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2024.05.12
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!YAJICO GIRL・カネコアヤノ・Wuinguinほか全15作品 -2024.5.11-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと: 5月6日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全20作品の中からPart-1、7作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。まずはアルバムリリースになりましたmolphobia、おめでとうございます。
金子:彼はもともとヒップホップがルーツにありつつも、そこから音楽活動を続ける中で幅を広げていき、今回のアルバムではダンスミュージックとかベースミュージックなどへもアプローチしていて、そういった変容であり分岐をテーマにアルバムタイトル『Crossroads』にまとまっていったと。「Gate」という曲はアシッドハウスっぽい雰囲気があったりして、すごくかっこよかったし、あとEmeraldの中野くんがボーカルで参加してる「Night Dance」という曲も入ってて、それもかっこよくて。Emeraldのときとは違う、ある種サンプル的なボーカルで、いつも以上にクールに中野くんが歌ってて、その感じもすごく新鮮だったし、アルバムならではのフィーチャリングも面白いなと思いました。
みさと:全体的に前衛的なんだけどルーツをしっかり感じられる硬派な作品だなっていうところと、ジャケットがわりと手を出してはいけない植物が自分の手には負えないほどどんどん成長していくような、そういったサイケ感とかも感じて。ヒップホップのアンダーグラウンドで培ってきたシーンを見てきた彼だからこそ、というジャケット感もあっていいなって思いました。そして、もう1組気になるところ、ポニーテールスクライム。
金子:ポニーテールスクライムは4月にひさびさの新曲を出してたんですけど、THE 2をやっていた加藤くんがもともと活動してたバンドですね。2016年に活動を休止してたのが2022年に活動を再開し、去年は1年間リリースがなかったんですけど、THE 2がひと段落したということもあってか、また新たに活動を始めていて。彼らの楽曲は本当にライブ感のある、現場で聴きたい、現場で一緒に声をあげたい、手を上げたい......普段僕は手を上げないんだけど。
みさと:上げなさそう(笑)。
金子:でもこういうバンドだったらきっと現場にいたら手を上げたくなるだろうなって。
みさと:見たいなあ、その厚武さん。THE 2と、あと銀杏BOYZのサポートもされているという、加藤さんだからこそ書ける歌詞なのかなって気もしました。圧倒的なフロントマンを間近で見てきた加藤さんで、ご自身のバンドの活動休止という経験もあっての歌詞というところで共感できる人多いんじゃないかなって。
金子:最近"天才"とか、その一方での"凡才"みたいなテーマで楽曲を作ってる人が多い気がして。それはSNSとかでどうしても他の人と比較してしまって、「あの人は超天才。なのに俺は...」みたいになっちゃう人が多いからこそだと思うんだけど、でもそれをテーマにすることによって、"それでも俺はこれでやっていくんだ"という決意みたいなものも感じられる曲になっていて。
みさと:その話の流れで言うと、この曲も外せないかと思います。YAJICO GIRLのニューシングルのタイトルが「平凡」です。
金子:〈平凡な日々を繰り返す〉と歌っているけど、その後に〈諦めたくなるもそうはせず〉と歌っていて、やっぱり"それでもやるんだ"という決意がこの曲からも感じられますね。YAJICO GIRLはここ最近ダンスミュージックのモードがずっと続いていて、今回の曲もその最新の一手という感じでしたけど、今回はギターが全然入ってなくて、ここまで振り切ったサウンドメイクをしてるのは「おっ!」って感じがして。YAJICO GIRLはもともとスタートはギターロック的なバンドだったから、ギターが2本あるということが武器になってたわけですけど、そこから少しずつ音楽性が変わって、ヒップホップやR&Bに接近したり、今はダンスミュージック寄りになったり、その中で2本のギターをどう使うのかっていうのは、常に向き合ってきた課題な気がして。で、押し出すともあれば、今回はあえてというか、少なくとも音源ではガッと下げちゃっていて、思い切ったなって感じがして。あの......ちょっと話ズレますけど、僕もみさとさんもこの前サカナクション観に行ったじゃないですか。
みさと:はい、行ってきましたね、まだ引きずってます(笑)。
金子:サカナクションってエレクトロの時代にダンスミュージックをどう取り入れるかをやってきたバンドじゃないですか。
みさと:先駆けというかね、ポピュラーにしてくれたのはやっぱりサカナクションですよね。
金子:ライブだと途中で弦楽器の人が楽器弾かずにフロアタムを叩き出したりとか、あげくの果てにはみんな楽器を持たないでラップトップで音を鳴らし始めたりとか、そういう変化のタイミングがあったじゃないですか。YAJICO GIRLもいよいよバンドとして、もう一個リモデルというか、そういうタイミングを迎えつつあるのかなっていうのを、この曲を聴いて感じたりしました。
みさと:やっぱり成長していく過程の中で、今まで大切にしていたことから一回離れる瞬間は絶対必要というか、そういった人の方が前に進んでいるイメージがあるので、まさにYAJICO GIRLはそういう分岐にいるのかもしれないし、こんな最高なトラックだったら、この平凡を繰り返したいなって思うぐらい、だから平凡ってただの平凡ではないというか、当たり前ってただの当たり前じゃないというか、当たり前を底上げできる手段ってあるんだぞっていうのを感じられる一曲だったかなと思います。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェスト、Part-2でした。リリースおめでとうございます。おひさしぶりになります、Faustus。
金子:おひさしぶりなので改めて紹介すると、タイ・バンコクを拠点に活動するタイ人と現地在住の日本人で結成されたインストロックバンドです。この成り立ちからしてなかなか珍しいですけど、2020年に出した前作は日本だとparabolica records、LITEの井澤さんのレーベルから出ていて、新曲を出すのはそれ以来なんですけど、去年は初めて日本ツアーも敢行していて、日本のオルタナ系のバンドとも対バンしてて、それを経てのひさびさの新曲と。6分超えでかなりプログレッシブなアレンジになってましたけど、「Lacrimosa」というタイトルは「涙の日」を意味していて、亡くなってしまった親しい人へ向けた別れと感謝、親しい人を亡くした人たちへ向けた共感と祈りを込めた楽曲ということで、その複雑な心情が様々な展開で表された一曲になっている印象でした。
みさと:まさにそうですね。イントロのパイプ・オルガンはすごく神聖な教会の雰囲気が感じられて、人が亡くなったときの厳かな、悲しみだけではない複雑さがしっかり表現されてて、自分に対しての後悔とか怒りとか喪失感を埋めようともがいている様とか、言葉では、頭では整理できないような、その複雑な想いが変則的なリズムで表現されていると思うし、後半は時間が経てばそれらが癒されていくっていうところまで完結してくれている曲で、誰かの癒しになる曲だなと思いながら聴いてました。素晴らしいですね。そしてインスト繋がりで、Tyrell。かっこよかったですね。
金子:2人組でシューゲイザー系のバンドですけど、インストは初めてということですね。こっちも6分超えのなかなか壮大な曲になっていて。
みさと:こちらも構成が面白い感じでしたよね。
金子:相変わらず"サブスクは短い曲の方がいい"という話も一方ではありますけど、こういうインストはしっかりと長尺で、その世界に入り込んで聴くのがよくて、あとさっきの「Lacrimosa」もそうですけど、インストはタイトルからもイメージが広げられる部分があって。この「Whale blows rainbow」、"虹を吹くクジラ"というイメージもすごく印象的で、"いつか見た海と空の境界線が溶け込む瞬間、大らかで大きな生き物のようなサウンドスケープを楽しんでください"というご本人のコメントも、まさにって感じですよね。
みさと:作品については"晴れた夏の日、大きな入道雲を見ながら聴いてほしい"とのことで、これからの季節にもぴったりですね。そんなPart-2からお送りするのはどうしましょう?
金子:カネコアヤノさんの新曲をご紹介しようと思います。
みさと:今回はライブ音源ですね。
金子:新曲というか、過去曲ではあるけどライブ音源です。ブランニューな新曲の方もかなり話題になってますけど、今週からツアーが始まってて、そのタイミングでのライブ音源のリリースで、福岡も5月24日にZepp Fukuokaがあるので、観に行かれる方もいるかなと思うんですけど。そっちはバンド編成なのに対して、こっちはギターの林くんとの2人編成のライブ音源になっていて、ミニマムな編成だからこそ、ボーカルも息遣いまで聴こえるような生感があるし、ギターも特にこの「旅行」は可愛らしい音色だったりして、カネコさんは曲によっては切迫感みたいなところも魅力だけど、この曲はいい意味で可愛らしい部分もすごく出ていて、やっぱりいろんな魅力がある人だなと改めて思いました。
みさと:これ聴いたら5月24日行きたくなっちゃうと思う。膝を付き合わせてすごく近い距離で、あなただけに歌ってくれてるような雰囲気をすごく感じるというか、壮大なバンドセットも豪華だなって思うけど、ミニマムなこのセットだからこそ豪華だなって思えるような、そんな1曲なんじゃないかなと思います。
金子:カネコさんは一人での弾き語りもあるし、バンドセットもあるし、こういう2人編成もあったりとか、アウトプットが多彩ですよね。
みさと:それによって同じ曲が違って聴こえるアレンジ力も素晴らしいですよね。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェスト、Part-3でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんがいらっしゃいます、FLANKRE。
金子:キーボーディストの茅根信一郎のソロプロジェクトということで、FRIENDSHIP.で言うと井上杜和さんのバンドでも弾いているそうです。非常にスムースな、メロウな、ソウルバラードのいい曲になっていて、例えばTENDREみたいに、職人的に音源を作ることもできるし、ポップスのミュージシャンとしても活躍できるような未来も想像できる、この先が楽しみになる1曲だなと思いました。
みさと:相談ごとをしたくなる、仲のいい男友達みたいな声してません?誰の隣にもいるような素朴さとちょっとだけ少年性もあって、でも真剣に悩みを聞いてくれそうなすっごくいい友達、いいやつみたいな声をしてて、その寄り添う感じというか、当たり前の中に溶け込むソウルバラードを歌うからこそのシンプルでスムースな感じに声も合ってるなーって思いながら聴いてました。
金子:FLANKREというこの名前がどこから来てるか正確には分からないけど、"フランク"みたいな、"話しやすい"みたいな、そういう雰囲気がこの名前からしてあるのかも。
みさと:どんな由来なんでしょうね?そして微熱くん、アルバムでございます。
金子:ついに完成しましたね。2022年に「クチサキオンナ」がリリースされて、そこからの曲も全部入ったアルバムということで、ちょっと前にも話した気がするけど、この平熱感プラスアルファの微熱感、『37.2℃』というタイトルからして、まさに彼の"らしさ"を表していますよね。今回の「魔法使いの旅」という曲に関しては、シンセがすごく印象的で、もともと幼少期にサカナクションの影響を受けたっていうことをご本人が公言していますけど、そのルーツを感じさせる1曲で。ただやっぱりこの平熱感というか微熱感、サカナクションほど上げてはこない、この温度感、『37.2℃』感を保っているのがやっぱり微熱くんらしさだなって。ルーツ色が濃い一曲だからこそ、微熱くんらしさをより感じられる側面もある気がしました。
みさと: BPMを落とした、音数少なめサカナクション的なニュアンスもありますけど、だけど34℃とか、生きるか死ぬかまでは落とさない、絶妙な温度感っていうのはやっぱり彼のオリジナリティなんだなってすごく感じますよね。さあ、そんなPart-3からご紹介するのは?
金子:Wuinguinの新曲をご紹介しようと思います。
みさと:もうね、私も大好きなんですよ。これはもう高熱出ちゃう。
金子:平熱でも微熱でもなく高熱がね。
みさと:本当にいい曲でしたね。
金子:約1年ぶりぐらいの新曲で、FRIENDSHIP.にはカネコアヤノさんも含めていいシンガーソングライターがたくさんいますけど、やっぱりWuinguinも欠かせないですね。今回の曲はロックバラードがテーマに掲げられていて、ドラマーと一緒に録音をしていて。これまではどちらかというと宅録感のある曲、ベッドルーム感のある曲が多かったけど、今回はあえてレコーディングスタジオではなくリハーサルスタジオにドラムや録音機材を持ち込んで録音をしていると。だからこその生感がすごく出ていて、面白かったのが資料にアレンジとかミックス・マスタリングの際のリファレンス曲が書いてあるんですけど、全部ライブ音源なんですよね。
みさと:全部(Live)って書いてあるもんね。
金子:この曲自体はちゃんとレコーディングをして、音を重ねたりもしてはいるんだけど、でもこの生感、この熱量みたいなものが何よりも核にあって、それが音像を通してすごく伝わるものになっていて、めちゃめちゃいい曲でしたね。
みさと:いい曲でしたねー。その生感っていう意味では1分半あたりから一気に気持ちが爆発するじゃないですか。あの歌い上げのところとかまさにスタジアム感というか、広さをすごく感じましたし、歌詞においての作家性、シンガーとしての歌唱力、声、感情が揺さぶられる音作り、どれをとっても素晴らしいなっていうところと、人懐っこい性格も私は好きですし、この曲は現代を生きる私たちの叫びであり、彼女はその代弁者なんだなって感じる、胸が熱くなる歌詞の世界観でした。
金子:東京に出てきて、葛藤もありながらどんな曲を作っていくかを考え続けた、この1年はそういう1年だったのかなっていう気もしますけど、だからこその爆発力をめちゃめちゃ感じる曲でしたよね。
後半は6年ぶりのアルバム『Spirit』をリリースしたベランダがゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10