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2023.03.22
シンガーソングライターSakuが作詞・作曲・編曲までを自身で手がけるソロプロジェクト"Somewhere"。「より良いどこかへ自分の魂を連れていくという思いを込めて名付けた」という"Somewhere"のテーマは、「旅と冒険」。フリッパーズ・ギターや羊文学などを手掛けてきた吉田仁をプロデューサーに迎え、WATARU.S（SISTER JET）やロンドン出身のシンガーシングライターであるロバート・タイラー・ウィルソンがコライトやアレンジで参加した1stアルバム『Somewhere In A Dream』で基調となっているのは、彼女の弾くアコースティックギターの音色とドリーミーな多重コーラス。全編をかけっぱなしにしていても気持ちが澄んでくるようなサウンドメイクは抜群で、聴き込めば聴き込んだだけ感情の陰影に触れてくる曲の構成や深みは秀逸。歌詞はほぼ英語で、少女の孤独な魂が自身の記憶の森を彷徨い、"ここではない、どこかへ"と旅をしていく冒険譚となっている。
全10曲収録で、どこまで意図的なものなのかはわからないが、アナログレコードのA面とB面のような構成にも捉えられ、前半の５曲では"太陽" "早春の鳥" "暗い空" "星" "天窓"......と空を見上げている視点で描かれている。１曲目の「Sunrise」で歌う言葉を失うという長い冬を越えて〈新たな日〉を迎え、「Find A Place」で〈自分の道を進む〉ために〈居場所〉を探して旅に出ることを決意し、「Somewhere In A Dream」で夢の中を彷徨う。このタイトル曲に登場する〈My Moon〉＝〈私の月〉は彼女自身のメタファーのように感じる。続く、「From My Side」では〈私には新しい何かが必要なの〉と懇願。そして、鳥の歌が聞こえる弾き語りの「Komorebi」で〈Tell Me／教えて〉と繰り返し、A面が締め括られる。
後半の５曲には"洪水" "岸" "海底" "アラル海"......と海や川を想起させるフレーズが盛り込まれているが、B面の１曲目は「From My Side」と対をなす「On Your Shore」からはじまる。この２曲は、ラブソングとしても聴けるが、"あなた"とは私の中の"私"、過去や常識や世間体に捉えられている自分自身なのかもしれない。ややこしい言い方になるが私（過去）のそばを離れ、私（未来）の岸へとたどり着いたのではないだろうか。続く、「Mother And Me」では、たった一人の母への愛と感謝を綴り、「Don't Let Me Go」で、春を待って眠っている"私"を起こす声が聞こえてくる。そして、〈丘の上に浮かぶ冷たく鋼のような月〉を見つめる「Alone」で、時に自分を見失いそうになりがらも、しっかりと前を見据えて、孤独と痛みを受け止めた私は〈新しいメロディー〉と共に夢から覚め、インストナンバー「Forest」で梟が鳴く夜の森から帰還。冒険の旅から帰ってきた少女は、「Sunrise」で再び朝を迎える----。
この音盤の中には森が広がっており、その奥深くには大きな湖がある。アンニュイだが清冽な歌声と穏やかなアコースティックギターが水面を揺らして波紋を作り、多彩なコーラスが新たなきっかけを与え、波紋を無限に広げていく。その湖を覗き込んだ時に見えるのは誰の顔か。これは、Sakuによる「私の20代の記憶を音楽という形にした」物語ではあるが、リスナーにとっても自身の記憶や経験を重ね、自分自身に出会う冒険の旅に出ることができる、水鏡のようなアルバムとなっているのだ。
文：永堀アツオ
Somewhere「Somewhere In A Dream」
2023年3月22日（水）
Format：CD / Digital
Label：FRIENDSHIP.
CD (Somewhereオンラインショップ ) 品番:SWSK-0001
価格:3,300 円 ( 税込 ) / 3,000 円 ( 税抜 )
※一部店舗・オフィシャル通販「Somewhere Online Shop」での販売
Track：
1. Sunrise
2. Find A Place
3. Somewhere In A Dream
4. From My Side
5. Komorebi
6. On Your Shore
7. Mother And Me
8. Don't Let Me Go
9. Alone
10. Forest
試聴はこちら
@somewhere_saku
全10曲収録で、どこまで意図的なものなのかはわからないが、アナログレコードのA面とB面のような構成にも捉えられ、前半の５曲では"太陽" "早春の鳥" "暗い空" "星" "天窓"......と空を見上げている視点で描かれている。１曲目の「Sunrise」で歌う言葉を失うという長い冬を越えて〈新たな日〉を迎え、「Find A Place」で〈自分の道を進む〉ために〈居場所〉を探して旅に出ることを決意し、「Somewhere In A Dream」で夢の中を彷徨う。このタイトル曲に登場する〈My Moon〉＝〈私の月〉は彼女自身のメタファーのように感じる。続く、「From My Side」では〈私には新しい何かが必要なの〉と懇願。そして、鳥の歌が聞こえる弾き語りの「Komorebi」で〈Tell Me／教えて〉と繰り返し、A面が締め括られる。
後半の５曲には"洪水" "岸" "海底" "アラル海"......と海や川を想起させるフレーズが盛り込まれているが、B面の１曲目は「From My Side」と対をなす「On Your Shore」からはじまる。この２曲は、ラブソングとしても聴けるが、"あなた"とは私の中の"私"、過去や常識や世間体に捉えられている自分自身なのかもしれない。ややこしい言い方になるが私（過去）のそばを離れ、私（未来）の岸へとたどり着いたのではないだろうか。続く、「Mother And Me」では、たった一人の母への愛と感謝を綴り、「Don't Let Me Go」で、春を待って眠っている"私"を起こす声が聞こえてくる。そして、〈丘の上に浮かぶ冷たく鋼のような月〉を見つめる「Alone」で、時に自分を見失いそうになりがらも、しっかりと前を見据えて、孤独と痛みを受け止めた私は〈新しいメロディー〉と共に夢から覚め、インストナンバー「Forest」で梟が鳴く夜の森から帰還。冒険の旅から帰ってきた少女は、「Sunrise」で再び朝を迎える----。
この音盤の中には森が広がっており、その奥深くには大きな湖がある。アンニュイだが清冽な歌声と穏やかなアコースティックギターが水面を揺らして波紋を作り、多彩なコーラスが新たなきっかけを与え、波紋を無限に広げていく。その湖を覗き込んだ時に見えるのは誰の顔か。これは、Sakuによる「私の20代の記憶を音楽という形にした」物語ではあるが、リスナーにとっても自身の記憶や経験を重ね、自分自身に出会う冒険の旅に出ることができる、水鏡のようなアルバムとなっているのだ。
文：永堀アツオ
RELEASE INFORMATION
Somewhere「Somewhere In A Dream」
2023年3月22日（水）
Format：CD / Digital
Label：FRIENDSHIP.
CD (Somewhereオンラインショップ ) 品番:SWSK-0001
価格:3,300 円 ( 税込 ) / 3,000 円 ( 税抜 )
※一部店舗・オフィシャル通販「Somewhere Online Shop」での販売
Track：
1. Sunrise
2. Find A Place
3. Somewhere In A Dream
4. From My Side
5. Komorebi
6. On Your Shore
7. Mother And Me
8. Don't Let Me Go
9. Alone
10. Forest
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@somewhere_saku@somewhere_saku
