2020.12.08
-Highlighter Vol.047-「Special Favorite Music」
音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.47は、12/2(水)に新体制初のEP『Anggle』をリリースした、関西発のポップバンドSpecial Favorite Musicの久米雄介(Vo/Gt)に迫る。
Special Favorite Music
Youtubeにアップロードした「Special Favorite Music」という曲名がバンド名の由来。年齢とジャンルの違うメンバーによる調和と違和感を大切にしている。中国大陸・台湾を含むアジアツアーも行ない、2ndアルバム『Royal Blue』は全国のラジオ27局でパワープレイとしてかかるなど、多方面で精力的に活動。これまで7人の大人数編成で活動を続けてきたが、2019年10月より、久米雄介(Vo/Gt)、土井徳人(Ba)新庄克也(Dr)の3人体制で活動がスタート。
拠点は東京でもないし、昔から一緒にいたメンバーでもなく、どこまでやれるだろうかと不安ではありましたが、少なくない人から愛される作品を一緒に作り上げることができたことが、つくづく幸せなことだなと思います。
2019年に当時の事務所から離れるタイミングで4人のメンバーが脱退して、今のスリーピースバンドに衝撃の生まれ変わりを果たしました。解散っていうのも、もちろん考えましたが、まだやり残したことが多くあるなと思ってた僕は、とにかくこのバンドを続けていこうと決めました。
変化することは批判にさらされるかもしれないし、どう思われるかってのも最初は気になって、とても怖いことでした。けれど、むしろその姿を見せることで、変化を恐れずに進んで行こうとする誰かを後押しできるのかもしれない、少なくとも僕はそうありたいと思って、活動を続けることを決めました。
あと、合理的な選択をしたくなかったというのもあります。たとえ損をしても、単にメリットや合理性で人生を選択する姿をまず自分自身に見せたくなかった。実際そうやって2020年に活動していく中、今の僕らの活動に共感してくれるかっこいい仲間や友達ができたし、それは来年、もっと自分たちで膨らませていくべきものだと確信しています。
大学の時から活動しているNOKIES!というバンドで3回生の時、アメリカ、イギリス、フランスを合計4週間ツアーした際、テキサスのフェスSXSWで見た!!!のライブには衝撃を受けました。The RootsのライブをCloud Nothingsのメンバーと、わずか200人キャパのライブハウスで見たことも、そのストーリー含め忘れられない出来事です。
イギリス・ブライトンの街を使って開催されるフェスGrate Escapeでは、街の人たちの音楽との関係性が本当に豊かで素晴らしかった。
各都市、ライブが終わった瞬間に全然知らない若者グループがステージ上にビール持ってきて「最高だったから飲んでくれ!」って奢ってくれたり、立派な企業勤めのおじさんがフェスのために2週間仕事を休んでワシントンからテキサスまで楽しみに来ていたり。当時日本ではあまり見られなかった音楽と人のあり方あり様に、何より影響を受けました。
もうひとつ大事なのは、そのバンドで音源を出してくれたFLAKE RECORDSと、メンバー、ライブハウスが僕の大きな影響の源です。
Special Favorite Musicを結成する前からは、日本語の音楽を聴きあさり始めました。当時はシティポップという言葉をあまり意識することはなく、今までの自分にはなかったものとして面白がっていました。レコ屋の300円箱をあさっては自宅のプレハブで友達と聴くというのにハマって、まだ再評価直前だった渋谷系やシティポップの音源を聴いてました。「これギリギリかっこいいな!」「いやこの年代の音源はまだ一周回りきってないな」っていう感じで。もちろん今と当時(2015年)では感覚が違いますが、ROUND TABLEや中山美穂やTM NETWORKやCASIOPEAはやばくて最高で、COMPLEXはちょっと早すぎるわ、という印象だった気がします。
完全におかしな出自なので僕に言及されるのは迷惑かもしれませんが(笑)、今まで共演したバンドやアーティストの中にも尊敬し続けている人はたくさんいます。京都のTurntable Films、HOTEL MEXICO、くるり、THE CHEF COOKS ME、KONCOS......。ちなみにベースののりとは、LEARNERSのベース浜田将充さんの弟子だというのが最初の自己紹介でした(ちゃんと使用されていたベースを受け継いでます)。プロデュースしたDENIMSをはじめ、同年代や年下のバンドにもしばしば影響を受けています。
もうひとつはBarbaraというバンドで、かつて京都のSecond Royalレーベルに所属していたSeussというバンドのメンバーが現在やっているバンドで、来年初め辺りに出す予定の音源のプロデュースをさせてもらっています。まだ世に出てませんが、ぜひ名前を覚えていただけたら僕も嬉しいです。すごくいい音源になりそうです。
最後に12月2日に出したSpecial Favorite MusicのEP。3ピースになって初めてのEPということで、それ自体ももちろん聴いてほしいんですが、3曲目の「Yugure」という緩いインスト曲にfeat.で参加してくれているのが、友だちのpedestrian。彼はSANABAGUN.のMC岩間くんのソロリベラルにトラックメーカーとしても参加しています。pedestrianの音源も、最高に気持ちがいいものなので、Special Favorite Music好きはぜひチェックしてください。
あとは褒められたことではないけども、はるか昔WinMXっていうP2Pファイル交換ソフトがあって、そこの自作曲系チャットルーム(ソフトウェアのデザインがめちゃくちゃマトリックス的だった)に入り浸っていたんですが、そこの住人にSF映画や小説の存在を叩き込まれ、そこからSF全般が好きになった記憶があります。田舎にいた僕にとってのアンダーグラウンドがSFだった(笑)。
僕がいちばん好きなのは『腹ぺこフィルのグルメ旅』で、ほんとに友だち全員にお勧めしてます。見てほしい。各国のグルメを、その国々の知り合いをガイドに食べ歩くんですが、この番組を僕が推す理由は「どの食材がおいしい」とか「このこだわりが凄い」とかじゃなく、友だちや仲間、家族との食事って最高だよね、っていうテーマが一貫して流れているところです。
番組の最後でフィルはニューヨークの両親にビデオ通話して、発見したグルメについて報告しながら、出会った友だちや人々がどう生きていたかについて語ります。たとえば、脱北者である女性が、たどり着いた韓国で故郷の北朝鮮料理屋を営む姿。
カルチャーとは伝播していく「粋」のような物だと思っています。『腹ぺこフィルのグルメ旅』には、その国の歴史から友人へ、友人の人生からフィルへ、フィルから遠く離れた国の両親へ。そうやって伝播していく「粋」が毎回見られます。なんとなく僕らの音楽も、そんな粋なものを伝えられる一員であればいいなと思っている次第です(笑)。あとテーマソングが最高にハッピーなので、こちらもぜひ一聴してください!
Special Favorite Music『Anggle』
2020年12月2日(水)
視聴はこちら
2020/12/31(木)大阪Music Club JANUS
出演
【DJ】YUKITERO(空きっ腹に酒)、谷朋彦(ex.プププランド)
【DJ&VJ】onion night
【バンド】Special Favorite Music、アフターアワーズ、and more...
詳細はこちら
@SPCL_FVRT_MSC
@special_favorite_music
Official YouTube Channel
FRIENDSHIP.
Vol.47は、12/2(水)に新体制初のEP『Anggle』をリリースした、関西発のポップバンドSpecial Favorite Musicの久米雄介(Vo/Gt)に迫る。
Special Favorite Music
Youtubeにアップロードした「Special Favorite Music」という曲名がバンド名の由来。年齢とジャンルの違うメンバーによる調和と違和感を大切にしている。中国大陸・台湾を含むアジアツアーも行ない、2ndアルバム『Royal Blue』は全国のラジオ27局でパワープレイとしてかかるなど、多方面で精力的に活動。これまで7人の大人数編成で活動を続けてきたが、2019年10月より、久米雄介(Vo/Gt)、土井徳人(Ba)新庄克也(Dr)の3人体制で活動がスタート。
活動を始めたきっかけ
当時、僕は梅田の雑居ビルの屋上に建てられた プレハブに居を構え、そこでほとんど引きこもりながら、ひたすら音楽を作っていました。いざ作品を出そうとなった時、演奏メンバーとして集まってくれたみんなを誘い、Special Favorite Musicが生まれました。拠点は東京でもないし、昔から一緒にいたメンバーでもなく、どこまでやれるだろうかと不安ではありましたが、少なくない人から愛される作品を一緒に作り上げることができたことが、つくづく幸せなことだなと思います。
2019年に当時の事務所から離れるタイミングで4人のメンバーが脱退して、今のスリーピースバンドに衝撃の生まれ変わりを果たしました。解散っていうのも、もちろん考えましたが、まだやり残したことが多くあるなと思ってた僕は、とにかくこのバンドを続けていこうと決めました。
変化することは批判にさらされるかもしれないし、どう思われるかってのも最初は気になって、とても怖いことでした。けれど、むしろその姿を見せることで、変化を恐れずに進んで行こうとする誰かを後押しできるのかもしれない、少なくとも僕はそうありたいと思って、活動を続けることを決めました。
あと、合理的な選択をしたくなかったというのもあります。たとえ損をしても、単にメリットや合理性で人生を選択する姿をまず自分自身に見せたくなかった。実際そうやって2020年に活動していく中、今の僕らの活動に共感してくれるかっこいい仲間や友達ができたし、それは来年、もっと自分たちで膨らませていくべきものだと確信しています。
影響を受けたアーティスト
大学では英米のインディーロックを専攻しておりました。当時はMP3ブログ最盛期で、毎月3000~5000曲のインディーバンドのがMP3ブログからメールで送られてきます。それをひたすら聴いてレーティングして、気になったらバイオグラフィーをググるみたいな毎日でした。今月は星4が200曲で豊作だわ、とか。授業に行かず、ずっとやってました。大学の時から活動しているNOKIES!というバンドで3回生の時、アメリカ、イギリス、フランスを合計4週間ツアーした際、テキサスのフェスSXSWで見た!!!のライブには衝撃を受けました。The RootsのライブをCloud Nothingsのメンバーと、わずか200人キャパのライブハウスで見たことも、そのストーリー含め忘れられない出来事です。
イギリス・ブライトンの街を使って開催されるフェスGrate Escapeでは、街の人たちの音楽との関係性が本当に豊かで素晴らしかった。
各都市、ライブが終わった瞬間に全然知らない若者グループがステージ上にビール持ってきて「最高だったから飲んでくれ!」って奢ってくれたり、立派な企業勤めのおじさんがフェスのために2週間仕事を休んでワシントンからテキサスまで楽しみに来ていたり。当時日本ではあまり見られなかった音楽と人のあり方あり様に、何より影響を受けました。
もうひとつ大事なのは、そのバンドで音源を出してくれたFLAKE RECORDSと、メンバー、ライブハウスが僕の大きな影響の源です。
Special Favorite Musicを結成する前からは、日本語の音楽を聴きあさり始めました。当時はシティポップという言葉をあまり意識することはなく、今までの自分にはなかったものとして面白がっていました。レコ屋の300円箱をあさっては自宅のプレハブで友達と聴くというのにハマって、まだ再評価直前だった渋谷系やシティポップの音源を聴いてました。「これギリギリかっこいいな!」「いやこの年代の音源はまだ一周回りきってないな」っていう感じで。もちろん今と当時(2015年)では感覚が違いますが、ROUND TABLEや中山美穂やTM NETWORKやCASIOPEAはやばくて最高で、COMPLEXはちょっと早すぎるわ、という印象だった気がします。
完全におかしな出自なので僕に言及されるのは迷惑かもしれませんが(笑)、今まで共演したバンドやアーティストの中にも尊敬し続けている人はたくさんいます。京都のTurntable Films、HOTEL MEXICO、くるり、THE CHEF COOKS ME、KONCOS......。ちなみにベースののりとは、LEARNERSのベース浜田将充さんの弟子だというのが最初の自己紹介でした(ちゃんと使用されていたベースを受け継いでます)。プロデュースしたDENIMSをはじめ、同年代や年下のバンドにもしばしば影響を受けています。
注目してほしい、自分の関わった作品
自分のバンドはおいといて、上にもあげたDENIMSの「I'm」という曲は僕がサウンドプロデューサーとミックス(荻野真也と共同)を担当させてもらった大好きなバンドの大好きな1曲でぜひとも聴いてほしいです。彼らとは前身バンドからの仲です。すごく良い曲を一緒に作らせてもらえて、ほんとに嬉しいです。かっこいいやつらです。もうひとつはBarbaraというバンドで、かつて京都のSecond Royalレーベルに所属していたSeussというバンドのメンバーが現在やっているバンドで、来年初め辺りに出す予定の音源のプロデュースをさせてもらっています。まだ世に出てませんが、ぜひ名前を覚えていただけたら僕も嬉しいです。すごくいい音源になりそうです。
最後に12月2日に出したSpecial Favorite MusicのEP。3ピースになって初めてのEPということで、それ自体ももちろん聴いてほしいんですが、3曲目の「Yugure」という緩いインスト曲にfeat.で参加してくれているのが、友だちのpedestrian。彼はSANABAGUN.のMC岩間くんのソロリベラルにトラックメーカーとしても参加しています。pedestrianの音源も、最高に気持ちがいいものなので、Special Favorite Music好きはぜひチェックしてください。
今後挑戦してみたいこと
状況的に見通しが立ちにくい中ではあるけれど、ポジティブなエネルギーを絶やさないように少しでも周りの仲間やリスナーに貢献できたらいいなというのがいちばんの想いです。来年はもうリリースが決まってて、ここで初めて言いますが、春にはアルバムが出るはずです。さっき言ったみたいにポジティブなムードに包まれていて、一緒に口ずさめるような、僕らの真骨頂みたいなアルバムにできたら良いなと思っています。今はまだ無理だけど、それをいつかライブ会場でみんなで歌える日が来たらいいなと思います。カルチャーについて
触れてきたカルチャー
オタクなのでSF関係ですかね......。アーサークラークのSF小説、『2001: A Space Odyssey』や『ガタカ』をはじめとしたSF映画、必修科目の『攻殻機動隊』や『パトレイバー』。昔、『EATMAN』っていう漫画があって、めちゃくちゃに好きでした。パーツを食べて、手から元の物を再生する能力のある主人公がひたすらカッコよく問題を解決していく1話完結のスチームパンク漫画なんですが、Sigur RosをBGMにそれを読みふける中学時代(笑)。あとは褒められたことではないけども、はるか昔WinMXっていうP2Pファイル交換ソフトがあって、そこの自作曲系チャットルーム(ソフトウェアのデザインがめちゃくちゃマトリックス的だった)に入り浸っていたんですが、そこの住人にSF映画や小説の存在を叩き込まれ、そこからSF全般が好きになった記憶があります。田舎にいた僕にとってのアンダーグラウンドがSFだった(笑)。
今注目しているカルチャー
カルチャー......というか、最近は食が好きです。食べることは最もカルチャー的な営みのひとつだと思っています(笑)。そういう意味だと、Netflixのグルメ系番組はあまり語られてないし、熱弁してる人もそんなにまだまだいない。もっと語られていいし、語っていきたいと思っています。SFM元メンバーゆうた氏に教えてもらった『タコスのすべて』にはタコスを通じた生活の社会のリアリティが詰まっています。僕がいちばん好きなのは『腹ぺこフィルのグルメ旅』で、ほんとに友だち全員にお勧めしてます。見てほしい。各国のグルメを、その国々の知り合いをガイドに食べ歩くんですが、この番組を僕が推す理由は「どの食材がおいしい」とか「このこだわりが凄い」とかじゃなく、友だちや仲間、家族との食事って最高だよね、っていうテーマが一貫して流れているところです。
番組の最後でフィルはニューヨークの両親にビデオ通話して、発見したグルメについて報告しながら、出会った友だちや人々がどう生きていたかについて語ります。たとえば、脱北者である女性が、たどり着いた韓国で故郷の北朝鮮料理屋を営む姿。
カルチャーとは伝播していく「粋」のような物だと思っています。『腹ぺこフィルのグルメ旅』には、その国の歴史から友人へ、友人の人生からフィルへ、フィルから遠く離れた国の両親へ。そうやって伝播していく「粋」が毎回見られます。なんとなく僕らの音楽も、そんな粋なものを伝えられる一員であればいいなと思っている次第です(笑)。あとテーマソングが最高にハッピーなので、こちらもぜひ一聴してください!
RELEASE INFORMATION
Special Favorite Music『Anggle』
2020年12月2日(水)
視聴はこちら
LIVE INFORMATION
一本締めNIGHT2020/12/31(木)大阪Music Club JANUS
出演
【DJ】YUKITERO(空きっ腹に酒)、谷朋彦(ex.プププランド)
【DJ&VJ】onion night
【バンド】Special Favorite Music、アフターアワーズ、and more...
詳細はこちら
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オフィシャルサイト@SPCL_FVRT_MSC
@special_favorite_music
Official YouTube Channel
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