SENSA

2023.11.25

TENDOUJI、ハットトリックを決めて終幕した「EASY PUNK PARK'23」ファイナル・シリーズ最終日!

TENDOUJI、ハットトリックを決めて終幕した「EASY PUNK PARK'23」ファイナル・シリーズ最終日!

 TENDOUJIが5月から8月まで続けた全国対バンツアー「EASY PUNK PARK'23」。そのファイナル・シリーズが東名阪で行われた。最終日、東京公演は過去最大キャパとなるZepp新宿である。

会場の入口、そしてTENDOUJIの演奏中バックドロップに飾られていたのはイベントのフライヤー。アメコミ風のイラストで、フロアの様子が描かれている。突き上がる手がたくさんあって、その上には数名のクラウドサーファー。しかしよく見ればステージがどっちなのかわからない。客の目線は一点に集中しておらず、酒を飲んで談笑する友人たち、こっそりキスを交わす恋人たちなど、それぞれが好き勝手に空間を満喫している。

 そのまんまの光景があった。開演前からフロアはまぁ騒がしいこと。それぞれがドリンクを片手に、好き勝手話したり動画を撮ったり。ひとりスマホを見つめて開演を待ち続けるぼっち客が少ないのは特筆すべき光景だ。また、2階席に着いてみれば、アサノケンジ(Vo/Gt)本人が「おー」と声をかけてくる。同じ空間内にいるのかよ。普通なら出演アーティストは楽屋にこもる時間帯。緊張をほぐすためのストレッチとか、集中力を高めるためのイメトレだとか、まぁそういうことをやっているはずなのだ。人がいっぱいいるなぁ、みたいな表情でフロアを見下ろしているケンジは、まじでKOTORIのライブに遊びにきた友人、のようにしか見えなかった。

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 スタートはKOTORI。一緒にやると決まってから一曲目はこれと決めてました、との一言から始まったのは「EVERGREEN」。歌い出しは〈戦う君へ〉だが、〈最後に笑えればいい〉と気負わず肩を組み、最後は〈笑ってる方がいいよ〉と自然に顔を綻ばせてしまう、日々の生活に根ざしたパンクロックである。むきだしの闘争心や激情が見えるわけではなく、かっこつけもヒネリもない、どうかと思うくらい素直な表現。4人の人柄がそのまま伝わる、というか、人柄だけが直に鳴っているようでもある。

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 ノスタルジックなバラード「RED」が途中から熱を帯びて加速し、うまくいかない日々を全力で肯定する名曲「素晴らしい世界」に繋がっていくシーンにゾクゾクした。繰り返しになるが音楽性に驚くヒネリはない。ただ、ひたすらグッとくることをやっているバンドなのだ。ともに唱和する若いファンが急増中であるのもよくわかる。

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 そしてTENDOUJI。彼らのロックンロールにだって驚くヒネリや斬新さはないのだが、このバンドには爆発的なポップセンスがある。同時に、こちらの気構えを徹底的に崩していく敷居の低さも備わっている。一曲も知らなくたって最初から楽しいだろうし、知らないから遠慮しますと言わせないノリの軽さと、ここで遠慮するのもなんだかアホみたいだ、と思わせる人懐っこさがあるのだ。それをまず示していたのは照明の使い方だった。

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 一曲目は「YEAH SONG」。モリタナオヒコ(Vo/Gt)がメランコリックに歌いだすAメロ部分はステージも暗いままで、メンバーの表情もよく見えない。しかしすぐさまサビに突入すると、ステージの後方スクリーン、そしてフロアの両サイド上段にあるLEDヴィジョンがパッと明るくなる。つまり、照らされているのはステージではなくフロア。主役はバンド4人ではなく集まったみんななのだ。さらに、サビはタイトルどおり〈イェー、イェー!〉の繰り返しだから、これはもう遠慮したり謙遜したりと慎ましく過ごすほうが難しい。俺たちの歌、このフロアのアンセム、今日のパーティーのテーマソング! 全曲がそんな感じのわかりやすさで次々と連打されていく。

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 わかりやすさ、だけではない。曲が続くほどに実感するのは、TENDOUJIの歌には一発で心がワクワクする魔法もあるのだということ。なんだか知らないけどオールオッケーと言える無数のパンチライン。たとえば「DODA」なら〈ワチュワナドゥーザッ〉、「FIRE BALL」なら〈オーイェー!〉、「Peace Bomb」であれば〈ワン、ツー、スリー、フォー〉のコーラスが用意される。誰もが慣れ親しんでいる、つい笑ってしまう合言葉のようなもの。理由や意味を考える前に、まず一緒に口にする。それだけでむくむく元気が湧いてくる。そんな言葉の選び方もセンスだろう。誰にでもできそうだが、やってみると案外難しい。

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 その意味でTENDOUJIは、己の意思や存在を誇示するロックバンドというより、フロアを盛り上げるDJに近いかもしれない。少なくとも憧れの目で見上げるスターではないし、センスのいい名曲を次々と繰り出す人気者集団、くらいの感覚は観客全員が共有しているはずだ。派手なサッカーウェアにぴちぴちのショートパンツを合わせるアサノケンジと、白のオーバーオールが定番になったヨシダタカマサ(Ba)は、ゆるキャラかマスコット的な感覚で愛でられる。ニックネームの「ヨッシー」ではなく、同級生を呼ぶようなテンションで「吉田ー」と声が上がっていたことには失笑したが、爆笑やくすくす笑いも込みで成立するのが彼らのパーティーなのだ。

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 いっぽうで、だるだるのTシャツ姿で歌うモリタナオヒコは、地味に見えるが実はクソ熱いメッセンジャーの役割。何度も感極まって叫び、「愛してます!」なんて言ってしまう彼の熱量が、バンドを浮わつかせすぎない重心になっている。また、オオイナオユキ(Dr)のプレイが急激に上手くなっていたのもこの日の収穫のひとつ。数年前までヘタウマも愛嬌と考えていたが、ぐっとシャープになったドラムがバンドを牽引していくシーンが多数あった。彼が叩きながら唄う祭囃子「Blur blur」も中盤のいいスパイスになっている。DJ的だと書いてはみたが、その実、4人はバンドとしても細かいところで進化しているのだ。

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 最初から絶好調だったパーティーは大団円に向けてさらに加速。前半に披露された高速パンクチューン「HATTRICK」が本編ラストに再び投下され、同時に2階席からはサッカーボール模様の巨大ビーチボールが二つ投げ込まれる。全開の笑顔を見せるメンバーと客席の頭上に、ぽよんぽよんとサッカーボールが飛び交っている様子は、馬鹿馬鹿しいけれど最高の一言。

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さらに、曲が終わったあと「ハットトリックって......三点じゃなかったっけ?」とケンジが言い出し、すぐさま三度目の「HATTRICK」、さらに三つ目のボールまでが飛び込んでくる。W杯の勝利と年末のカウントダウンが一緒に来たような狂乱。見事なまでの馬鹿騒ぎが終わった瞬間、私はステージに向けてピースサインを送っていた。感動を込めた拍手ではなく、笑顔で共にピースサインを交わしたい。そんな気分だったのだ。

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 アンコールになると、彼らが今年から始めた主催フェス『OTENTO』が、来年も開催されるという嬉しいニュースが飛び込んでくる。3月9日に大阪ゴリラホールで、3月23日には川崎クラブチッタで、再び始まるDIYのお祭り。昨年と同じようなものかと思ったが、詳細を見れば、平日開催だった第一回とは違い、次の『OTENTO'24』はみんなに嬉しい土曜開催だ。ここでもちょっとずつ前進を続けているTENDOUJI。その先に、まだまだでかい夢がある。

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文:石井恵梨子
撮影:エミイ

LIVE INFORMATION

TENDOUJI presents OTENTO'24
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大阪編(WEST)
2024/3/9 (土) @ GORILLA HALL OSAKA
TENDOUJI / KOTORI / and more...

東京編(EAST)
2024/3/23(土) @ 川崎クラブチッタ
TENDOUJI / ハルカミライ / and more...

オフィシャル一次先着先行受付は本日よりスタート!!
受付期間:11/19(日)~12/3(日)23:59迄
受付URL:https://eplus.jp/tendouji24/

RELEASE INFORMATION

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TENDOUJI「BIGLOVE」
2023年11月1日(水)
Format:Digital
Label:天童児

Track:
1.BIGLOVE


LINK
オフィシャルサイト

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