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2023.08.20
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:8月14日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全21作品の中からPart-1の7作品をご紹介しました。リリースおめでとうございます。saccharinの「TAI/ON」」が大好きなんですよ。
金子:いい曲ですよね。
みさと:空気を読むのではなくて、体温を合わせるという、この表現にしただけで一気に温もりや暖かさが伝わってきますよね。
金子:この曲はsaccharinとして最初に作った曲だそうで。saccharinはもともと松浦くんのお母さんがスナックを営んでいることがインスピレーション源になっていて、お母さんがスナックで人の適温を探して、体温を合わせるのがとても上手だったから、自分もそうなりたいと思って作った曲だそうで、まさにって感じですよね。いろんなアーティストのサポートをやってたり、saccharinにもいろんな人が集まってくるのは、松浦くんが適温・体温を合わせるのが上手な人だからっていう、それを表してる曲になってるなって。
みさと:この番組のディレクターもまさにそんな人ですよね(笑)。
金子:僕さっき知りましたけど、ご実家がスナックだそうで。
みさと:そうそう。スナックはそういう人を育てるんですかね。ちょっと悩んでる人とかも来るしね。
金子:本当に、いろんな人が来るでしょうから。
みさと:包んでくれるような場所の一つなのかもしれないですよね。あとこの曲はTENDREのコーラスも豪華でした。こういうところもさすがsaccharinだなと。さらにDURANも格好良かった。
金子:DURANはDURANでいろんな人のサポートをやってて、いろんな人に呼ばれてますけど、この人の場合は適温というよりは、常に高熱を出してるというか(笑)。
みさと:あはは。
金子:でもその高熱を求めて、いろんな人に呼ばれるんだろうなって。
みさと:"すいません、ちょっと着火してもらえませんか?"みたいなときに"DURAN呼ぼう!"ってなる。
金子:俺は俺だから、俺が欲しい人は呼んでくれっていう。この曲もリフ一発のロック・サウンドで、完全にDURAN節ですね。
みさと:格好良かったですね。
金子:DURANは今山梨のとあるスペースに自分のアナログ機材を全部持ち込んで、録音から全部自分でやってるらしくて。
みさと:そうなんだ、自家栽培だ。
金子:それでこの音が生まれてるみたいですよ。
みさと:ジャケットもシスターが紙タバコ吸ってて、めちゃめちゃいけてるなと思うんですよね。さあ、そんなPart-1ですが、どうしましょうか?
金子:Prune Deerをかけようと思います。
みさと:素晴らしかったです。
金子:こちらは香港発のインストバンドですけど、2013年結成なので、今年で10周年。そんなタイミングでアルバムが完成して、10曲入りなんですけど、正統派のインスト・ロック、ポスト・ロックという感じがすごくしました。クリーントーンの繊細なアルペジオと、歪んだハードコアなバンドサウンドと行き来するような感じがあるし、5分超えの曲が多くて、長いと7分ぐらいの曲もあったり、1曲1曲作り込んで、1曲の中で景色を描いていくことを丁寧にやってる印象もある。でもその一方で新しいことにもチャレンジしていて、ボーカルが入った曲もあれば、ピアノだったりアコギだったりシンセだったり、曲毎にいろんな楽器も使っていて、ちゃんとこれまでやってきたことと新しいチャレンジと両方詰まった作品になっているなと感じました。
みさと:今からお送りする「羽毛 Feathery」に関しては、雄大さの中にタイトなドラムが共存してるという、その矛盾が必然のようにシンデレラ・フィットしてる印象がすごくありました。
金子:詳細なクレジットは手元にないんですけど、曲によってミックスをtoeの美濃さんがやってたり、マスタリングをサカナクションとかもやってる浦本さんがやってたり、日本のミュージシャンとかエンジニアさんも関わって作ってるみたいなので、日本でもより広まってほしいです。10月には来日も決まってて、LITEと対バンすることも決まっているので、そちらもお楽しみに。
みさと:では、予習をしましょう。
New Release Digest Part 2
みさと:新譜ダイジェストPart-2をお送りしました。リリースおめでとうございます。ROUさん良かったな。夜にぴったり。
金子:ラジオで聴きたい。カーステで聴きたい。
みさと:良いですね。高速道路で。トラックがループしてる感じがあったので、それこそ首都高とか環状線乗りながらが良さそうです。
金子:この曲はもともと2021年にリリースした「夜をさけ」という曲を、Sho Asanoさんがリミックスしていて。よりダンサブルなトラックになることによって、爽快さが加わってめちゃめちゃ気持ち良い曲でしたね。
みさと:夏のお供にもしたいですね。そして、hyouさんも良いです。
金子:ROUさんからhyouさん。
みさと:はい(笑)。
金子:どちらもR&B系ですけど、曲調・トラックは全然違って、hyouさんの方は弾き語りっぽいニュアンスに簡素なビートがついた感じですけど、まず歌声が素晴らしいですよね。
みさと:スペシャルです。
金子:セルフライナーノーツによると、この曲は夏を楽しむ気分にさせてくれる曲ではなく、暑くて退屈でボーッとする夏のお供にぼんやりと聴ける曲、ということで。ROUさんの曲は車の中でって話でしたけど、こっちは家とかでボーッとしながら流れてても気持ち良いかもしれないですね。
みさと:動かなくちゃいけないのに動けないっていう時間あるじゃないですか、特にこれだけ暑い日が続くと。でもその時間ってもしかしてめちゃめちゃ幸せなのかなって思えたんですよ。意外とみんな嫌いじゃないんだと思う。そこから抜け出せないのは後ろめたさもあるんだけど、なんかダルってしてるこの時間って絶対必要なことだし、それをすごく肯定してくれる一曲なので、絶対にこれから必要な曲だと思う。
金子:その時間が明日への英気を養うことにもなるでしょうしね。
みさと:今この瞬間、そばにいてくれる曲だと思います。そんなPart-2からはどうしましょう。
金子:宇宙まおさんの新曲をかけようと思います。
みさと:まおちゃん、10周年です。おめでとうございます。
金子:Prune Deerは結成10周年でしたけど、宇宙まおさんはデビュー10周年ということで、おめでたいですね。そんなアニバーサリーのタイミングでクラウドファンディングを実施しまして、ファンの方たちのサポートもあり、12曲入りのアルバムが完成。今回の「飛来」という曲はその中からの先行シングルと。この曲はOKAMOTO'Sのオカモトコウキくんがプロデュースをしていて、miidaのミズキちゃんのYouTubeチャンネルに出たことがきっかけでコウキくんとも仲良くなったみたいで。レコーディングもmiidaのStudio KiKiでやってるらしくて、それにまず「おっ!」って思っちゃった。こんなにちゃんとレコーディングできるような環境になってるんだなって。曲自体もコウキくんのポップセンスが宇宙まおさんの楽曲と合致していて、非常に軽やかなポップソングでもあるんだけど、でもリズムチェンジとか展開は凝っていて、面白みもあって、すごく良い曲でしたね。
みさと:小気味良いギターポップに、さすがコウキくんだな、という感じもあるんだけど、やっぱり宇宙まおちゃんが歌ってるんだ、彼女の世界観なんだ、というのが伝わってくるというか。安定感とかボーカル力って、この10年で宇宙まおちゃん的にはすごく高みをずっと歩み続けてるなって感じてたんですけど、歌詞の根本はずっとまおちゃんなんだなっていう、嬉しい変わらなさも見える作品だと思いました。
金子:アルバムにはさらにいろんな方がプロデューサーとして参加されてるようなので、それも楽しみですね。
みさと:妥協のない最強の布陣で作ることができたと書いてあって、クラファンで思ってた以上に資金が集まったという、ファンの人も期待してたんだよなって、それがすごく嬉しいし、まおちゃん本人も音楽を続けて良かったって思えることが形として見えたんじゃないかなと思います。
New Release Digest Part 3
みさと:Part-3聴いていただきました。リリースおめでとうございます。「あーーー(A4A4A4)」なんですね。
金子:鍵を返せの曲名。ちょっと難しいですよね。
みさと:ローマ字の"A"と数字の"4"をセットで3つ。
金子:A4A4A4って書いて。
みさと:「あーーー」。読めないよ。読めなかったけど、でも歌ってた。
金子:セルフライナーノーツには「微妙に移り変わる色彩を人間の気まぐれで表現した曲」と書いてあって。この微妙に移り変わる感じをAと4で表現してるという、多分そういうことでしょうね。
みさと:数字の5がSに見えるみたいな。面白いですね。
金子:はしメロちゃんはこういう言葉遊びが面白いですよね。
みさと:本当に使い方が上手ですね。そしてバンドも似合う。
金子:ソロでも活躍してるけど、バンドもいいですよね。
みさと:そして、こちらもバンドも良いけどソロも良いです、山本政幸さん。
金子:バンドなのかソロなのか。
みさと:結局The Cigavettesのみんなでやりましたって書いてありますね。
金子:Prune Deer、宇宙まおさんと10周年縛りでPart-1、2と紹介してきましたけど、The Cigavettesは2013年に解散してるので、10年ぶりの復活だったりもして。実際曲を聴いてもやっぱりThe Cigavettes節なんですよね。メンバーもそうだし歌ってる人もそうだから、そりゃそうだろうって話なんだけど、でもちゃんとあの頃のUKロックサウンドを今に鳴らしてくれていて、それが今回まとまってミニアルバムという形になり、昔からのファンにも嬉しいし、また最近オアシスとかがソロで盛り上がってたりもするから、新しいファンにも刺さりそうな気はしますね。
みさと:「また同じメンバーでつくるかも」と書いてあるんですけど、私これ別居婚だと思うんですよ。好きだし、頼りにもしてるし、この人たちと一緒にいたいっていう気持ちはあるんだけど、でもきっとThe Cigavettesじゃなくって、この距離感が一番良いんだっていう、別居婚と一緒だなと思って。ずっと良い関係値を保ちながら作り続けてて欲しい。さあ、そんなPart-3はどなたを紹介しましょう。
金子:sucolaをかけようと思います。
みさと:私の大好きなアーティストさんたちをリファレンスにして1曲にしてくださって、「私も好き好き」って思いながら、ライナーノーツを読んでおりました。
金子:これ良い曲ですよね。sucolaは毎回色んな手法で色んな曲調をやってくれますけど、今回はsucola史上一番速い曲ということで。もともとはBPM90ぐらいだったらしいんですけど、BPM135ぐらいになってて、非常にダンサブルなトラックになっていて。で、さっきみさとさんがちらっと言ったリファレンスとして挙げてくれてるのが、NewJeans、サカナクション、ディスクロージャー。
みさと:最高じゃん!
金子:これ、まさにって感じですよね。
みさと:本当に。歌唱方法とか音の並び方はNewJeans感あるし、トラックはディスクロージャーだし、合唱のところはちょっとマッシュアップしたくなっちゃうようなサカナクションもいましたし、分かるんだけど、でもちゃんとsucolaになってるから不思議だった。
金子:NewJeansが流行ってたりして、こういうダンストラックでポップスをやるのは今のトレンドにもなっているから、そういうところにパッっと反応してるのもいいなと思いつつ、みさとさん言ってくれたようにちゃんとsucola節に落とし込めてるのは、ずっといろんな曲を作ってきてるからこそだなって感じますよね。
みさと:これだけ堂々とミュージシャンの名前も載せて、伝わるくらいちゃんと音にも落とし込んでるのに、sucolaになれるのってなかなかできないと思います。
金子:単純にめちゃめちゃキャッチーな夏ソングとしても、非常におすすめです。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin