SENSA

2023.06.08

ライブバンドとしてフィジカルな進化を遂げたYAJICO GIRL 過去と現在を繋ぎ合わせて未来を示したツアーファイナル

ライブバンドとしてフィジカルな進化を遂げたYAJICO GIRL 過去と現在を繋ぎ合わせて未来を示したツアーファイナル

5月28日、YAJICO GIRLがワンマンツアー『ヤジヤジしようぜ!vol.8』のファイナルとなる東京公演を代官山UNITで開催した。1stフルアルバム『Indoor Newtown Collective』のリリースに伴い、東名阪で行われた今回のツアーは、2019年に発表した『インドア』以降の歩みを凝縮したアルバム同様に、過去と現在を繋ぎ合わせることでこれから先の未来を示すようなツアーとなった。

DSC02893.jpg
アンビエントなSEとともに吉見和起、武志綜真、古谷駿、榎本陸の順にメンバーが一人ずつ登場し、最後に四方颯人がセンターにつくと、ライブは「2019」からスタート。『Indoor Newtown Collective』には未収録ながら、『インドア』の最後に収録されていたこの曲からライブを始めることには明確な意図を感じさせる。ラストのデジタルクワイアから「Better」に突入すると、ここから一気にテンションを上げ、ムードメーカーの榎本がステージ前方に出てオーディエンスに手拍子を求めていく。さらにはダンサブルな「雑談」へと繋げると、四方を中心としたアグレッシブなパフォーマンスからはライブバンドとしてのフィジカルな進化が確かに伝わってきた。

000007.jpg000014.jpg
吉見が特徴的なループフレーズを聴かせる「美しき町」に続いては、2017年に発表された『沈百景』の収録曲である「サラバ」を演奏。ギターロック時代のナンバーを2023年のYAJICO GIRLがよりフィジカルに鳴らす光景というのも、やはり『Indoor Newtown Collective』以降のモードを感じさせるもの。「VIDEO BOY」でパッドと生ドラムを巧みに使い分ける古谷のプレイや、古谷とともに屋台骨を支える武志による「街の中で」の美しいコーラスワークなど、メンバーそれぞれがステージ上で存在感を発揮し、コレクティブとしての現在地を示してもいた。

000022-2.jpg000031.jpg
今回のツアーがホームグラウンドである大阪の江坂からスタートし、ファイナルで代官山にたどり着いたことを話して、〈東京の夜にはもう到底ないような 感情を確かに僕らは見つけたよ〉と歌う「NIGHTS」をムーディーなオルガンの音色とともに届けると、「WAV」から「どことなく君は誰かに似ている」で再び徐々にテンションを上げていき、シームレスに繋いだイントロから大歓声が起きたのが「幽霊」。ダンスミュージック路線の最新曲にして新たなライブアンセムとなっているこの曲では場内に手拍子が広がり、間奏のノイズギターを挟んでサビでオーディエンスの手が一斉に上がったのも印象的。そこから畳み掛けられた「だりぃ」は近年のダンスミュージック路線とかつてのギターロック路線が融合したような一曲で、榎本がサビで手を振ったり、間奏で拳を突き上げたりと、この日一番のパーティーモードで大盛り上がりとなった。

000012.jpg000008.jpg000018.jpg
「『インドア』はある意味自分のわがままで、一人で引っ張って作った作品だったけど、それからの5年くらいでメンバーやスタッフ以外にも関わってくれる人が増えて、みんなで一緒に作り上げて、やっと『これがYAJICO GIRLの音楽です』って言えるアルバムができたと思います」というMCのあと、四方の弾き語りによる「alone」から、メンバー5人の絆を感じさせる「FIVE」を続けたのは、まさにYAJICO GIRLがもう一度バンドとして結束していく様子を描いたようであり、間奏でお互いに顔を見合わせながら演奏していたのは何ともグッとくるものがある。そこからコレクティブとしての進化を感じさせたのが武志と吉見による共作曲の「忘れさせて」で、この曲の持つ普遍的なポップスとしてのスケールの大きさはバンドの新たな可能性を提示するものであり、アウトロのアームを駆使した吉見のギターソロも素晴らしかった。

000021-2.jpg000020.jpg
そして、この日最も鮮烈な記憶として残ったのが、このあとに演奏された「Airride」だ。初期のギターロックや近年のダンストラックのような即効性のあるナンバーではないが、ジワジワと音と言葉を重ねていき、四方がCメロ職人としての才能を存分に発揮して、後半のエモーショナルな爆発へと繋げていくこの曲のエネルギーはYAJICO GIRLならではのものであり、一曲の中で様々な感情の旅をするようなこの感覚は音楽ならではのスペシャルなもの。四方は途中のMCでアルバムについて「最近はトレンドとかですぐに消費されてしまうものも多いけど、10年後とか20年後にも残るような作品になったと思う」という話もしていたが、時代を超えて残る曲というのはまさにこういう曲ではないかと思う。

000030-2.jpg000035.jpg
また、「Airride」で四方は〈いつになれば定まるマイウェイ〉と歌い、本編のラスト「流浪」では〈孵化してまだ二十数年 スタイルが定まらない〉と歌っていたりもするが、もがきながらもその過程での確かな進化や成長を見せてくれることは僕らがバンドに魅了される大きな理由のひとつだ。『閃光ライオット』でのグランプリ獲得から歩みを始め、先日再始動をしたGalileo Galileiはそんなバンドだと思うが、『閃光ライオット』の後継である『未確認フェスティバル』でのグランプリから歩みを始めたYAJICO GIRLもまた、たくさんのリスナーから愛される要素を持っているバンドであることを再確認できた。

000025.jpg000038-2.jpg
アンコールでは『未確認フェスティバル』のコンピレーションに収録されていた最初期曲のリアレンジで、『Indoor Newtown Collective』のCD盤にのみボーナストラックとして収録されていた「いえろう(INC ver.)」を初披露して、もう一度過去と現在を繋ぎ合わせると、最後はオーディエンスへの想いを込めた「休暇」を演奏。『インドア』のラストナンバーである「2019」から始まり、『Indoor Newtown Collective』のラストナンバーである「休暇」で締め括られたこの日のセットリストは、やはりこの5年間の歩みを総括し、未来へ繋げるものだったと言っていいだろう。さあ、その先の時代へ。

文:金子厚武
撮影:Goku Noguchi

LIVE INFORMATION

みんなコレクティブ〜全国でコラボTOUR〜
みんこれ20230525-1.jpg
神戸VARIT.
10月1日(日)
Guest: ???

横浜Buzz Front
10月7日(土)
Guest:???

金沢GOLD CREEK
11月4日(土)
Guest: ???

名古屋ell.SIZE
11月5日(日)
Guest: ???

広島4.14
11月11日(土)
Guest: ???

福岡OP's
11月12日(日)
Guest: ???

仙台enn 3rd
11月18日(土)
Guest: ???

チケット情報:
前売:3,800円(税込) / 学割:2,500円(税込)

オフィシャル2次先行
6/8(木)12:00〜6/25(日)23:59
https://eplus.jp/yjc-collective/

EVENT
2023/6/23(金) yunoka pre. 「CONT.ACT」(大塚Hearts+)
2023/7/1(土) 「見放題2023」
2023/7/6(木) sano ibuki pre. (新代田FEVER)
2023/7/16(日) 「GFB'23(つくばロックフェス)」(つくばねオートキャンプ場)
2023/9/16(土)〜18(月・祝) 「TOKYO CALLING 2023」※いずれかの1日出演

LINK
オフィシャルサイト
@YAJICOGIRL
@yajicogirl
@YAJICOGIRL

気になるタグをCHECK!