SENSA

2020.08.24

「枠に囚われなければ、いろいろなことができる。」神村翔が語る、souzoucityという新たな創作拠点

「枠に囚われなければ、いろいろなことができる。」神村翔が語る、souzoucityという新たな創作拠点

ユアネスのギタリストであり、ほぼ全ての楽曲の作詞作曲を手がける古閑翔平が、ペンネーム「神村翔」名義によるネット発の新プロジェクトsouzoucityを始動。7月8日に初となる楽曲「いつのまにか」を配信リリースした。今作は、女性ボーカリストnemoiを迎え、ピアノの旋律が美しく交錯する疾走感溢れる楽曲となったが、今後は、様々なボーカリスト、プレイヤーを招き入れ、ジャンルの枠に囚われない活動することになるという。母体であるユアネスがありながら、なぜ、神村翔として、souzoucityという新たな創作拠点を求めたのか。そこには広い視座で音楽シーンを俯瞰し、固定概念にとらわれたバンドへの違和感を越えて、様々なカルチャーの「中間地点」でありたいという自由な思想があった。

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―まず、souzoucityというプロジェクトを始めようと思ったきっかけから教えてください。


いまの音楽のムーブメントとして、自分たちの姿を出さずに活動するユニットが増えてるじゃないですか。それは、いま自分たちがやっているユアネスのような、姿を見せているバンドとは似てるようで、絶対的に似てないものだと思うんですね。

―ええ、違うカルチャーが発展しているように感じがしますよね。


そういう音楽シーンの流れとか、いまのカルチャーをしっかり知っておかないと、乗り遅れちゃうんじゃないかと思ったんです。特にバンドで曲を作っている自分が知らないと、ユアネス自体が古いものになってしまうというか。だから、こういうプロジェクトを立ち上げることで、研究したいと思ったんですよね。あとは、純粋に、ユアネスは男性ボーカルなので、女性ボーカルの曲を作ってみたいなっていう気持ちですかね。

―ソングライターとしての好奇心?


そう。いろいろな人をプロデュースしてみたいと思ってるんです。

―やはり、ゆくゆくはこのプロジェクトの活動をユアネスに還元したいという想いが強いですか?


そうですね。そこで得た方法を使って、今度はユアネスの音楽をどうやって新しい層に届けていくかっていうのも考えられるんじゃないかと思ってます。

―プロジェクトの構想は、コロナの自粛期間に考えたものですか?


いや、実は1年ぐらい前から水面下で動いてたんです。もともとは「神村翔」の正体が、ユアネスの古閑翔平だっていうのを公にせずに、趣味程度の活動をしようと思ってたんですけど。図らずも自粛期間に入ってしまったということもあって。せっかくだから正式な活動にして、みんなに楽しんでもらえたらいいなと思ったんです。

―楽曲制作の形態としては、神村くんが作詞作曲を手がけて、参加アーティストは、ボーカリストも含めて、曲ごとに入れ替えていくそうですね。


ランダムでやっていこうと思ってますね。いま、そういうことをやってる人があんまりいないと思ったんですよ。特に、ボーカリストが毎回変わるような人たちはいないなって。

―ミュージシャンだけじゃなく、アートワークも含めて、様々なクリエイターと関わっていくことになりそうですね。


そうですね。イラストレーターさんにも、自分で声をかけさせてもらって。ゼロから自分をプロデュースする感じです。

―プロジェクト始動とともに発表されたアーティストアイコンは、コンノイタさんのイラストです。どういった経緯でお願いすることになったんですか?


Twitterでバズってたのを見かけたんです。もともと『HUNTER×HUNTER』のキルアっていう、自分が好きなキャラクターのイラストを描かれてて、自分のセンサーに引っ掛かったんですよ。ふつうの人が着ないような、ちょっとゲーム性のある近未来っぽい洋服がかっこよくて。すぐにダイレクトメールを送って、イメージを描いてもらいたいってお願いしたんです。
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Illustration by コンノイタ



―いわゆるアーティスト写真ではなく、イラストをアイコンにするメリットは何だと思いますか?


イラストって自由自在なんですよね。ひとつキャラクターイメージがあるだけで、アニメーションにしたり、いろいろな展開ができるんです。今回は「いつのまにか」っていう曲のイメージが、悲しくて切ない、淡いブルーのイメージだったから、青色でやったんですけど。たとえば、新譜を出すたびに、カラーとか洋服、ポーズを変えたりもできますよね。赤っぽい曲なら、赤を背景にするとか。あと、いつかVTuberとして動かしたいなとも思ってますね。

―VTuberですか。話を聞いてると、発想次第で、どんなこともやれそうですね。


そこがsouzoucityとして活動するうえで、いちばん重要なことですね。

―プロジェクト名のsouzoucityには、何か意味はありますか?


実は、僕のSNSのアカウント名が、「@souzoucity」なんですよ。高校生のときに作ったんですけど。なんとなく語呂がいいなって。ユアネスと同じく造語なので、エゴサするときにも便利だし、いつか何かに使いたいと思ったんです。気づかない人もいると思うけど、僕のことを知ってくれてる人には、僕だってわかるっていうのも、おもしろいかなと思ってます。

―言葉の響きからは、想像の街とか、騒々しい街とか、そんな意味も汲みとれますが。


あ、そうですね。想像するだけで、いろいろ街を作れるみたいなイメージです。人がいて、そこにクリエイティブな発想があるだけで、街はできてるよ、みたいな。

―これから、たくさんのクリエイターと関わっていくsouzoucityというプロジェクトには、ぴったりのネーミングかもしれないですね。


いろいろなプレイヤー、クリエイターを招いていくことで、souzoucityの住人が、どんどん増えていくような感じですね。1曲1曲が積み重なって、街のように大きな存在になるっていうのも、またおもしろい表現ではあるなと思います。

―ちなみに、ペンネームを神村翔にしたのは?


僕の母の旧姓が神村なんですよ。それだったら、古閑と、神村で、父と母の名前のどっちも使おうみたいな。あと、僕は生まれる直前まで、「翔」になる予定だったらしいんです。最終的に、翔平になったんですけど。じゃあ、「翔」でいいや、みたいな感じですね(笑)。

―なるほど。ここからは、プロジェクトの第一弾として発表された楽曲「いつのまにか」について聞かせてください。まず、最初に何から着手したんですか?


まずは曲ですね。最初に「いつのまにか」っていうテーマを決めて、女性が歌う、女性目線の曲を書きたいっていうのがあったんです。

―かなり言葉数の多い曲になりましたね。


ラップっぽい、たくさん韻を踏むような曲にしたかったんですよね。この言葉を女性が歌ったら、どういう表現になるかな?とか、どういう言葉を託したらおもしろいかな?とか考えて作ったので。自分のなかでは、かなり実験的なものになったと思ってます。

―バンドで曲を作るときとは違いますか?


ユアネスでは、「黒川が歌うから、こういう形にしよう」っていうのが決まってますけど、souzoucityでは、たぶん柔らかい声質だろうなっていう大体のイメージで作らなきゃいけなくて。そこが曖昧なぶん、ボーカリストが決まってから、改めてキュッと固めていく感じが違いましたね。

―女性ボーカルということ以外、声の個性もわからない状態ですもんね。


もし、これを続けていけば、より曲作りに対して柔軟に対応していけるなと思いました。ユアネスだと、自分で縛りを課しちゃうところがあって。たとえば、物悲しいテーマのアルバムだったら、アッパーな曲は書けないじゃないですか。でも、souzoucityでは、毎回メンバーが変わるから、もっと広いテーマで無差別にできちゃう。自由度があって、おもしろいですね。

―プレイヤーには、ベースとピアノを迎えていますが、これも自分で声をかけて?


ピアノは、ユアネスでも鍵盤を担当してくれてる方ですね。

―坂田愛華さん。


そうです。専門学校の同級生です。あと、ベースのカトウリューガくんは同じ専門学校の1個下の代で、いちばん上手かった子なんです。ユアネスはみんな仲がよくて。

―ボーカリストのnemoiさんは?


実は、ユアネスのライブに来てくれたお客さんなんです。その方がインスタグラムで弾き語りをあげてて。すごくいい声だったんですよ。心を震わせてくれるような声質というか。それで、いつか絶対にプロデュースしたいって考えてたんです。こんなに魅力的な人なのに、まだフォロワー数が少なくて、なんで世に広まってないんだろう?って思うんですよね。

―souzoucityを使うことで、そういう埋もれた才能を広めたいという想いはありますか?


というか、作曲する立場として、もっと聴いてほしいんですよ。周りの協力があれば、できることがたくさんあるし。ひとりでも多く世に出してやろうっていうスタンスではいますね。

―歌詞についても聞かせてください。最初に「いつのまにか」というテーマを決めたというのは、具体的にどういうことですか?


女の子の失恋をテーマに書きたいなと思ったんです。いつのまにか隣にいた姿だったり、そこでしか見えなかった横顔が、やがて見えなくなったっていうようなことですね。

―戻れない過去、失われたものであったり、変わらないもの、変わっていくものというのは、ユアネスとしても頻繁に表現するテーマではありますね。


やっぱり僕はそこに惹かれるんですよね。ノスタルジーな歌詞が好きなので。あと、今回に関しては、あえてユアネスのリスナーにも響く歌詞にすることで、souzoucityが、ユアネスに対する入り口になればいいなと思ったんですよね。

―途中に、"ちゃちゃっと ちゃっかりプロモーション"という言葉が出てきますけど。ここだけ、急に主人公が神村くん自身ともとれる表現になるのが気になりました。


これは、souzoucity自体に対するアプローチですね。ミュージックビデオとか作っちゃって、ちゃちゃっと僕をプロモーションしてるよ、みたいな。さりげない遊び心ですかね。この部分に出てくる「隙」は「好き」、「故意」は「恋」って漢字に変換できる、隠し言葉になって。この曲を書くにあたっては、けっこういろいろなMCバトルを見て、韻を勉強したんです。

―そこは新しい挑戦だったと。


うん。いろいろ試せたのは刺激的でした。

―「いつのまにか」のミュージックビデオはアニメーションですね。


人間がやってない感じというか、現実的な人が出ないのがいいなと思って。作っている人が若さとか、出演している女性の顔とかで聴き方が変わるじゃないですか。そういうフィルターを一切なしに、二次元の絵柄で表現してみたかったんです。

souzoucity 「いつのまにか」Official Music Video


Lyrics and Music : 神村翔 / Vocal:nemoi / Bass : カトウリューガ / Keyboard : 坂田愛華
Artwork : 純頃 / Movie : よたばいと

―イラストの純頃さん、映像のよたばいとさんとも、今回初めてお仕事でご一緒に?


そうです。僕、キタニ(タツヤ)くんと知り合いなんですけど、純頃さんは、キタニくんのミュージックビデオも描かれてるんですよ。そのイラストがいいなと思って、声をかけさせてもらった感じですね。よたばいとくんは、専門学校の後輩で。ギタリストなんですけど、いまはボカロPで映像制作もやってるんです。で、その映像を見て、すごくクオリティが高かったのでお願いしました。

―映像に関しては、具体的にイメージを伝えたりしたんですか?


けっこう言いましたね。こういう歌詞なので、隣に誰もいないベッドで女の子が寝てて、雑誌や化粧品といった物が散乱してるところに光が差し込んでるとか。聴く人が考察しやすいイラストにしてほしかったんです。なんでコーヒーカップとか枕がふたつあるの?とか、この空間なの?とか。それで、歌詞を見たとき、「あ、こういうことか」ってつながってほしいなと思ったんです。

―タイポグラフィーを使った歌詞の見せ方もいいですね。


これ、いいですよね。よたばいとくんの映像はそういう系が多くて。そこにも惹かれたところがあったんです。ユアネスのミュージックビデオでは、基本的に小説のように歌詞が置かれてるんですけど。「いつのまにか」では、ヒュヒュヒュッて文字が動きまわって、崩れていったりする。これは、基本的に自由にやってもらった感じですね。

―ミュージックビデオをアニメーションで作るっていうやり方は、最初にも話してくれたとおり、いまネットを中心に活動するユニットに特徴的な手法だと思うんですね。


そうですね。

―で、最近は、そこで人気を博している、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに、YOASOBIみたいなアーティストを聴くリスナーのことを、「夜好性リスナー」と呼ぶじゃないですか。


最近では、そこに夜韻-Yoin-も加わってますよね。

―ええ。神村くんが目指すやり方は、そういうアーティストの手法を取り入れているわけですけど、そのうえで、souzoucityにしかない魅力は何だと思いますか?


中間地点を狙いたいんですよ。たとえば、ユアネスがいるようなバンド界隈と、「夜好性リスナー」が好む二次元界隈をごちゃまぜにしたいんです。今回は、初めましてのクリエイターを中心に一緒にやりましたけど、今後、他のバンドのプレイヤーとやってもいいと思ってるんですね。それはバンドマンだからこそできることだから。そういう立ち位置がいいなと思うんです

―カルチャーをクロスオーバーしていくような存在になれたらと。


そう。こっちの界隈は、こっちの界隈でグループを作って、音楽を進めていく。バンドはバンドで作っていく人が多いけど、それをごちゃまぜにしたら、いまのムーブメントも変わってくると思うんですよ。いまネットカルチャーの主流にいるのは、ボカロPとか歌い手だけど、今後、歌い手とバンドマンのコラボとかも出てくると思うんですよね。たとえば、友だちのバンドマンが、ヨルシカのサポートをしましたっていうのも出てくる。そういうことをやっていきたいんです。

―そういうことを目指す背景には、ジャンルとかカルチャーによって、音楽に隔たりがある現象へのフラストレーションもあったりしますか?


というか......うーん、特に、ひとつのジャンルしか聴かない人に対して、せっかくだったら足を踏み込みたいんですよね。自分はいろいろな人に音楽を届けたいし、かつ、いろいろな人が音楽を聴くきっかけになればいいなと思うので。それだったら、自分で行動を起こしてみて、もし何か変わるなら、おもしろいし、変わらないとしても、たぶん挑戦する意味はあるし。自分にとっては、プラスになることだけなら、やってみようっていう感じですね。

―なるほど。ちなみに、「いつのまにか」はインスト音源も配布して、"自由に歌ってください"というものにしてますね。


それも、これからの音楽シーンに関わってくる話になるんです。バンドの人たちって、インストの音源を公開しないじゃないですか。でも、基本的にネットで活動するユニットは公開するんですね。そうすることによって、歌い手がカバーする。そして、歌い手のリスナーさんが聴いて、また原曲に戻ってくるっていう連鎖が起こるんです。でも、バンドシーンはお客さんが聴いたら終わりで。



―たしかに。


僕は、今後バンドマンがインストを公開するのも主流になってくると思ってます。バンドの曲も「歌ってみた」でカバーできる。そのほうがいいと思うんですよ。だから、4月にユアネスで出した「籠の中に鳥」はインストを配布してて。少なからずカバーしてくれる人がいるんです。

―そういう発想は、昔は抱いたんですか?


 「カバーさせてあげればいいのに」っていうのは思ってましたね。僕が音楽をはじめたきっかけはバンドじゃなくて、ニコニコ動画系から入ったこともあって。「歌ってみた」っていうのは、ボカロの曲を歌うものだっていう固定概念は必要ないんじゃないかなって感じてたんです。

―そもそも音楽性自体はかけ離れていませんからね。


そう。だから、バンドとネット音楽っていうくくりが、そもそもおかしいんですよね。

―ちなみに、「いつのまにか」はもうカバーされてます?


いや、残念ながら、いないんですよ。友だちは何人かやってくれたんですけど、YouTubeにあげるまでは至ってなくて。もっと自分からアプローチしないとダメみたいですね。

―そこは、これから実験していく。


そうですね。自分の実力を磨いていくしかないかな。

―話を聞いてると、RPGっぽいですよね、神村くんの考え方って。


ははは、本当に。今度はこっちのルートから攻略していくか、みたいな感じですよね(笑)。

―今後、souzoucityというプロジェクトでは、どういう表現をしていきたいですか?


次にどんなものがくるのか、まったく想像できない展開を、ジャンルに囚われずにやっていきたいです。やっぱり誰がボーカルになるかがわからないって、おもしろいじゃないですか。

―ええ、男性ボーカルでやる可能性もありますよね?


もちろんあります。男性女性のコラボっていう合わせ技もできるし、女性ひとりじゃなくて、合唱もありますよね。枠に囚われなければ、いろいろなことができるんですよ。

―Twitterでは、「「いつのまにか」の再生回数が1万人を突破したから、次の曲をつくります」っていう宣言もしてましたよね。なんとなく目標の再生数があったんですか?


いや、ゼロの状態から、どれぐらい広がるかは未知数だったんですけど、意外と聴いてもらえたんですよ。本当は、半年に1回ぐらいでもいいかなって気楽に構えていたんですけど(笑)。しかも、「いつのまにか」を公開したことによって、僕が知らなかったイラストレーターさんとか、プレイヤーさんが、けっこうアプローチしてくれて。

―「ぜひ、一緒に作ってみたいです」っていうような。


そう。今後そういう人たちと一緒にやれそうなので。それも、お楽しみにということで、「次、ヤバくなるよ」っていう予告をしておきたいと思ったんです。

取材・文:秦理絵


RELEASE INFORMATION

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souzoucity「いつのまにか」
2020年7月8日(水)
Format: Digital
Label: FRIENDSHIP.

Track: 1. いつのまにか

視聴はこちら


LINK
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