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2024.08.04
New Release Digest Part 1
みさと:7月29日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全24作品の中からPart-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。まずははじめましてさんからです、Vickies。
金子:Vickiesは今年活動25周年を迎えたシンガーソングライターの櫛引彩香さんが、同じ青森出身のサックス奏者である佐々木亜紀子さんに声をかける形で結成されたバンドです。もともと昭和歌謡みたいな曲を作ってバンドで歌ってみたいという思いがあり、それを実現させるべく組んだバンドだそうで、他のメンバーは昭和歌謡のカバーバンドなどでも演奏している人たちということで。サックスを特徴としてジャズ風味があり、少しレゲエ風味もあったりしつつ、まさに昭和歌謡な雰囲気が漂っている楽曲になっていましたね。
みさと:バンドの良さも感じつつ、シンガーソングライターとしてソロで25年やってきた彼女の個性であったりとか、声の届け方というものも際立っていて、みなさんそれぞれの活動が一つの実を結んだというような、良い位置づけを感じる一曲になっていたと思います。続いて、秀吉。
金子:こちらは今年結成20周年。
みさと:そうか、そんなに経つんですねー。
金子:ちょうど今日と明日、同じく20周年のback numberのツアーに参加していて。
みさと:サポートでしたけど、すごいですね。
金子:もうひと一組、LACCO TOWERという同年代のバンドも出演してるんですけど、みんな群馬で切磋琢磨してきたバンドで。
みさと:そうなんだ!鳥肌立っちゃった!
金子:そんな3組がアニバーサリーのタイミングで集まって、今1日目が終わって深夜なので、多分この曲も歌ったのかなと思うんですけど。20周年を記念してというか、ストレートに愛について歌っていて、秀吉も本当に色んな曲調がありますけど、これはすごくスタンダード感のあるミドルバラードになっていて。秀吉くんの歌は相変わらず素晴らしいし、とてもいい曲でしたね。
みさと:「きみにあいてえ」のタイトル、歌詞が秀吉さんの声に合っていますよね。これを鈴木雅之さんが歌うと少し違う、そうじゃない感があるじゃないですか(笑)。あんなに渋い感じではないっていう。この20周年という、意外ともう中堅に差し掛かるような音楽キャリアはありつつも、少年性というか、あどけなさが声にのっている秀吉さんの声と、「きみにあいてえ」というこの言葉がぴったり、しっくりくるという。誰が何を歌うかがわかっていらっしゃる、そんなバンドでもあります。さあ、そんなPart-1からどうしましょう?
金子:Enfantsの新曲を紹介しようと思います。
みさと:今回EPなのですが、3部作完結の作品となります。
金子:最初のEPが『Q.』、2作目が『E.』、そして今回が『D.』。
みさと:お?
金子:「Q.E.D.」というのは数学用語で、"証明完了"を意味すると。
みさと:そういうことね。
金子:ここまでの3作で"Enfantsとは?"を証明する活動をしてきて、おそらくここから先はさらに活動の規模感を広げていくのではないかと期待させる作品になっているかなと。
みさと:前身バンドがすごく人気のあるバンドだったし、続けてほしいという声も耳にしていたからこそ、この2年ってどういう気持ちでやってたのかなということも含めて、きっとこの証明完了というのは彼なりの"ここまで来た"という、自分自身に対するOKを出したという意味も込めているのかなとか、色んなこと想像できるEP 3部作になっているなというのと、語尾の声のざらつきだったり、歌い始めの息継ぎだったり、ハイトーンが抜ける感じとか、"本当に声が良いよねー"というのと、この歌心と歌唱方法にいつもやられてしまうよなと再確認できるようなEPでもありました。歌と歌声が取りこぼさず届くEPになっていたと思います。
金子:リード曲が「Kid Blue」というタイトルで、さっきの秀吉の話じゃないけど、少年性みたいなものはこの曲のテーマにもなっていて。でもどちらかと言うと、その少年性が失われていくことに対する葛藤みたいなものが描かれています。曲自体は爆発しきらないのが良さであって、この曲ってもっとサビでコードを展開させたり、シンバルを打ち鳴らしたり、ボーカルももっと声を張り上げたり、それこそ"Kid"な曲だったらそうなっていたと思うんだけど、あえてそれをしない、抑えて歌い続ける、でもそこから出てくるエモーションみたいなものが今の彼らの表現という感じがして、それがすごくかっこよかったですね。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。永原真夏さん、おひさしぶりのリリースですね。
金子:ソロ名義では約1年ぶりですかね。今回の曲は"若かりし頃の私の母が作曲、父が作詞した曲"。
みさと:なんて素敵な家族なんでしょうか。
金子:"これから生まれてくる子供たちのために、平和な世界がありますように"という願いを込めて作った曲だそうです。
みさと:素敵。
金子:真夏ちゃん、お父さんがグラフィックデザイナーなんですよ。お母さんの職業は知らなかったけど、でも作曲をしているということはわりと音楽寄りなのかな?
みさと:クリエイティブなご家族ですね。
金子:ですね。ソロ名義としては1年ぶりですけど、トロピカル・ハイサイとかでも活動していたので、パラダイスを表現するこのトロピカルなサウンドは、そういう活動からも引っ張ってきての、この曲の仕上がりなのかなという感じもしました。
みさと:この曲を"小さな頃から聴いていた"とコメントもいただいているので、自分のルーツがここにあったんだなというのが、まさか父と母が作った曲だと気付いたときの心境を聞いてみたいなというのと、彼女のルーツはここにあったのかと言わしめるような一曲だったなと思います。
楽曲から伝わってくる突き抜けた明るさと強さと、彼女の独自性のある個性が際立っている一曲から、どんな幼少期を過ごしてきたのかな、愛情たっぷりに育ったんだなということがすごく見えてくる素晴らしい曲だし、彼女だけの曲じゃなくて、世界中の子供たちが幸せになれるような、そんなハッピーな絵が伝わってくる一曲でもありました。続いて中野ミホさん、今回アルバムリリースです。
金子:ついにアルバムが完成しました。
みさと:おめでとうございます。素晴らしかったです。
金子:アルバムタイトルが『Tree』で、"いつからか自分にとって「木」という存在が頼もしく、優しく、ときに厳しく、とても大切なもののように思えていた。そんな凛と立つ一本の木のように、自分の現在地をまっすぐ記録した作品になりました"とセルフライナーノーツにはあります。
中野ミホさんは北海道出身で、北海道の雄大な自然のイメージ、木々のイメージを感じが楽曲自体にあるなと思ったし、あと3ピースを基本に、必要な音だけで作られている曲という感じがして、それがまさに木の幹のような感じがするというか。まずこれを作ったことによって、ここから色んなアレンジ、楽器を加えたり、枝葉を広げていくことができる。その始まりの作品でもあるという、そんな印象を受けました。
みさと:もともとDrop's として出てきたときに、"この若さでこんな渋い声が出せるんだ"という武器と評価を持っていましたよね。
なんですけど、今回のアルバムを聴いて、高音のロングトーンの表現が本当に素晴らしいなというのを感じて、切なさや憂いのある、そういった曲を可視化できるほどの空気感に変えることができる、すごく表現力と歌唱力をさらに磨かれたんだなというのを感じました。「オートバイ」に関しては、湿度高めな「イージュー★ライダー」みたいな、気持ちの中でいろんな葛藤や憂い、ノスタルジックでセンチメンタルな気持ちはあるけれども、オートバイに二人で乗ったときの風を求めている、でも会話は必要なくてっていう。湿度がありながら風を切っている姿がすごく目に飛び込んでくる。でもやっぱり彼女の声じゃないと表現できないなというのも改めて感じています。すごいアルバムでした。さあ、Part-2から何を紹介しましょう。
金子:majikoの新曲を紹介しようと思います。
みさと:majiko、はじめましてですね。
金子:FRIENDSHIP.からのリリースは初めて。
みさと:またインパクトのある方がリリースしてくれました。
金子:彼女はもうキャリアが10年ぐらいある人なので、音楽好きな人なら結構ご存知な方も多いと思うんですけど、ネットシーン発の女性シンガーで。今はAdoを筆頭に歌い手出身のシンガーがたくさん活躍していて、ReolやEveとかもそうだし、今やJ-POPのシーンを引っ張っていると言ってもいいと思うんですけど、今思うとその先駆けがmajikoだったなという感じがして。
彼女は"歌ってみた"から徐々にキャリアをスタートさせていて、もちろんボカロのシーンとも接点があるし、でももともとバンドもやっていたりして。なので、活動を本格化させてからはバンドシーンとも接点があって、ストレイテナーのホリエさんとかthe band apartの荒井さんが曲提供をしていたりもするし、あと既にアジアでも、中国とか台湾で人気があったりして、いろんな意味で先駆者だったなと今改めて思いますね。
みさと:今回の曲はすごくそのキャリアが物語っている、狂気と勢いと色気というところで。まさにこの表現とアウトプットは、キャリアと経験がないとできないなという素晴らしい一曲になっていたと思います。
金子:今回ホラーショートアニメ『闇芝居』のテーマとして書き下ろした新曲ということで。歌い手出身の人たちの作る曲の一つの傾向として、少しダークというのがあるけど、今回はホラーのアニメに合わせて少しダークな曲になっているので、やっぱりmajikoは先駆者だなと感じる一曲になっていると思います。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんです、弁天ランド。
金子:彼らは2021年の夏に結成された東京を中心に活動しているバンドで、キャッチコピーが"老若男女全年齢対象令和歌謡ロックバンド"。
みさと:長いねー(笑)。
金子:いきなりワルツのリズムになったり、バンドらしいアレンジの面白さもあるんですけど、"全年齢対象"と言ってるだけあって、曲のキャッチーさが非常に際立っていて。歌とメロディーだけ取り出したら、僕はゆずとかにも通じるような、それぐらいのポピュラリティーを感じさせるバンドだなと思いました。
みさと:歌謡曲イコール大正から昭和の流行歌という定義は一つあると思うんですけど、昭和以降は広い意味でJ-POPにくくられているわけじゃないですか。だからどの時代にも歌謡曲はあるということを再認識したバンドだなという。EPを通して聴いていただきたいバンドですね。続いて、sucola。
金子:sucolaもコンスタントにリリースが続いていて、やっぱり"すこらすこ"ですね。
みさと:"すこらすこ"はね、ハッシュタグにしたいんですよ。これ全部平仮名で書きたい。
金子:前のEPのときはSZAの影響みたいな話をしたと思うんですけど、今回の曲ではアマピアノを取り入れていまして。アマピアノというのは南アフリカ発祥のダンスミュージックで、一応ハウスがベースになっているんだけど、もう少しBPM的には遅かったり、色んなジャンルの要素が入っていたりというジャンルで。
Tylaという南アフリカ出身のアーティストがこのジャンルをより世界に広げたんですけど、彼女の楽曲からインスピレーションを受けているということです。個人的にそうやって世界のトレンドをパッと取り入れながら、ちゃんと自分たちのものにして表現しているアーティストって好きで、sucolaは毎回それをクオリティ高く、自分たちの色に染め上げてやっているので、改めて好きだなと思いました。
みさと:"「大切な人と寝る安心感」をテーマに、誘ってる曲だけどラブロマンス!というよりはオキシトシン的な幸せな睡眠を歌いたくて歌詞を書きました"というセルフライナーをいただいています。オキシトシンとかセロトニンとか今流行ってますね。
金子:流行ってるんですか?
みさと:巷ですごく流行ってる。自分の中から何かを生み出す、そして生み出せるものじゃないですか。これってすごいホルモンだなと思うし、それこそ自分の機嫌は自分で取るというような感覚としても一つ頭の片隅に置いておきたいなというような感覚だし、やっぱり大切な人と寝るということに対しても、セクシーになりすぎずに、この夏は穏やかに大人の夏を過ごそうよという。猛暑が続いてるのでね、これぐらいのBPM感とセクシーさと穏やかさというのを一つの曲にできるのは素晴らしいですね。そんなPart-3からはどうしましょう?
金子:JunIzawaの新曲を紹介しようと思います。
みさと:今回は4年にわたるソロ活動を通してリリースされた楽曲を一つにしまして、フルアルバムになりました。おめでとうございます!
金子:コンスタントに楽曲は紹介してきましたけど、ある意味集大成的な作品になっていて。
みさと:色々ありすぎて追いかけられなかったかもしれないというくらい、本当にお忙しい方ですね。
金子:全体を聴いてすごくわかりやすく言うと、ダンスミュージックとの接点がある作品になったなという感じで、LITEとの違いという意味でもそこはわりと明確かなと。あとはコラボレーションが多くて、KEISUKE SAITOさん、TAMIW・Tamiさん、水中スピカ・千愛(Chiaki)さん、楓 幸枝さん、 Cwondoと、色んな人と曲を作ってきたわけですけど、その前で言うと80kidzのALI&さんとJagをやっていたりもするので、やっぱりダンスミュージックと接点を持ちながらやってきたんだなというのが改めて感じられます。今回リード曲になっている「Micronautz」 にしても、2ステップとブレイクビーツを組み合わせた楽曲を作りたいというところから始まっている曲らしく、まさにアルバムを象徴する一曲なんじゃないかなと。
みさと:何層にもなっている音のレイヤーが美しいというのと、一つ一つの音は無機質なんだけど、全部重なると命が宿っているような生命力を感じたんですよね。今アルバムの説明していただきましたけど、"新たな音楽ジャンルと出会ったときのワクワクした気持ちを詰め込んだ"という風に一言いただいていまして、ロールプレイングゲームのパーティーができるような、桃太郎方式というか、一人ずつ仲間が、一つずつ音が集まっていくことで新しい音楽に出会ってきた、JunIzawaさんらしい、JunIzawaさんそのもののアルバムなんだなということを感じさせてもらいました。
金子:これだけコラボレーションが多くて、ダンスミュージックと接点があると、この後ゲストに出てくれるShōtaro Aoyamaさんの『SOCIAL CLUB』とも少し通じるような。
みさと:確かにですね〜。一人でもできるダンスミュージックなのに、誰かと一緒にやるってこれだけの広がりがあるんだなって『SOCIAL CLUB』にも感じたし、JunIzawaさんの今回のアルバムでも見えてきたことかもしれないですね。番組最後までどうぞお楽しみください。
後半はShōtaro Aoyamaがゲスト出演!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武、そしてFRIENDSHIP.のキュレーターの平大助の3人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10