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2024.04.14
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:4月8日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全25作品の中からPart-1をご紹介しました。リリースおめでとうございます。今週のはじめましてさんは面白いアーティスト名をつけてらっしゃる方が多くてですね、まずは"地球から2ミリ浮いてる人たち"です。
金子:彼女たちは2020年の7月に京都で結成されていて、現在作詞作曲を手掛けるボーカルの中野由季さんとギターのコバタヨシタネさんを中心に、サポートメンバーを加えて活動中。フォーク、カントリータッチな曲調でFRIENDSHIP.的にはカネコアヤノさんとかにもちょっと通じる感じもあるいい曲でしたけど、実は僕、2021年に取材をしたことがあって。そのときにバンド名のことも聞いてるんですけど、由来なんだと思います?
みさと:えー......一瞬浮けるから、歩いてると(笑)。
金子:違うなぁ。「ドラえもん」って言ってピンときます?
みさと:ドラえもん? え? タケコプター?
金子:違うな......ドラえもんの豆知識で、ドラえもんって常に3ミリ浮いてるらしいんですよ。
みさと:え?そうなの?
金子:で、彼女たちの音楽学校の先生で独特な雰囲気の人がいて、その人が"私ってドラえもんみたいに3ミリ浮いてるの"って言ってたらしいんです。でもそうやって周りに左右されないで、ある意味浮いててもちゃんと自分を持ってる、そういう人っていいなと思って、こっちは地球から2ミリだけ浮いてる人に。
みさと:そうか、ドラえもんほどは浮いてないけれども。
金子:そういうエピソードらしくて。
みさと:面白い。"浮いてる"ってそういう意味の浮いてるだったんだなって今教えていただいて、すごく意味のあるアーティスト名でしたね。
金子:きっと「自分たちも周りに左右されないで自分たちのやりたいことをやろう」っていう精神性が表れてるんじゃないですかね。
みさと:そして私が2024年の期待のバンドということでピックアップしたTHE LOCAL PINTSがリリースになりました。良かった、かっこよかった。
金子:その年明けの放送のときも、フェスとかマルシェとか、そういう外でのアクティビティのところにいて欲しいみたいな話をしてくれてたと思うんですけど、まさに春になって、春フェスとかも始まって、という時期にぴったりなリリースだし、あとこれ、ジャケがかわいい。
みさと:かわいかった。
金子:BOSSのコンパクトエフェクターみたいなジャケで、黄色なので多分オーバードライブなんですけど、それがビール柄になっていて、上の方が泡になってて、あれがかわいい。このエフェクター売って欲しい(笑)。
みさと:コンセプトがはっきりしてるから、グッズとかの展開もすごく得意そうですよね。ビールジョッキとかもね、良さそうだし。まさに節が詰まってるなというか、桜が舞って突き抜けた青空に向かってそのビールジョッキで乾杯!みたいな画が容易に浮かんでくる、素晴らしい曲でした。そんなPart-1からどうしましょうか?
金子:工藤さくらさんを紹介しようと思います。
みさと:本当に良い声と世界観をお持ちですよね。
金子:工藤さくらさんは群馬県出身のシンガーソングライターで宅録音楽家。今回のEPの収録曲の「星のことば」に関しては、去年配信でシングルとして出していたんですが、ライブで演奏するにつれて自身の中で見える景色に少し変化があり、今回のEP制作にあたり再度アレンジをしたということです。それによってまさに星空が見える、広がりのある音像になっていて、それにも貢献しているであろう今回の作品のミックス・マスタリングをioniさんが手掛けていると。去年の映画『寄り鯨の声を聴く』のサントラをioniさんが担当していて、その中の曲で工藤さくらさんをボーカルでフィーチャーしてたこともあり、今回の曲のMVをその映画の監督の角洋介さんが作るとか、そんな人と人との繋がりも背景にある感じですね。
みさと:EPについてのセルフライナーが"無数の星の呼吸の中で生きている"という一文から始まるんですけど、そういった小さなものへの尊厳であったり希望みたいなものが詰まっていて、無数の星の中でこの小さな繋がりが大きなアウトプットに繋がっていく、いろんな形の希望を感じ取れるような、そんな作品だったかなと思います。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのはPart-2でした。リリースおめでとうございます。Cruyffとってもかっこよかったですね。
金子:Cruyffが去年出したアルバムは個人的にはベストニューカマーっていう感じだったので、すごく期待しているバンドのひとつで。オルタナティブなロックバンドはたくさん出てきてるんだけど、Cruyffはその一歩先を見てるなという感じがして、今回の曲もその感じがはっきり表れています。バンド・生演奏とクラブミュージック・録音芸術の融合を目指したという作品で、9分弱のロングトリップみたいな曲で、バンド感と録音芸術の感じが確かに混ざっていて。今回共同ミックスにDJでもあるarow、ドラムのレコーディング、ミックスにStudio REIMEIのYusuke Shinmaを迎えていて、ライブにもこの人たちがPAとして参加するようになったりとか、ロックバンドでありながら音響面をより強化しての再始動という作品なんですよね。
みさと:スクラッチ、サンプリング、ノイジーなギター、まあサイケな音楽で、楽器なのか何かの機械音なのか 正直よくわからない音がとにかく新しいフェーズの中で構築されていて、気づいたら9分経ってたっていう。いやー、9分ぜひじっくり聴いていただきたいですね。そしてPart-2には2組、はじめましてさんがいまして、初めてのような初めてじゃないないような、まずは岩方禄郎さんをご紹介しましょう。
金子:Cruyffにはギターでやぎひろみさんが参加してるんですけど、同じNITRODAYのドラマーでもある岩方禄郎くん、FRIENDSHIP.的には最近はÅlborgのメンバーとしても活躍中で、さらには一人で弾き語りも積極的に行っているという中で、初音源が届いたと。この人も本当に色々やってますよね。今回はタイトルが『ナイーブ』で、まさにナイーブな時期に、大切なものを忘れないために作った曲たちということで、曲名も「退屈」だったり、ちょっと内省的な、文字通りナイーブなところが表れていて。NITRODAYもそうだし、今betcover!のサポートもやってますけど、そういう人たちもみんなアレンジの音を削いだら、いい歌を歌う人たちだったりもするから、その感覚が禄郎くんにもあるんだろうなって感じがしましたね。
みさと:19歳まで住んでいた実家の自分の部屋で一発録りしたっていう、その大切なところを切り取った作品なんですけど、この新年度のタイミングでお家を出られた方っていらっしゃると思うので、パーソナルな物語なんだけど、とても共感できる、過去を肯定できるような作品になってるかと思いますので、ぜひ聴いてほしいですね。
金子:ミックスはNITRODAYのベースの松島さんがやってるそうで、NITRODAY自体はちょっとお休み中なんですけど、メンバーはみんなそれぞれ活動してていいですね。
みさと:そしてもう一組のはじめましてさんがOCHA∞ME。
金子:彼女たちは東京拠点に活動するインディロックバンドで、2018年ぐらいから活動はしてるんですけど、FRIENDSHIP.的にはThiiird Placeでもおなじみのスガナミユウさんが参加している繋がりもあって。
みさと:スガナミさんは大所帯が好きです。
金子:ライブハウスもやってるぐらいだから基本的に人が集まってワイワイしてるのが好きなんでしょうね(笑)。OCHA∞MEに関しては7人組で、特徴としてはその7人の中でボーカルが5人いること。その人たちがユニゾンして歌ったりハーモニー聴かせたりっていうところがあって、ある種のアマチュアリズムを感じさせながらも、でもその青さもインディロック的な曲調と合わさってすごく魅力的に響いてくるバンドですね。
みさと:本当ですね。疾走感とかテンポはあるんですけど、駆け抜けてくっていうよりは、風を味わいながら足の裏でしっかり台地を蹴ってる感じというか。〈立ち上がって君は歩く〉っていう歌詞があって、サウンド面からもその通りの映像が見えてくる、そんな1曲になってました。
New Release Digest Part 3
みさと:さてさて、今週最後のはじめましてさんですが、とてもアーティスト名がユニークでございます。"無限にうり坊が出てくる!"。
金子:なんでこの名前なんでしょうね......こっちは由来わからないんだよなあ。
みさと:わかんないか。無限にうり坊が出てくる姿を想像すると笑えて仕方がないです。どこから出てきてるんだろう、みたいな(笑)。しかもソロプロジェクト名で、しずなび崇拝さんがやっていると。"しずなび崇拝"っていうアーティスト名もまたユニークですよね。
金子:彼がやっている玻璃校了っていうバンドの名前もなかなかね。
みさと:なかなかパンチがある。クセのある人が出てきました。
金子:玻璃校了を聴くとポストロック系のバンドで、ソロプロジェクトでもやっぱりその感じはありつつ、ソロは初めてミキシングまで自力で試みたという作品になっていて。正直プロのミキシングと比較しちゃうと、完成度っていう意味では、やっぱりプロの作るものとはちょっと違うと思うんだけど、逆に言うとそれを個性として、ソロでやるからにはより自分の色を出すっていうところに進んでいくと、これから先でよりブラッシュアップされた作品が出てくるんじゃないかなっていう感じがしました。
みさと:初めて聴かせていただいて、アーティスト名から想像する音としては今月のギャップ大賞かなというか、めっちゃ硬派じゃんっていう、サウンドも激しくて、すごくかっこよかった。夕方ってね、情緒が揺れる時間帯、その揺れる気持ちに呼応するようなアンビエント、残響感っていうのがとても表現されていて、すごく硬派なのに......っていう。ぜひこのギャップを味わってほしいです。そしてPablo Haikuはおひさしぶりですね。すごく良い曲でした。
金子:去年の8月のEP以来のリリースということで、弾き語りを基調とした曲になっていて、初期の頃と比べると、どんどん普遍的な表現になっているというか、スタンダード感がどんどん増している印象があります。でも弾き語りで進んでいって、最後に轟音パートが出てくるのもかっこいい。レコーディング・ミックス・マスタリングは折悠太くんとかさとうもかさんなどを手掛ける中村公輔さんが担当しているということで、そのコラボレーションによる音像のかっこよさっていうのも感じられる楽曲になってました。
みさと:"僕たちが今持っているバンドらしさとバンドらしくなさ、その両方を示すことができていると思います"とコメントをいただいているんですが、声にスポットライトが当たっていた前半から、バンドだからこその後半、ラストの泣きのギターから迫っていくエンディングは最高にドラマチックで素晴らしい曲、狙ったところをしっかり捉えて話さない1曲になっているんじゃないかなと思います。さあ、そんなPart-3からご紹介するのはどうしましょう?
金子:McGradyの新曲を紹介しようと思います。
みさと:福岡にはですね、とても大人なバンドがいるんですよね。
金子:福岡の期待のバンドなんですけど、この曲はちょっとエピソードがあって。去年の4月にMcGradyと同じ福岡のsancribというバンドでイベントをやって、この曲はそのときに披露したコラボ曲で、曲ができた経緯としては、sancribのボーカルの大川内さんが"イベントやるなら曲作ろうよ"という感じでサビのメロディを持ってきて、お酒を片手に酔っ払ってライブハウスに陽気でいるその大川内さんをイメージしながら、McGradyのボーカルのソシロさんがサビの歌詞を書き上げ、約1週間ほどで出来上がったと。なんですけど、このイベントの3日後に大川内さんが急に亡くなられるという出来事があったんですよね。当然ショックだったと思うし、じゃあこの曲はどうするんだっていうのも、色々思うところが当然あったと思うんですけど、その出来事から1年が経って、資料にコメントがあるんですけど、"その出来事を乗り越えるのではなく、彼の愛した場所と人、そしてこの楽曲を大切にしていきたいという思い、不揃いでいい、自由でいいというメッセージを明確に届けたいと思うようになりました"ということで、今回1年越しにリリースをすることにしたと。だからね、この曲に対する思いっていうのは相当強いと思うんですけど、あくまでポジティブなメッセージとして届けようということになったと思うから、このメッセージが多くの人に届けばいいなと思いますね。
みさと:きっとすごくパーティーがお好きな方だったんだなとか、お酒の席でどれだけ語り合った場があったんだろうって想像させるような1曲になっていて。〈酩酊はエンドレス〉って歌う飲んだくれソングではあるんですけど、 その飲んだくれの日々の中にすごく愛する日々が詰まっていたんだなっていう、彼が去ってしまったけれども、彼も"この曲を聴きながらみんなでずっとパーティーやってよ"って言うようなキャラクターだったんだろうなって、伝わってくるような1曲になっています。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10