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2025.09.29
「いつも『今が一番楽しいツアーだな』とか『一番いいアルバムができたな』とか思ってるんですけど、このツアーがマジで一番、今までのツアーで個人的にめちゃめちゃ楽しくできてて。(8月11日の)当日はいろんな心配をしたし、来てくれてありがたいとか色々思ってたんですけど、今日だけの気持ちを言うと、ホントに一本増えて嬉しかったです」

6月28日にスタートした「kanekoayano Hall Tour 2025 "石の糸"」の中盤、8月11日に福岡市民ホール 大ホールで開催されたライブは、台風の影響で直前まで開催が危ぶまれていた。結果的に開場・開演時刻をずらして開催にこぎつけ、今回のツアーの中でも随一と言ってもいい盛り上がりを見せたそうだが、会場に来れなかったお客さんも多かったことを受けて、ツアーファイナルの前に急遽追加公演が決定。9月22日にZepp Fukuokaで行われたライブで全曲の演奏を終えて、カネコアヤノはいつもより少しだけ饒舌に、率直な想いを口にした。
2024年8月3日に日比谷野外音楽堂で開催されたワンマンの最後で、突如「私からお知らせがあるんですけど、バンドになりました」と発表され、「kanekoayano」名義での活動をスタートさせたカネコアヤノ。メンバーであるギターの林宏敏とベースのtakuyaiizukaに、ドラムのSEI NAGAHATAとパーカッションの宮坂遼太郎を迎えた編成でレコーディングが行われたアルバム『石の糸』を今年の4月に発表し、その後はUKツアー、オーストラリアツアー、そして、6月からのホールツアーと、断続的にライブを行なってきた。





ソロからバンドになることによって、プレッシャーや責任は分散されるが、新しい体制でアルバムを完成させるまでには、これまで以上にカネコ自身がアレンジに口を出し、シンガーとしても、ミュージシャンとしても、チャレンジを続けてきた。実際『石の糸』は完成までに長い時間をかけてプリプロが行われているが、レコーディング自体は2週間という短期集中で行われ、その楽曲がライブでどう響くかまでは見えていない部分もあったかもしれない。

しかし、国内外でのライブを繰り返すことで楽曲が成長し、バンドとしてのグルーヴを掴んでいったことによって、「私が引っ張らないといけない」というカネコの気持ちがほぐれ、むしろ解放されていき、それがZepp FukuokaでのMCにも繋がったように思う。ホールツアーの最中の出演となったフジロックでは、ツアーでは最後に演奏されていた「石と蝶」を1曲目に置き、2曲目にライブアンセムである「アーケード」を持ってくるという攻めたセットリストでRED MARQUEEを熱狂の渦に巻き込み、「今年のベストアクト!」と絶賛されたことも記憶に新しい。


ホールツアー中に急遽追加されたライブハウス公演ということもあり、Zepp Fukuokaでのライブもバンドの状態の良さを強く感じさせるものだった。その中でも、今回のツアーの最大の変化はカネコのギタリストとしての覚醒だろう。『石の糸』でもカネコのギターの割合が増えていたのだが、ライブではそれが顕著に表れていて、「さびしくない」のアウトロで林の印象的なフレーズをファズギターでなぞったり、ドープなダブ空間を作り出す「ラッキー」では強烈なフランジャーをかましたりと、多彩なライブアレンジがとても楽しい。ギターヒーロー的な存在感がますます強まる林のプレイももちろん素晴らしいが、以前から使っているSGに加え、新たなメインギターとなった黒のジャガーも用いて、派手にアクションをするカネコの姿は実に新鮮だ。

カネコのアグレッシブなプレイを支えるのは、アンサンブルの土台となり、楽曲の表現する景色の広さに合わせて柔軟に演奏するiizukaや、さまざまな鳴り物でライブの祝祭感に貢献する宮坂の存在だが、さらに凄みを増した歌声を後押しし、バンドの攻撃的な側面を担うのはNAGAHATAのドラムである。現在のメンバーの中では最後(2024年12月)に加わったこともあり、当初は手探りの部分もあったかもしれないが、DMBQの増子真二の紹介でカネコと知り合い、かつてはNUITOや5kaiといったマスロック/ポストハードコア的なバンドにも参加していたというプロフィールが示す、彼のオルタナ性が今回のツアーでは遺憾無く発揮されている。BPMが上がってリズムチェンジがより効果的になった「さよーならあなた」のアウトロで、林の豪快なギターソロのさらに上を行く、手数の多い爆発力のあるプレイを見せ、そこから「WALTZ」のイントロに繋げる中盤の流れは、NAGAHTAの存在がバンドの大きな武器になったことを印象付けていた。

ライブ終盤では、『石の糸』においてはラストの小品的な位置付けだった「水の中」が、ベースのループが引っ張る軽快なサイケナンバーへと生まれ変わり、カネコのギターリフを軸としたクラウトロック風の「太陽を目指してる」で宮坂のパーカッションがトライバルな熱狂を作り出すと、音源以上にパンキッシュかつフリーキーになった「難しい」へと傾れ込み、男性陣の「難しい!」というコーラスの中で、カネコがジャガーでノイズギターをかき鳴らすシーンがツアーのハイライトに。壮大なサウンドスケープを描き出すラスト「石と蝶」のアウトロがNAGAHATAによるドラムの乱打で締め括られるのも、現在のバンドのあり方ををよく表していた。

9月28日に開催された「沖縄 アイム・ユニバース てだこホール 大ホール」でのツアーファイナルの翌日には、ホールツアーからのライブ音源を収録した『LIVE 2025 kanekoayano』が配信されたことからも、現在のバンドの絶好調ぶりが伝わるはずだ。この後もkanekoayanoは息つく暇なく10月にアジアツアーを行い、年内をカネコの単独演奏会で終えると、来年1月15日には日本武道館での単独公演が行われる。kanekoayanoのファーストシーズンの締めくくりとして、重要な1日になるだろう。

文:金子厚武
撮影:Kiyoe Ozawa

kanekoayano「LIVE 2025 kanekoayano」
2025年9月29日(月)
Format:Digital
Label:1994
Track:
1. noise(Live)
2. 日の出(Live)
3. 愛のままを(Live)
4. 僕と夕陽(Live)
5. ごあいさつ(Live)
6. セゾン(Live)
7. さよーならあなた(Live)
8. WALTZ(Live)
9. さびしくない(Live)
10. 朝になって夢からさめて(Live)
11. 祝日(Live)
12. わたしたちへ(Live)
13. ラッキー(Live)
14. やさしい生活(Live)
15. 水の中(Live)
16. 太陽を目指してる(Live)
17. 難しい(Live)
18. 石と蝶(Live)
試聴はこちら

2026年1月15日(木)
日本武道館
時間:open 18:00 / start 19:00
チケット:指定席 8,500円(税込)
※未就学児入場不可 (小学生以上チケット必要)
※お一人様4枚まで申し込み可能
お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション (050-5211-6077)
@kanekoayanoinfo
@kanekoayano_info
オフィシャル通販「カネコ商店」
FRIENDSHIP.

6月28日にスタートした「kanekoayano Hall Tour 2025 "石の糸"」の中盤、8月11日に福岡市民ホール 大ホールで開催されたライブは、台風の影響で直前まで開催が危ぶまれていた。結果的に開場・開演時刻をずらして開催にこぎつけ、今回のツアーの中でも随一と言ってもいい盛り上がりを見せたそうだが、会場に来れなかったお客さんも多かったことを受けて、ツアーファイナルの前に急遽追加公演が決定。9月22日にZepp Fukuokaで行われたライブで全曲の演奏を終えて、カネコアヤノはいつもより少しだけ饒舌に、率直な想いを口にした。
2024年8月3日に日比谷野外音楽堂で開催されたワンマンの最後で、突如「私からお知らせがあるんですけど、バンドになりました」と発表され、「kanekoayano」名義での活動をスタートさせたカネコアヤノ。メンバーであるギターの林宏敏とベースのtakuyaiizukaに、ドラムのSEI NAGAHATAとパーカッションの宮坂遼太郎を迎えた編成でレコーディングが行われたアルバム『石の糸』を今年の4月に発表し、その後はUKツアー、オーストラリアツアー、そして、6月からのホールツアーと、断続的にライブを行なってきた。





ソロからバンドになることによって、プレッシャーや責任は分散されるが、新しい体制でアルバムを完成させるまでには、これまで以上にカネコ自身がアレンジに口を出し、シンガーとしても、ミュージシャンとしても、チャレンジを続けてきた。実際『石の糸』は完成までに長い時間をかけてプリプロが行われているが、レコーディング自体は2週間という短期集中で行われ、その楽曲がライブでどう響くかまでは見えていない部分もあったかもしれない。

しかし、国内外でのライブを繰り返すことで楽曲が成長し、バンドとしてのグルーヴを掴んでいったことによって、「私が引っ張らないといけない」というカネコの気持ちがほぐれ、むしろ解放されていき、それがZepp FukuokaでのMCにも繋がったように思う。ホールツアーの最中の出演となったフジロックでは、ツアーでは最後に演奏されていた「石と蝶」を1曲目に置き、2曲目にライブアンセムである「アーケード」を持ってくるという攻めたセットリストでRED MARQUEEを熱狂の渦に巻き込み、「今年のベストアクト!」と絶賛されたことも記憶に新しい。


ホールツアー中に急遽追加されたライブハウス公演ということもあり、Zepp Fukuokaでのライブもバンドの状態の良さを強く感じさせるものだった。その中でも、今回のツアーの最大の変化はカネコのギタリストとしての覚醒だろう。『石の糸』でもカネコのギターの割合が増えていたのだが、ライブではそれが顕著に表れていて、「さびしくない」のアウトロで林の印象的なフレーズをファズギターでなぞったり、ドープなダブ空間を作り出す「ラッキー」では強烈なフランジャーをかましたりと、多彩なライブアレンジがとても楽しい。ギターヒーロー的な存在感がますます強まる林のプレイももちろん素晴らしいが、以前から使っているSGに加え、新たなメインギターとなった黒のジャガーも用いて、派手にアクションをするカネコの姿は実に新鮮だ。

カネコのアグレッシブなプレイを支えるのは、アンサンブルの土台となり、楽曲の表現する景色の広さに合わせて柔軟に演奏するiizukaや、さまざまな鳴り物でライブの祝祭感に貢献する宮坂の存在だが、さらに凄みを増した歌声を後押しし、バンドの攻撃的な側面を担うのはNAGAHATAのドラムである。現在のメンバーの中では最後(2024年12月)に加わったこともあり、当初は手探りの部分もあったかもしれないが、DMBQの増子真二の紹介でカネコと知り合い、かつてはNUITOや5kaiといったマスロック/ポストハードコア的なバンドにも参加していたというプロフィールが示す、彼のオルタナ性が今回のツアーでは遺憾無く発揮されている。BPMが上がってリズムチェンジがより効果的になった「さよーならあなた」のアウトロで、林の豪快なギターソロのさらに上を行く、手数の多い爆発力のあるプレイを見せ、そこから「WALTZ」のイントロに繋げる中盤の流れは、NAGAHTAの存在がバンドの大きな武器になったことを印象付けていた。

ライブ終盤では、『石の糸』においてはラストの小品的な位置付けだった「水の中」が、ベースのループが引っ張る軽快なサイケナンバーへと生まれ変わり、カネコのギターリフを軸としたクラウトロック風の「太陽を目指してる」で宮坂のパーカッションがトライバルな熱狂を作り出すと、音源以上にパンキッシュかつフリーキーになった「難しい」へと傾れ込み、男性陣の「難しい!」というコーラスの中で、カネコがジャガーでノイズギターをかき鳴らすシーンがツアーのハイライトに。壮大なサウンドスケープを描き出すラスト「石と蝶」のアウトロがNAGAHATAによるドラムの乱打で締め括られるのも、現在のバンドのあり方ををよく表していた。

9月28日に開催された「沖縄 アイム・ユニバース てだこホール 大ホール」でのツアーファイナルの翌日には、ホールツアーからのライブ音源を収録した『LIVE 2025 kanekoayano』が配信されたことからも、現在のバンドの絶好調ぶりが伝わるはずだ。この後もkanekoayanoは息つく暇なく10月にアジアツアーを行い、年内をカネコの単独演奏会で終えると、来年1月15日には日本武道館での単独公演が行われる。kanekoayanoのファーストシーズンの締めくくりとして、重要な1日になるだろう。

文:金子厚武
撮影:Kiyoe Ozawa
RELEASE INFORMATION

kanekoayano「LIVE 2025 kanekoayano」
2025年9月29日(月)
Format:Digital
Label:1994
Track:
1. noise(Live)
2. 日の出(Live)
3. 愛のままを(Live)
4. 僕と夕陽(Live)
5. ごあいさつ(Live)
6. セゾン(Live)
7. さよーならあなた(Live)
8. WALTZ(Live)
9. さびしくない(Live)
10. 朝になって夢からさめて(Live)
11. 祝日(Live)
12. わたしたちへ(Live)
13. ラッキー(Live)
14. やさしい生活(Live)
15. 水の中(Live)
16. 太陽を目指してる(Live)
17. 難しい(Live)
18. 石と蝶(Live)
試聴はこちら
LIVE INFORMATION
kanekoayano 日本武道館 ワンマンショー 2026

2026年1月15日(木)
日本武道館
時間:open 18:00 / start 19:00
チケット:指定席 8,500円(税込)
※未就学児入場不可 (小学生以上チケット必要)
※お一人様4枚まで申し込み可能
お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション (050-5211-6077)
LINK
オフィシャルサイト@kanekoayanoinfo
@kanekoayano_info
オフィシャル通販「カネコ商店」
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