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2023.10.22
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:10月16日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全16作品の中からまずはPart-1、6作品でした。リリースおめでとうございます。(今週のリリースは北海道出身の方が多いというオープニングのトークを受けて)早速、北海道の方です。網走市出身のラッパー関谷拳四郎さんとロス生まれのトラックメーカー陽羽さん、お2人によるコラボレーションシングルです。はじめましてですね。
金子:関谷さんは北海道出身で、今は上京して東京にいるみたいですけど、北海道と東京の対比みたいなものがこの曲には表れていて。トラックに環境音が使われてたり、自然を感じさせるものになっていて、東京のせわしなさと、自然があって時間がゆっくり流れているような北海道の感覚とを対比させながら、今の自分の心境を描いている。これは北海道出身だからこそっていう気はしますね。
みさと:そうですね。ロサンゼルスもそういった雰囲気ありますので、陽羽さんとのコラボレーションも納得っていうところですよね。あとフローが割と自由自在というか、語りかけるようなヴァースもあれば、ちゃんとメロっぽいところもあって、テクニックのある器用なお2人なんだなっていうのをすごく感じましたね。そして、odolです。待ってた方多いですよ。嬉しい。
金子:11月にアルバムが出ることが発表されていて、そこからの先行配信の曲ですけど、シンセのループがすごく印象的で、ちょっとクラウトロックっぽい感じもあって新鮮でしたね。
みさと:世界観として、亡くなった人に対しての曲ってたくさんあると思うんですけど、幽霊って表現してる曲ってあんまりないかもと思って。意外となくないですか?でも不思議なんだけど、幽霊と表現したことによって距離感が見える、幽霊は見えないのに、その人との距離感がすごく見えて怖くない......伝わってます?
金子:目には見えないんだけど傍にいてくれる存在というか、見えないから寂しいと言えば寂しいし、でも傍にいてくれるから寂しくないしっていう、その中間の気持ちというか、そんな感じがしますね。
みさと:幽霊であっても「時々でいいから会いにきてほしいんだ」とか「そっちも悪くはないね」とか、歌詞の表現の仕方も、温かい気持ちになれるタイトルの妙だなっていうのをすごく感じたところです。
金子:odolってこれまでもそういう距離感みたいなものを色んな形で描いていて、今回アルバムのタイトルも『DISTANCES』っていう、まさに「距離」で。だからこの「幽霊」もodol流の色んな距離をアルバムで表現する中のひとつのパーツというか、そういう感じもしましたね。
みさと:素晴らしいですね。そしてお送りするのはどの曲ですか?
金子:sucolaをかけようと思います。
みさと:もう、好きなのよ。私たちのチームみんな好き、sucolaね。
金子:前の「爛漫サマー」も色んなプレイリストに入ったりと好調だったみたいですけど、今回は『Room to the Studio』というこのタイトルがそのまま表している通り、これまでは基本、自宅での宅録だったところから、初めてスタジオ録音した作品ということで。曲自体は前に作ってる曲をもう1回レコーディングし直してるんですけど、生楽器の温かみだったり、グルーヴが加わることによってアップデートされている"New sucola"って感じですよね。
みさと:宅録でもここまで出来るんだって楽曲だったとは思うんですけど、でもやっぱりグルーヴって生だよねっていう、楽器の力とか収録環境含め、エンジニアさん含め、新しいものを作るってそれぞれプロという職業がある理由も感じさせてもらえたというか、またお2人がすごく喜んでるんですよね。"初めてのスタジオレコーディング、終始興奮でした"とか。音楽ってこういうことだよなっていう、デジタルが悪いわけじゃないけど、音楽良いよねっていうのを感じさせてもらえるEPでしたね。
金子:sucolaはもともと2019年に始まってて、要はすぐコロナ禍になっちゃったからなかなか思ったようには活動できなくて。でもユニットだからこそ、コロナ禍でも自宅で音源を作れるっていう良さはあっただろうし、そうやってやってきて、今回やっとスタジオに入れた。しかもドラムが深谷雄一さんで、最近だと中村佳穂バンド、Bialystocks、 odolでも叩いてたりする方なので、参加ミュージシャンも素晴らしいですし、曲自体も素晴らしいなと思います。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさんです、岡村匡紘さん。
金子:東京都内で活動中のシンガーソングライターで、詞、曲、編曲、トラックメイクまで自ら手掛けるという方ですけど、良い曲でしたね。
みさと:良い曲ですね、そして良い声でしたね。
金子:ご自身のコメントでもあるんですけど、60年代のヴィンテージソウルだったりとか、現代的なサーフ・ミュージック、アコースティックなヒップホップの感じ、でも最終的にはJ-POPに仕上げるっていう、このバランス感覚、素晴らしいですね。
みさと:そうですね。歌詞もジャケットもしっかり世界観が統一されていて、この曲に合う楽曲だなってご自身のこともよく分かっていらっしゃるんだなと思う、トータルで美しい、すごく良い曲でしたね。
金子:こちらも参加ミュージシャンすごく豪華で、ドラムの伊吹文裕さんはあいみょんとか、秦基博さんとか、あとこちらも中村佳穂バンドをやられてたりとか、ストリングスの波多野敦子さん、エンジニアの奥田泰次さんも、音楽好きな人だったら"おーっ!"ってなるメンツばっかり参加していて、トータルで素晴らしかったです。
みさと:そして我らがShe Her Her Hersリリースでございます。
金子:Part-1でodolが出て、Part-2でシーハーズ(She Her Her Hers)が出て、このあたりの人たちのリリースがあると"我らが"って感じしますよね(笑)。シーハーズも、ちょこちょこ言ってますけど中国をはじめ、本当にアジアでどんどん人気が拡大しているという中での新曲のリリースで。聴いてみると、かなりクラブトラックっぽい、これまで以上にグルーヴを感じさせる曲になっていて。最近だと中国ではでかいフェスに出たりとか、ライブ活動がどんどん盛んになっている中で、よりフィジカルに乗れる音楽というふうに変化してきているのをすごく感じられる曲でしたね。
みさと:そうですね。クラブミュージックサウンド×アンビエントみたいな、洗練アンビエントビートみたいな、造語を作りがいがあるなっていうような。でもそういった新しい試みをしてもシーハーズなんだなっていうのは、シーハーズの今がやっぱり確立されてるから、こういうチャレンジができるんだなっていうのもすごく見えてくる曲だなと思いましたし、あと、とまそんが書く歌詞っていつも深いですよね。ものすごく最高の3人組。今、いい風吹いてるんだなっていうのを感じます。
金子:日本語で書き続けてくれてるのも嬉しいですよね。
みさと:さあもうひと方、はじめましてさんがいらっしゃるんですけど、この方をおかけする形で良いでしょうか?
金子:そうですね。Kia Vellaさんをかけようと思います。彼はプロフィールが面白くて、BE:FIRSTを輩出しているSKY-HI主催のオーディションTHE FIRSTで最終選考まで残ったという実力者で、その後ソロで既に活動していて、この曲には、同じくTHE FIRST出身でソロデビューしているAile The ShotaとラッパーのJs Morganが参加しています。もともとchameleonという名義で活動してて、その名義でこの曲を1回出してるんですけど、Kia Vellaに名前を変えて、自身のヴァースを加えて、今回リミックスという形で再リリースと、そういう流れになっております。
みさと:素晴らしい、分かりやすい説明をありがとうございました。3人のバランスなのか、もともとユニット組んでました、くらいばっちりはまってますよね。原曲も聴いてみたんですけど、もともと曲が良いので、これは2曲リリースしたくなるなっていうのがすごい見えてくる楽曲でしたね。
金子:例えば、VivaOlaとかWez Atlasとか、あの辺りの人たちと多分これまでいたシーンは違う気がするけど、でもFRIENDSHIP.からリリースすることによって、それぞれ良い刺激が受けられるような気もするし、こういうアーティストがFRIENDSHIP.にジョインしてくれると、また楽しみが増えるなって感じがしましたね。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。こちらにもはじめましてさんです。北海道大沼町生まれのシンガーソングライター、畠山拓郎さんです。
金子:本当に今週は北海道出身が多いですね。Part-1で紹介した関谷拳四郎さんの曲も北海道から上京しての心情が描かれてましたけど、畠山さんも北海道から上京してきてて、2020年だったから、最初がコロナ禍だったりして、色々不安になったりという中で、この曲を書いたみたいですね。
みさと:半音上がった音がめちゃくちゃ似合う声ですね。すごく良い。台所で1人で書かれたっていうセルフライナーノーツをいただいてるんですけど、その曲が台所を飛び出して寂しい誰かのもとに、明かりがついた1人1人の家に届くような絵が見えてきました。すごく距離感が近い曲ですね。
金子:バックで演奏してるアポンタイムとは上京してから出会ったそうで、アポンタイムの三輪さんはサトーカンナさんがKurhausともう1コやっている、グッド・ライフ・フェロウズのギタリストでもあって、カンナさんが(みさとさんの)代打としてこの番組のMCをしてたときに、ゲストで遊びに来てもらったりとかもしてて。相性もぴったりだなと思いました。
みさと:そして毎作とても楽しませていただいております、黄鶯睍睆(uguisu-naku)。
金子:黄鶯睍睆(uguisu-naku)の新曲はまた色んな意味ですごかったですね。
みさと:すごいですねー。
金子:「続・悪魔を憐れむ歌」。
みさと:この曲の話をするだけで1時間かかってしまうくらい、やっぱり芸術家ですね、黄鶯睍睆(uguisu-naku)さんは。
金子:ロックが好きな人だったら大体聴いたことのあるタイトルだと思うんですけど、まさにその曲のオマージュになっていて、コーラスとかでもオマージュを入れつつ、でもそれを現代的に解釈して、スマートなシティとサステナブルな未来とは?を語っていく。面白い曲ですね。
みさと:面白いですね。とんでもなくコンテンポラリーだし、でも急にポップな歌メロが出てきたりとか、聴き手の感情・思考・感覚を全て操作されてる、というような。
金子:悪魔の歌ですからね。SHU-MIか黄鶯睍睆(uguisu-naku)かって感じしますよね、言葉の面白さでは。
みさと:面白いなあ。言葉使いと言えば、ERWITは逆にシンプルに、というところで制作をされてるという風にご自身でも語っていて。"中学生でも分かる言葉を使って、どれだけクールな言い回しができるか、これに尽きます"という歌詞作りについても語ってるERWIT、良い曲でした。
金子:良かったですね。言葉もそうだし、曲を出すごとに、「こういう面もあるんだ、こういう面もあるんだ」っていう風に広げてくれる印象もあって。今回はもともとの印象としてあったアコースティックな部分に加えて、もうちょっとエレクトロニックな雰囲気も強めの曲で、楽器自体はガット・ギターとアップライト・ピアノがメインで使われてるんだけど、その使い方も独特だったり、レコーディングもかなり面白い方法で録られてるみたいです。アメリカのインディーって昔からWILCOだったり、今だったらBIG THIEFとか、音響派と言われるような流れの人たちがいて、そういうセンスとも連続する部分があるような感じがすごくしましたね。そんな曲に、odolの森山くんが参加しているということで、そういう音響に関しては通じ合う部分があるんだろうなっていう感じがします。
みさと:ちょうど続けて曲を聴いていたので、このまま対バンをしてくれって思うぐらいに。
金子:確かに、一緒にやっても良さそう。
みさと:良さそうですよね。まさに楽器の使い方ひとつ取っても面白くて、アップライト・ピアノを2台使っているんですけど、ミュートペダル踏みっぱなしでっていう、そのこもった音色がパーソナルな歌詞とすごくリンクをしていたし、音楽好きがこういう花の開かせ方をするんだなっていう、面白い作品でした。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin