SENSA

2024.03.15

ユアネス、新たな出立。まろやかな気持ちで

ユアネス、新たな出立。まろやかな気持ちで"これから"を刻んだ、 初のZepp DiverCity(TOKYO)ワンマンライブ

2024年3月8日、東京Zepp Divercityにてユアネス「ONE-MAN LIVE 2024 "Life Is Strange"」が開催された。
彼らにとっては昨年4月1日以来となるワンマンライブであり、2024年2月7日にはセカンドミニアルバム『Ⅶ』を発売したなかでのライブとなった。
新作ではこれまでから大きく変化したサウンドを聞かせたなかで、この日のライブがどのようになるのか?ファンの注目度は高かった。

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朝方早くから大粒の雪が降っていた影響で、3月頭とは思えぬ寒さがあったこの日のライブ。新作冒頭を飾るインスト曲「Gemini」が流れるなか、メンバーが登場した。
1曲目に披露したのは、新作『Ⅶ』から「isekai」だ。ロックバンドとしてパンチのあるギターサウンドが引っ張りつつ、クールかつシリアスなムードで観客の心を引き込んでいく。「こんにちは!ユアネスです。最後まで楽しませます」と軽く挨拶し、「Blur」「躍動」と立て続けに披露し、ギターロック然としたサウンドでライブ序盤を盛り上げていった。

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ステージ後方には円形の枠が映し出され、そのなかでサイバー感や近未来風SFらしい映像が流れていく。「躍動」の演奏中、黒川がハンドクラップを求め手を掲げると、待ってましたとばかりに観客はハンドクラップを始める。バンドらしいダイナミックさや力強さが、観客の心を掴んでいる証拠であった。
「皆さん楽しんでますか?...喋りたいこと全部吹っ飛んだ!(笑)それぞれの楽しみ方で楽しんで、しっかり聞いていってください」
事前に考えていたMCの内容が頭からすっかり抜けてしまった黒川が取り繕うように発したこの言葉は、彼本心の言葉として観客に受け取られたのは間違いない。

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このMCのあとに続いたのは「ヘリオトロープ」「日照雨」「凩」の3曲。ミドルテンポの落ち着いた曲から古閑のギターがリードする曲へと移っていく流れなのだが、そこにはバンド4人をサポートするサポートメンバーの姿があった。

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「ヘリオトロープ」「日照雨」ではキーボード担当として鳥山昂がサポートに入ったが、鍵盤の音色が加わることで、よりサウンドに厚みが加わり、センチメンタルな余韻をより引き立てることに成功していた。「ヘリオトロープ」では、ステージ後方にアニメーションMVが流れたことで、本来込められていた傷心のメッセージがありありと受けとめられたはずだ。



この日、黒川は「『Ⅶ』では、"命""時間""人生"について歌っている」と語っていた。ライブ中、ステージ映像には時折時計があらわれていたが、普段通りに針が右回りに動くときもあれば、逆に左回りに動くときもあった。
これは黒川が話したように"時間""人生"をイメージしており、楽曲のイメージやメッセージに合わせて右回りか左回りかが変わっていたようである。
ユアネスは追憶や回想のなかで自身を振り返る言葉を歌い、ドラマを呼び込むような楽曲を生み出してきたが、この日のライブでは実写/アニメーションと映像表現を通して随所にメッセージを込めようとしていたのだ。

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さらに、彼らの挑戦はここだけにとどまらない。中盤からは新たなサポートメンバーとして、サックス・岡勇希とゲストボーカル・RINOをくわえ、総勢7人編成となって次々と楽曲を奏でていった。

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常闇トワ(ホロライブ) に提供した「Present Day」のセルフカバーを皮切りに、サックスを活かしたジャジーなテイストの「人生の時間割」、スラップの効いたベースフレーズが引っ張っていく「ECG」、緩いビートで会場を揺らす「a couple of times」、紫・水色・ピンクのサーチライトがミラーボールを照らしたシティポップライクな「49/51」と、次から次に披露される。これら楽曲たちは、主に新作「Ⅶ」の楽曲である。

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「方向性を変えるわけじゃないけど、今回のライブでは新しいことにチャレンジしています。どうですか?」
黒川はこのようにハッキリと言葉にした通り、"ギターロック"然としたバンドサウンドからは一旦離れ、新たなサウンド/音楽への挑戦を明確に提示することが、この日のライブにおけるひとつのテーマでもあった。
狙い・不安・覚悟が入り混じったライブをみていて、筆者がもっとも素晴らしいと思ったのはボーカル・黒川の歌声である。
音源ではすこしアンニュイなムードやクールな印象を受け取っていたが、ライブでの黒川の歌声は汗臭さや野性味などは無くとも、心の柔いところを繊細かつナイーヴにタッチするような声色を響かせていたのが印象的だった。
この日のライブは、そんな黒川の歌声が中心となるようにバンドサウンドがしっかりとコントロールされ、より十全に彼の歌声を堪能できたように感じた。特に先に述べた5曲では、音源には収められていなかった甘美さをも感じられる瞬間もあった。

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「『Ⅶ』を作る時に色々と考えた結果、なんだか"まろやかな"気持ちになった」
途中のMCでこう話していた黒川。このあとも"まろやか"な声を活かして、センチメンタルな心を柔らかく捉えていく。

「風景の一部 」「籠の中に鳥」「『私の最後の日』」と続く楽曲は、ミドルテンポ〜スローテンポなグルーヴを保ちつつ、黒川の歌声がより一層映える曲だ。力感があまりなくナチュラルにメロディをなぞりつつ、ときにファルセットへ、ときに独白のように歌い、元のまろやかな歌声へと戻っていく。
黒川の歌声がバッチリとハマったパフォーマンスに対し、この日集まった観客も聴き惚れたように拍手が起こっていた。

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本編のラストを飾ったのは、新作『Ⅶ』に収録されている「命の容量」だ。リズムを大きくとるところ/細かくとるところがあり、ギターと鍵盤に加えてストリングスまで詰め込まれた楽曲で、ユアネスのなかでも情報量が多い曲といえる。
サポートメンバーを加えて音数を増やしたり、ストリングスをオケとして使用しても、その分過剰なアレンジメントになってしまい、バンド本来の良さが消えてしまうことがある。だがこの日のユアネスはそんな不安は無用だ。黒川の歌声がドンと構えてしっかりと中心を担ったことで、本来抱えていたドラマティックな質感を丁寧に観客へと届けることに成功していた。
本編を終えてメンバーがステージを後にするとき、この日一番の拍手が巻き起こったのが何よりの証拠だろう。

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アンコールで披露したのは「日々、月を見る」「pop」の2曲。「いろんなことをしようと思っていたなかで、昔の曲をやりたいと思ってこの曲をやります」と言い、曲名を告げた瞬間に会場からは、ワっと声が上がっていた。「日々、月を見る」では鍵盤の音色がバンドアレンジへと変わり、「pop」はギターサウンドのパンチがある響きで会場を盛り上げ、この日のライブをバッチリと締めてみせた。
ステージ前方に並び、一礼する4人。降り注ぐ暖かな拍手は、新たに挑戦を試みようとするユアネスを後押しするものだった。

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文:草野虹
撮影:Hiromichi Sato
ヘアメイク:MADDY

RELEASE INFORMATION

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ユアネス「Ⅶ」
2024年2月7日(水)
Format:Digital、CD
Label:FRIENDSHIP.
YRNS-0021 ¥2,700+(tax)

Track:
1.Gemini
2.isekai
3.ECG
4.a couple of times
5.人生の時間割
6.命の容量
7.Farewell

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ファンコミュニテイ
ユアネス「ハムスター伝説」
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担当:黒川侑司(Vo/Gt)
Wez Atlas、アツキタケトモと週替わりでMCを担当
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毎週水曜 26:00~26:55
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