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2025.02.06
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Nolzy、ODD Foot Worksと紫 今を迎えてお気に入りの居場所を作り上げた初主催イベント『Nolzy pre. FAV SPACE_』
「ODD Foot Works、紫 今さん、僕(Nolzy)、みんな90年代や平成のリバイバルを今の時代にアップデートしてかっこいい音楽を作っているというシンパシーがある」
2月2日、東京・渋谷WWWにて、Nolzyによる自主企画ライブが開催された。『Nolzy pre. FAV SPACE_』と題し、お気に入りの居場所を作るべく、Nolzyが招いたフェイバリットアーティストはODD Foot Worksと紫 今の2組。冒頭の言葉は、Nolzy自身のステージにて語られたものだ。
Nolzy、ODD Foot Works、紫 今の共通点としては、J-POP黄金期のサウンドを今の時代に鳴らそうとしていること――もっと具体的にいえば、90年代R&B、ネオソウル、ヒップホップなどを日本語の歌モノに落とし込み、世界を見渡しても日本以外でどこにもない音楽を生み出していることが挙げられる。さらに、イベント前に実施したNolzyとODD Foot Works・有元(Gt, Vo)の対談で、Nolzyが大事にしている点として「尖っているだけじゃなくて、ポップさがある」「(楽曲の)即効性と耐久度」と語ってくれたが、「オルタナティブ」で「自由」でありながらポップに仕立てた音楽をクリエイトしているのも3組の共通点だと言える。
これは音楽に限ったことではなく何事においても言えることだが、「自由」をかっこよく見せることは、実は規定や様式に則って物事を進めるより遥かに難しい。いきなり「自由」を目指しても、人は自由になれず、特別な新しさも体現できない。まずは規定や様式を知った上で、それを壊したり、そこからはみ出てみたりすることで、ようやく「かっこいい自由」に到達することができる。この日登場した3組は、様々なジャンルの様式を熟知した上で、それに倣わない音楽をクリエイトし、それでいて聴き手を拒否するものではなく大衆を手招くポップスを生み出すことと真摯に向き合っている。
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トップバッターとして登場したODD Foot Worksは、年明けの恒例人気テレビ企画『EIGHT-JAM』の「プロが選ぶ年間マイベスト」でもピックアップされた"この曲"からスタートさせた。榎元(Ba)のベースラインと有元の深い歌声のみから始まり、重ためなビートやスチールパンの音色も重なって、全身にじわじわと迫り詰めるような音像。そこに有元とPecori(Rap)の歌が乗って、ODD Foot Worksがなぜ「音楽」をやるのか、その切実な想いを最初にぶつけられた。そこから"KEANU"、"浪漫飛行機"、"KAMISAMA"、さらにフックのメロディが際立つ未発表曲"No Name Dance"と、Number_iにもリリックを提供しているPecoriのラップ、有元のブルースを感じさせる歌、そして曲ごとに異なるビートを畳み掛けていった。
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"燃えろよ桜"では、キャッチーな美メロとハードロック調のギターソロを行き来し、その後も"Private Future"、"Papillon"といくつものジャンルを横断するミクスチャー・ミュージックでオーディエンスを音の波に乗せて泳がせた。MCではNolzyがODD Foot Worksからの影響を語った対談について言及し、「自分たちの音楽を聴いてくれて、それに感化されて新しい音楽が生まれて、主催のパーティにも呼んでもらって。音楽をやってる身として一番嬉しい音楽の循環です」とPecori。Nolzyが衝撃を受け、ODD Foot Worksから影響を受ける最初のきっかけとなった"JELLY FISH"も披露し、最後はNolzyがデビューアルバム『THE SUPREME REPLAY』にて「90年代R&B、ニュージャックスウィング、メトロポリスサウンドなどを引用し、それらのムード感を解像度高く現代に落とし込む」といったコンセプトを掲げたきっかけのひとつになった"卒業証書"を届けて、互いにリスペクトを贈り合うようにしてステージを締めくくった。
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2番手に登場したのは、紫 今。冒頭から新曲を投下し、渋谷WWWに収まりきらないスケール感のスタジアムロックにフェイクも交えて卓越したボーカル力を見せつけた。"正面"はサビに入る前に「おいで」とオーディエンスを優しく導き、一人ひとりの目を見ながら歌い届けて、この日初めて紫 今を見る人たちとの距離感を一気に縮める。そして"Server Down"、"エーミール"と、平成J-POPのノスタルジックな匂いを醸す楽曲を続けていった。
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"酔い夏"が歌われた数分間は、この場にいた誰もが歌に飲み込まれていたほどで、かつて「歌姫」などと呼ばれた圧倒的な歌唱力を誇る歌謡・J-POPの歌手たちの位置を立派に受け継ぐ存在感を証明。ラストスパートには、クラシックから80年代シティポップ、昭和歌謡、平成J-POPなどへとメドレーのように流れゆく"魔性の女A"、「メロい」という現代の言葉をモチーフにしながらミュージックビデオは平成の要素やオマージュが散りばめられている"メロイズム"と、Nolzyが「音楽オタクっぷりや変態性と、入りやすいサビを作ってバズらせるような曲の見せ方、その両輪がすごい」とリスペクトを向ける2曲を披露。最後は低音を響かせながらオーディエンスを飛び跳ねさせた"凡人様"。「また遊ぼうね」とステージをあとにした紫 今は、カリスマ性と親しみやすさの両方を纏った稀有な輝きを放っていた。
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そんな2組のアクトに負けない気迫を見せつけたのが、Nolzyだ。スピーカーから鳴った1音目からオーディエンスを振り向かせる重厚感が滲み出ていた。そしてステージ前の幕が開くと、Nolzyが敬愛するスガシカオのファンクネスや色気を受け継ぐような雰囲気を纏う"Bittersweet"からスタート。2曲目は有元が「一番好きな曲」と語り、ODD Foot Worksからの影響もある"Outsider"。どこに行ってもアウトサイダーだと感じてしまう自分の心の奥底を表現した歌であるはずなのに、ライブで歌えば、大勢のオーディエンスの手が挙がり、仲間が集まったハッピーな空間ができあがる。音楽は孤独を救い、社会規範からはみ出たアウトサイダーたちの考え方や心の感じ方を肯定してくれるものであることを、Nolzyは音で伝えてくれる。"#それな"ではゴージャスな演奏がますますスケールアップし、その中で社会風刺を込めた歌詞を軽やかに歌い、「アウッ」とシャウトも混ぜる。音楽を愛し、社会に疲れる日もある大人たちへ、極上のエンターテイメントが続く。
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3曲終えたところで、Nolzyからこの日ならではのプレゼントが用意されていた。冒頭の言葉を語ったあと、"FAV SPACE"を披露。その曲の中身とは、紫 今"Server Down"、ODD Foot Works"卒業証書"、宇多田ヒカル"Automatic"などをユーモラスにマッシュアップしたもの。最後には自身の"Bittersweet"もサラッと加える。巧みにつなげられたその1曲には、思わず笑みがこぼれた。
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イケない恋を描いた90年代J-POPバラードを彷彿とさせるも、壮大な音像の下敷きとなっているトラックはやはりちょっと歪である"不純"でも、Nolzyらしいユニークネスを見せる。そして"<広告>※5秒後に報酬を獲得"に乗せてメンバー紹介を挟み、"luv u"、"自演奴"と、アルバムの流れと同様に後半はロック色強めのヘヴィな世界へと進んでいった。
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「Nolzyがライブを始めたのは去年で、このイベントを企画したタイミングはまだ人間関係に恐怖を覚えていた。でもこの1年間、たくさんライブをして、今日これだけの人と一緒に『最高だな』って思える音楽を共有できる空間を感じられたことで、恐怖で満ちていた日常が愛に変わった気がします」
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そう素直な気持ちを語ってから歌ったのは、"キスミー"。「みんなにとっても音楽が、日常にはびこる恐怖を愛に変えて、明日に向かっていく活力になってほしい」という祈りも添えた。そして、アンコールではリリース日も決まってない新曲"Romantic Dancer"を初披露。この楽曲も、普遍的なメロディとノスタルジックさも感じさせるアレンジに、Nolzyが信じる音楽の力を言葉にして乗せていた。
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J-POP黄金期のムードを今の時代に再現しようとする姿勢は、サウンドの追求のみならず、「生活を彩るもの」や「心の拠り所」としての音楽の力を今一度蘇らせることでもあるのだと思った。もしくは、効率性や解像度を上げるばかりではなく、わからないことやめんどくさいことを愛でる余裕を、音楽のコミュニケーションを通して人々の心に取り戻してくれるものだとも言えるだろう。この3組は、これからの世の中においてますます重要になってくるはずだ。
文:矢島由佳子
撮影:林直幸
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Nolzy「THE SUPREME REPLAY」
2024年11月27日(水)
Format:Digital
Track:
1.Bittersweet
2.Throwback (slowjam)
3.#それな(MBSドラマイズム「佐原先生と土岐くん」エンディング主題歌)
4.キスミー(テレビ大阪系ドラマ「買われた男」エンディング主題歌)
5.Outsider
6.<広告> ※5秒後に報酬を獲得
7.luv U
8.Scar
9.Closet Lovers
10.自演奴
11.Virtual Drugs (fxxkin' search)
12.匿名奇謀(映画「BLOODY ESCAPE -地獄の迷走劇-」主題歌)
試聴はこちら
@nolzy_tweet
@nolzy_nostalgram
ODD Foot Works オフィシャルサイト
@oddfootworks
@oddfootworks
@oddfootworks
紫 今 オフィシャルサイト
@MulasakiIma
@mulasakiima
2月2日、東京・渋谷WWWにて、Nolzyによる自主企画ライブが開催された。『Nolzy pre. FAV SPACE_』と題し、お気に入りの居場所を作るべく、Nolzyが招いたフェイバリットアーティストはODD Foot Worksと紫 今の2組。冒頭の言葉は、Nolzy自身のステージにて語られたものだ。
Nolzy、ODD Foot Works、紫 今の共通点としては、J-POP黄金期のサウンドを今の時代に鳴らそうとしていること――もっと具体的にいえば、90年代R&B、ネオソウル、ヒップホップなどを日本語の歌モノに落とし込み、世界を見渡しても日本以外でどこにもない音楽を生み出していることが挙げられる。さらに、イベント前に実施したNolzyとODD Foot Works・有元(Gt, Vo)の対談で、Nolzyが大事にしている点として「尖っているだけじゃなくて、ポップさがある」「(楽曲の)即効性と耐久度」と語ってくれたが、「オルタナティブ」で「自由」でありながらポップに仕立てた音楽をクリエイトしているのも3組の共通点だと言える。
これは音楽に限ったことではなく何事においても言えることだが、「自由」をかっこよく見せることは、実は規定や様式に則って物事を進めるより遥かに難しい。いきなり「自由」を目指しても、人は自由になれず、特別な新しさも体現できない。まずは規定や様式を知った上で、それを壊したり、そこからはみ出てみたりすることで、ようやく「かっこいい自由」に到達することができる。この日登場した3組は、様々なジャンルの様式を熟知した上で、それに倣わない音楽をクリエイトし、それでいて聴き手を拒否するものではなく大衆を手招くポップスを生み出すことと真摯に向き合っている。
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トップバッターとして登場したODD Foot Worksは、年明けの恒例人気テレビ企画『EIGHT-JAM』の「プロが選ぶ年間マイベスト」でもピックアップされた"この曲"からスタートさせた。榎元(Ba)のベースラインと有元の深い歌声のみから始まり、重ためなビートやスチールパンの音色も重なって、全身にじわじわと迫り詰めるような音像。そこに有元とPecori(Rap)の歌が乗って、ODD Foot Worksがなぜ「音楽」をやるのか、その切実な想いを最初にぶつけられた。そこから"KEANU"、"浪漫飛行機"、"KAMISAMA"、さらにフックのメロディが際立つ未発表曲"No Name Dance"と、Number_iにもリリックを提供しているPecoriのラップ、有元のブルースを感じさせる歌、そして曲ごとに異なるビートを畳み掛けていった。
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文:矢島由佳子
撮影:林直幸
RELEASE INFORMATION
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Nolzy「THE SUPREME REPLAY」
2024年11月27日(水)
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