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2024.12.12

壺坂恵と宮本菜津子のツインボーカルバンドULTRA、 "チャーミング"な爆音を奏でた東京初ワンマンライブ

壺坂恵と宮本菜津子のツインボーカルバンドULTRA、 "チャーミング"な爆音を奏でた東京初ワンマンライブ

ULTRAが東京での初ワンマンライブを2024年12月8日(日)下北沢THREEにて開催。1stアルバム『到底及ばない』を中心に、新曲も披露して詰めかけた観客を圧倒するライブを見せた。

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ULTRAは、壺坂恵(Vo.G/acd.、ex.ecosystem)、宮本菜津子(Vo.Gt/MASS OF THE FERMENTING DREGS)、栁本修平(Ba/WOMAN)、杉本昂(Dr/TheSpringSummer, Liaroid Cinema)によるオルタナティブロックバンド。2020年11月に結成以来、壺坂と宮本のツインボーカルを武器に活動を続けてきた。初のワンマンライブとなる今回は、1stアルバム『到底及ばない』のLPでのリリースを記念して行われたもの。日曜日の昼から下北沢の地下に多くの人が蠢いて異様な熱気が渦巻いていた。

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弦楽器の音が流れスモークが漂うステージに4人が姿を現すと、大歓声で迎えられた。壺坂が単音を鳴らし深遠な音像が広がるとピタッと音が止まり、宮本がギターをかき鳴らす。オープニングは、アルバムでも1曲目の「flashback」だ。8ビートで突き進む演奏に、2人のボーカルが重なり、興奮を掻き立てる。アルバムの曲順通りに「愛など」へ進むと、重厚なリズム隊に乗せて歌う歌詞〈勇敢だったあのこが 急に泣き出して この世界はもう終わりだって 言いながら死んでった〉が胸に刺さった。「Knight」では、壺坂から宮本へとボーカルがリレーされ、間奏では栁本を挟んで向き合いギターを弾き交信する。杉本は激しくスティックを振り上げて叩きつけるようにリズムを刻む。「Table」では溜めの効いた演奏で、宮本がギターソロでゆっくりとサイケな世界を拡張して、バンドが一丸となり登り詰めていく。小気味良いギターのリフに乗せて始まった「綺麗だね」は、壺坂と宮本がハーモニーからの掛け合い、呟くような歌声がしんしんと降り積もるように胸に染み入る。爆音から始まり音数少なく歌を聴かせるライブ展開に、前半から一気に引き込まれた。

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「こんばんは!ULTRAです!」(壺坂)「(昼なので)こんにちは!だね」(宮本)「あ、ほんまや(笑)普通に昨日、みんな仕事を終えて夜走りで東京に来て。高校生バンドみたいなことしてます、ULTRAです!今日は楽しみにしてきました!よろしくお願いします!」(壺坂)と、リラックスしたMCに大きな拍手が沸き起こる。下北沢THREEに出るのは5年振りという壺坂は、「アナログを出したんですけど、東京に来れてないなということで、初めてワンマンをしてみようと思ったら、こんなに来てくれるとは本当に思ってなかった。ありがとうございます!」と、満員のフロアに向けて感謝を伝えた。

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ライブを再開すると、大きなリズムで疾走する「明晰夢」、ゴリゴリの低音が腰に来る「退屈のせい」で踊らせる。激しい音の中でも、明瞭に聴き取れるボーカルの抜け方が爽快だ。MCでは、「人間はすぐ忘れるから今のうちに」と、12月23日(月)新代田FEVERで行われる鉄火の企画ライブに出演することを告知(鉄火、砂の壁と共演)。宮本が「バンドの取り置きってやってるんだっけ?」と問いかけると、壺坂は「聞いてない。忘れちゃうよね。でも人間って、忘れることがチャーミングじゃん?忘れないとやっていけへんみたいなところがある。だから人間ってすごくチャーミングやなって」と語ると、宮本は「それはある」と呼応。宮本は、先日買ったレコードをお酒の飲んだ帰りに電車に忘れたと思いきや、しっかり机に飾っていたという、"チャーミング人間"なエピソードを披露して和ませた。

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重たいフロアタムからギターリフへと続くアルバム収録曲「泡沫」から、対照的に軽やかなポップソング「秘密」へ。メロディアスで旋律を支えるように規則的な演奏が、終盤で爆発するように炸裂して強烈に耳に残った。ステージが真っ赤な照明で染まる中、宮本がギターをかき鳴らして先導する「heads」へ。マイナーな曲調と割れんばかりの混沌としたサウンドが、じっと立ち尽くしつつ体を揺らすオーディエンスをカオスへと誘う。ここで、新曲「不埒なもの」を初披露。4人のキメから曲に突入して、突っ走る8ビートにエモーショナルな壺坂の歌声が乗り、上昇するメロディが加速度を増して行く。

「ドキドキするよね、新曲って」(壺坂)「ドキドキするよね。バンド何年やってんのかなって」(宮本)「夜走りしてきて...何年やってるんでしょうね、こんなことアホみたいに(笑)。でもそれが、かわいいですよね。人間って、チャーミングですよね(笑)」(壺坂)と、本日のキーワード"チャーミング"を連呼した。

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「あとはババババーンっとやって、帰ります!ありがとうございました!」との壺坂のひと言で、フィードバックから「door」へ。はみ出さんばかりの爆音を鳴らしながら、出だしからツインボーカルを聴かせるバンドの魅力が凝縮された1曲だ。「ありがとうございました!ラストー!」壺坂がそう叫ぶと、宮本がすぐさまイントロのギターを弾き出して、どっと歓声が起こったのは、「INU」。宮本が弾く中毒性のあるギターリフが延々と続き、一度ブレイクすると、ためを作って再度演奏へ。壺坂が声を張り上げて、オーディエンスはステージに向かって腕を振り上げる。4人は中央で向かい合い、髪の毛を振り乱しながら音をぶつけ合い、場内は興奮の坩堝と化した。ステージを去った4人に、しばしアンコールを求める拍手が起こったものの、スタッフからアンコールがない旨が告げられて終演。轟音ノイズの余韻を感じながら会場を出る人々の表情は、一様に満足そうに紅潮していた。

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文:岡本貴之
撮影:waka iwamoto

RELEASE INFORMATION

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ULTRA「到底及ばない」
2024年4月17日(水)
Label:FLAKE SOUNDS
Format:LP
価格:¥3,600(税抜)/¥3,960(税込)
品番:FLAKES-276

Track:
1.flashback
2.愛など
3.Knight
4.Table
5.INU
6.泡沫
7.heads
8.door

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LINK
@ultra_band021

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