7割以上がまともに勉強せず、青春を謳歌したり、路上に嘔吐したりする)人が入る大学に進みます。大学では小説、俳句(連句)、短歌、そして詩について、講義を受けながら実作を中心に浅く学びました。
(この文章が履歴書に書いた内容と酷似しており、吐き気を催しました)
大学生だった頃は、周りの友人と作品について、作るということについて語らいながら、かたやロックバンド(前述)でベースを弾いたり、文芸サークルで拙い短編を書いたり、急にしっかりと森博嗣のミステリー以外の作品に感銘を受けたり、現代詩人の作品をほんのすこし読んだりしているうちに終わりました。
私はカルチャーの浅瀬でちゃぷちゃぷ水面を叩いている状態のまま、四半世紀を生きながらえてしまったのです。浅瀬に慣れると海深くに進むことも、陸に上がることも難しくなりました。どうしたらよいのでしょうか。
Kanju Inatsug:パッと頭に思いついたのは、ファッションです。「ファッションは自己表現」とよく言われますが、毎日服を着なくては生活することができない我々にとって、衣類はもはや「表現」どころか身体の一部のような気さえします。しかし、その日の気温や気分によって、自由に着替えたり、組み合わせたりできることが、衣服が身体と明確に異なっている点です。生身の身体を「細い」と指摘されることにコンプレックスがあった自分は、衣類によって身体の佇まいや見え方を自在に変えることが楽しく、制服を着なくなってから今日まで、ずっとこのカルチャーに魅了されています。縫製がしっかりしているもの、パターンやデザインが少し妙なものが好みで、自分の服をアイロンがけしていると多くのことに気づき、時間を忘れます。
Kate Yonnesz:3年前から急に映画にどハマりして暇さえあれば映画を観ています。ここ最近好きなジャンルや系統だとMarvelとヤクザ映画です。ずっと好きなのはフランス映画です。毒の強いジョークと示唆的な内容、フランスの街並みとかフランス人の人生哲学みたいなのにグッときます。ファッションだと、最近はストリートからUKロックと関わりのあるファッションやモッズ、Oi!系のファッションにハマってて、そのエッセンスを取り入れた感じのができればと模索中です。あとここ最近リバイバルカルチャーの流れが2000年あたりに移ってきた感じがしてて(Machine Gun Kellyが2000年代のポップパンクを踏襲した新譜を出したり、beabadoobeeやPale Wavesの新譜がいい意味でアヴリルやパラモアっぽかったり)、どうなってくるのか気になるところです。
Naoto Fg:寿司です。ただし、そのうち飽きると思います。
(「T.O.L」のミュージックビデオの1:54付近で、持参した寿司のネタをめくり、シャリと分離するシーンがサブリミナル的に挿入されています。おそらく世界初の「寿司をめくる」シーンがあるミュージックビデオとなっています。ドン・ミス・イッ)
Kanju Inatsug:カルチャー、と呼ぶべきかわかりませんが、農業に興味があります。生物としての自分がひとまず生を継続していくためには、資本を増やすよりも、自ら作物を育て収穫し、食べることの方が安心して生きられるはずだと考えています。無農薬の農業に心血を注いでいる祖父に、これからたくさんのことを聞きたいと思っています。
butohes『Lost in Watercycle』
2021年6月16日(水)
試聴はこちら
16:30 OPEN / 16:50 START
\2000(ドリンク代別)
[出演]butohes / THE PLANET WE CAN SEE / Pygmy I'm cricket / Highlight
※入場人数制限あり
https://www.toos.co.jp/3/events/release-party-of-lost-in-watercycle/
11:00 OPEN / 11:30 START
前売り ¥2,000 当日 ¥2,500(ドリンク代別)
配信 ¥1,000
https://twitcasting.tv/9spices/shopcart/80900
[出演]ELEPH/ANT / uminism / フジクラヨミチ beyond the kid ailack. / butohes
※本公演は有観客配信ライブとなります。
https://9spices.rinky.info/event/2021-07-17-2/
butohes
2019年6月22日、東京都で結成。2020年9月に現体制に至る。バンド名は日本の前衛芸術「暗黒舞踏」に由来する。
幽玄なギターワークと身体的なビートを基調とし、ポストロックやアンビエント、シューゲイザーなどに分類される国内外のアーティストからの影響を昇華させた楽曲を携え、レコーディング・ライブを中心に精力的に活動中。
@butohes_japan
@butohesgram
Official YouTube Channel
Vol.076は、90~00年代のポストロックやアンビエント、シューゲイザーを独自のセンスで昇華する東京発の4人組バンドbutohesを取り上げる。
6月16日にリリースされた1st EP『Lost in Watercycle』には、ディレイやリヴァーブを多用した浮遊感のある全6曲を収録。先行シングルとして配信された「T.O.L」のミュージックビデオは、バンド名の由来である「暗黒舞踏」へのオマージュも込めて、メンバー全員が奇妙な踊りを見せる一風変わった作品に仕上がっている。
活動を始めたきっかけ
Michiro Inatsug(Gt/Vo):父がギターを弾いていたのをきっかけに作曲に興味を持ちました。よくある話ですが、モラトリアム期に「これしかない」と思ってしまったこともバンドを続けている理由のひとつです。地元川崎の友人たちとバンドを組んで活動をしていくうちに、作曲以上に音像やサウンドメイクに興味が湧き始め、録音やDTMに手を出すようになりました。ギターのエフェクターを集めたり、機材のことを調べたりするのが好きだったのも関係していると思います。レコーディングエンジニアを志すようになり、好きな音楽を録りたいと思った時に、「自分で曲を書く継続的なバンドを組めば手っ取り早いぞ」と思い、今のメンバーに声をかけたのが始まりです。僕たちはもともとそれぞれが違うバンドのメンバーでした。ドラムのKateとは高校の軽音部で、ベースのFgとは別のバンドで共演した時に知り合いました。ギターのKanjuは血を分けた実の弟ですが、彼の大学のサークルライブを見に行った時に一緒にバンドをやることを決めて、今のbutohesになりました。
影響を受けたアーティスト
Michiro Inatsug:ギタリストとしてはJohnny Marrに強く影響を受けています。Fender Jaguarを使っているのは彼の影響です。いわゆるロックギタリストらしいフレーズよりも、ソングライターが楽曲のために作った緻密なバッキングギターラインに惹かれます。初めて聞いたときは衝撃でした。
大きなジャンルで言うと、特にUKロックが好きで、それに限らず、Slowdive、Ride、The Smiths、The Cure、Kyte、Sigur Rós、Oval、U2、David Bowie、bloodthirsty butchers、Merzbow、Akira Kosemura、Fennesz、Chapterhouse、the Radio Dept.、Radiohead、toe、American Football、Enemies、Tycho、Travis、Manic Street Preachers、Keane、Cocteau Twins、The Jesus and Mary Chain、Warpaintなどが大好きです。傾向としては低体温で遠い音像の音楽が好きです。
Kate Yonnesz(Dr):blink-182のドラマーTravis Barkerからとても強い影響を受けています。音楽を始めた当時はパンクやメロコアが大好きで、Wikipediaの「ポップパンク」のページに載ってるバンドを片っ端からYouTubeで聴きまくってました。そんな中でBlink-182は高校1年生の時に出会ったのですが、タトゥーバリバリのTravis Barkerがドラムをぶっ叩いてる姿や、今まで聴いたことのないフレーズの数々に衝撃を受けました。以来自分のドラム観の中心となる人物です。1st EPでもリスペクトを込めてTravis風なドラムを叩いているので、ぜひドラムにも注目して聴いてもらいたいです。
Naoto Fg(Ba):ベースプレイヤーとして、特に影響を受けた人物は、
・日向秀和さん(ストレイテナー、Nothing's Carved In Stone、killing Boy、FULLARMORなど)
ベースを始めたのが遅く、出会った直後に聴いたのがこのアルバムでした。
・高橋涼馬さん(Seebirds、mol-74、ex.urema)
和音、アルペジオ、ルーパーでフレーズをリアルタイムで重ねていくなど、超人としか思えません。屈指の名盤です。
・福井健太さん(People In The Box)
『Talky Organs』は、作詞面でも非常に影響を受け、畏敬の念を抱き続けているPeople In The Boxの中で特に好きなアルバムです。
以上の3名です。他にもたくさん尊敬している方はいますが、日本のベーシストばかりで、海外のベーシストからの影響は直接的にはほぼゼロと言えます。
3名ともスーパーヒーローで、とても真似できたものではありません。そのため、あくまで彼らのようなフレージングを目指し、かつ楽曲の中での立ち位置を考慮しながら、プレイをしているつもりですが、程遠いです。
また、特別意識していませんでしたが、ライブを観に行って、無意識のうちにdownyの仲俣和宏さんのフレージングに似たものを感じると、メンバーから指摘がありました。downyも高校時代から聴き込んでいる大好きなバンドです。
復活の少し前に知り、アルバムを集め、聴き込んでいます。歌詞のあり方がdownyに近いとの指摘もありますが、畏れ多いです。遠い憧れです。
Kanju Inatsug(Gt/Cho):記憶している限りで、初めて好きになったアーティストがU2で、彼らからは影響を受けていると思います。小学生だった頃、よく両親の職場について行ったのですが、退屈している自分に、母がiPodを貸してくれて、『U218 Singles(Deluxe Edition)』に収録されている「Window In the Skies」という曲を繰り返し聴いていました。ボノの声やギターのサウンドを気に入っていたことを覚えています。大学生くらいになってから、改めてU2のカッコ良さを再認識することになり、バンドに加入した後でも、ギタリストであるエッジのプレイに影響を受け続けていると思います。
また、The Jesus and Mary Chainから受けた影響は計り知れず、Gibson ES-335を買う決め手となったのも、彼らのサウンドが大好きだったからです。今作に収録されている「zero gravity」や2ndシングル『T.O.L』にて随所に使われているファズのサウンドは、メリーチェインから着想を得ています。
注目してほしい、自分の関わった作品
Michiro Inatsug:butohes 1st EP 『Lost in Watercycle』より「Aquarium」です。レコーディング後のポストプロダクションにかなりの時間を費やしました。この曲はもともとインストでしたが、メロディをつける前にベースのFgに作詞をしてもらった、ある種「詞先」の1曲です。サウンド的な着想で言うと、先述のOvalやFennesz、Brian Eno、Apex TwinやTychoといったアンビエントやエレクトロニカにヒントを得ています。
それ以外にも、ミックス期間中にご縁があって、blgtzのマニピュレーターをやらせていただく機会があったのですが、田村昭太さんが蹴り飛ばすバスドラムに一生終わらないリヴァーブをかけるのがその時の僕の主な仕事でした。本曲中のリヴァービーなバスドラムは田村さんに影響されています。
他にもドラムンベースやダブを意識して、生ドラムにかなり派手にディレイやリヴァーブをかけたりもしてます。そういった様々な影響をバンドの楽曲にフィードバックすることができたと思うのでぜひ聴いていただきたいです。
butohes以外の活動で言うと、6月30日リリースの、愛知出身のSSW・ナリタジュンヤさんの1stアルバム『0630』にも2曲ほど参加させていただいています。「Just Drive」という曲は僕が全てエレキギターを弾いています。僕の思い描くサウンドスケープを、彼の日本人離れした豊かな声とキャッチーなメロディのバッキングとしてレイヤーしていく作業がとても楽しかったので、ぜひ聴いていただきたい1曲です。
Kate Yonnesz:1st EPに収録される「W/N/W/D」では、自分のルーツとなるドラマーTravis Barkerから影響を受けたフレーズをbutohes風に再解釈して叩きました。その他にも16ビートでサビを刻むところはFoo FightersのTaylor Hawkinsのようなドライブ感ある前乗りのビートになるように意識し、かなりこだわってドラムを叩いた1曲になっています。
Naoto Fg:1st EPの5曲目「zero gravity」です。これは生まれて初めて、バンドで作曲段階から関わった曲です。Michiroとふたり、思想を共有しながら12時間くらいぶっ通しで作曲しました(とはいえ、僕はDAW音痴なのでMichiro任せで、感覚でYES、NOと言っていたくらいです)。通底して鳴っているベースリフは、あらかじめこの楽曲で使用したいと思って持ち込みました。
作詞、ベース、楽曲制作で、かつての自分を超えること、楽曲、ひいてはMichiro自身の持つ本当の部分を具現化することに尽力しました。極私的に何かを尽くして作られたものこそ、ある個人の心に届くものになると信じています。
この曲で、誰かの何かが変わればいいなあ、と思います。
butohes以外の活動では、大学時代、manentというバンドでがむしゃらにベースを弾き続けました。そのおかげでMichiroと出会い、いまもなんとか命を現世に繋ぎとめてもらっています。次回作のシングルのエンジニアはMichiroです。いずれリリースすると思います。
Kanju Inatsug:1stシングル「Hyperblue」では、プリプロの段階で完成していた印象的なディレイのギターフレーズを元に、曲の雰囲気を損なわず、かつメロディアスなギターの佇まいを意識していくつかのフレーズをアレンジしました。音像に重きを置くbutohesならではのギターワークに注目していただきたいです。
今後挑戦してみたいこと
Michiro Inatsug:butohesとして活動を始めてから何もわからないまま、すぐに1st EPの制作に取り掛かったため、リリースまでに結成から2年も要してしまいました。制作過程で必要な時間や費用、体力や熱量などもある程度把握できたので、人生の一部としてコンスタントにバンドの作品を発表し続けたいです。Kate Yonnesz:メンバーとここ最近「フェスに出たい」とか「このアーティストと対バン、オープニングアクトで出たい」なんて話をしました。今はまだ大きな目標ですが、実現できるようbutohesのドラマーとしてバンドを支えられる存在になりたいです。
Naoto Fg:愛を知り、愛知県に行きたい。
あと海外でもライブがしたいです。
Kanju Inatsug:作曲をしたことがないので、是非ともやってみたいです。また、自分が作るギターのフレージングがワンパターンになりがちなので、多様なリズムや音色を用いて、試行錯誤していきたいです。
カルチャーについて
触れてきたカルチャー
Michiro Inatsug:幼少期から本を読むことが好きでした。読書好きが昂じて大学で哲学を専攻していましたが、いい大人になっても、理解して教養としている自負はありません。アカデミックな部分というよりも、ドイツ語やフランス語の訳本に特有の崩壊した日本語が好きで、夜中に呆けながらわけのわからない文字を滑らせていると、その中にドラマチックな構築美を感じることがあります。そういうゾーンというか、シラフでトリップしている瞬間が好きです。歴史や体系を理解するのは苦手ですが、推理小説や純文学も好んで読みます。マンガも大好きです。Kate Yonnesz:影響を受けたアーティストのところでも書いたんですが、元々パンクやメロコアが好きで、ファッションなんかは特にアメリカ西海岸系のスケートパンク(blink-182、NOFX)の影響を強く受けました。ブランドで言うと、Hurley、Dickies、VANS、adidasあたりです。大学時代はエモやポストハードコアなどのラウド系の影響で毎日ブラックスキニーばかり履いていたり、原宿のキャットストリートにある、音楽と関わりのあるブランドのショップとかに友だちとよく行っては洋服を探したりしてましたね。今は全然やらなくなってしまったんですけど、スケートボードとかも一時期どハマりして毎日練習してました。
Naoto Fg:もともとアニメは好きで、ジャンプ漫画のアニメ(特に『家庭教師ヒットマンREBORN!』『NARUTO』『BLEACH』)や『メジャー』『ツバサ・クロニクル』を、親にあまり許しを得られず、ときたま観ていました。漫画家に憧れがあって、しかし基礎を学ばないまま、授業中など毎日のように落書き帳にどこかで見たようなキャラクターを、さもオリジナルかのようにして、キャラ名、武器名、技名などと一緒に描き溜める日々を過ごしていました。といっても一日の大半はぼーっとしていました。
中学の時、友人から深夜アニメ、ライトノベルなどのカルチャーを教えられ、何の前情報もなく『Fate/stay night』の劇場版に行き、あらゆる意味で開眼します。万華鏡写○眼、直視の○眼、邪王○眼、思えば、キャラの顔を描くとき、まっさきに眼から描いていました。それからロックバンドもアニメ経由で知ることが多く、約89秒に込められるエネルギーと、作品と共鳴して生まれるカタルシスに感動してきました。今でもロックバンドがアニソンで生み出す勢いのようなものに憧れはあります。
当時の電撃文庫の作品でアニメ化されていた「デュラララ!」シリーズをはじめとする成田良悟作品、「禁書目録」シリーズ、それから西尾維新(作品によってはまったくライトノベルではない気がしますが)作品全般、入間人間作品を買っては読み、買っては読み、アニメを観、という感じで、それらに100%影響を受けたラノベ風の何かを描いていました。今読むと散文として最低限のことができておらず、全身鳥肌がたってしまいます。そのまま翼まで生えてくれたら何か違う道もあったかもしれません。
他にも根底にある鎌谷悠希先生の『隠の王』やヤスダスズヒト先生『夜桜四重奏』などの作品にも出会い、BS11などで再放送される昔のアニメなどもよく観ていました。
高校時代はあらゆるインプットから生み出される、実におぞましい小説もどきを書くことと、高校で始めたベース以外何もしたくなくて、ろくに勉強もせずにそのまま物書き全般を志す(とはいえ実際は自由すぎて7割以上がまともに勉強せず、青春を謳歌したり、路上に嘔吐したりする)人が入る大学に進みます。大学では小説、俳句(連句)、短歌、そして詩について、講義を受けながら実作を中心に浅く学びました。
(この文章が履歴書に書いた内容と酷似しており、吐き気を催しました)
大学生だった頃は、周りの友人と作品について、作るということについて語らいながら、かたやロックバンド(前述)でベースを弾いたり、文芸サークルで拙い短編を書いたり、急にしっかりと森博嗣のミステリー以外の作品に感銘を受けたり、現代詩人の作品をほんのすこし読んだりしているうちに終わりました。
私はカルチャーの浅瀬でちゃぷちゃぷ水面を叩いている状態のまま、四半世紀を生きながらえてしまったのです。浅瀬に慣れると海深くに進むことも、陸に上がることも難しくなりました。どうしたらよいのでしょうか。
Kanju Inatsug:パッと頭に思いついたのは、ファッションです。「ファッションは自己表現」とよく言われますが、毎日服を着なくては生活することができない我々にとって、衣類はもはや「表現」どころか身体の一部のような気さえします。しかし、その日の気温や気分によって、自由に着替えたり、組み合わせたりできることが、衣服が身体と明確に異なっている点です。生身の身体を「細い」と指摘されることにコンプレックスがあった自分は、衣類によって身体の佇まいや見え方を自在に変えることが楽しく、制服を着なくなってから今日まで、ずっとこのカルチャーに魅了されています。縫製がしっかりしているもの、パターンやデザインが少し妙なものが好みで、自分の服をアイロンがけしていると多くのことに気づき、時間を忘れます。
今注目しているカルチャー
Michiro Inatsug:カルチャーという括りでお話していいのかわかりませんが、この年になって体育に関心が生まれました。暗黒舞踏を標榜するからには身体への理解を深めるべきだという大義名分は賢ぶって聞こえるかもしれませんが、野球をしてみたいと思っています。目下のところは手前の球速をあげることにかなりの関心があり、暇な時はYoutubeで投球フォームの動画をよく見ます。元来運動は苦手で、自分の道はここにはないと、どのスポーツにも思わされてきました。バッティングセンターで遊んでいたら、千葉県の見知らぬヤンキー集団にバッティングフォームを完コピされて爆笑されたこともあります。しかし夜の公園で球技に興じていると、思い通りに動かなかった体をコントロールすることによって、些細な全能感を持てる自分に高揚します。学生時代のカースト上位へのコンプレックスから鼻摘まみ的に運動を忌避してきましたが、あらゆるアスリートの方々に一定以上の敬意を払えるようになりました。趣味と言ってしまえばそれまでですが、日々肉体の支配を精進させることができたら仕合わせだなと思っています。Kate Yonnesz:3年前から急に映画にどハマりして暇さえあれば映画を観ています。ここ最近好きなジャンルや系統だとMarvelとヤクザ映画です。ずっと好きなのはフランス映画です。毒の強いジョークと示唆的な内容、フランスの街並みとかフランス人の人生哲学みたいなのにグッときます。ファッションだと、最近はストリートからUKロックと関わりのあるファッションやモッズ、Oi!系のファッションにハマってて、そのエッセンスを取り入れた感じのができればと模索中です。あとここ最近リバイバルカルチャーの流れが2000年あたりに移ってきた感じがしてて(Machine Gun Kellyが2000年代のポップパンクを踏襲した新譜を出したり、beabadoobeeやPale Wavesの新譜がいい意味でアヴリルやパラモアっぽかったり)、どうなってくるのか気になるところです。
Naoto Fg:寿司です。ただし、そのうち飽きると思います。
(「T.O.L」のミュージックビデオの1:54付近で、持参した寿司のネタをめくり、シャリと分離するシーンがサブリミナル的に挿入されています。おそらく世界初の「寿司をめくる」シーンがあるミュージックビデオとなっています。ドン・ミス・イッ)
Kanju Inatsug:カルチャー、と呼ぶべきかわかりませんが、農業に興味があります。生物としての自分がひとまず生を継続していくためには、資本を増やすよりも、自ら作物を育て収穫し、食べることの方が安心して生きられるはずだと考えています。無農薬の農業に心血を注いでいる祖父に、これからたくさんのことを聞きたいと思っています。
RELEASE INFORMATION
butohes『Lost in Watercycle』
2021年6月16日(水)
試聴はこちら
LIVE INFORMATION
Release Party of Lost in Watercycle
2021年6月26日(土)下北沢THREE16:30 OPEN / 16:50 START
\2000(ドリンク代別)
[出演]butohes / THE PLANET WE CAN SEE / Pygmy I'm cricket / Highlight
※入場人数制限あり
https://www.toos.co.jp/3/events/release-party-of-lost-in-watercycle/
ルリ・マグネット 企画「未必の故意」
2021年7月17日(土)新宿NINE SPICES11:00 OPEN / 11:30 START
前売り ¥2,000 当日 ¥2,500(ドリンク代別)
配信 ¥1,000
https://twitcasting.tv/9spices/shopcart/80900
[出演]ELEPH/ANT / uminism / フジクラヨミチ beyond the kid ailack. / butohes
※本公演は有観客配信ライブとなります。
https://9spices.rinky.info/event/2021-07-17-2/
PROFILE
butohes
2019年6月22日、東京都で結成。2020年9月に現体制に至る。バンド名は日本の前衛芸術「暗黒舞踏」に由来する。
幽玄なギターワークと身体的なビートを基調とし、ポストロックやアンビエント、シューゲイザーなどに分類される国内外のアーティストからの影響を昇華させた楽曲を携え、レコーディング・ライブを中心に精力的に活動中。
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オフィシャルサイト@butohes_japan
@butohesgram
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