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2023.09.03
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:8月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全18作品の中から、まずはPart-1の6作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。Ayane Yamazaki、EPリリースおめでとうございます。
金子:今回はカバーEPということで、セルフカバーと他の人のカバーとどちらも入ってるんですけど、この「誰も知らない」という曲はご自身が16歳のときに出した作品の中に入っていた曲のカバーで。最近のYamazakiさんはアンビエントポップな感じの印象ですけど、当時はいわゆる弾き語りのシンガーソングライター的な活動をしていて、言ってみたら、今回のカバーはその中間というか。シンガーソングライター的な歌と、近年のアンビエントなアレンジがちょうど混ざってるような印象でした。
みさと:これくらいのアレンジだと、彼女の声の良さとか歌詞がすごく立って聴こえてきたりとか、アレンジによってこんなに化けるんだな、というのを教えてもらった作品と感じてます。さらにbedが今回アルバムなんですけど、ライブレコーディング。
金子:アルバムのタイトルが『Archives:May 27th, 2023(Live)』ということで、おそらくは5月27日にライブレコーディングをして、それがそのまま収録されてるってことでしょうね。
みさと:アルバムのタイトルもクレジットにしちゃう、みたいな。
金子:アートワークも曲のフォルダがポンポンポンと置いてある感じで、このタイトルにマッチしてますよね。彼らは去年から活動が本格的にスタートして、最初は近年のイギリスのポストパンクシーンとシンクロする部分も感じつつ、でも曲を出していくと、テクノ、トランス、レイヴみたいな、クラブミュージック的な色合いもどんどん見えてきて。やっぱりbedというバンドが一番生きるのはライブであり、だから音源もそれをそのまま真空パックして出すのがいいんだろうなって、自分たちでもだんだん気付いていったところもあるのかもしれないですね。
みさと:いや、もうまさにだと思います。"そこがあってこそbedだよね"というのはきっと私たちみたいにライブに行った人にしか分からない良さというか。今って配信が気軽にできる時代だけど、そこにはいい意味でこだわりを持っていなさそう。本当にフィジカルで勝負していて、現場においでよという雰囲気があって、僕たちの正体はそこで観なくちゃ分からない、というところも含めて、すごくコンセプチュアルで素敵なバンドですね。
金子:聴いたら現場に行きたくなりますよね。これはね。
みさと:ですねー。早くまた行きたいですね。そして、TENDOUJIのナオくんがソロでリリースになりまして。
金子:ですね。天童児直という名前で。
みさと:「天童児」と漢字で表記されてます。
金子:ソロはちょこちょこやってはいたみたいですね。
みさと:そうなんですよ。最近弾き語りのライブをやってるなと思ってたので、観に行きたいなと思ってたんですけど、まさかそれが作品になるとは。
金子:テーマとしては「90年代のテレビのBGM」とのことで。確かにノスタルジックな感じがありつつ、でもソングライティング自体はTENDOUJI節であり、日本語を使ったところもありつつ、TENDOUJIらしさはこのソロからも感じられますよね。
みさと:TENDOUJIがバラードをやったらこうなるんだろうな、というような。日本語を歌うナオくんすごく良いなと思って。
金子:新鮮ですよね。
みさと:新鮮だし、この声でこの言葉を発すると、こうやって聴こえるんだっていう、言語の不思議さも改めて面白いなと感じてました。
金子:「90年代のテレビのBGM」かつ「トレンディードラマのBGMみたいな曲」とも書いてあって、僕これ聴いてて管のメロディーラインがある曲にめっちゃ似てる、と思って。
みさと:何々?どれどれ?
金子:「もう恋なんてしない」のメロディーをめっちゃ思い出して。
みさと:うわー、懐メロ来ましたね。
金子:それでちょっと調べたら、あの曲のリリースが1992年。で、やっぱりドラマ主題歌だったんですよね。主役が柴田恭平さん。
みさと:うわー、トレンディドラマを代表する俳優さん。
金子:そうそう。だから、もしかしたらオマージュもあるのかもしれない。
みさと:あるでしょうね。
金子:「あの夏のRadio」というタイトルもね、「壊れかけのRadio」を連想したりもするし、そういう90年代オマージュが散りばめられてるのかなって気もしました。
みさと:TENDOUJIの前作には「BeachBoys」という曲もあって、あれも竹野内豊さんと反町隆史さんのドラマのタイトルで。
金子:あれは何年代だろ?90年代かな(*1997年でした)。
みさと:私ナオくんと同い年なんですけど、小ちゃいとき観てたよねって年代なので、きっとそういうところも反映されてるんでしょうね。
New Release Digest Part 2
みさと:新譜ダイジェストPart-2をお送りしました。リリースおめでとうございます。はじめましてさんが2組いらっしゃいます。まずはNUMAZ。
金子:このバンドは2021年に結成の4人組で、専門学校の同級生で結成され、都内のライブハウスを中心に活動中。Part-1のAyane Yamazakiの曲が16歳のときの作品でって話をしましたけど、偶然にもこの曲もボーカルの新ぬま(づ)さんが16歳のときに作詞・作曲した曲を、NUMAZで再解釈した楽曲ということで。やはり16歳ならではというか、「少女飛行」というタイトルも象徴的ですけど、少女たちの心情に寄り添った、シンガーソングライター的な部分が見える曲ですね。
みさと:「トー横キッズ」なんて、全国区になってしまったワードもありますけど、どの時代にも同じような悩みを抱えた少年少女がいたんだよな、とも思いますし、相手の立場になるってすごく難しいことだとは思うけど、こういう風に共感力って育めることだなとも思いました。興味深い題材の1曲、リリースになってます。
金子:でもバンドアレンジは軽快なので、楽しくも聴けるし、特に一番最後フェードアウトで終わっていくバンドのセッションぽい感じから、やっぱり専門学校の出身で、それぞれプレーヤーとして立ってる人たちだなっていうのもすごく伝わってきました。
みさと:そして青い薔薇、1st EPがリリースになっています。おめでとうございます。
金子:彼女たちは2022年に結成、大阪を中心に活動しているスリーピース。このEPはもともと今年の1月にbandcampで自分たちでリリースしていて、それが今回正式にデジタルリリースされます。作品全体を聴くとシューゲイザーの色が強くて、大阪でシューゲイザーと言うとFRIENDSHIP.的には"揺らぎ"とかもいますけど、彼女たちがもうちょっと海外インディーっぽい感じなのに対して、青い薔薇はもうちょっとJ-POP的な魅力も持っていて、きのこ帝国、羊文学とか、あの辺りに続く大きなバンドに成長することに期待って感じがしますね。
みさと:メロがめちゃくちゃ良いですね。そのJ-POP味というのがすごく伝わってくるし、THE シューゲイザーじゃないところでの間口の広さで、彼女たちが成長していくであろう可能性を秘めてますね。
金子:まだ2022年結成ですしね。
みさと:楽しみなバンドが出てきてくれました。そんなPart-2からお送りするのはどなたでしょう。
金子:エルスウェア紀行をかけようと思います。
みさと:この曲、大好き。もう全部、歌えます!
金子:エルスウェア紀行は良い曲ばっかり。
みさと:エルスウェア紀行は本当に一緒に旅をすると最高のユニットです。
金子:今回はエルスウェア紀行流のダンスナンバーということで。セルフライナーノーツによると、コロナ期間の中でライブに足を運んだときに、目の前にスーツ姿でサイリウムを振りながら自由に踊るショートカットの女性が見えて、"いつだってこの人が自由に踊れる世の中がいいな、自分たちの音楽でも彼女が踊ってくれるだろうか"みたいなことを考えたのがきっかけで作られてる曲ということで。
みさと:いいなー。
金子:いいですよね。こういうエピソードも。
みさと:"スーツを着たまま一心不乱に踊ってしまいたい水曜日とか天気が良いのに気分が晴れない日曜の朝、悲しくて嬉しくてぐちゃぐちゃの雨の日とか浮かれないステップを踏むあなたのどこかの場面で心はねる一端になれたら本当に嬉しいです"という風にセルフライナーノーツが続いているんですけど。まさにサウンドにはすごいハネ感があって、THE ストレートなダンスナンバーという感じなんですけど、ヒナタさんが歌うとこう、置いていく感じと言うんですかね、無条件にただ跳ねてるだけじゃなくて、言葉がすごく馴染むようなボーカルをされているので、このセルフライナーノーツの真意というか、意図がすごく見えてくるボーカル、歌唱だなと思いながら聴いてました。
金子:ソングライティングも抜群に良くて、転調の使い方とか上手いなと思うし、ハネ感みたいなことで言うと、さっき話した「見に行ったライブ」でベースを弾いていた千ヶ崎学さんが今回も演奏をしているということで、ベースの存在感も素晴らしいですよね。
みさと:やっぱり千ヶ崎さんかっこ良かったー。
金子:本当にアレンジもね、いちいち気が利いてるんだよなあ。
みさと:あはは。にくいね、エルスウェア紀行は。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさん2組です。まずはClute。
金子:彼らは元cescoのメンバーということで。今ボーカルのuiちゃんはwuinguinとして、ソロでやってますけど、それ以外のメンバーが新しく始動させたということで聴いてみたら、すごく面白かったですね。インストバンドで編成がギター、ギター、ベース、ドラム、トランペット、バイオリン、音源ではそれぞれがその他もマルチに演奏しているということで。
みさと:なんて秀才たちが集まっちゃったんでしょ。
金子:なおかつ録音してる場所がタオル工場とのことで。
みさと:資料を読んで、このタオル工場をどうにかいじりたいなと思ってずっと熟考してたんですけど、もう全然タオル工場感がないんですよね。フワフワもしてないし、機械音も入ってないし、もうとにかく素晴らしい。
金子:タオル工場に機材を自ら持ち込んで、レコーディングスタジオとして使用したそうです。
みさと:なんでタオル工場で録ろうと思った?
金子:ね、聞いてみたいですよね。でもこういう録音方法をしてみる面白さだったり、ライブ映像もYouTubeに上がってたんですけど、やろうとしてる雰囲気としてはイギリスのBlack Country, New Roadとか、あの辺にも通じる感じがして、すごく自由さが伝わってきて。今はインストだけどそのうち歌い出したりする気もする。
みさと:いろんな風に発展していきそうで非常に楽しみですね。そして、福岡からです。McGrady。
金子:我らが福岡から期待の新星が。
みさと:とてもかっこ良かった。私好きです。
金子:彼らは2020年結成の4ピースバンドということで、まさに「2020年代のロックバンドだな」って感じがすごくしましたね。R&B、ソウル、ファンクとかを吸収しつつ、ロックバンドとして鳴らす、というこの感覚。King GnuもVaundyも既に吸収してきて、その先で何を鳴らすかという2020年代感をめちゃめちゃ感じました。ボーカルの声にインパクトがあって、ちゃんと武器も持ってるし、これから楽しみですよね。
みさと:昔厚武さんがNIKO NIKO TAN TANが出てきたときに「King Gnuとサカナクションのブラッシュアップされたバンド」とおっしゃってましたけど、McGradyはKing Gnuと藤井風かなって。
金子:なるほどね。
みさと:もちろんVaundyもそうだなと思いましたけど、そういったいろんなものを吸収しながら、福岡から出ていく自分たちがここから時代を作っていくんだっていう勢いもすごく感じるので、彼らがどういう風に世界に打って出るのかが楽しみですね。さあ、そんなPart-3からお届けするのは、どうしましょうか?
金子:futuresをかけようと思います。
みさと:EP『Summer Club』リリースおめでとうございます。
金子:futuresも頻繁にリリースしてますよね。
みさと:コンスタントですね。
金子:最近は色んなイベントとかにもどんどん呼ばれるようになってきて、この前も「やついフェス」に出たりとか、活動の広がりが感じられますが、今回は『Summer Club』というEPで、表題曲が「Summer Club」。もともと持っていたフィッシュマンズ・イズムみたいなものは引き継ぎつつ、最近は文字通りクラブミュージック色がどんどん強くなってて、今回の作品も基本打ち込みのトラックがメインで、ダンサブルなクラブミュージック色の強い曲が入っていて。「Summer club」のトラック・メイキングはワンダフルボーイズのアツム・ワンダフルが担当しているということで、ワンダフルボーイズもFRIENDSHIP.から出してるから、FRIENDSHIP.経由で繋がったのかな?
みさと:そうかもしれないですね。友達の輪みたいなやつかもしれない。
金子:正確なところはちょっとわかんないけど、でもその可能性もありそうで、そういう広がりも良いですよね。
みさと:「夏は書き入れ時だ」なんて話を毎年しつつ、夏以外でもずっとご活躍をされてますけど、ただ夏を演奏させたらやっぱり素晴らしい作品ですね。サイケでエレクトロでダブが入って。
金子:レゲエな感じもやっぱり持ち味ですからね。
みさと:ファンクで、グルーヴがあって、どういう風に切り取ったらこういう色んな夏を表現できるのかと。素晴らしい夏の様々な表現が詰まったEPになってます。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin