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2023.10.06
YAJICO GIRL、初の全国ツアー『みんなコレクティブ〜全国でコラボTOUR〜』が開幕 地元関西の後輩バンドが色を添えた最高の初日
10月1日(日)神戸VARIT.にて、『みんなコレクティブ〜全国でコラボTOUR〜』が行われた。本公演は大阪発の5人組バンド・YAJICO GIRL(以下、ヤジコ)にとって初となる全国ツアーの初日。ゲストには以前より繋がりのあるRe:nameとSubway Daydreamが出演した。3バンドとも関西出身、特に大阪北摂の出自が多く、実際に高校大学の先輩後輩という関係性のメンバーも。お互いのツアーに呼び合うほどで、四方颯人(Vo.)曰く「身内」と言える仲の良さ。また四方が「地元が同じというだけで通じる感性がある」と述べていた通り、地元関西勢の共演で、あたたかくも熱量の高いグルーヴが生まれた、ツアー初日にふさわしいライブとなった。
ようやく秋の気配が訪れた10月の始まりの日曜日。会場BGMに四方チョイスのPassion Pitの『Gossamer』が流れる中、オーディエンスはめいめいグッズに身を包んで開演を待つ。
トップバッターは大阪北摂出身の3ピースバンド・Re:name。この日はサポートにTHYPALMの秋山ひろき(Ba.&.Syn.)を迎えた編成で登場。高木一成(Vo.)が「神戸VARIT.準備はいいかーい?Re:name始めます、最後までよろしくー!」と放つと、Soma(Gt.)の骨太なギターが鳴り響き、「What Do You Wanna Know?」で豪快にフロアを踊らせる。高木の伸びやかな歌声はもちろんだが、一挙一動も存在感抜群。ヤマケン(Dr.)の繰り出す鋭いビートも早速熱を帯びる。1人ひとりのエネルギーがとても高い。続く「SEE THRU」では高木もギターを携えて疾走感のあるガレージロックをギュンギュン飛ばす。ヤマケンとSomaのコーラスワークもバッチリで、頼もしいサウンドにオーディエンスは安心して身を委ねる。
ヤマケンのダイナミックなフロアタムとコール&レスポンスが会場を揺らした「Let Me」の前には、高木が「僕の先輩、YAJICO GIRLが呼んでくれて作ってくれたこの場所は全国ツアー1本目らしいので、僕らなりの音楽を鳴らして送り出したいと思います」と想いを込める。先輩思いの良い後輩だ(Re:nameの3人中2人がヤジコの高校の後輩だそう)。
Re:nameは今年4月に3rdアルバム『Mindwash』をリリースし、ライブ活動も精力的に行う中でじわじわと注目度を上げているところ。高木は2バンドとの関わりを述べた上で「2023年、すごい走ってきたなと思うんですけど」と切り出し、「自分たちが全力で走ってる中で周りのバンドも全力で走ってるところを見れて、久しぶりに再会できて、更新された音楽を見れるのも嬉しい。僕らも全力で最新のRe:nameを見せて帰ろうと思います」と力強く語り、アルバムにも収録されている「Lullaby」へ。叙情的な浮遊感で心地良く空間を揺らし、「FILM」ではダークな一面も見せつつ、英語詞と日本語詞を流暢に織り交ぜた濃密度のボーカルで「Vertigo」を丁寧に歌い上げた。
そして「2023年僕らを大きく前へ進めてくれたとびきりのダンスチューン」と、関西のラジオ局・FM802の3月度邦楽ヘビーローテーションに選ばれた「prettyfine :)」を投下。サビでは軽やかにハンズアップ&クラップが発生。楽しそうなヤマケンの笑顔が眩しい。高木はフロアに手を差し出し、色気も纏いながら会場をひとつに掌握した。ラストは「Alice」。情景を描き出すような明るい没入感で満たしたRe:name。セットリストの半分を最新アルバム曲で構成して自分たちの現在地を示し、ダイナミックかつ繊細なステージングで堂々とトップバッターの役割を終えた。
2番手はSubway Daydream。双子の藤島裕斗(Gt.)と雅斗(Gt.&Vo.)、幼馴染のたまみ(Vo.)とKana(Dr.)からなる、結成3年目のフレッシュな4人組バンド。ヤジコとは今年2月に初共演して意気投合したそう。そしてKanaは四方の大学の後輩にあたる。実は神戸でのバンドセットでのライブはこの日が初。サポートベースと共にステージにスタンバイし、たまみが高らかな声で「よろしくー! 一緒に楽しもう!」と突き抜けると同時に、TVアニメ『#もういっぽん!』のOPテーマ「Stand By Me」で勢いよく音の塊を弾き出す。疾走感溢れる「Freeway」では雅斗とたまみのツインボーカルがみずみずしくハーモニーを奏で、サビでは羽のように両手を広げるたまみ。初期のジュディマリを思わせるメロディーラインと張りのある歌声が、どこか懐かしい。ステージいっぱいのエネルギーに牽引されてフロアも体を揺らす。たまみのアコギが加わり、ギター3本で爽やかなギターポップを聴かせた「Timeless Melody」、とびきりキュートでドリーミーでポップな「Fallin' Orange」に続いては、シューゲイズなギターアンサンブルとドラムが最高の浮遊感を作り出した「Teddy Bear」と、矢継ぎ早に楽曲を連投してゆく。
ヘルシーかつロックに5曲を叩き込み、MCでは雅斗が「改めて呼んでくれてありがとうございます。僕ら年明けにアルバム出して、YAJICO GIRLはその時の東京のツアーでゲストで呼んで出てもらって仲良くなって。Re:nameとは共演自体はめちゃめちゃ久々。僕らが組んで2回目の時にツアーに呼んでもらったり、繋がりのあるスリーマンでこんなメモリアルな機会をもらえて非常に嬉しいです」とピュアな笑顔を浮かべる。
そして後半戦。たまみのソプラノボイスが際立つミディアムナンバー「Twilight」、裕斗、雅斗、Kanaのコーラスワークも相まって没入感を生み出した「Canna」と様々な表情を見せる。海外進出も果たした彼らのバンド力とステージ力が如実にレベルアップしていることがよくわかった。ラストスパート、「皆も私たちも待っているYAJICO GIRLに全力で繋げていきたいと思います!」と「ケサランパサラン」を披露。一緒に歌いたくなるポップなハピネス空間が広がったかと思えば、曲の後半は一気に加速して一筋縄ではいかないバンドの気概もうかがわせる。「最後の最後まで素敵なツアーで皆が楽しめますように、心を込めます!」と叫び、ラストチューン「Radio Star」までの全10曲を思い切り元気にプレイしてライブを終えた。
いよいよお待ちかね、YAJICO GIRLの登場だ。Re:nameとSubway Daydreamのライブを客席後方から見ていたメンバーは、2バンドの熱量をしっかり引き継いでステージに立つ。今年3月、彼らの活動の指標を改めて示す位置付けとなった1st フルアルバム『Indoor Newtown Collective』がリリースされた時、四方は「ここから始まるような感覚もありで、ようやく胸を張って進んでいけるんじゃないか」とSNSにコメントを残していたが、その言葉通り大きく進化したヤジコ。音楽の方向性を変えるという大変な時期を共に乗り越え、チューニングを合わせてきたメンバーだからこそ出せるグルーヴ感で魅了した、珠玉のライブだった。
ステージがパッと明るくなると同時に、楽器隊の吉見和起(Gt.)、榎本陸(mood maker&Gt.&Cho)、武志綜真(Ba.&Cho.)、古谷駿(Dr.)が柔らかなアンサンブルを奏でる。四方が「YAJICO GIRLです。最後までよろしく!」と言い、「Better」からライブスタート。5人の鳴らす音楽は空気をぐうんと大きく動かす。フロントで歌声を響かせる四方の後ろで、楽しそうに目を合わせて演奏する4人。その雰囲気が心地良く、包まれるような躍動感のあるサウンドの中をくるくると跳ねる四方の姿は、草原を自由自在に撫でながら進む風のようだ。
続き、「エイ!」と声を張り上げて「VIDEO BOY」へ。身振り手振りを入れてステージを動きながら歌う四方の表現力には思わず目を奪われる。歌うようなリードギターも耳を喜ばせる。吉見と榎本が向き合ってギターを弾くシーンはこの日何度か見られたが、目を合わせる度にくしゃっと笑う様子が印象的だった。「流浪」では、四方のボーカルの深さと豊潤さが全面に現れる。どこまでもポップなメロディと洋楽的なグルーヴィなサウンド、複雑に絡み合う楽曲構成、長尺でどっぷり引き込む立体的な音色。シンプルにカッコ良すぎる。後方でライブを見ていたたまみとKanaは踊りまくっていた。
MCでは榎本が「楽しんでますか?」と言うのかと思いきや「楽しんでますわ、俺が」と自己申告(笑)。少し緊張も見られたが、「ついに俺たちも全国区か。感慨深〜」「感慨深いね」と言い合うメンバー。榎本の独断と偏見で今日のMVPがRe:nameのヤマケンに選ばれたりと、トークは和やかに進行。四方は「初めての全国ツアーなので緊張もあった気がするんですけど、ほんと身内みたいな、すごく仲良くしてくれてる人たちと地元で一発目ができるのを本当に嬉しいと思ってます。来てくださってありがとうございます」と感謝を述べる。
ここでは『未確認フェスティバル2016』のエントリー曲で、グランプリを獲得した思い出のある「いえろう」を1st フルアルバム「Indoor Newtown Collective」のCDのみに収録された「いえろう(INC ver.)」で披露。もともとギターロックだった楽曲がアンビエント要素強めになり、心地良くふわふわとしたサウンドに進化。吉見のループするギターリフに重なる榎本の大らかなストローク、アウトロのアンサンブルが本当に美しく、ボトムを支え続ける古谷と武志の活躍も言わずもがな素晴らしい。その後〈なにもない〉と繰り返すリリックが印象的な「セゾン」、四方のフェイクが高く天井に伸びた「Airride」を続けて披露。日々の生活で感じるネガティブな感情やどうしようもなさをポップなメロディに乗せるセンスの秀逸さには脱帽する。
神戸で大学時代を過ごした四方が神戸の花火大会の情景を思い浮かべて書いた「ニケ」で大学時代特有のモラトリアムをエモーショナルに歌い上げると、ライブは後半戦に突入。「Surfing」でのダウンテンポのアンサンブルから転調するサイケデリックな激しい間奏は、ゾーンに入っているのではと思うほど。古谷は全身でビートを刻み、武志は前のめりになりながら、榎本は床に寝転んで楽器をかき鳴らす。イントロのギターリフから名曲感を感じさせる「幽霊」ではタイトなビートに踊らされると同時にトリップし、本編ラストの「熱が醒めるまで」では、ホーンサウンドも入った上質なサウンドでクラップが発生。ファンファーレ感満載で濃厚に駆け抜け、ライブを終了した。
アンコールを求めるクラップに応えて再登場したメンバー。榎本によるほんわかした物販紹介を経て、四方は改めて2バンドにお礼を述べ「自分がすごくあったかい気持ちでツアースタートできたのは本当に良かったと思います。まだまだ今日が始まりなんで、ここから全国ツアー廻っていって、もっともっと力をつけて、どんどんパワーアップしていこうと思ってますので、これからもYAJICO GIRLよろしくお願いします!」と力強く述べた。
アンコールは「だりぃ」。榎本がムードメーカーぶりを発揮して、躍動感たっぷりにハンドマイクでステージを動き回る。サビでは大きく手が左右に振られ、〈Yo! Yo!〉では勢いよく拳をアップ! 会場全体が素晴らしい一体感に包まれた。最後までナイスグルーヴを響かせて、エモーショナルとノスタルジーを感じさせる独特の世界観で、レンジの広い表現を見せてくれたYAJICO GIRL。そして3バンドがお互いを思いやるような、負けじと競演するような、そんなバイブスも感じられたツアー初日だった。
今回古谷が手がけた本ツアーのキービジュアルには、手を繋いだ2人の人間と円形の輪が描かれている。「コレクティブ」には「集合的、共同の」という意味があるように、「繋がり」を大事にしていることが伝わってくる。それはヤジコがツアーの約2ヶ月前から映像やPodcastなどで対バン相手を丁寧に紹介していたことにもリンクすると思う。相手へのリスペクトと愛情があり、それが伝わるからこそ現場で生まれるものがある。ツアー自体はここからキックオフだが、前段階からの丁寧な盛り上げがあってこその雰囲気だと強く感じた。ヤジコは実に素敵なバンドだ。同じく古谷作の看板(アニメーションとMVが映し出されていてすごい)には、出演バンドのサインが書き足されていくという。
こうして無事にスタートを切った全国ツアー『みんなコレクティブ〜全国でコラボTOUR〜』。残りの6公演では一体どんな景色を見ることができるだろう。
なお、2024年1月には恒例のツーマンイベント『YAJICOLABO2024』の開催も決定。1月13日(土)に大阪・梅田CLUB QUATTRO、1月27日(土)に東京・渋谷CLUB QUATTROで行われる。ゲストは後日発表となる。こちらも楽しみにしていよう。
文:久保田 瑛理
撮影:渡邉 一生
2024年1月13日(土)
梅田CLUB QUATTRO
GUEST:後日発表
2024年1月27日(土)
渋谷CLUB QUATTRO
GUEST:後日発表
<チケット情報>
オフィシャル最速先行受付中
前売:¥3,800円(税込)/学割:¥2,500(税込)
https://eplus.jp/YAJICOLABO/
2023年10月7日(土)
横浜Buzz Front
Guest:PELICAN FANCLUB
2023年11月4日(土)
金沢GOLD CREEK
Guest:Monthly Mu & New Caledonia/Wez Atlas
2023年11月5日(日)
名古屋ell.SIZE
Guest:NIKO NIKO TAN TAN/Wez Atlas
2023年11月11日(土)
広島4.14
Guest:Deep Sea Diving Club/the McFaddin
2023年11月12日(日)
福岡OP's
Guest:Deep Sea Diving Club/the McFaddin
2023年11月18日(土)
仙台enn 3rd
Guest:Ochunism / Wez Atlas
チケット情報:
一般発売中
前売:¥3,800(税込)/学割¥2,500(税込)
https://eplus.jp/yjc-collective/
「MINAMI WHEEL2023」
YAJICO GIRL「幽霊 - voquote Remix」
2023年9月27日(水)
Format:Digital
Track:
1.幽霊 - voquote Remix
試聴はこちら
YAJICO GIRL「Indoor Newtown Collective」
2023年3月8日(水)
Format:CD, Digital
Track:
1.流浪
2.幽霊
3.雑談
4.街の中で
5.alone
6.FIVE
7.忘れさせて
8.NIGHTS
9.寝たいんだ
10.Airride
11.Better
12.city
13.だりぃ
14.VIDEO BOY
15.indoor
16.IMMORTAL
17.わかったよ / PARASITE
18.休暇
19.いえろう (INC ver.) - bonus track - ※CDのみ収録
初回生産限定盤
CD+Art Book『Indoor Newtown Magazine』
品番:MASHAR-1010(初回生産限定盤)
価格:¥4,091(税込 ¥4,500)
●Art Book『Indoor Newtown Magazine』
メンバーソロインタビュー、撮り下ろし写真、四方颯人エッセイ、10問10答アンケート、クリエイティブコレクションなど全66P
通常盤
CD(紙ジャケ)
品番:MASHAR-1009
価格:¥3,182(税込 ¥3,500)
CD購入、試聴リンク:https://YAJICOGIRL.lnk.to/INC
@YAJICOGIRL
@yajicogirl
Official YouTube Channel
LINE公式アカウント
オフィシャルグッズ ヤジコ屋オンライン
ポッドキャスト「ヤジラジ!」(毎月5のつく日に更新)
@YAJICORADIO
ようやく秋の気配が訪れた10月の始まりの日曜日。会場BGMに四方チョイスのPassion Pitの『Gossamer』が流れる中、オーディエンスはめいめいグッズに身を包んで開演を待つ。
トップバッターは大阪北摂出身の3ピースバンド・Re:name。この日はサポートにTHYPALMの秋山ひろき(Ba.&.Syn.)を迎えた編成で登場。高木一成(Vo.)が「神戸VARIT.準備はいいかーい?Re:name始めます、最後までよろしくー!」と放つと、Soma(Gt.)の骨太なギターが鳴り響き、「What Do You Wanna Know?」で豪快にフロアを踊らせる。高木の伸びやかな歌声はもちろんだが、一挙一動も存在感抜群。ヤマケン(Dr.)の繰り出す鋭いビートも早速熱を帯びる。1人ひとりのエネルギーがとても高い。続く「SEE THRU」では高木もギターを携えて疾走感のあるガレージロックをギュンギュン飛ばす。ヤマケンとSomaのコーラスワークもバッチリで、頼もしいサウンドにオーディエンスは安心して身を委ねる。
ヤマケンのダイナミックなフロアタムとコール&レスポンスが会場を揺らした「Let Me」の前には、高木が「僕の先輩、YAJICO GIRLが呼んでくれて作ってくれたこの場所は全国ツアー1本目らしいので、僕らなりの音楽を鳴らして送り出したいと思います」と想いを込める。先輩思いの良い後輩だ(Re:nameの3人中2人がヤジコの高校の後輩だそう)。
Re:nameは今年4月に3rdアルバム『Mindwash』をリリースし、ライブ活動も精力的に行う中でじわじわと注目度を上げているところ。高木は2バンドとの関わりを述べた上で「2023年、すごい走ってきたなと思うんですけど」と切り出し、「自分たちが全力で走ってる中で周りのバンドも全力で走ってるところを見れて、久しぶりに再会できて、更新された音楽を見れるのも嬉しい。僕らも全力で最新のRe:nameを見せて帰ろうと思います」と力強く語り、アルバムにも収録されている「Lullaby」へ。叙情的な浮遊感で心地良く空間を揺らし、「FILM」ではダークな一面も見せつつ、英語詞と日本語詞を流暢に織り交ぜた濃密度のボーカルで「Vertigo」を丁寧に歌い上げた。
そして「2023年僕らを大きく前へ進めてくれたとびきりのダンスチューン」と、関西のラジオ局・FM802の3月度邦楽ヘビーローテーションに選ばれた「prettyfine :)」を投下。サビでは軽やかにハンズアップ&クラップが発生。楽しそうなヤマケンの笑顔が眩しい。高木はフロアに手を差し出し、色気も纏いながら会場をひとつに掌握した。ラストは「Alice」。情景を描き出すような明るい没入感で満たしたRe:name。セットリストの半分を最新アルバム曲で構成して自分たちの現在地を示し、ダイナミックかつ繊細なステージングで堂々とトップバッターの役割を終えた。
2番手はSubway Daydream。双子の藤島裕斗(Gt.)と雅斗(Gt.&Vo.)、幼馴染のたまみ(Vo.)とKana(Dr.)からなる、結成3年目のフレッシュな4人組バンド。ヤジコとは今年2月に初共演して意気投合したそう。そしてKanaは四方の大学の後輩にあたる。実は神戸でのバンドセットでのライブはこの日が初。サポートベースと共にステージにスタンバイし、たまみが高らかな声で「よろしくー! 一緒に楽しもう!」と突き抜けると同時に、TVアニメ『#もういっぽん!』のOPテーマ「Stand By Me」で勢いよく音の塊を弾き出す。疾走感溢れる「Freeway」では雅斗とたまみのツインボーカルがみずみずしくハーモニーを奏で、サビでは羽のように両手を広げるたまみ。初期のジュディマリを思わせるメロディーラインと張りのある歌声が、どこか懐かしい。ステージいっぱいのエネルギーに牽引されてフロアも体を揺らす。たまみのアコギが加わり、ギター3本で爽やかなギターポップを聴かせた「Timeless Melody」、とびきりキュートでドリーミーでポップな「Fallin' Orange」に続いては、シューゲイズなギターアンサンブルとドラムが最高の浮遊感を作り出した「Teddy Bear」と、矢継ぎ早に楽曲を連投してゆく。
ヘルシーかつロックに5曲を叩き込み、MCでは雅斗が「改めて呼んでくれてありがとうございます。僕ら年明けにアルバム出して、YAJICO GIRLはその時の東京のツアーでゲストで呼んで出てもらって仲良くなって。Re:nameとは共演自体はめちゃめちゃ久々。僕らが組んで2回目の時にツアーに呼んでもらったり、繋がりのあるスリーマンでこんなメモリアルな機会をもらえて非常に嬉しいです」とピュアな笑顔を浮かべる。
そして後半戦。たまみのソプラノボイスが際立つミディアムナンバー「Twilight」、裕斗、雅斗、Kanaのコーラスワークも相まって没入感を生み出した「Canna」と様々な表情を見せる。海外進出も果たした彼らのバンド力とステージ力が如実にレベルアップしていることがよくわかった。ラストスパート、「皆も私たちも待っているYAJICO GIRLに全力で繋げていきたいと思います!」と「ケサランパサラン」を披露。一緒に歌いたくなるポップなハピネス空間が広がったかと思えば、曲の後半は一気に加速して一筋縄ではいかないバンドの気概もうかがわせる。「最後の最後まで素敵なツアーで皆が楽しめますように、心を込めます!」と叫び、ラストチューン「Radio Star」までの全10曲を思い切り元気にプレイしてライブを終えた。
いよいよお待ちかね、YAJICO GIRLの登場だ。Re:nameとSubway Daydreamのライブを客席後方から見ていたメンバーは、2バンドの熱量をしっかり引き継いでステージに立つ。今年3月、彼らの活動の指標を改めて示す位置付けとなった1st フルアルバム『Indoor Newtown Collective』がリリースされた時、四方は「ここから始まるような感覚もありで、ようやく胸を張って進んでいけるんじゃないか」とSNSにコメントを残していたが、その言葉通り大きく進化したヤジコ。音楽の方向性を変えるという大変な時期を共に乗り越え、チューニングを合わせてきたメンバーだからこそ出せるグルーヴ感で魅了した、珠玉のライブだった。
ステージがパッと明るくなると同時に、楽器隊の吉見和起(Gt.)、榎本陸(mood maker&Gt.&Cho)、武志綜真(Ba.&Cho.)、古谷駿(Dr.)が柔らかなアンサンブルを奏でる。四方が「YAJICO GIRLです。最後までよろしく!」と言い、「Better」からライブスタート。5人の鳴らす音楽は空気をぐうんと大きく動かす。フロントで歌声を響かせる四方の後ろで、楽しそうに目を合わせて演奏する4人。その雰囲気が心地良く、包まれるような躍動感のあるサウンドの中をくるくると跳ねる四方の姿は、草原を自由自在に撫でながら進む風のようだ。
続き、「エイ!」と声を張り上げて「VIDEO BOY」へ。身振り手振りを入れてステージを動きながら歌う四方の表現力には思わず目を奪われる。歌うようなリードギターも耳を喜ばせる。吉見と榎本が向き合ってギターを弾くシーンはこの日何度か見られたが、目を合わせる度にくしゃっと笑う様子が印象的だった。「流浪」では、四方のボーカルの深さと豊潤さが全面に現れる。どこまでもポップなメロディと洋楽的なグルーヴィなサウンド、複雑に絡み合う楽曲構成、長尺でどっぷり引き込む立体的な音色。シンプルにカッコ良すぎる。後方でライブを見ていたたまみとKanaは踊りまくっていた。
MCでは榎本が「楽しんでますか?」と言うのかと思いきや「楽しんでますわ、俺が」と自己申告(笑)。少し緊張も見られたが、「ついに俺たちも全国区か。感慨深〜」「感慨深いね」と言い合うメンバー。榎本の独断と偏見で今日のMVPがRe:nameのヤマケンに選ばれたりと、トークは和やかに進行。四方は「初めての全国ツアーなので緊張もあった気がするんですけど、ほんと身内みたいな、すごく仲良くしてくれてる人たちと地元で一発目ができるのを本当に嬉しいと思ってます。来てくださってありがとうございます」と感謝を述べる。
ここでは『未確認フェスティバル2016』のエントリー曲で、グランプリを獲得した思い出のある「いえろう」を1st フルアルバム「Indoor Newtown Collective」のCDのみに収録された「いえろう(INC ver.)」で披露。もともとギターロックだった楽曲がアンビエント要素強めになり、心地良くふわふわとしたサウンドに進化。吉見のループするギターリフに重なる榎本の大らかなストローク、アウトロのアンサンブルが本当に美しく、ボトムを支え続ける古谷と武志の活躍も言わずもがな素晴らしい。その後〈なにもない〉と繰り返すリリックが印象的な「セゾン」、四方のフェイクが高く天井に伸びた「Airride」を続けて披露。日々の生活で感じるネガティブな感情やどうしようもなさをポップなメロディに乗せるセンスの秀逸さには脱帽する。
神戸で大学時代を過ごした四方が神戸の花火大会の情景を思い浮かべて書いた「ニケ」で大学時代特有のモラトリアムをエモーショナルに歌い上げると、ライブは後半戦に突入。「Surfing」でのダウンテンポのアンサンブルから転調するサイケデリックな激しい間奏は、ゾーンに入っているのではと思うほど。古谷は全身でビートを刻み、武志は前のめりになりながら、榎本は床に寝転んで楽器をかき鳴らす。イントロのギターリフから名曲感を感じさせる「幽霊」ではタイトなビートに踊らされると同時にトリップし、本編ラストの「熱が醒めるまで」では、ホーンサウンドも入った上質なサウンドでクラップが発生。ファンファーレ感満載で濃厚に駆け抜け、ライブを終了した。
アンコールを求めるクラップに応えて再登場したメンバー。榎本によるほんわかした物販紹介を経て、四方は改めて2バンドにお礼を述べ「自分がすごくあったかい気持ちでツアースタートできたのは本当に良かったと思います。まだまだ今日が始まりなんで、ここから全国ツアー廻っていって、もっともっと力をつけて、どんどんパワーアップしていこうと思ってますので、これからもYAJICO GIRLよろしくお願いします!」と力強く述べた。
アンコールは「だりぃ」。榎本がムードメーカーぶりを発揮して、躍動感たっぷりにハンドマイクでステージを動き回る。サビでは大きく手が左右に振られ、〈Yo! Yo!〉では勢いよく拳をアップ! 会場全体が素晴らしい一体感に包まれた。最後までナイスグルーヴを響かせて、エモーショナルとノスタルジーを感じさせる独特の世界観で、レンジの広い表現を見せてくれたYAJICO GIRL。そして3バンドがお互いを思いやるような、負けじと競演するような、そんなバイブスも感じられたツアー初日だった。
今回古谷が手がけた本ツアーのキービジュアルには、手を繋いだ2人の人間と円形の輪が描かれている。「コレクティブ」には「集合的、共同の」という意味があるように、「繋がり」を大事にしていることが伝わってくる。それはヤジコがツアーの約2ヶ月前から映像やPodcastなどで対バン相手を丁寧に紹介していたことにもリンクすると思う。相手へのリスペクトと愛情があり、それが伝わるからこそ現場で生まれるものがある。ツアー自体はここからキックオフだが、前段階からの丁寧な盛り上げがあってこその雰囲気だと強く感じた。ヤジコは実に素敵なバンドだ。同じく古谷作の看板(アニメーションとMVが映し出されていてすごい)には、出演バンドのサインが書き足されていくという。
こうして無事にスタートを切った全国ツアー『みんなコレクティブ〜全国でコラボTOUR〜』。残りの6公演では一体どんな景色を見ることができるだろう。
なお、2024年1月には恒例のツーマンイベント『YAJICOLABO2024』の開催も決定。1月13日(土)に大阪・梅田CLUB QUATTRO、1月27日(土)に東京・渋谷CLUB QUATTROで行われる。ゲストは後日発表となる。こちらも楽しみにしていよう。
文:久保田 瑛理
撮影:渡邉 一生
LIVE INFORMATION
YAJICOLABO 2024
2024年1月13日(土)
梅田CLUB QUATTRO
GUEST:後日発表
2024年1月27日(土)
渋谷CLUB QUATTRO
GUEST:後日発表
<チケット情報>
オフィシャル最速先行受付中
前売:¥3,800円(税込)/学割:¥2,500(税込)
https://eplus.jp/YAJICOLABO/
みんなコレクティブ~全国でコラボTOUR~
2023年10月7日(土)
横浜Buzz Front
Guest:PELICAN FANCLUB
2023年11月4日(土)
金沢GOLD CREEK
Guest:Monthly Mu & New Caledonia/Wez Atlas
2023年11月5日(日)
名古屋ell.SIZE
Guest:NIKO NIKO TAN TAN/Wez Atlas
2023年11月11日(土)
広島4.14
Guest:Deep Sea Diving Club/the McFaddin
2023年11月12日(日)
福岡OP's
Guest:Deep Sea Diving Club/the McFaddin
2023年11月18日(土)
仙台enn 3rd
Guest:Ochunism / Wez Atlas
チケット情報:
一般発売中
前売:¥3,800(税込)/学割¥2,500(税込)
https://eplus.jp/yjc-collective/
EVENT
2023年10月9日(月・祝)「MINAMI WHEEL2023」
RELEASE INFORMATION
YAJICO GIRL「幽霊 - voquote Remix」
2023年9月27日(水)
Format:Digital
Track:
1.幽霊 - voquote Remix
試聴はこちら
YAJICO GIRL「Indoor Newtown Collective」
2023年3月8日(水)
Format:CD, Digital
Track:
1.流浪
2.幽霊
3.雑談
4.街の中で
5.alone
6.FIVE
7.忘れさせて
8.NIGHTS
9.寝たいんだ
10.Airride
11.Better
12.city
13.だりぃ
14.VIDEO BOY
15.indoor
16.IMMORTAL
17.わかったよ / PARASITE
18.休暇
19.いえろう (INC ver.) - bonus track - ※CDのみ収録
初回生産限定盤
CD+Art Book『Indoor Newtown Magazine』
品番:MASHAR-1010(初回生産限定盤)
価格:¥4,091(税込 ¥4,500)
●Art Book『Indoor Newtown Magazine』
メンバーソロインタビュー、撮り下ろし写真、四方颯人エッセイ、10問10答アンケート、クリエイティブコレクションなど全66P
通常盤
CD(紙ジャケ)
品番:MASHAR-1009
価格:¥3,182(税込 ¥3,500)
CD購入、試聴リンク:https://YAJICOGIRL.lnk.to/INC
LINK
オフィシャルサイト@YAJICOGIRL
@yajicogirl
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オフィシャルグッズ ヤジコ屋オンライン
ポッドキャスト「ヤジラジ!」(毎月5のつく日に更新)
@YAJICORADIO