2021.03.10
音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.059は、映画、アート、ダンス、漫才など、ジャンルの垣根を越えた分野で活動するメンバーで結成された4人組バンドBialystocksを取り上げる。
2019年にボーカル・甫⽊元が監督を務めた映画『はるねこ』での⽣演奏上映をきっかけに結成されたBialystocksは、様々なアーティストのサポートや劇伴を行い、ジャズピアニストとしての活動行う菊池剛(key)、国内外の様々なミュージシャンと共演する傍らアイドルやイベントへの楽曲提供なども行なう清水大史(Gt)、油絵の個展を開催し、アートワークを担当するなど分野にとらわれない活動を続ける武良泰一郎(Dr)の4人からなる。
2月17日にリリースされた1stアルバム『ビアリストックス』は、J-POPやR&Bを軸に据え、⾵景や⼼情、ストーリーが感じられる情景豊かな1枚。昨今のトレンドを吸収しつつ、普遍的なメロディと冒険⼼を忘れないアレンジを⽬指している。
甫木元(Vo):中野plan-Bで拙作映画『はるねこ』の上映後、劇中歌の生演奏を行った際、一緒に演奏して楽しかったからです。
武良泰一郎(Dr)::高校生の時に初めてHellaを聴いて、全く独自の既存の音楽という概念に囚われないスタイルに衝撃を受けて、それからは型に嵌めるスタイルからは少なくとも一部は逸脱していたいと考えるようになりました。
清水大史(Gt)::Jim Hallのリリカルなプレイが大好きで、こんなふうに弾けるようになりたいと、たくさん練習しました。また、Count Basie Orchestraのダイナミックなサウンドには昔から影響を受けています。
甫木:言葉は父から、音楽は母からの影響が強いと思います。大学で映画を学び、当時教授だった青山真治監督に出会ったことが全てのはじまりです。
『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』青山真治監督作品 予告編
自分が関わった作品は、TATEANAS『縄文人に相談だ』です。キーボードとして参加しています。縄文ZINEというフリーペーパーの企画として作られた、mogsanと大石晴子という2組のアーティストのコラボレーション的な良い曲です。
武良:『ビアリストックス』は、音源で聴いたときにも生音感が感じられるような音作りを目指し、フレーズやフィルに関しても、繰り返し聴いても飽きないようにメロディとのバランスを考えながら構築していきました。
ジャケットの絵は山を描く、とだけ決めて書きました。結果論になってしまいますが、概念的な制約の少なさが幅広いサウンドを持つアルバム収録曲全てを受け入れ、ひとつの物体として世に提出できたことに繋がったのではないかと考えています。
自分が関わった作品は、2020年の高知県立美術館の企画展『収集→保存 あつめてのこす』紹介動画用のSEです。過去に自分が作成していたインスト音源を甫木元が編集した映像に乗せてもらいました。
清水:『ビアリストックス』は、ギタリストとして、サウンドの押し引きにこだわりました。引くところは全く弾かず、出るところは野獣のようにファズを踏み出しゃばるという温度差が、結果的に謎で面白いギター像になりました。
また、デジタルプロセッサを取り入れた音作りにもこだわりました。あえてラインアンプ(Helix)を積極的に使い、空気感も時間をかけてエミュレート。ところどころ偉大なギタリストを彷彿とさせるサウンドもリスペクトからオマージュし、聞く人が聞けばニヤリとするようなエレキギターサウンドに仕上げました。
自分が関わった作品は、Liverwort Labの「月からの手紙」です。作曲家・友金直人氏が同タイトルのオリジナル物語のテーマ曲として作曲した若手演奏家によるラージアンサンブル楽曲。さまざまな楽器が美しく幻想的なサウンドを織りなします。第37回浅草ジャズコンテスト金賞受賞作品。
甫木:『ビアリストックス』は、高知に移住して感じたことや見えてきたこと、限りある時間のなかで、頭で考えるよりも、鼻歌で出てきてしまった歌を、なるべくそのまま。歌詞に関しても、意味よりも音と一緒になった時のメロディの一体感を重視して制作しました。
拙作映画『はるねこ』はDVD化や配信はせず、上映を続けています。
去年は上映会をすることはできませんでしたが、今年少しでも再開できればと思っています。映画の舞台になっている埼玉県越生町ギャラリィ&カフェ山猫軒で上映する際には、武良泰一郎絵の個展、Bialystocks演奏会を今年もまたできたらと思っています。ロケ地でみる映画は特別な体験になると思います、是非。
武良:今までは音楽知識がない状態で100%フィーリングに頼って作曲していたので、今後はコード楽器を作曲できる程度に習得して、曲らしい曲を書いてみたいと考えています。あとはライブ向けに横断幕のようなどでかいイラストを描いてみたいです。
清水:まだバンドで自作曲をレコーディングしていないので、次回作品には何曲か曲を書きたいです。それから、もっといろいろな楽器が演奏できるように練習したいです。
甫木:自然な流れで、ジャンルの違う人たちを巻き込みながら、自分たちがいいと思えるものを突き詰められたらと思っています。
武良:絵はシャガール、ベーコン、横尾忠則が好きです。ベーコンへのインタビューをまとめた「フランシス・ベイコン・インタビュー」は繰り返し読みました。
大江健三郎、中上健次が好きです。文体と中身を切り離せない感じが好きです。高校生のときに熱帯魚にはまり今でも好きです。イシダイに似たダトニオイデスという魚が特に好きです。
清水:ネットを中心に根を生やすボーカロイドやアングラアイドルカルチャーには以前から参加しており、イベントへの楽曲提供なども行いました。まるで常に文化祭の前の日のような雰囲気がありとてもおもしろいです。公式、非公式問わず自分たちだけで何とかしようという思いがたくさんの人の心を動かしています。
甫木:今年全体のディレクターとして参加した、高知県須崎市で毎年行っているアートプログラム「現代地方譚」。アーティストインレジデンス、演劇、映像、ダンス......、地方がジャンルの違う作家同士の交差点のような場になっていることがおもしろいと思います。
2020年現代地方譚7、Bialystocksのメンバーと映画作家の鈴木余位さんと須崎市の小学校で映画のワークショップを行いました、子供たちが8mmフィルムで撮影・監督した映画に音をつける作業は、教える側で参加したのにもかかわらず、こちらが勉強になることが多く刺激的な体験でした。
地域が脈々と受け継いできたこと、今までかかわりのない他ジャンルのことなど、知らないことを知ることは常に楽しいです。
武良:アウトサイダー(?)へのインタビューが好きで、よく聞いたり読んだりしてます。ベーコンはもちろん、阿部薫やつげ義春のインタビューは衝撃を受けました。最近だとニートtokyoをよく見ています。
清水:食に関しては以前から関心があり、なかでもコーヒーは好きでよく飲んでいます。カフェバッハの店主、田口護さんの考えるコーヒーカルチャーを学びながら、他の誰かに美味しいコーヒーを提供するにはどうしたらいいかを考えるのは、ライブでどうやってお客さんを楽しませようか、こんな音を入れたらおもしろいんじゃないかな、というのに似ていますね。
甫木:ダンスからは常に刺激を受けています。
Bialystocks『ビアリストックス』
2021年2月17日(水)
視聴はこちら
1. 花束
2. I Don't Have a Pen
3. ごはん
4. またたき
5. コーラ・バナナ・ミュージック
6. Thanks You
7. 夜よ
8. Nevermore - Album Version
Bialystocks
2019年、ボーカル・甫⽊元監督作品、⻘⼭真治プロデュースの映画『はるねこ』での⽣演奏上映をきっかけに結成。2020年には残念ながら開催が⾒送られてしまったものの、⼤型フェス「METROCK」への出演が決定していた。メンバーそれぞれの持つ多様な能⼒が発揮され、多岐に渡る⾳楽ジャンル、楽器の演奏から、ミュージックビデオ、アルバム、アートワークまでも⾃分たちでプロデュース。それぞれが映画、アート、ダンス、漫才などジャンルの垣根を超えた分野で活躍しながら共演を続けている。
@bialymusic
@bialystocks
Official YouTube Channel
Vol.059は、映画、アート、ダンス、漫才など、ジャンルの垣根を越えた分野で活動するメンバーで結成された4人組バンドBialystocksを取り上げる。
2019年にボーカル・甫⽊元が監督を務めた映画『はるねこ』での⽣演奏上映をきっかけに結成されたBialystocksは、様々なアーティストのサポートや劇伴を行い、ジャズピアニストとしての活動行う菊池剛(key)、国内外の様々なミュージシャンと共演する傍らアイドルやイベントへの楽曲提供なども行なう清水大史(Gt)、油絵の個展を開催し、アートワークを担当するなど分野にとらわれない活動を続ける武良泰一郎(Dr)の4人からなる。
2月17日にリリースされた1stアルバム『ビアリストックス』は、J-POPやR&Bを軸に据え、⾵景や⼼情、ストーリーが感じられる情景豊かな1枚。昨今のトレンドを吸収しつつ、普遍的なメロディと冒険⼼を忘れないアレンジを⽬指している。
活動を始めたきっかけ
菊池剛(Key):もともと知り合いだった甫木元に、彼が監督をした『はるねこ』の生演奏付き上映会で、演奏会のメンバー集めの話を持ちかけられ、当時たまたま、ほかで一緒に演奏することが多かった清水と武良に声をかけました。甫木元(Vo):中野plan-Bで拙作映画『はるねこ』の上映後、劇中歌の生演奏を行った際、一緒に演奏して楽しかったからです。
影響を受けたアーティスト
菊池:Frank Sinatraが大好きすぎて、自分もたまに歌うようになりました。武良泰一郎(Dr)::高校生の時に初めてHellaを聴いて、全く独自の既存の音楽という概念に囚われないスタイルに衝撃を受けて、それからは型に嵌めるスタイルからは少なくとも一部は逸脱していたいと考えるようになりました。
清水大史(Gt)::Jim Hallのリリカルなプレイが大好きで、こんなふうに弾けるようになりたいと、たくさん練習しました。また、Count Basie Orchestraのダイナミックなサウンドには昔から影響を受けています。
甫木:言葉は父から、音楽は母からの影響が強いと思います。大学で映画を学び、当時教授だった青山真治監督に出会ったことが全てのはじまりです。
注目してほしい、自分の関わった作品
菊池:最新アルバム『ビアリストックス』はトラックメーカー的なサウンド全体ありきの音楽が増えるなか、我々は古典的かもしれないが、骨のあるメロディと、それを引き立てることに全力を注ぎ、しかし冒険心も忘れないアレンジを目指しました。自分が関わった作品は、TATEANAS『縄文人に相談だ』です。キーボードとして参加しています。縄文ZINEというフリーペーパーの企画として作られた、mogsanと大石晴子という2組のアーティストのコラボレーション的な良い曲です。
武良:『ビアリストックス』は、音源で聴いたときにも生音感が感じられるような音作りを目指し、フレーズやフィルに関しても、繰り返し聴いても飽きないようにメロディとのバランスを考えながら構築していきました。
ジャケットの絵は山を描く、とだけ決めて書きました。結果論になってしまいますが、概念的な制約の少なさが幅広いサウンドを持つアルバム収録曲全てを受け入れ、ひとつの物体として世に提出できたことに繋がったのではないかと考えています。
自分が関わった作品は、2020年の高知県立美術館の企画展『収集→保存 あつめてのこす』紹介動画用のSEです。過去に自分が作成していたインスト音源を甫木元が編集した映像に乗せてもらいました。
清水:『ビアリストックス』は、ギタリストとして、サウンドの押し引きにこだわりました。引くところは全く弾かず、出るところは野獣のようにファズを踏み出しゃばるという温度差が、結果的に謎で面白いギター像になりました。
また、デジタルプロセッサを取り入れた音作りにもこだわりました。あえてラインアンプ(Helix)を積極的に使い、空気感も時間をかけてエミュレート。ところどころ偉大なギタリストを彷彿とさせるサウンドもリスペクトからオマージュし、聞く人が聞けばニヤリとするようなエレキギターサウンドに仕上げました。
自分が関わった作品は、Liverwort Labの「月からの手紙」です。作曲家・友金直人氏が同タイトルのオリジナル物語のテーマ曲として作曲した若手演奏家によるラージアンサンブル楽曲。さまざまな楽器が美しく幻想的なサウンドを織りなします。第37回浅草ジャズコンテスト金賞受賞作品。
甫木:『ビアリストックス』は、高知に移住して感じたことや見えてきたこと、限りある時間のなかで、頭で考えるよりも、鼻歌で出てきてしまった歌を、なるべくそのまま。歌詞に関しても、意味よりも音と一緒になった時のメロディの一体感を重視して制作しました。
拙作映画『はるねこ』はDVD化や配信はせず、上映を続けています。
去年は上映会をすることはできませんでしたが、今年少しでも再開できればと思っています。映画の舞台になっている埼玉県越生町ギャラリィ&カフェ山猫軒で上映する際には、武良泰一郎絵の個展、Bialystocks演奏会を今年もまたできたらと思っています。ロケ地でみる映画は特別な体験になると思います、是非。
今後挑戦してみたいこと
菊池:Bialystocksの新たな創作はもちろん、何年も前からやろうと構想しているだけで全く何もしていない個人としての楽曲制作も少しは手をつけたいです。武良:今までは音楽知識がない状態で100%フィーリングに頼って作曲していたので、今後はコード楽器を作曲できる程度に習得して、曲らしい曲を書いてみたいと考えています。あとはライブ向けに横断幕のようなどでかいイラストを描いてみたいです。
清水:まだバンドで自作曲をレコーディングしていないので、次回作品には何曲か曲を書きたいです。それから、もっといろいろな楽器が演奏できるように練習したいです。
甫木:自然な流れで、ジャンルの違う人たちを巻き込みながら、自分たちがいいと思えるものを突き詰められたらと思っています。
カルチャーについて
触れてきたカルチャー
菊池:子供の頃から、水草(アクアリウム)が好きで、その分野のパイオニア的なADAという会社が出しているカタログや雑誌を眺めて育ったので、故天野尚氏(創業者)の哲学(?)には影響を受けている気がします。武良:絵はシャガール、ベーコン、横尾忠則が好きです。ベーコンへのインタビューをまとめた「フランシス・ベイコン・インタビュー」は繰り返し読みました。
大江健三郎、中上健次が好きです。文体と中身を切り離せない感じが好きです。高校生のときに熱帯魚にはまり今でも好きです。イシダイに似たダトニオイデスという魚が特に好きです。
清水:ネットを中心に根を生やすボーカロイドやアングラアイドルカルチャーには以前から参加しており、イベントへの楽曲提供なども行いました。まるで常に文化祭の前の日のような雰囲気がありとてもおもしろいです。公式、非公式問わず自分たちだけで何とかしようという思いがたくさんの人の心を動かしています。
甫木:今年全体のディレクターとして参加した、高知県須崎市で毎年行っているアートプログラム「現代地方譚」。アーティストインレジデンス、演劇、映像、ダンス......、地方がジャンルの違う作家同士の交差点のような場になっていることがおもしろいと思います。
2020年現代地方譚7、Bialystocksのメンバーと映画作家の鈴木余位さんと須崎市の小学校で映画のワークショップを行いました、子供たちが8mmフィルムで撮影・監督した映画に音をつける作業は、教える側で参加したのにもかかわらず、こちらが勉強になることが多く刺激的な体験でした。
地域が脈々と受け継いできたこと、今までかかわりのない他ジャンルのことなど、知らないことを知ることは常に楽しいです。
今注目しているカルチャー
菊池:自分も登山をするのもあり、NHK『グレートトラバース』という日本の山をつないで人力踏破する番組を放映開始から見ています。この番組を思い出すと、体力0になった時にもうひと踏ん張りできます。武良:アウトサイダー(?)へのインタビューが好きで、よく聞いたり読んだりしてます。ベーコンはもちろん、阿部薫やつげ義春のインタビューは衝撃を受けました。最近だとニートtokyoをよく見ています。
清水:食に関しては以前から関心があり、なかでもコーヒーは好きでよく飲んでいます。カフェバッハの店主、田口護さんの考えるコーヒーカルチャーを学びながら、他の誰かに美味しいコーヒーを提供するにはどうしたらいいかを考えるのは、ライブでどうやってお客さんを楽しませようか、こんな音を入れたらおもしろいんじゃないかな、というのに似ていますね。
甫木:ダンスからは常に刺激を受けています。
RELEASE INFORMATION
Bialystocks『ビアリストックス』
2021年2月17日(水)
視聴はこちら
1. 花束
2. I Don't Have a Pen
3. ごはん
4. またたき
5. コーラ・バナナ・ミュージック
6. Thanks You
7. 夜よ
8. Nevermore - Album Version
PROFILE
Bialystocks
2019年、ボーカル・甫⽊元監督作品、⻘⼭真治プロデュースの映画『はるねこ』での⽣演奏上映をきっかけに結成。2020年には残念ながら開催が⾒送られてしまったものの、⼤型フェス「METROCK」への出演が決定していた。メンバーそれぞれの持つ多様な能⼒が発揮され、多岐に渡る⾳楽ジャンル、楽器の演奏から、ミュージックビデオ、アルバム、アートワークまでも⾃分たちでプロデュース。それぞれが映画、アート、ダンス、漫才などジャンルの垣根を超えた分野で活躍しながら共演を続けている。
LINK
オフィシャルサイト@bialymusic
@bialystocks
Official YouTube Channel