SENSA

2024.08.15

カネコアヤノからkanekoayanoへ。バンドになる必然性を強く感じさせた日比谷野音ワンマンショー

カネコアヤノからkanekoayanoへ。バンドになる必然性を強く感じさせた日比谷野音ワンマンショー

「私からお知らせがあるんですけど、バンドになりました」

8月3日に日比谷公園大音楽堂で行われた「野音ワンマンショー 2024」の最後の最後、カネコアヤノの突然の言葉に場内は戸惑いにも近いどよめきが広がったが、終演後に改めて、「先ほど発表がありました通り、4人でバンドになりました」というアナウンスがあると、場内は大きな拍手と歓声に包まれた。バンド名の表記は「kanekoayano」。メンバーはこの日ともに演奏したギターの林宏敏、ベースのtakuyaiizuka、ドラムのHIkari Sakashita。突然の発表にはもちろん驚いたが、昨年以降の非常にバンドらしいライブを一度でも目撃している人であれば、納得の展開とも言えるはずだ。

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キーになったのはかつてBOMBORIとGranuleという2つのバンドでともに活動していたこともあるiizukaとSakashitaの2人。2014年に幾何学模様のレーベル「GURUGURU BRAIN」のコンピレーションに参加し、2015年にフジロックの「ROOKIE A GO-GO」に出演したこともあるBOMBORIは、自らを「エクスペリメンタルヘヴィサウンドチーム」と呼称。またGranuleは「轟美重音」を掲げるイベント「leave them all behind」を開催する「Daymare recordings」から2019年にアルバムを発表と、つまりはハードコアシーンを出自に持つリズム隊の参画が、カネコアヤノの「バンド化」を後押ししたのだ。2人はすでにライブだけでなく、今年リリースされた『ラッキー / さびしくない』からレコーディングにも参加。カネコの歌の魅力を決して損なうことなく、以前からあったサイケデリックロック的な側面を強め、よりハードコアに進化した「kanekoayano」は、まさにバンド以外の何者でもない。

それでは突然の発表へと至る野音のライブを振り返ってみよう。アンプとドラムセットが半円状に並べられたステージにメンバーが姿を現すと、前衛にカネコと林、後衛にiizukaとSakashitaといった感じの立ち位置につき、「サマーバケーション」からライブがスタート。夏の野音を意識したであろう、〈最高の思い出作りしよう 夏は苦手だからこそ〉と歌う「サマーバケーション」から、2曲目で早くも「わたしたちへ」が演奏される。前述のようにSakashitaと初めてレコーディングをした曲であり、イントロとアウトロで鳴らされる爆音が現在のモードを象徴していると言っていいはずだ。4人全員が内側を向いて、呼吸を合わせながら演奏するシーンが実にバンドらしく、イントロとアウトロで鳴らされる爆音が現在のモードを象徴していると言っていいはずだ。

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トレモロをかけたギターのループフレーズが耳に残る「ごあいさつ」から「さよーならあなた」は、曲中のテンポチェンジの抑揚の付け方が丁寧で、全員が間の取り方を大事にしていることが伝わってくるし、逆に後半に出てくる長尺のソロでは林が豪快にギターを弾き倒してみせる。「気分」も前半はカネコの抑えた歌い方に合わせてサビでグッと音数を絞り、そこから歌も演奏も徐々に熱を帯びていくと、アウトロから間髪入れずに「タオルケットは穏やかな」のイントロに突入。こうした曲間の繋ぎもかなり練られていて、ライブにおける空間の使い方・時間の使い方に対してかなり意識的になっていることも伝わってくる。

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徐々に日が翳ってくる中、ライブはさらにドープなゾーンへと移行。「ラッキー」ではiizukaの低音のベースを軸としたダブ的な音響を聴かせ、赤い照明がシアトリカルな雰囲気を演出。「こんな日に限って」の後半では轟音がバックライトとともに鳴らされてかなりサイケデリックな空間を作り上げると、そのままシームレスに「カーステレオから」へ。ベースのループが先導するクラウトロック的な展開の中、林がノイジーなギターソロを弾き倒し、さらにSakashitaがハードコアパンクな8ビートで疾走する終盤の展開はかなりカオティックだ。この突き抜けたライブアレンジは間違いなく現在の4人だからこそ可能なものだと言える。

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ここで一度クールダウンして、林がE-bowやリバースディレイでカネコの歌を職人的に彩った「ゆくえ」から、回転する美しい光の中での歌唱が野音の雰囲気とバッチリ合っていた「月明かり」では、カネコがノイズギターを掻き鳴らすシーンも。照明が明るくなり、「やさしい生活」でのギターのアルペジオにかなり歪んだファズベースがカットインすると、ペイヴメント的なオルタナ〜ローファイ感のある「腕の中でしか眠れない猫のように」で場内が再びヒートアップ。「さびしくない」はすでにスタンダードナンバーのような風格で、〈さびしくない さびしくない〉のリフレインに胸が締め付けられ、カネコと林が向き合って演奏するシーンにグッとくる。

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ラスト2曲はお待ちかねのロックナンバー!「恋しい日々」が始まると自然にオーディエンスの手が上がり、合唱が起こり、〈冷たいレモンと炭酸のやつ!〉のシャウトに歓声が起こる。カネコアヤノのライブはオーディエンスも最高で、それぞれが自由にその場を楽しみ、この日はさらに野音の開放的な空気も加わって、本当にいい雰囲気だった。それは基本的にMCもなく、客席を煽ることもせず、飾らずに演奏を続けるカネコの姿が「好きに楽しむから、好きに楽しんで」という何よりのメッセージなっているからで、どうしても画一的になりがちな日本のライブの現場において、この規模感で最も雰囲気のいいライブの一つがカネコアヤノのライブだと思う。ラストは定番曲の「アーケード」が演奏され、大盛り上がりの中でステージが終了した。

こうして濃密な全19曲を終えて、冒頭の「バンドになりました」という発言へと至ったわけだ。ソロアーティストとしてのキャリアのスタート、サポートメンバーとの惹かれ合い、そして、いくつかの別れを経験しながら、再び前向きな気持ちで変化を選び、新たな仲間と進んでいくことを決めたカネコの姿はとても清々しい。果たしてこの先にはどんな光景が待っているのか、さらなる期待を抱かせるに十分なライブだった。

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文:金子厚武
撮影:木村和平

LIVE INFORMATION

kanekoayano 野音ワンマンショー

9/14(土) 大阪城音楽堂 ※sold out

<公式チケットリセール>
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※必ずしもリセールが成立するとは限りません。予めご了承ください。

受付期間:9/4(水)18:00~9/13(金)23:59

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カネコアヤノ 単独演奏会 2024」
10月14日(月祝) 北海道 - モエレ沼公園 ガラスのピラミッド
open 18:30 / start 19:00
全⾃由席(整理番号付き)
お問い合わせ:WESS (info@wess.co.jp)

10月22日(火) 東京- キリスト品川教会 グローリア・チャペル
open 18:30 / start 19:00
指定席
お問い合わせ:HOT STAFF PROMOTION (050-5211-6077)

11月9日(土) 山梨 - 甲府 桜座
open 17:00 / start 18:00
全⾃由席(整理番号付き)
※ドリンク代500円必須
お問い合わせ:AIR FLAG Inc (03-6276-4968)

11月10日(日) 長野 - 上田映劇
open 17:30 / start 18:00
指定席
※ドリンク代500円必須
お問い合わせ:FOB新潟 (025-229-5000)

11月14日(木) 福岡 - ももちパレス
open 18:00 / start 19:00
指定席
お問い合わせ:キョードー⻄日本 (0570-09-2424)

11月16日(土) 島根 - 興雲閣 ⼤広間
open 16:30 / start 17:00
全⾃由席(整理番号付き)
お問い合わせ:YUMEBANCHI 岡山 (086-231-3531)

11月22日(金) 宮城 - 仙台銀行ホール イズミテイ21 小ホール
open 18:00 / start 19:00
指定席
お問い合わせ:GIP (https://www.gip-web.co.jp/t/info)

12月11日(水) 大阪 - 大阪市中央公会堂
open 17:30 / start 18:30
指定席
お問い合わせ:GREENS (06-6882-1224)

12月19日(水) 神奈川 - 大さん橋ホール
open 18:00 / start 19:00
指定席
お問い合わせ:HOT STAFF PROMOTION (050-5211-6077)

12月20日(金) 神奈川 - 大さん橋ホール
open 18:00 / start 19:00
指定席
お問い合わせ:HOT STAFF PROMOTION (050-5211-6077)

LINK
オフィシャルサイト
@kanekoayanoinfo
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