SENSA

2024.05.29

ポニーテールスクライム「REBUILD」──やわらかくて大切なものを守る7曲のロックンロール

ポニーテールスクライム「REBUILD」──やわらかくて大切なものを守る7曲のロックンロール

ポニーテールスクライムは、元THE 2のギタリストであり、銀杏BOYZのサポートギターなどとしても知られる加藤綾太(Vo/Gt)がフロントマンの4ピースバンドである。小学生の頃に出会ったという加藤、田中啓介(Gt)、赤坂真之介(Ba)の3人に、高校生の頃に出会ったという河野鈴香(Dr)が加わり、バンドが結成されたのが2009年。2016年に一度無期限活動休止に入ったが、2022年に活動再開。本作『REBUILD』は、2022年にリリースされた復帰後第一作『PNSC FOREVER』に続く、7曲のロックンロールが収録されたミニアルバムとなる。
「永遠」を掲げた前作に対し、「再構築」あるいは「建て直し」などと訳すことのできる言葉をタイトルに掲げた本作。建築物でもそうだが、なぜ建て直すのかといえば、その場所に生きる人々がいるからだろう。ポニーテールスクライムの中にも生き続けているものがある。それは何か?──例えば、本作の中で最も穏やかなサウンドを響かせる7曲目"ありふれた日常から"のこんな歌詞に、私はそれを感じ取る。

電車を待って電車に乗って ご婦人に席を譲って
さりげなく言えた 俺偉いって褒めてあげて
行き先はどうしよう とりあえずあくびが止まらないよ("ありふれた日常から")


繊細さと品性。小さな喜び。退屈と不安と、期待。暇を持て余し、起き抜けに煙草をふかして、のそのそと「腹が減った」と中華屋にしけ込む......そんな、一見だらしないこの曲の主人公は、しかし電車で出会った女性を《ご婦人》と呼ぶ。私には、このさりげない品性に、彼らが大切にしているものが表れている、ような気がしてならない。ポニーテールスクライムは、彼らの中に生き続けるそんな柔らかなものを抱きしめながら、音楽という糸を伝って、同じような繊細さや柔らかさを抱きしめる誰か(あなたかもしれない)に会いに行こうとする。「どうだい? どうしようもないよな。でも、悪くないよな」――そんな感じで。
先行シングルである『天才少年』のジャケットで加藤が着用しているソニック・ユースのTシャツは『REBUILD』に込められたものの一端を表していたと言える。だが、キャリアを経てきたバンドマンが周囲に衝動や熱情を撒き散らすようなアルバムではない。むしろ、この『REBUILD』はなにか大切なものを守ろうとするかのように響いている。その優しさが、本作の魅力である。

文:天野史彬



RELEASE INFORMATION

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ポニーテールスクライム「REBUILD」
2024年5月29日(水)
Format:Digital
Label:FRIENDSHIP.

Track:
1.オキシトシン
2.サーティー
3.天才少年
4.Marching Song
5.DEADMAN
6.BEAUTIFUL FUTURE
7.ありふれた日常から

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LINK
オフィシャルサイト
@ponytailsclimb
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