SENSA

2021.03.13

電子音とダンスミュージックの信奉者「WOZNIAK」-Highlighter Vol.060-

電子音とダンスミュージックの信奉者「WOZNIAK」-Highlighter Vol.060-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.060は、ミニマルであることを軸にしながら、テクノ、ポストロック、電子音楽、ギターロックなど、多彩な音楽を通過した楽曲を作り上げる、星優太によるソロプロジェクトWOZNIAKを取り上げる。


2019年夏に自主レーベル「77ROMANCE」を立ち上げ、精力的な活動を重ねるなか、3月12日にリリースされた5th EP『WHERE』は、ルーツである電子音楽、ダンスミュージックに振り切った意欲作。定義不能のクリエイターとして新たな地平を開拓する1枚になった。

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活動を始めたきっかけ
高校時代の後輩とバンドを組んだことがきっかけです。軽音楽部に入っていて、色んなバンドのコピーをしていました。
the band apartを知ったあたりから少しずつアンダーグラウンドな音楽に出会うようになって、toeLITEenvy9dwを知ったあたりで完全に食らいまくってしまいました。そのあたりの音楽をコピーしながら、なんとなくギターのフレーズだけ作ってみたりして楽しんでいました。

そんななかBATTLESに出会い「リアルタイムサンプリング」という手法を知って、「ルーパー(音をその場で録音・再生できるエフェクター)があれば曲が作れる!」みたいな衝動で、部活の後輩とそういうバンドを始めました。他のメンバーを入れるのは面倒だったし、なんせルーパーが最強だと思っていたので、最初から2人編成でした。それがWOZNIAKです。
その後、生ドラムをループさせたあたりからテクノやハウスに傾倒して、「じゃあドラムマシンのほうがいいじゃん(笑)」となり、「じゃあひとりでやれるし、別々にやったほうがいいじゃん(笑)」となり、WOZNIAKは僕のソロになりました。

影響を受けたアーティスト
全てのきっかけになっているのはWarp Recordsのアーティストです。
BATTLESと!!!が観たくて、「electraglide presents Warp20」というイベントに行きまして、そこでの衝撃が僕の価値観を形成したと言っても過言ではないと思います。




今見返しても異常なラインナップなんですけど、僕は上記2アーティストしか知らなかったし、興味もなかったんです。でもそこで観たBATTLESと!!!以外の全アクトが新鮮で衝撃的で、「バンドやってる場合じゃあないわこれ」ってなり、一気に電子音楽やダンスミュージックにのめり込みました。特にChris Cunninghamのライブは一生忘れないと思います。

そして、CATUNEというレーベルです。toeのアルバムで認識して、調べるなかでCATUNEに辿り着きました。当時は「レーベル」が何たるかも知りませんでしたが、「CDジャケの裏にCATUNEって書いてあるのは全部違って全部カッコいい」という確信はあって、当時リリースされていた作品は全部持っていました。





Warp Recordsの衝撃以降、僕はダンスミュージックに激ハマるわけですが、そんななかでもCATUNE絡みのアーティストはジャンルに関係なくカッコいいと思っていました。特にレーベルオーナーのプロジェクト「9dw」は常に変化し続けていて一番好きでした。
後にオーナーの斎藤健介さんと出会えて、CATUNEからWOZNIAKをリリースさせてもらえたのは一生の誇りです。

あとはTempalayです。
初めて共演した時、「この音楽の何が良いのか1つもわからない!」と逆に気になってしまって。僕が通ってきた音楽と全く違う世界で、調べれば調べるほどハマっていき、メンバーとも仲良くなりました。そんななか2017年のフジロックでギターボーカルの綾斗が指を骨折して、その代打でギターを弾かせてもらって、それ以降1ヶ月くらいサポートメンバーになったりしました。


ここ数年の音楽的影響はOPN以降の新たな電子音楽とか、とにかく「切り拓いてる」と感じるアーティストです。なかでもLee GambleZULINkisiActressLorenzo SenniObjektBarkersmerzDeath GripsSam Gendelあたりからはすごく影響を受けてます。
あとはバンドサウンド勢としてHenry Wu周辺のひとたちが大好きです。特にギタリストのMansur Brownはヤバすぎですね。






僕はたぶん、知らないものが好きなんだと思います。

注目してほしい、自分の関わった作品
WOZNIAKの「雨乞いメトロポリス」という曲は、ラッパーのKMCとの共作曲で、僕が作ったトラックを何も修正することなくKMCがラップを乗せ、それを何もエディットせずパッケージしました。何一つ打ち合わせすることなく完成してしまって、それが奇跡的な仕上がりで。こういう化学反応みたいなコラボって凄くいいなってことで、今後もどんどん仕掛けたいと思っています。
今たくさん制作中なので、リリースできる日が楽しみです。



新作『WHERE』 は生楽器の音はほとんど使わず、電子音楽・ダンスミュージックに振り切ってみました。
これまでとは比にならないくらい細かくアレンジを詰めたり、生活と制作の環境を一新したりもしたので、結構印象が変わったかなと思っています。



作る曲のBPMが年々遅くなっていて、やっと僕もKAYTRANADAとかDan Kyeみたいな渋いグルーヴを持った曲が作りたいと思えるようになりました。それが「Your Rules」です。でもその反動で「Double Face」や 「Diamond」みたいな爆裂系のトラックも作りたくなっちゃって、結果的にいいバランスになったかなと思っています。
最後の曲では「やっぱりエモーショナルな音楽が最高!」ってなるので、作品通して聴いてもらいたいですね。

今後挑戦してみたいこと
とにかくWOZNIAKの作品リリースをし続けます。そのための環境づくりに力を入れています。

それと、好きなアーティストとのコラボを積極的にやっていきたいです。ソロかつ自主という軽さを生かした動きができればなって思っています。今後の活動はオンラインの活動をいかに盛り上げていくか、それをオフラインの活動とどうやって結びつけていくかを考えています。今ってそう簡単にライブをやれませんよね。それは悲しいけど、個人ではどうしようもない部分もあるので切り替えてます。

YouTubeを活用した動きもしていきたいです。
ミュージシャンにとってのYouTubeって、MVやライブ映像を置いておく場所くらいの使われ方しかしていないと思ってて。もしくは数字を狙うためのバラエティー番組的な企画やカバー動画みたいな。いずれにしてもなんとなく違和感がありまして。そういう「ミュージシャンですから」とか「数字取りたい!」みたいなドンシャリなことではなくて、あのプラットフォームを生かした活動を継続的にやっていきたいです。
リスナーのみなさまとコミュニケーションをとるためのトーク配信は始めて、まずは1年が経ちました。次は作曲配信なんかも始めようと思っています。



カルチャーについて

触れてきたカルチャー
一番大きな影響は建築です。
もともとコンクリートの建物やグリッド、構造物などが、漠然と感覚的に好きで。あとからバウハウスとかメタボリズムとかっていう歴史を知って感動して、安藤忠雄さんや隈研吾さん、伊東豊雄さんなど、世界の代表みたいな建築家が日本にもいることを知りました。
次第に建築巡りが趣味になって、見に行った中銀カプセルタワーが入居者を募集していて、うっかり契約しちゃって、風呂もトイレも空調もないカプセルに住んだこともあります。



あとは建築家の本を読むようになってから、小説よりも実在する偉人について書かれた本が好きになりました。
スティーブ・ジョブズやザッカーバーグ、ウォーレン・バフェットなどの本を読んで、「おいおいコレが現実? 作り話でしょ?」みたいな衝撃が凄くて、世界を作ってきた人たちのことを調べるようになって。
その結果、今の社会についての興味も増して、テクノロジーやビジネスの世界はどうなっていくの?みたいなことにも強烈に興味があります。
また、建築の削ぎ落とされたカッコよさから「ミニマリズム」という概念や文化を知って、これまたどハマリして、所有物のほとんどを手放したり、部屋もなくしてみたり、いわゆる「もたない暮らし」が好きになりました。
その結果、精神的に身軽になりすぎて、今は海のほうに移住しました。



ミニマリズムを学ぶと「習慣」「集中」「健康」あたりも同時に学ぶことになるので、結果的に今僕、マインドフルネス健康オタク野郎みたいになっちゃいました。

あとは子供の頃からずっとお笑いが好きです。
僕はとんねるずから派生している「東京の笑い」が好きで、バナナマンとおぎやはぎが特に大好きです。そこからラジオを聴くようになって、今では僕自身もPodcastを毎日更新したりしています。
今ってSNS疲れが凄くて、みんな音声メディアに注目してますよね。ラジオが盛り上がるのは嬉しいです。




今注目しているカルチャー
これはカルチャーって言えるのかわかりませんけど、最近はお金や税金などの制度について興味があります。
去年って「あ、国って助けてくれないんだ」とか「政治って自分の暮らしに関係あるんだ」みたいに、国民全員がいよいよ気づいちゃった年だったと思うんですよね。そこに意識的になるのが遅かったかもしれませんけど、学んで得た知識は武器になるし、音楽活動を続けるうえで必ず意味があると思っています。
LITEの武田信幸さんって、そういう面でも最高にカッコいいじゃないですか。僕は生粋のLITEっ子なので、その辺も影響を受けて学んでいきたいです。
それと、サブスクリプションビジネスの世界が今後どうなっていくかも興味があります。
あらゆるサービスが月額課金制になって、それによって使う側はどんどん良い体験が出来るようになってるし、サービス提供者も安定して利益を確保できるから大胆に仕掛けられるっていう最高の状態で。



そういうカルチャーや時代の流れに対して、僕みたいな個人事業主がどうやりあっていくか、日々あれこれ考えてます。まずは月額制のウェブマガジンを始めまして、そこでは活動の核や裏側を書いたり、日々作っている曲を公開しています。



あとは植物です。なんであんなに癒やされるんでしょうか。超イケてる花瓶をゲットしたので、これから深めていきます!



RELEASE INFORMATION

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WOZNIAK『WHERE』
2021年3月12日(金)
視聴はこちら

PROFILE

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WOZNIAK
DALLJUB STEP CLUBやOUTATBEROなど複数のバンドを同時進行中の星優太によるソロプロジェクト。
2014年、2017年にcatuneよりアルバム、2018年10月に同レーベルより『VICTIM』を配信リリース。2019年夏からは自主レーベル「77ROMANCE」を立ち上げ、『Vortex EP』を皮切りに続々と作品を発表し続けている。
近年は星がドラムを担当、ギター2名、ベースのサポートメンバーを迎えた4人編成を中心としつつ、様々なミュージシャンのサポートや飛び入りゲストなど、その日その時で編成が変わる予測不可能なライブは加速。音楽のみらならず、全グッズのデザイン、ディレクションも自身が手がけ、クリエイティブユニットとして変化を遂げている。

LINK
オフィシャルサイト
@wozniaktokyo
@wozniaktokyo
Official YouTube Channel

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