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2024.05.19
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:5月13日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全23作品の中からまずはPart-1、8作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。まずはじめましてさんです。よしむらさおりさん。
金子:この方は熊本市出身、鹿児島市在住のシンガーソングライター。過去にはアルバムの売り上げの半分をLGBTQの支援団体に寄付していて、自らもバイセクシャルであることを公表して活動しているという。 FRIENDSHIP.にはOtomodatchiだったり、壱タカシさんだったり、自身の性自認をテーマに表現をしている人も増えていて、こういうメッセージが普通にポップスとして聴かれるようになっているのはすごく良いことだなと改めて思います。
みさと:そうですね。音楽が生業である前にライフワークであることと、自分が自分であることを肯定する一番のツールが音楽だからこそ寄付できると思うんですよね。その背景を知ると、やっぱり彼女の楽曲は純粋に芸術として楽しめるな、という気持ちにさせてくれますし、あと「あたしの起源」というこの一言に、いろんな彼女のルーツを、ちょっとaikoさん節を感じたりとか、彼女のルーツって何なのかなと、いろんな人に知ってほしい楽曲になってますね。
金子:バックグラウンドにはクラシック音楽があるみたいなんですけど、でも今回の曲はピアニストの方が参加されていることもあって、ジャズの要素が強かったりとか、曲によっていろんな幅もありそうですよね。
みさと:女性シンガーといえば、RiE MORRiSさんもリリースがあります。
金子:彼女は毎回コラボレーターのチョイスが絶妙で、これまでもWez Atlasだったり、Nenashiだったり、edblだったり、国内外のいろんな人たちとコラボレーションしてきましたけど、今回はw.a.u.のKota Matsukawaが、最近だとVivaOlaのプロデュースもしていた彼が参加してて、もはや節を感じさせるぐらいのかっこいいトラックメイクで。これは本当にパッと聴いた時点で、「この音知ってる」ってなりましたね。
みさと:セルフライナーノーツでも、RiE MORRiSさん自身が"流れてきた音楽に洗練されたサウンドだなって思うと、Kota Matsukawの作品である確率が高くて、いつかご一緒したいと思ってた"っていう一文が入ってますけど、まさに我々も同じ感覚に。
金子:なりましたね。この曲はベースラインがすごくかっこよくて、VivaOlaがバンドセットでライブをやったときに、w.a.u.のメンバーがサポートをして、Kota Matsukawaはベースで参加してたんですよね。つまり彼はベーシストでもあって、だからこそベースラインのかっこよさがあるんだろうなと思いました。
みさと:今回の作品がバーで駆け引きするような大人の作品ということなんですけど、大人の世界観を演出するのはベースライン重要になってきますよね。ぜひ楽しんでいただきたい1曲です。そんなPart-1からご紹介するのはどうしましょう?
金子:sucolaの新曲を紹介しようと思います。
みさと:今回も素晴らしかったです。
金子:sucolaは去年の11月に中国ツアーを行っていて、国内にとどまらず活動の幅を広げていて、4月にひさしぶりに出した「スキズキ」という曲もよかったんですけど、今回の曲もすごくよくて。ご本人のコメントで「ゆったりとした8ビートに4つのコードのループの曲で、SZAのような奥行きのあるサウンドを目指して徹底的に音を作り込んだ」と書いてあって。
みさと:確かに。
金子:SZAはアメリカでめちゃめちゃ売れているシンガーで、今年のフジロックのヘッドライナーとして出ることも決まってて、その彼女のヒット曲の「Kill Bill」という曲に雰囲気として近いものがあって、めちゃかっこいいサウンドになっていて。アメリカのTikTokだと自分の日常的なライフスタイルにのせて、こういうチルでポップな曲を使うことが流行っていて、再生回数がめっちゃ伸びたりしてるんですけど、日本でもこの感じがこれから来るのかもなっていう気もしていて、この曲はそういう意味でもすごく流行る可能性がありそうな曲だなと思いました。
みさと:オートチューンのかけ方が絶妙だなっていうところで、もともとオキツさんの声もいいんだけど、さらにいじったことによって彼らの他の楽曲も聴いてみたいなと思わせる、楽曲自体、そしてアーティスト自体の底の深さを感じるような1曲になってるなと思いましたし、この曲きっかけに何か開かれる、そんな予感がしますね。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。Giraffe Johnがはじめましてです。
金子:彼らは2024年5月始動ということなので、まさにこの曲で始動ということですね。それぞれのフィールドで活躍しているメンバーが集まった6人組で、「ニューエモーショナルミュージック」を鳴らすと。スカとかレゲエがルーツにある人たちがいるから、そこを基盤にはしつつ、でもそれだけじゃなくて、いろんな音楽性をやっていくとのことです。ボーカルギターの岡田太郎さんはもともと舞台やテレビの音楽を作る仕事をしていたということで、バンドをずっとやってて、経験を積んで裏方になって劇伴を作るという話は結構ある気がするけど、劇伴を作ってた人がバンドをやり始めるってわりと珍しい気がして。
みさと:珍しいですね。
金子:そういう意味でもちょっと気になる存在ですね。
みさと:上に乗るラップのスタイルにはCreepy Nutsを想起させるようなマスっぽさも感じていて、玄人なサウンドなんだけど、そのマスっぽさはテレビであったり、裏方さんとしてどういったものがお茶の間に届くのかを知ってる岡田さんならではなのかなとも感じますし、スカとかレゲエは国籍や世代を問わずにみんなを踊らせる魅力のある音楽なんだなと再認識しました。そして、これがラストのリリースになります、シヴァネコです。
金子:彼らは5月14日に活動終了を発表して、その翌日15日にこの曲を最後の音源としてリリースしたと。この曲自体はもともと普段からライブの最後の曲として演奏してきた曲だそうで、"自分たちの音楽が忘れ去られても、最後のときに映画のエンドロールのように名前が記されていれば意味が生まれる"という想いで演奏されてきた曲ということなんですね。そして、今回過去に脱退したメンバーをもう一回呼び出して、バンド結成時の4人で一発録りをして、最後の曲として発表されるという、かなりストーリーがある1曲ですね。
みさと:シヴァネコを終わらせる決断に1年かかられたと、やっぱりこの4人じゃなかったらシヴァネコが進まなかった、というのも含めて、この曲が最後に流れる映画、本当にいい映画だったんだなって思えるような、そんな楽曲にもなっているし、改めてこの映画、最初から観てみたいと思わせるような、シヴァネコ全体のストーリーを感じる素晴らしい曲ですね。
金子:アートワークもシンプルに4人の写真がポンって。
みさと:いい笑顔ですよね。ぜひぜひ聴いてみてほしいです。さあ、そんなPart-2からどの曲をご紹介しましょう。
金子:Otomodatchiの曲を紹介しようと思います。
みさと:EPリリースです。
金子:新しくバンドを組む人がいれば、バンドを終わらせた人がいれば、1回終わっちゃったけど、またもう一度続けている人たちもいると。CIRRRCLEは終わっちゃったけど、Otomodatchiとして再始動して、このEPがまたできたっていうストーリーもいいし、「Hold On」というタイトルには"夢を手放さないで"というメッセージが込められているということで、このコーラスの"Hold On、Hold On"とリフレインする感じはめちゃめちゃアンセミックだし、すごくいい曲だなって。
みさと:リスタートとか、もう一度っていうワードで表現されることってすごく多いと思うんですけど、"Hold On"というワードで表現することによる差別化というか、彼女たちならではのセンスというものも感じるし、"手放さない"と"また始める"だとちょっとまたニュアンスが変わってくるのかなと思って、彼女たちらしい1曲を楽しんでほしいですね。
金子:Amiideさんご本人のコメントでも、"もともと自分の全てだったCIRRRCLEが解散してしまって、2年ほど鬱状態が続いて、やっと笑えるようになったことを今回の「Hold On」に込めた"というコメントもあって。それだけの想いがこもった1曲だと思うし、3月に東京でライブをやってて、それが何より嬉しかったっていうのをJyodanさんがコメントでも言ってたり、みんなで声を揃えて歌うための1曲という感じもすごくしましたね。
みさと:今年また東京でのライブを予定してるみたいなので、ぜひSNSもチェック続けてほしいです。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。こちらのはじめましてさんはTogoz。
金子:東京出身のロックバンド・The Flying Videotapeのボーカル・福岡トーゴによるソロプロジェクトで、 2023年よりソロ音源の制作を開始し、作詞作曲から録音までを自宅で行い、配信すると。パッと聴いて連想したのはシャムキャッツを解散した後にボーカルの夏目くんが始めたSummer Eyeで、打ち込みと生が混ざっていて、非常に軽やかで、そこまで温度高いわけじゃないんだけど......それこそ微熱くんじゃないけど(笑)、その温度感や軽やかさがすごく印象的でした。
みさと:音の質感、ベットルーム感あるんだけど、使ってる楽器の数と面白い音の使い方、あと陽気なんだけど陽気になりすぎないっていう絶妙な温度感が一人で自宅で録っているように思えなくて、面白い曲作りですね。続いては、Nolatte。
金子:NolatteはArrowArrowの別名義として2023年から始まってるわけですけど、今回初めてNolatteさんご自身がボーカルを取っているということで。
みさと:いいですね、ボーカル。
金子:いいですよね。ArrowArrow時代からトラックメイクに関して実力のある方だっていうのは十分にわかってましたけど、今回はご本人のコメントでも"もはやシンガーソングライター兼トラックメーカー兼ミックス、マスタリングエンジニアのようになりました"と。
みさと:もう何でもできちゃう。
金子:シンガーソングライター的な色は確かに感じられて、こういうポップス路線もいいなと思いましたね。
みさと:いいですよね。ちょっとサンプルも使いつつ、いろんな側面でも楽しめる、その切り取りが楽しいのは、やはりプロデューサー目線なのかなとも思うし、フロントに立つ姿は見たことないけど、なんとなく想像できるような、やっぱり底知れぬ才能を持ってらっしゃる方だなと思う1曲でした。そんなPart-3からご紹介するのはどうしましょう?
金子:Kacoさんの新曲を紹介します。
みさと:素晴らしい作品でした。
金子:これは良い曲でしたね。KacoさんはFRIENDSHIP.からは3月に初めて「Reboot」という曲を出していて、それも良かったんですけど、今回は壮大なバラード、7分超えの1曲になっていて。「Reboot」に引き続き、小西遼くんがサウンドプロデュースをしていて、今回は特にチェロが印象的で、非常にクラシカルでありつつ壮大なバラードで。彼女はFRIENDSHIP.からリリースしたのは今年からなんですけど 既にミュージシャンとしてのキャリアは10年くらいあって、でも10年くらいやってきた中でまた新たな季節を迎えて、「SAIL」というタイトルどおり、自らの帆を掲げて、ここからまた船を漕いでいく、その決心みたいなものも伝わってくる、彼女にとってすごく大事な1曲なんじゃないかなと感じました。
みさと:10年みたいな節目って、"10年やってこれたんだな"っていう感謝や自信の一方で、"10年やってきたのにここなんだ"っていう絶望とか落胆も感じる、そういうタイミングだと思うんですよね。この曲はまさにそういったどちらの気持ちも感じられるというか。Kacoさんの歌声と小西くんが作る音の共通点って、"儚さゆえの希望"というワードを音だけで表現できることだなと思っていて、その絶妙な、機微じゃないですけど、本当に小さな心の動きが壮大な7分に込められていて、素晴らしい1曲でしたね。
金子:Kacoさんの歌声、本当に良くてね。その心境の濃淡みたいなものがこの7分の中で歌声だけでも表されていて、そこにこのアレンジもくっついて、めちゃめちゃいい曲だなと思いました。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10