SENSA

2024.07.18

フリージアン、自主企画ツーマンライブ『FREESIAN presents -歌遭

フリージアン、自主企画ツーマンライブ『FREESIAN presents -歌遭 "KASO" Vol.1-』でハンブレッダーズとともに音楽で繋がる熱き夜。

フリージアンが自主企画ツーマンライブ『FREESIAN presents -歌遭 "KASO" Vol.1-』を渋谷WWWXで開催した。新たに始まったライブシリーズの記念すべき初回。ゲストはハンブレッダーズだ。

フリージアンの結成は2021年だが、メンバーのマエダカズシ(Vo)、MASASHI(Gt.Cho)、隆之介(Ba.Cho)、たなりょー(Dr.Cho)にはそれぞれ別のバンドでの活動経験があり、バンドマンとして
10年以上のキャリアを重ねている。2010年代前半、マエダは逢マイミーマインズ、MASASHIと隆之介とたなりょーはTHE BOSSSに所属し、神戸Mersey Beatを拠点に活動していた。やがて逢マイミーマインズは他メンバーの就職などによってライブがなかなかできなくなり、マエダ単独での弾き語りの活動がメインに。そこでたなりょーがマエダに声を掛け、2017年に新たなバンド・COSMOSを結成。そしてCOSMOSもTHE BOSSSも解散したあとの2021年に、MASASHIと隆之介が合流し、フリージアンが結成された。

フリージアンは神戸のバンド、ハンブレッダーズは大阪のバンドということで、マエダが逢マイミーマインズとして活動していた2016年から交流があるという。とはいえ、今や大阪城ホールでワンマンを開催するほど人気のハンブレッダーズを、「仲がいいから」という理由だけで誘うのは互いのためにならない。4人のバンド人生の集大成というべき1stフルアルバム『FREESIAN』を昨年完成させ、「もっとオーバーグラウンドへ」と意欲を燃やしているタイミングだからこそ、友人かつライバルであるハンブレッダーズに声を掛けたのだろう。

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まずは、ハンブレッダーズのライブからスタート。メンバーが息を合わせて最初の一音を鳴らすと、その音に引きつけられて観客が前に押し寄せた。1曲目の「BGMになるなよ」からバンドの鳴らしっぷりは素晴らしく、思わずガッツポーズをする観客も。メンバーの気合いを感じさせる、みずみずしいサウンド。響くシンガロング。歌詞の内容に掛けた、次の曲の予告となるムツムロ アキラ(Vo/Gt)の一言。観客は笑顔で、ワクワクしながら、自分を解放させるようにライブを楽しんでいる。このバンドがアリーナまで行っているという事実に希望を感じているバンドは少なくないだろうし、城ホール公演を観に行ったフリージアンも、仲間を誇りに思うとともに「いつか自分たちも」と刺激を受けたはずだ。フリージアンがハンブレッダーズと真っ向から対バンしようと決めた理由そのもののような光景が、冒頭3曲の時点で広がっている。

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最初のMCでは、ムツムロからフリージアンのメンバーへ「誘ってくれてありがとうございます。やっと、やれましたね」と伝えた。ムツムロにとってフリージアンのメンバーは「友達」で、特にたなりょーとは一緒にユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行くほどの仲だが、一方で彼らが「ハンブレッダーズにも何か返せる状況にならないと対バンはしない」と決めていることを以前から知っていた。だからこそ今この瞬間が嬉しくてしょうがないのだろう。「こんな日のために頑張ってると言っても過言ではない」と噛み締めるムツムロ。そして「でも呼ばれたからには叩き潰すつもりでいるので、最後までよろしくお願いします!」と挨拶した。

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演奏再開は、「出会った頃からずっとやっている曲」と紹介された「口笛を吹くように」から。その後最新アルバム収録曲「DANCING IN THE ROOM」が続き、でらし(Ba/Cho)のベースソロにフロアが大いに沸いた。「フゥ―!」という歓声が行き交うなか、隣のムツムロも拍手を送っている。さらに、夕焼けのような照明に包まれながら、心を込めて鳴らす「ファイナルボーイフレンド」。「中3とか高1くらいの時、友達がいなくて音楽を聴く時間だけが楽しみだった時期がありました。今は"自分の青春時代はこうだった"という曲を作って、"いいね"と言ってくれる友達ができて、こうして渋谷のド真ん中で一緒にライブができている。お互い、続けていきましょうね」とムツムロが語ってからの「DAY DREAM BEAT」。あの頃は〈一緒に帰る友達がいなくてよかったな〉と思っていたが、今はその先で、一緒に笑える友達と対バンができている。ドラマを感じさせる選曲も相まって、バンドのサウンドはさらに輝きを増していった。

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木島(Dr)の鮮やかなフィルをきっかけに始まった「はじめから自由だった」では、ムツムロが歌詞を飛ばしてしまう場面があったが、気持ちが高ぶりまくっているのだから無理もない。そしてハンブレッダーズのライブではムツムロだけではなく、観客も一緒にガンガン歌っているから歌が途切れることはない。バンドとファンが音楽で繋がっていることを感じさせられる瞬間だ。ムツムロが観客に「ありがとう」と伝える一方、ukicaster(Gt)は、メロディアスなフレーズを弾きながら舞台袖にピースしていた。きっとフリージアンのメンバーが観ていたのだろう。

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2曲を残したタイミングでのMCでは、ムツムロが、メジャーデビュー前後くらいから関西の友達との対バンが減り、寂しく思っていたことを明かした。そして「これからまたフリージアンとやる機会が増えてくるのかなと思うと嬉しいです。俺たちとフリージアンで、新しいロックの形を作っていこうと思ってます」と宣言。今回のツーマンは2組の歴史のクライマックスではない。むしろここから始まっていくんだろ?とフリージアンを焚きつけるように、「グー」「ワールドイズマイン」が鳴らされた。拳を掲げる観客たちは、のちに黎明に立ち会った証人となるかもしれない。そんな未来を予感させるラストだった。

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転換を挟み、フリージアンのライブがスタート。1曲目は、6月にリリースしたばかりの「月に咲く」。しかもマエダのアカペラから始まるアレンジだ。ハンブレッダーズが最高のライブをやってくれることは織り込み済み、かつMersey Beat時代から評判だったマエダの歌の力をメンバー自身が信じているからこその真っ向勝負。生身の歌を食らった観客は一瞬で引き込まれていた。

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照明が点滅するなか、ドラムのビートが曲間を繋ぐ。MASASHIが凄まじいフレーズを弾いている間に、マエダがスタンドからマイクを勢いよく抜いて「よろしくお願いしまーーーーす!」と絶叫。「仰げば尊し」「ノンアルコール」では全楽器が鳴りまくり、コーラスの層も分厚い――つまり誰一人一歩も下がらないアンサンブルが、観客の心と体を動かした。MCではマエダが、ハンブレッダーズには逢マイミーマインズの解散ライブに出演してもらい、COSMOS時代にツアーに呼んでもらったと振り返り、「呼んでもらってばっかりとずっと思ってたので、今日呼べて嬉しいです」と語った。その喜びを爆発させるように、長く歌っているラブソング「お願いダーリン」を鳴らしては、「あー、楽しすぎる。楽しすぎるぞ!」と噛み締める。また、「最高を更新していきたいですね。なぜなら僕たちは紅白に出ることが目標だから。先を越されたくないんですよ。そして同じ年に出られたら最高ですね」という望みを「満願成就の空に」に託す。4人&観客がせーのでともに歌ったパンクナンバー「夕暮れとオレンジ」、「今日ここでまた、死ぬまで音楽やり続けることを誓います!」と叫んでからの「宣誓!」と印象的なシーンが続いた。

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たなりょーによる「ユニバに行ったのは個人的に5年ぶりで、5年前もムツムロと一緒でした」「バレてるかもしれないですけど、そこそこ仲がいいんですわ。"ハンブレッダーズ・ザ・ライド"あったら絶対に乗るし」「仲がいいし、音楽も好きです。だからこそお互いの"これが一番カッコいいねん!"を見せつけ合う時間が大事だと思ってて。みなさんも楽しみつつ、見届けてください」というMCを経て、ライブの後半に入る。ムツムロが「めっちゃいい曲っす。フリージアン、この曲にかけた方がいいと思う」と言ってくれた曲だと紹介された「サトラ」は、フリージアン渾身のバラード。ミラーボールの光が流星のように降るなか、マエダのボーカルとバンドのアンサンブルが一体となり、心からの歌を届けた。「空想新星」は、コーラスワークの複雑さや、1~2番の発展形の域を超えたラスサビのメロディが特徴的だ。作曲の段階でエネルギーが溢れまくっているのがフリージアンの曲の特徴だが、そこに生の4人の熱量が乗っかるライブはもっと凄まじい。そして「ずっと手を降ってました。誰か俺を見つけてくれ!って。今日俺らを見つけてくれた人、ありがとう」と伝えてから「一撃の歌」へ。〈夢じゃないから夢と呼ぶのさ〉というフレーズは、盟友との対バンを実現させたことで新しい夢を描けるようになった現在にぴったりだった。

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「ムツムロも歌ってました。ひとりぼっちの大きさは人によって違う、君の気持ちが分かるだなんて言いたくないって。俺もそうっす」とハンブレッダーズ「またね」の歌詞を引用したマエダのMCからは、ハンブレッダーズ愛が伝わってきたが、蓋を開ければカバーもコラボもなしのガチ対バン。両者ともに自分の戦い方を貫いた上で、共鳴し、影響しあった。先の発言に続いたのは「あなたの悲しみがあなたの中にしかないこと、どれだけすごいことか。こんなの、分かち合わなくていいです。ため込んで、今日みたいな日に持ってきてくださいよ。何のために音楽があるんですか!」という言葉で、本編ラストに演奏されたのは「悲しみの全てが涙ならば」。バンドは楽器を掻き鳴らしながら、観客は大きな声で歌いながら、感情をありったけ解放させた。

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マエダのズボンが7曲目の「宣誓!」で破れたこと、袖に捌けた際にムツムロが号泣しながら抱きついてきてくれたことが明かされたアンコールでは、フリージアンが、9月リリースのEPに収録の新曲「怪物」を披露した。「人間にはいいところも悪いところもあって、折り合いをつけたり目を逸らしたりしながら生きていると思うんですよ。でもね、ロックバンドなので歌ってる時は......そういう歌です」とマエダが紹介したこの曲は、曲調はキャッチーだが歌詞では思いきりブチ切れている。吹っ切れ具合が痛快な新曲の存在も、バンドの未来は明るいと感じさせてくれた。

文:蜂須賀ちなみ
撮影:きるけ。

FREESIAN ONEMAN LIVE 2024 -TOKYO-
2024年11月16日(土)
会場:SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 17:15/START 18:00
前売り:¥3,800 当日:¥4,500
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