SENSA

2021.05.05

ドープなこだわりに託すポジティブなフィーリング「TAMTAM」-Highlighter Vol.069-

ドープなこだわりに託すポジティブなフィーリング「TAMTAM」-Highlighter Vol.069-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.069は、東京を拠点に活動する4人組バンドTAMTAMを取り上げる。昨年発表した新体制後初となる最新アルバム『We Are the Sun!』は、バンドのルーツであるR&Bやレゲエ、ジャズをはじめ、アフロビートやハウスといった多様な音楽性を取り入れた意欲作だった。5月4日にはそのアルバムをリモートで再編集した『We Are the Sun! Home Edition』を発表。既発曲をアットホームに仕上げたほか、昨年5月の緊急事態宣言中に下北沢のライブハウス・サーカスの救済目的で期間限定リリースした「Quarantine Routine」も収録されている。


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活動を始めたきっかけ
もともとは学生時代、音楽サークルでの出会いをきっかけに結成しました。高橋アフィ(Dr)とKuro(Vo/Syn/Tp)はオリジナルメンバーで、その後、友人だったユースケ(Gt)が加わりました。ベースは初期メンバー脱退後はいろいろなサポートミュージシャンにお願いしていたのですが、2019年カナダツアーへ行く際に、石垣陽菜(Ba)に演奏してもらい、それをきっかけに昨年4月にサポートからメンバーへと正式加入して現在に至ります。

影響を受けたアーティスト
メンバーそれぞれ好きな音楽はいろいろあリますが、みんな共通して好きなアーティストとしてはSun Raです。集まった時や車中でよく流れています。作品の美しさはもちろん、カオスをカオスのまま表現するライブのあり方にも憧れます。2021年は彼主演の映画の再上映がされていて、観に行ってキーホルダーを買ったりしました。ジャズやピアニストという枠だけではもはや語りきれない、コンセプチュアルかつ不思議な魅力のあるアーティストです



注目してほしい、自分の関わった作品
Kuro「Ayakashi」
Kuro:今年の初めにソロ名義で、香川県小豆島の妖怪美術館&ナイトツーリズムのテーマ曲としてオファーいただき、「Ayakashi」という楽曲をリリースしました。日本における妖怪やアニミズムといった自分も興味深いものがテーマだったので、スムーズに製作が進んでよかったです。
トラックの演奏はほとんどTAMTAMメンバーだったりします。MVは実際に小豆島に行って撮影を行いました。すごく綺麗な場所でした。
HMVレコードストアデイに合わせて7インチ化も決定したので、よかったらチェックしてほしいです(7インチにはPARKGOLFさんによるRemixも収録されます)。



GOODMOODGOKU「Know Ya ft.Kuro」
Kuro:ソロで歌うようになってからは他の方の作品で歌わせてもらう機会も増えました。東京で一番最初の緊急事態宣言が出た頃にGOODMOODGOKU君と共作した楽曲は、聴くと当時の生活を思い出します。屋上によく行ってたりとか、消毒液を買ったこととか。
彼は最近新しいフルアルバムも出てて、とても良いです。



Ai Kakihira「D(feat. 壱タカシ)」
ユースケ:アイちゃんは友達で、ご近所さんでもあり、楽曲も毎回素敵なのでほぼ毎曲、宅録でがっつりギターを入れさせてもらっています。最新リリース曲「IBU」も最高なので是非チェックしてください。



CHIYORI with LOSTRAINS「Space Operation」
高橋アフィ:コロナ前にわいわい楽しく撮ったMVが良い思い出です。



TAMTAM『We are The Sun! Home Edition』
2020年にリリースしたアルバムなんですが、なかなかライブで披露することができなく、それならばと宅録ver.でリアレンジしました。部屋にあったおもちゃの音を入れたり、家ならではの自由な雰囲気が所々にみられると思います。



今後挑戦してみたいこと

メンバーの3/4人が一緒に住み始めたので、最近はリハーサルも自宅で完結できるようになりました。いずれライブ配信なども自宅からできたら良いと思ってます。
また、映画などのサウンドトラックの制作はずっとやりたいことのひとつです。


カルチャーについて

触れてきたカルチャー
Kuro:学生の時から映画や本は好きで、多くの影響を受けていると思います。
特に本は、中学の時に読んだ恋愛系のヒット作が全く心に響かなくて、「私って本嫌いかも」と思っていたのですが、のちに本に詳しい友人に恵まれて、自分に合う本を教えてもらえたりするなか、人生の途中からすごく好きになりました。
映画も本も、自分にとって当たり前と思っている感覚を覆してくれるようなものや、ものの見方が変わるような作品が好きです(昨今では現実のほうがよほどカオスだなと思いますが)。

ジャンルはなるべくなんでもチェックするようにしていますが、読書に最も深くハマったきっかけは国内外のSF小説です。現在もそのシーンは追い続けています。
近年のSFで圧倒的に面白かったのはチャイナもので、中国のSF作家・劉慈欣や、中国ルーツでアメリカに渡った経歴ならではの視点で綴るケン・リュウの短編集はいずれも素晴らしかったです。本を読んで泣いたのは久しぶりでした。SFには思想的な影響を多く受けていると思います。

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一方で、作詞だったり、自分が文字を書くにあたって影響を受けたのは、俵万智さんをはじめとする「現代短歌」だったりしました。ハードな文体ではなくて、普段自分が使っているものに近い言葉で、自分の半径5mにある瞬間を生々しく切り取る感じというか。
私はもともと詞を書くことから音楽活動を始めた人ではなく、初期の頃は歌詞書きが苦手でした。「書きたいことが無い」と悩んでましたが、今思えばそれは"スケールの広いことを言わなきゃ"と思い込んで、逆に薄っぺらくなってしまう悩みだったのかもと思います。だから現代短歌の素朴な内容と文体は、当時大きなヒントになりました(吉田ヨウヘイgroupさんの詞にもこれと近い衝撃を受けた覚えがあります)。俵さんはたった31文字でリアルな情景を想像させる天才で、コロナ禍にも俵さんの新作『未来のサイズ』を手にとって、癒されたり頷いたりしていました。

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大きい本屋さんだと、新書の棚→社会/人文系→小説/エッセイの順で棚をめぐることが多いです。古本屋の場合は、もっとよくわからない本もちゃんと置いている店が好きで、近所にお気に入りがいくつかあります。作詞のきっかけがほしい時などは散歩がてらよく訪れて、リフレッシュしています。

ユースケ:ミュージシャンはサウナ&カレー好きがほんとに多いですが、わたくしももれなく愛好家でございます(とはいえサウナブームの昨今、わたくしのサウナ歴もたかだか6、7年くらいです)。
つい先日も、TAMTAMのサポートキーボディストでもあるスーザン(Ryo Sugimoto)や、Showmoreのあっちゃん(井上惇志)と、最近話題の錦糸町「黄金湯」に行ってまいりました。
DJブースがあったり、内装も良いんですが、サウナや水風呂の設計・設定の完成度が高く、外気浴スペースが広くてとにかく快適でした。外気浴ラバーの皆さまへ推させていただきます(ととのったら、錦糸町駅前の台湾料理屋「劉の店」でルーロー飯や、「麺魚」で真鯛ラーメンを食べて帰ると良いです)。



街の銭湯も好きです。最近行ったオススメは巣鴨の「宮下湯」です。程よくハード目な設定のサウナ&水風呂が600円ちょっとで楽しめます。コスパ優良児。

......あといつかサウナ→水風呂での至福タイムの感覚を音にできたらなと思っていたんですが、Corneliusさんが完璧に成し遂げられたので(「サウナ好きすぎ」)、わたくしの出る幕はございません。ので、サウナ用DJを志してまいりたいと思います。サウナ案件是非。



カレー作りに関しては正直まだまだなのですが、師匠がふたりいまして、ひとりはShowmoreのあっちゃん(あっちゃんよく出てくるな...)、もうひとりは僕が長年サポートさせてもらっているバンドEmeraldのサポメン仲間でもあるサックスのまっつん(松崎和訓)です。わたくしも彼らに習い、スパイス等を新大久保で買っています。

カレーの魅力は、気分で適当に作ってもめっちゃ美味しくなること(実際はとてもとても奥が深いんですが、なんと言うか、音作りに似ているとみんな言いますよね)。あと、量がたくさん作れることだと思っています。今年に入ってからバンドメンバーでハウスシェアを始めたので、引っ越し祝いにカレーパーティーを催しました。お店で最近のおすすめは下北沢の「オイシイカレー」です。ご静聴ありがとうございました。

今注目しているカルチャー
石垣陽菜:多分昔から、自分が実際に味わうより、誰かの感想を聞くほうが楽しいタイプで、食エッセイを読んだり、食レポを聞いたりするのが好きなのですが、ここ数年はずっと平野紗希子氏を推しています。彼女のエッセイも素晴らしいですが、昨年から始まった「味な副音声~voice of food~」は平野氏待望のポッドキャストで、毎週異なる食をテーマに、様々なトークを聴くことができ、家で音楽の仕事をする際によく聴いています。



高橋アフィ:Webのホラー漫画にはまっています。田口翔太郎さんの『裏バイト:逃亡禁止』とカラスヤサトシさんの『いんへるの』が特に好きです。怖い話ってテンポ感がひとつのキモだと思うのですが、共に急に驚かせるという方法ではないんですよね。じっとり嫌な気持ちになっていく、さくっと読めるはずの漫画なのに、重く遅く感じさせるノリが好きです。理由のない悪意とか殺意の描き方が素晴らしく、本当に陰鬱な気持ちになります。

RELEASE INFORMATION

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TAMTAM『We Are the Sun! Home Edition』
2021年5月5日(水)
試聴はこちら

PROFILE

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TAMTAM
東京を中心に活動するフィールグッドなバンド。
2019年7 月にFUJI ROCK FESTIVAL'19 に7年ぶり2度目の出演を果たし、同年5月にはバンド初のカナダ3都市4公演を成功させた。
Kuro(Vo)は、2019 年にソロアルバムを発表、フィーチャリング楽曲など活動の幅を広げている。
最新のフルアルバム『We Are the Sun!』は、2020年5月20日に配信音源、6月3日にCDをリリース。リードトラック「Worksong! Feat.鎮座 DOPENESS」はYouTubeにて、ミュージックビデオ公開中。

LINK
オフィシャルサイト
「We Are the Sun! Home Edition」 bandcamp
@tamtam_jpn
@kuro.tamtam
Official YouTube Channel

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