SENSA

2024.11.22

フリージアン、重ねた日々を引き連れて渋谷CLUB QUATTROワンマンで「過去最高」を更新した夜。

フリージアン、重ねた日々を引き連れて渋谷CLUB QUATTROワンマンで「過去最高」を更新した夜。

フリージアンが、11月16日に渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを開催した。2021年の正月に結成されたフリージアンにとって、そして、それ以前から続いているマエダカズシ(Vo)、MASASHI(Gt)、隆之介(Ba)、たなりょー(Dr)のバンドマン人生において、史上最大キャパの会場でのワンマン。のちにMCで言及された通り、「ラストシーン」「夕暮れとオレンジ」「ムーンパレス」という冒頭3曲は、前身バンド・COSMOSの頃から歌い続けていた曲で、選曲からはこの日に懸ける並々ならぬ想い、重ねた日々を引き連れて、過去最高のフリージアンとしてステージに立つのだという覚悟が感じられた。

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1曲目の「ラストシーン」から、バンドサウンドの前線に立つマエダが、抜群の歌声をフロアの隅々にまで届けている。MASASHI、隆之介、たなりょーは、繊細なバランスから成るアンサンブルを、喜びを溢れさせながら、豪快かつ大胆に鳴らすという妙技で以って楽曲に奥行きをもたらす。気合い十分のマエダが早くも上着を脱いでから歌い始めた「夕暮れとオレンジ」で、〈回る回る回る〉という歌詞に合わせて観客が腕を回し、「ムーンパレス」ではドラムロールに高揚感を掻き立てられた観客が拳をグッと上げた。

241116_1567.jpg彼らのバンド人生から生まれた音楽と、その歌を"俺たちのアンセム"として受け取り、共振するオーディエンスによって、印象的な景色が生まれていく。ここでマエダがフロアを指差して「We are! フリージアン!」と叫び、バンド名と同名の楽曲「フリージアン」へ。ステージにいる4人だけでなく、フリージアンを愛し、この場に集まったあなたもバンドの一員なのだと伝えているようだった。MCに入ると、マエダが「えー!? クアトロですよ!?」と改めて驚く。ライブに出演するも観客が1~2人しかいない時代も経験しているため、今回のライブを発表した時点では「クアトロ=デカい」という印象を持っていたのだそう。その上で「他にもいろいろなイベントがある中で、この日に、この場所に、俺らを観にこれだけの人が集まってくれて嬉しいです。ありがとうございます! みんながそこにいるだけで勇気づけられます。ありがとう!」と観客に感謝を伝えながら、ライブ開催の喜びを噛みしめた。

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次のブロックは先ほどとは逆のアプローチで、今年リリースのEP『歌葬』より、「蒼く染まって」「怪物」「一撃の歌」といった新曲群を連続で演奏した。「蒼く染まって」の冒頭では、月光を思わせるスポットライトに照らされながら、マエダとMASASHIが歌とアルペジオを静かに紡ぐ。やがてバンドイン。堅実なサウンドが青い炎をイメージさせる中、続く「怪物」、「一撃の歌」で感情を解放&大爆発させる流れだ。ステージの上も下も関係なく、声を出したり拳を上げたりしながらの大盛り上がり。その後、バラード「サトラ」によってライブの前半は締め括られた。

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2度目のMCでは、「上手く伝わるか分からないですけど、僕らもあなたたちと同じくらいフリージアンが好きです。だから今日、フリージアンのライブにみんなで集まれて光栄です」(隆之介)、「ずーっとやってたい。楽しすぎて」(MASASHI)、「だってここに俺らのこと嫌いな人いないでしょ? 俺らのことを好きな人がこんなに集まってくれて、嬉しい以外の何物でもないです」(マエダ)と喜び合った。そして「日々最高を更新していくと言ってますけど、口だけじゃなくて達成できて嬉しいです。これからも更新していくために、みなさんの力が必要です。よろしくお願いします!」というマエダの挨拶のあとに演奏されたのは「満願成就の空に」。生きているうちに夢や願いが全て叶うことはないが、だからこそ、その果てしなさが生き続ける理由になる。命は有限であるという前提の下、死生観や"瞬間"に対する意識を歌うフリージアンならではの人生賛歌だ。

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燃える歌、歪むベース&ギター、力強いキックに激しく点滅する照明。バンドでスパークした果てにジャーンと一音を鳴らしたあと、勢いそのまま「宣誓!」に突入する展開が最高だ。その後は「ワンマンライブは普段やらん曲もできて嬉しいです」と「ウィンターランド」を披露し、「空想新星」で特大のシンガロングを巻き起こしたフリージアン。さらに最新曲「青瞬」と、フリージアンの始まりの曲「仰げば尊し」を続けて演奏し、結成時から現在に至るまで貫かれているバンドの芯を示したところで、残すはあと1曲。「はえー! あっという間や。相対性理論を感じてます」と率直な実感を言葉にしたマエダは「最後の曲です!」と告げたあと、以下のように語り始めた。

「この曲はやっぱみんなと歌いたいんすよ。この曲を作った時、俺マジで一人ぼっちだったんです。どっかで一緒に歌ってくれる人がいるんじゃないかと思って、いろいろなライブハウスで大きな声で歌ってきたけど......今日、一番人多いっす。歌ってくれますか!」

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マエダのMCに頷いたり腕を上げたりしていた観客とメンバー4人が「ワン、ツー!」と声を合わせる。そうして本編を締め括る楽曲「悲しみの全てが涙ならば」がスタートした。この日の1曲目「ラストシーン」は、マエダがバイトからの帰り道、歩道橋を泣きながら歩いて歌詞を書いた曲で、その時の情景を思わせる描写とともに〈帰ろう君がいない部屋へ〉と歌われていた。対して「悲しみの全てが涙ならば」では、〈静けさにもたれて過ごす夜の長さを僕はまだ覚えてる/あの日貴方と過ごした夜の短さを僕はまだ覚えてる〉と歌われている。きっと楽しいことだけでなく、苦しいこともあったであろうバンド人生。彼らが孤独な夜に耐えられたのは、今日のような"短い夜"に想いを馳せ、その時が来るまで頑張ろうと思えていたからだろう。その気持ちはきっとそれぞれに生活を送るオーディエンスも一緒。この日メンバーと観客は、自分たちの好きな音楽を、同じく好きでいる人たちと一緒に歌える喜びを全身で謳歌していた。生きていれば、眠れない夜はまた訪れるだろう。しかし今夜の温かい記憶が私たちを明日へと繋いでくれるはずだ。

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アンコールを求める拍手に呼ばれたメンバーは、フロア上手に設けられたサブステージに登場。「海から」「ノンアルコール」「お願いダーリン」をアコースティック編成で演奏した。「お願いダーリン」はマエダがCOSMOSより前に組んでいたバンド・逢マイミーマインズの時代から歌っている曲で、当時やっていた落ちサビでのコール&レスポンスを再現する一幕も。あの頃から自分の作った歌を歌ってもらえることに喜びを感じていたのだと語り、今この瞬間の喜びを噛み締めていたマエダは、嬉しくてしょうがなかったのか、コール&レスポンスを3回もやっていた。ライブはダブルアンコールまで続き、「イエスタデイワンスモア」で終了。マエダが繰り返し叫んでいた「We are フリージアン!」のフレーズは、終演後、笑顔で帰路に着く観客の心の中でこだましていたことだろう。

文:蜂須賀ちなみ
撮影:きるけ。

RELEASE INFORMATION

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フリージアン「歌葬」
2024年9月11日(水)
Format: Digital
Label: フリージアン CD価格:¥1,818(税抜き)

Track:
1.夕暮れとオレンジ
2.青瞬
3.怪物
4.蒼く染まって
5.一撃の歌
6.海から
7.月に咲く
8.お願いダーリン

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