SENSA

2024.07.17

DURANとULTRA、大阪で熱き共演を果たす──「この日、この場所、この時間」だから感じられる、唯一無二の音楽体験

DURANとULTRA、大阪で熱き共演を果たす──「この日、この場所、この時間」だから感じられる、唯一無二の音楽体験

7月5日(金)、大阪・yogibo HOLY MOUNTAINにて『DURAN The Venomous Rift in Humanity Tour』が行われた。ROOTLESS、Made in Asia、a flood of circleなどのバンドで活動し、稲葉浩志、清春、スガシカオ、小袋成彬、藤井風など、錚々たるアーティストからラブコールを受けてサポートギターをつとめるDURANは、2018年から自身のソロ活動を開始。今年3月にはブルース・アルバム『30 SCRATCHY BACKROAD BLUES』をリリースした。そして今回、現代ロック・シーンの奇才と呼ばれるギタリストが対バンしたのは、関西を拠点に活動するオルタナロックバンド・ULTRA。両者が内包するソリッドで自由でパワフルなサウンドに圧倒されたと同時に、「音で遊んだ」熱い夜となった。

先攻は、元ecosystemでacd.の壺坂恵(Gt.&Vo.)、MASS OF THE FERMENTING DREGSの宮本菜津子(Gt.&Vo.)、WOMANの柳本修平(Ba.&Cho.)、TheSpringSummerの杉本昂(Dr.&Cho.)で結成されたULTRAが登場。

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SEのDiploの「Big Lost」がまだ流れる中、杉本の爆裂ビートが叩き込まれ「愛など」から勢いよくスタートしたライブ。壺坂のボーカルも最初からフルスロットルで、音の塊が一気に会場を覆い尽くす。パワフルで人間的なバンドサウンドに重なる壺坂のハイトーンボーカルが気持ち良く耳を走り抜ける。さらに宮本とのツインボーカルがより熱量を高めた「flashback」、柳本と杉本の鈍くヘヴィなビートに、向き合った宮本と壺坂が唸るギターを絡ませた「Knight」と楽曲を連投し、ヒリヒリした空気を醸成していった。

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MCでは壺坂が「今日はDURANさん、お招きいただきありがとうございまーす。めっちゃ楽しみにして来たな」と関西弁で朗らかに挨拶。「あったかくてよかったねえ」など、お客さんの雰囲気を語りゆるっと和ませつつも、ひとたびライブに戻ると鋭いロックサウンドを繰り出すのだからもう堪らない。セットリストは、昨年11月にリリースされた1stフルアルバム『到底及ばない』に収録の全曲と、シングル曲や未音源化の楽曲で構成された。ライブ前半、一気に熱量を高めると、中盤では壺坂と宮本のボーカルが美しくも叙情的な世界観を作り出した「綺麗だね」、壺坂の疾走感のある弾き語りから3人がジョインした音圧とグルーヴがあまりにカッコ良く、自然と身体が踊らされた「明晰夢」、壺坂の歌声も楽器のようにずっしりと響いた「退屈のせい」を投下して、オルタナロックバンドの矜持と佇まいを見せつけた。

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MCで壺坂は「梅雨梅雨って言ってるけど、夏前って毎年バテません?ライブ来て、でっかい音聴いて、スッキリして帰ってもらえたらなと思って」と述べ「バンドができてるのも、すごく奇跡のようなことで。皆さんと会ってることも奇跡やん?DURANさんを知ってて(ライブに来て)、今日うちらと会って。1日1日を大切に帰ってください。すごいライブが楽しいっ!」と笑顔で想いを口にしてラストスパートへ。どうやっても抗えないような、激しくて重い「INU」「heads」、そしてアルバムを締め括る「door」でフィニッシュした。タイトでストイックなサウンドを全身全霊でぶつけ、4人の存在感とバンド力をこれでもかと提示したULTRAだった。

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そして後攻のDURAN。この日の編成は、MASAE(Ba.)とShiho(Dr.)を迎えた3ピース。フロアには高揚感が漂い、このライブが待ちに待たれていることが伝わってきた。サウンドチェックから板付状態&SEなしで、DURAN(Gt.&Vo.)がギターの轟音を響かせると会場が暗転。ステージはDURANの髪のメッシュと同じグリーン色の照明に染まる。DURANは、事前にセットリストを決めずにライブを行うというスタンス。その場の空気やオーディエンスの反応、気分でやりたい曲をやるのだという。DURANがShihoに近付いて耳打ちをすると、ライブは「Raging Fire」で幕を開けた。低音のギターサウンドとループするベースライン、タイトでダイナミックなドラムビートが融合して、全身を大きくゆさぶっていく。自身もコロコロと表情を変えて豊かに奏でるDURANのギターは、一聴しただけでわかるほどのハイクオリティ。早速超絶テクニックでフロアを湧き立たせると、「もっとこい」と言わんばかりに、手首をクイッと煽り、熱量をさらに引き上げた。

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続いては「Moldy Chips」。ギターリフを弾き始めたDURANをじっと見つめて何の曲か理解し、すぐさまビートを繰り出すShihoとMASAE。お互いの信頼感と対応力があるからこそのプレイスタイルにはただ舌を巻いた。セトリが決まっていないステージのヒリヒリ感とDURANのラフさ、即興性の高さ、音の大きさが、最高にスリリングでワクワクした空間を作り出す。歌うように鳴り響くギターはフロアの歓声がかき消されるほどの爆音ながら、それが気持ち良く、没入させられてしまう。高く掲げられたオーディエンスの拳からは、興奮と熱狂がひしひしと伝わってきた。MCも挟まず、一音も途切れさせることなく、曲をひたすらプレイする3人。「Voodoo In Me」ではDURANがShihoをマイクスタンドの前に導いてシャウトさせる場面もあり、破天荒な展開といたずらっぽいDURANの笑顔に、会場はよりテンションを上げるのだった。

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イントロでMASAEのベースが響き渡った「Put The Gun Down」では、ギタープレイ中にDURANが"チョコレートは明治♪"のフレーズを織り交ぜるお茶目な一面を見せ、オーディエンスは大喜びでステージに喰らいつく。息を吸うようにギターを弾き、時折機材を操りながら、魔法をかけるように変幻自在に音を変化させる。予定調和の展開はDURANのライブにはないわけで、「この時間、この場所、この瞬間」に「DURANだから」こそ生まれる唯一無二のアンサンブルにただ飲み込まれていくだけだ。オーディエンスも、頭を振ったり腕を上げたりジャンプをしたりと、思い思いに自由に楽しんでいた。

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歌モノの「Too Late, You Waste」では、「大阪最高! ULTRA最高! DURAN最高! ULTRA好き!」と叫び「乾杯していいっすか?その間、うちのメンバーの素晴らしい演奏を」と、とビールを取りに袖へ。ステージに残されたMASAEとShihoは、クールかつ静かな情熱を宿したセッションを披露。やがてビールを手にステージに戻ったDURANはフロアに向けて乾杯し、ダイナミックなアンサンブルを展開して、ステージの熱を最高潮に引き上げる。

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深いリバーブとメリハリの効いたビートが痺れた「Real Eyes」を経て、「もうちょっと声ちょうだい。一緒に歌いたい」とクラップを煽った「Sweet Piñata」ではMASAEがムーグを操り、DURANは異空間に連れていかれそうな錯覚に陥るほどのギターソロを披露。涼しい顔ですさまじいテクニックを見せつけた。大騒ぎのフロアは、ひたすらに身体を揺らす。

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そしていよいよラスト2曲。「Love The Way You Move」では、圧倒的なギタープレイと往年のロックスターのようにパワフルでソウルフルな歌声で、空間を完全掌握。ギターとオーディエンスによるコール&レスポンスもバッチリ決まる。MASAEも一緒にステージ前に出て、歪んだベースを弾き倒すと、Shihoのタイトなビートが疾走し、大きな音の塊が誕生。長尺のソロで躍動感と迫力に包まれたフロアは、全員ヘドバンする勢いで身体を折り曲げる。Shihoはシンバルを叩きながらドラムセットから立ち上がり、DURANのマイクでシャウト! 最高の盛り上がりでラストチューンの「Shades Of Night」へ。DURANは「アンコールないんで、次で最後!」と叫ぶと会場の熱はさらにヒートアップし、叩き込まれた爆裂ビートにクラップで呼応する。と、ここでDURANが背中からフロアにダイブ! オーディエンスに支えられたまま、寝転んだ状態でギターをかき鳴らす。気持ち良さそうに人差し指を立てるとステージに降り立ち、全ての力を注ぎ込むように、シャウトしながらファズを多用した爆音を投下した。最後まで予測できない展開にオーディエンスは大興奮。呆気に取られるほどの爆発力と余韻で締め括ると、DURANは「ありがとう。ULTRA最高。DURANも最高!」と言って、笑顔でステージを去っていった。とても濃厚で、中毒性のあるライブ。1時間があっという間だった。

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DURANもULTRAも、生の人間が鳴らすアグレッシブなバンドサウンドで、訪れた人々の心に爪痕を残したに違いない。本当に素晴らしい音楽体験ができた、忘れ難い一夜となった。

文:久保田瑛理
撮影:MASAYA SHIMIZU

LINK
DURANオフィシャルサイト
@ultra_band021

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