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2025.07.07

Rol3ert、ピアノ弾き語りで示した壮大で深淵な世界。初ライブ「

Rol3ert、ピアノ弾き語りで示した壮大で深淵な世界。初ライブ「"3mpty"」を振り返るオフィシャルライブレポート!

2025年7月4日(金)、Rol3ertの初ライブ「Rol3ert 1st Live "3mpty"」が、代官山 SPACE ODDにて開催された。Rol3ert(ロバート)は、2005年生まれ、現在19歳の日本人のシンガーソングライター。本格的に活動を開始してから、たった約半年。ライブ当日の時点でリリースされている楽曲は、わずか4曲のみ。まだまだ謎のベールに包まれている存在ではあるが、この約半年を通して、少しずつ、しかし確実に認知を拡大しており、当日のライブ会場には、彼に熱い期待を寄せる数多くのファンが集まった。今回は、彼が初めてファンの前でライブパフォーマンスを披露した記念すべき一夜の模様をレポートしていく。

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会場に入って真っ先に目に入ったのが、フロアの前方に設置されたピアノ。通常のライブでは、ステージとフロアの境界線が明確に存在するが、今回のライブは、フロアにおけるピアノの四方を観客が囲む形だ。開演前の会場には、Rol3ertが自ら選曲したプレイリストの楽曲がBGMとして流れている。そのプレイリストは、The 1975の煌びやかなロックナンバーや、joji、d4vd、keshiをはじめとしたベッドルーム・ポップが主軸となっていて、一つひとつの楽曲を通して彼のルーツに迫ることができる時間となった。いよいよ、開幕の時。BGMが止まり、沈黙の中、ピンスポットライトがフロアに設置されたピアノを照らし出し、そこにRol3ertが登場。四方から送られる温かな拍手。次々と飛び交う歓喜の声。
そして、ステージ側のスクリーンに、ラジカセを再生する映像が映し出される。しばし無音。Rol3ertは、呼吸を整えるように天を見つめ、優しいタッチでピアノを奏で始め、そのまま1曲目の「meaning」へ。原曲ではバンドサウンドがフィーチャーされているが、今回のライブはピアノ弾き語りというミニマムな編成のため、彼の歌声の力がよりダイレクトに伝わってくる。しかも、極限まで音数を絞ったアレンジが施されていて、ほとんどアカペラで歌っているような印象さえ受ける。歌詞は英語だが、美麗さと切なさを帯びた歌のメロディラインは、否応もなく日本人の琴線を震わせるもの。何より、セカンドバースの日本語詞〈選べない居場所や形が nightmareに 変わらないのに 意味もない形が時には血を流す〉は、その"意味"がダイレクトに伝わってきて、そのラインに滲む切実さにどうしようもなく心を動かされる。
「ありがとうございます。」と丁寧に感謝を伝え、続けて「sweet tear」へ。1曲目と同じく、極限までドレスダウンされたアレンジで、洗練を重ねた一つひとつのエッシェンシャルな音が、そして、歌声と言葉が、音源以上の気迫をもって胸に響く。展開を重ねるごとに楽曲の世界が壮大に、深淵に広がっていき、ここがライブハウスの中であることをつい忘れてしまいそうになる。言葉にならない想いを余すことなく伝え抜いていく終盤の流麗なフェイクも見事だった。

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「今日は1時間もない短いライブですが、ぜひ最後まで楽しんでいってください。」簡単な挨拶の後に披露されたのは、未発表の新曲「Drowning in the Moment」だった。晴れやかな青空に向けて清廉なフィーリングが広がっていくような爽快な一曲で、壮大なスケールを感じさせながら、同時に、長年の友人がすぐ隣で優しく語りかけてくれるような親しみ深さもある。やがて来るであろう正式リリースへの期待が際限なく高まる。「こんなに人が集まってくれると思ってなくて。」と告げたRol3ertは、続けて、「超嬉しいし、超緊張しています。」と等身大で飾らない表情を見せてくれた。そして、本格的に音楽活動を始めてからの約半年間について、想像以上にいろいろなことがあったと振り返り、そして話題は、自身のブレイクスルーのきっかけの一つとなったカバー曲に。オリジナルとは異なるアレンジを施してカバーすることが好きだと語ったRol3ertは、「drunk text」 (Henry Moodieカバー)を一節歌い上げ、続けて、多くのファンと出会うきっかけとなった「Eenie Meenie」(Sean Kingston/Justin Bieberカバー)を披露する。カバーではあるが、独自のセンスによって換骨奪胎された同曲のパフォーマンスは、完全にRol3ertの表現へと昇華されていて、何より、彼が誇るシンガーとしての色気がめいっぱい伝わってきた。

続けて、未発表の新曲「Say My Name」へ。全体を通して美しいファルセットの響きが際立っていて、まるで、彼のシンガーとしてのスウィートスポットを一つの線で結んで丁寧になぞったような一曲のように感じられる。惚れ惚れするほどに、透徹で、美麗。彼が誇るシンガーとしてのポテンシャルに改めて驚かされたし、この曲についても正式なリリースへの期待が高まるばかり。

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その後、スネアとキック、シェイカーから成るリズムセクションが流れ始め、彼はその上に、ピアノの下のルーパーを駆使しながら即興でピアノのフレーズを重ねていく。次第に紡がれていく豊かなアンサンブル。それと並行して、スクリーンには、2人の人物(Rol3ert&園田あいか)がサイドステップを踏む足元の映像が映し出され始める。そして、「Nerd」へ。Rol3ertは、力強いリズムセクションを推進力にして、高らかに、まっすぐに、伸び伸びとした歌声を響かせていく。いつか実現するであろうバンドセットでのライブが楽しみになるような時間だった。続けて、「HOPE」へ。「meaning」と同じように、セカンドバースの日本語詞がダイレクトに胸を打つ。何より、終盤、ほぼアカペラで、自らを奮い立たせるように〈Let me go〉と力強く歌い上げたシーンは、今回のライブにおける屈指のハイライトだったように思う。

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最後に披露されたのは、未発表の新曲「dreams」。彼いわく、この曲は、「夢から覚めないように願う曲」であるという。夢現の境を彷徨うような幻想的な世界が次第に広がっていき、その中に〈Don't leave me〉という切実な歌が高らかに響く。夢から覚めないように願うようでありながら、同時に、自らの意志で夜明けを迎えに行くような力強さも感じる。アンビバレンスな魅力を内包した、とても素晴らしい名演だった。曲の終わりに、スクリーンにラジカセの再生を止める映像が映し出され、万感の終幕。「今日は、ありがとうございました。」Rol3ertは、丁寧に感謝を告げ、深くお辞儀をした後、会場を去っていった。総じて、彼が思い描く音楽的風景の壮大さ、深淵さに、全編を通して何度も驚かされ、引き込まれるライブだった。カバー曲を含め計8曲のみのライブではあったが、彼が誇るポテンシャルと掲げるビジョンの大きさを示すには、十分すぎる時間だったように思う。今後のさらなる躍進に、期待と注目をし続けていきたい。

文:松本侃士
写真:HIROHISA NAKANO

RELEASE INFORMATION

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Rol3ert「Nerd」
2025年6月25日(水)
Format:Digital
Label:Exciter Records

Track:
1.Nerd

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LIVE INFORMATION

SWEET LOVE SHOWER
8月30日(土)MORNING ACOUSTICステージに出演。
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