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2023.03.16
FM福岡で毎週水曜日 26:00~26:55にオンエアしている音楽番組「Room "H"」。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本 大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)
(森山)近況ということで、先日お知らせされたかと思いますが、odolの「時間と距離と僕らの旅」のリワークが今月リリースされます。〈Rework Series〉の第4弾ということで、少し間が開いたんですけど、またリリースできるということでぜひ楽しみに待っていただけたらいいなと思っております。そしてお知らせしていたアルバムも着々と完成に近づいております。実は今、収録しようと思っている曲が増えすぎて、アナログで出そうと思っているんですけど、LPに収まらないかもしれないというちょっとした懸念が発生中です。嬉しいことなのですが、なんとか良い形で完成させられればなと思っておりますので、そちらもぜひ楽しみに待っていてください。
ここからは@リビングルーム。最近僕がハッとしたことと今聴いてもらいたい音楽についてお話しするお時間です。ということでハッとしたことは、探してみてもあまり思いつかなかったですけど、最近じゃないですけど一つ気づいたことがあったので共有したいなと思います。ここのところ何もかもが、食品とかも、ちょっと値段高いじゃないですか?スーパーに行ってもなかなか贅沢しづらいなと思う毎日ですよね。僕はコーヒーが好きで毎日コーヒーを淹れて飲んでいるんですけど、コーヒー豆もやっぱりどんどん去年ぐらいから値上がりしています。毎日良いコーヒーを飲むというのもなかなか厳しいものがあって、普段使う豆はスーパーで安いものを買っているんですけど、どうしても、良い豆よりは美味しくないじゃないですか(笑)?ちょっと美味しさが下がるので、「どうしたもんかなー」とずっと軽く悩んでいたんですけど、安いコーヒー豆はなるべく薄く入れると美味しいということにようやく気付きまして。濃い深いコーヒーが好きなので、なるべく濃く入れるために豆を細かく挽いたりとか、熱いお湯で出したりと設定していたんですけど、逆にお湯をぬるめだったり、粗挽きにしたりして、薄くサッと出すみたいなことをすると、安い豆でも雑味みたいなのがあんまり出ずに意外と美味しくいただけるということですね。全自動の機械を使っていて、ハンドドリップしているわけではないので、毎日のコーヒーにそんなにこだわっているわけじゃないんですけど、その設定をするだけで、かなり満足度が上がっていますので同じ悩みを持つ方はぜひ試してほしいなと。逆にodolのファンの皆さんは、コーヒーとか詳しそうな気がするので、安い豆を美味しく飲むコツを知っている方がいたら教えていただきたいなと思っております。ということでそんなハッとしたことでした。
カラオケというのは皆様も親しみ深いと思いますが、皆様は行きますか?僕はいま全く行かないんですよね。本当に何年行ってないかというくらい行ってないんですけど、それでも学生の頃まではよく行っていました。小学生の頃とかは家族と行っていたんですけど、中学生になって以降は僕の地元は特にそんな遊ぶ場所とかも多くなかったので、放課後とかはカラオケというのが割と定番でしたね。そんな懐かしい思い出と共にいろいろと選曲してみましたのでご紹介していこうかなと思います。
早速1曲目に選んだのは、スガシカオさんの「黄金の月」です。1997年5月に発売された、スガシカオさんの2枚目のシングルです。1stアルバム『Clover』に収録されているんですけど、スガシカオさんは僕が本当に最初にハマったアーティストの一人です。小学生の頃にすごく聴いていて、その頃はレンタルが主流だったのでCDショップに行って借りて、いつも聴いていました。スガシカオさんは今も素晴らしい曲を生み出し続けていますけど、当時の曲も久しぶりに聴いて、思い出補正とかなしにしても、今聴いても本当にすごくいいなと感じました。やっぱりメロディーも声も、そして歌詞も、そのどれもがスガシカオさんにしか出せないというか。そういうカラーがすごく濃い、記名性がすごく高いアーティストだなと感じました。当然ハマっていたので、カラオケでいろんな曲歌っていたような気がするんですけど、正直今となってはどの曲を歌っていたかというのは思い出せないので、今回は好きな曲の一つを本日はお送りしたいと思います。
本日の番組後半は、「ピアニスト/ピアノ曲」特集をお送りしたいと思います。これまで実はやってそうでやってなかったような気がするなということに前回気がつきまして、改めて「ピアニスト/ピアノ曲」特集というのをやってみようかなと思って選曲してみました。なかなか1回のコーナーでは紹介しきれないと思いますので、今回、次回と2回にまたがってお送りしていきたいなと思っております。本日はこの特集の前半をお送りしていこうと思います。本日は2曲だけ紹介したいと思います。僕の好きなピアニストだったり、ピアノ演奏の作品をあくまでも今の気分というところになるんですけど、いろいろとご紹介したいなと思います。
まず1曲目に選んだのは、前回の「宇宙へ行った音楽」特集でもご紹介しましたグレン・グールドです。現在、地球から一番遠くにあるピアノ曲ですね、グールドのバッハ。ボイジャー号に乗っています。前回の復習ですね(笑)。そういう意味では地球を代表するピアニストでもあるグレン・グールドなんですけど、皆さんはどのようなイメージがありますか?名前を全く聞いたことがないという方は少ないかなと思いますけど。唸り声を出すとか、低いピアノ椅子に座っているようなイメージとか。もう少し詳しい方とかはコンサートを全然しないピアニストみたいなイメージもあるかもしれないですけど、そういう、西洋音楽の文脈の中では少し変わったというか、すごく特徴のある存在感を放っています。
改めてグレン・グールドを少しご紹介しますと、1932年カナダ生まれですね。1956年にデビュー作として、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」というのをレコーディングし発表して、その作品で一気に脚光を浴びました。それからコンサートや録音して発表するという活動していたのですが、ある時期から演奏会やコンサートというのより、スタジオでの録音、つまりレコード作品に重きを置いて、「そっちが自分のやるべきことだ」ということでコンサートを一切やめちゃって、それからはスタジオで活動していたという方です。これも当時にしてみるとすごく革新的なことではあるんですよね。今ではそういう人もいるよねという感じかもしれないですけど。
ちょうどその2年後ぐらいのほぼ同時期に、ビートルズもコンサートをやめたんですよね。当時はちょうど録音、レコードの技術が発達してきて、コンサートで演奏するよりも録音の方が自分の表現が出来ると思うミュージシャンが増えたというのもあると思います。
それ以前の音楽というのは演奏ありきというか、音楽家が活動する場には必ず演奏が必要だったという時代でした。でもこの時代から録音と編集というのが生まれてきて。「録音と生演奏」とか「レコーディングとライブ」の関係性って、現在はほぼ全てのミュージシャンとリスナーが、どっちにより価値を見出しているのかとか、どういうバランスなのかというのはそれぞれの形、捉え方があると思うんですけど、その始まりに位置する時代の人たちなんですね。
そんなグレン・グールドなんですけれども、今回選んだのは「ゴルトベルク変奏曲」という曲で、バッハの曲です。バッハが作っていた時代にはピアノってなかったんですよね。今のピアノはまだ発明されてなくて、チェンバロとか古楽器はあったんですけど、バッハはそういうもので音楽を作っていました。そういうこともあって「バッハの作品を現代のピアノで演奏するのは間違ってるよね」というか「本来は古楽器で演奏されるのがあるべき姿だよね」という考え方は現在もあって、当時はその風潮がもっと強かったようですね(もちろんそれも素晴らしいことだと思います)。そしてバッハの曲というのは今ほど演奏されるようなものでもなかったんですね。そんな時代の中でデビュー作としてピアノでバッハを弾いて、しかもその解釈が圧倒的だった。一気にバッハのイメージを変えたとされているのが、このグールドです。そこからバッハといえばグールド、グールドといえばバッハみたいなそういうイメージになっていきます。
僕がグールドのバッハ作品をいいなと思うのは、バッハの作品の、音符の並びとしての美しさというのと、それを超えた音楽の無限大さや自由さというのを、聴くたびに感じられるところです。音楽が生まれるのって、作曲家が譜面を書くだけじゃなくて、それを誰かが演奏して誰かが聴くことによって生み出されていると思うんですよね。グールドのバッハというのは、「作曲することと同じぐらいのパワーが、演奏にはあるんだ」ということがよくわかるんですよね。他の人の演奏とか、逆に古楽器という本来あるべきとされている形で演奏されていたら、聴こえて来なかったメロディーや和声の響きというのが、グールドの演奏からは聴こえてきたりして、そういう演奏の力というのがすごく感じられるんじゃないかなと思います。「バッハってこんなにかっこいいんだ」って、多くの人が感じたと思います。
今回ご紹介する「ゴルトベルク変奏曲」というのは2回録音されていて、1955年にデビューした時に録音したバージョンと、1981年に新録されたバージョンの2つあって、今回はその81年の方を流そうと思います。55年のバージョンと比べて、今回流すのは「アリア」なんですけれど、それだけでも収録時間が1分以上長くなっています。そういう風に時代とともにグールド自身の解釈が変わっていって、ピアノとか録音に対する意識の変化というのもあって、全く同じ曲なんですけど、違う作品にみたいなっていって、そこもまた「音楽って自由だな」「演奏ってすごいな」と思うところです。そういう風に聴き比べてみるのもおすすめです。
ということで本日は「ピアニスト/ピアノ曲」特集の前半をお送りしたんですけれども、2曲ともバッハということで。いまバッハにハマっているところもあるのでそういう選曲になりましたが、どうでしたか?良いですよね。バッハを改めて聴くというタイミングはあまりない方も多いと思いますけど、こうやって演奏と録音の力で、2,300年ぐらい前の曲でも本当に今のプレイリストに入っていてもおかしくないような素晴らしい楽曲が残されているという。いやー、音楽の父ですね。ということで次回お送りする後半は打って変わって現代の作品たちをご紹介していこうかなと思っておりますので、そちらも楽しみにしていてください。
スガシカオ「黄金の月」
玉置浩二の「田園」
小沢健二 feauturing スチャダラパー「今夜はブギー・バック (nice vocal)」
グレン・グールド「バッハ: ゴルトベルク変奏曲 アリア (1981録音) 」
Marta and Gyorgy Kurtag「神の時こそいと良き時 第1曲 ソナティーナ」
番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #RoomH をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!
放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。2022年8月24日にシングル「ありえないよ。」を、同年11月30日にはシングル「Blur」をリリース。2022年6月1日にソロ第1弾シングル「この星からの脱出」をリリース。2022年7月8日にはソロ第2弾シングルでギタリスト「こーじゅん」をフィーチャリングに迎えた「フライディ・チャイナタウン (Acoustic Cover)」をリリース。
オフィシャルサイト/ @yourness_on/ @yourness_kuro
松本大
長崎県出身。2021年までLAMP IN TERRENのフロントマンとしてバンド活動し、現在次の活動に向けて準備中。
@pgt79/ @n.trueve
森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト/ @odol_jpn/ @KokiMoriyama
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)
(森山)近況ということで、先日お知らせされたかと思いますが、odolの「時間と距離と僕らの旅」のリワークが今月リリースされます。〈Rework Series〉の第4弾ということで、少し間が開いたんですけど、またリリースできるということでぜひ楽しみに待っていただけたらいいなと思っております。そしてお知らせしていたアルバムも着々と完成に近づいております。実は今、収録しようと思っている曲が増えすぎて、アナログで出そうと思っているんですけど、LPに収まらないかもしれないというちょっとした懸念が発生中です。嬉しいことなのですが、なんとか良い形で完成させられればなと思っておりますので、そちらもぜひ楽しみに待っていてください。
「少年時代のカラオケソング」というテーマで紹介!@リビングルーム
ここからは@リビングルーム。最近僕がハッとしたことと今聴いてもらいたい音楽についてお話しするお時間です。ということでハッとしたことは、探してみてもあまり思いつかなかったですけど、最近じゃないですけど一つ気づいたことがあったので共有したいなと思います。ここのところ何もかもが、食品とかも、ちょっと値段高いじゃないですか?スーパーに行ってもなかなか贅沢しづらいなと思う毎日ですよね。僕はコーヒーが好きで毎日コーヒーを淹れて飲んでいるんですけど、コーヒー豆もやっぱりどんどん去年ぐらいから値上がりしています。毎日良いコーヒーを飲むというのもなかなか厳しいものがあって、普段使う豆はスーパーで安いものを買っているんですけど、どうしても、良い豆よりは美味しくないじゃないですか(笑)?ちょっと美味しさが下がるので、「どうしたもんかなー」とずっと軽く悩んでいたんですけど、安いコーヒー豆はなるべく薄く入れると美味しいということにようやく気付きまして。濃い深いコーヒーが好きなので、なるべく濃く入れるために豆を細かく挽いたりとか、熱いお湯で出したりと設定していたんですけど、逆にお湯をぬるめだったり、粗挽きにしたりして、薄くサッと出すみたいなことをすると、安い豆でも雑味みたいなのがあんまり出ずに意外と美味しくいただけるということですね。全自動の機械を使っていて、ハンドドリップしているわけではないので、毎日のコーヒーにそんなにこだわっているわけじゃないんですけど、その設定をするだけで、かなり満足度が上がっていますので同じ悩みを持つ方はぜひ試してほしいなと。逆にodolのファンの皆さんは、コーヒーとか詳しそうな気がするので、安い豆を美味しく飲むコツを知っている方がいたら教えていただきたいなと思っております。ということでそんなハッとしたことでした。
1曲目:スガシカオ「黄金の月」
ということで@リビングルームのコーナーに入っていきたいと思うのですが、Room "H"の住人がそれぞれのカラーで今聴いてもらいたい音楽を自由にセレクトしていきます。今日はどういうテーマかと言いますと、「少年時代のカラオケソング」というテーマで3曲ご紹介したいと思います。ここ最近、自分がどんな放送をやっていたかというのを見返してたんですけど、YMO特集とか宇宙特集とか、あとはフィールドレコーディングとか、若干ディープ目な回が多かったかなと思ったので、もうちょっライトなテーマで選曲してみようかということでこのテーマになりました。カラオケというのは皆様も親しみ深いと思いますが、皆様は行きますか?僕はいま全く行かないんですよね。本当に何年行ってないかというくらい行ってないんですけど、それでも学生の頃まではよく行っていました。小学生の頃とかは家族と行っていたんですけど、中学生になって以降は僕の地元は特にそんな遊ぶ場所とかも多くなかったので、放課後とかはカラオケというのが割と定番でしたね。そんな懐かしい思い出と共にいろいろと選曲してみましたのでご紹介していこうかなと思います。
早速1曲目に選んだのは、スガシカオさんの「黄金の月」です。1997年5月に発売された、スガシカオさんの2枚目のシングルです。1stアルバム『Clover』に収録されているんですけど、スガシカオさんは僕が本当に最初にハマったアーティストの一人です。小学生の頃にすごく聴いていて、その頃はレンタルが主流だったのでCDショップに行って借りて、いつも聴いていました。スガシカオさんは今も素晴らしい曲を生み出し続けていますけど、当時の曲も久しぶりに聴いて、思い出補正とかなしにしても、今聴いても本当にすごくいいなと感じました。やっぱりメロディーも声も、そして歌詞も、そのどれもがスガシカオさんにしか出せないというか。そういうカラーがすごく濃い、記名性がすごく高いアーティストだなと感じました。当然ハマっていたので、カラオケでいろんな曲歌っていたような気がするんですけど、正直今となってはどの曲を歌っていたかというのは思い出せないので、今回は好きな曲の一つを本日はお送りしたいと思います。
オンエアでは、2曲目に玉置浩二の「田園」、3曲目に小沢健二 feauturing スチャダラパー「今夜はブギー・バック (nice vocal)」を紹介!ぜひradikoタイムフリーでお聴きください!
「ピアニスト/ピアノ曲」特集 前編
本日の番組後半は、「ピアニスト/ピアノ曲」特集をお送りしたいと思います。これまで実はやってそうでやってなかったような気がするなということに前回気がつきまして、改めて「ピアニスト/ピアノ曲」特集というのをやってみようかなと思って選曲してみました。なかなか1回のコーナーでは紹介しきれないと思いますので、今回、次回と2回にまたがってお送りしていきたいなと思っております。本日はこの特集の前半をお送りしていこうと思います。本日は2曲だけ紹介したいと思います。僕の好きなピアニストだったり、ピアノ演奏の作品をあくまでも今の気分というところになるんですけど、いろいろとご紹介したいなと思います。
まず1曲目に選んだのは、前回の「宇宙へ行った音楽」特集でもご紹介しましたグレン・グールドです。現在、地球から一番遠くにあるピアノ曲ですね、グールドのバッハ。ボイジャー号に乗っています。前回の復習ですね(笑)。そういう意味では地球を代表するピアニストでもあるグレン・グールドなんですけど、皆さんはどのようなイメージがありますか?名前を全く聞いたことがないという方は少ないかなと思いますけど。唸り声を出すとか、低いピアノ椅子に座っているようなイメージとか。もう少し詳しい方とかはコンサートを全然しないピアニストみたいなイメージもあるかもしれないですけど、そういう、西洋音楽の文脈の中では少し変わったというか、すごく特徴のある存在感を放っています。
改めてグレン・グールドを少しご紹介しますと、1932年カナダ生まれですね。1956年にデビュー作として、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」というのをレコーディングし発表して、その作品で一気に脚光を浴びました。それからコンサートや録音して発表するという活動していたのですが、ある時期から演奏会やコンサートというのより、スタジオでの録音、つまりレコード作品に重きを置いて、「そっちが自分のやるべきことだ」ということでコンサートを一切やめちゃって、それからはスタジオで活動していたという方です。これも当時にしてみるとすごく革新的なことではあるんですよね。今ではそういう人もいるよねという感じかもしれないですけど。
ちょうどその2年後ぐらいのほぼ同時期に、ビートルズもコンサートをやめたんですよね。当時はちょうど録音、レコードの技術が発達してきて、コンサートで演奏するよりも録音の方が自分の表現が出来ると思うミュージシャンが増えたというのもあると思います。
それ以前の音楽というのは演奏ありきというか、音楽家が活動する場には必ず演奏が必要だったという時代でした。でもこの時代から録音と編集というのが生まれてきて。「録音と生演奏」とか「レコーディングとライブ」の関係性って、現在はほぼ全てのミュージシャンとリスナーが、どっちにより価値を見出しているのかとか、どういうバランスなのかというのはそれぞれの形、捉え方があると思うんですけど、その始まりに位置する時代の人たちなんですね。
そんなグレン・グールドなんですけれども、今回選んだのは「ゴルトベルク変奏曲」という曲で、バッハの曲です。バッハが作っていた時代にはピアノってなかったんですよね。今のピアノはまだ発明されてなくて、チェンバロとか古楽器はあったんですけど、バッハはそういうもので音楽を作っていました。そういうこともあって「バッハの作品を現代のピアノで演奏するのは間違ってるよね」というか「本来は古楽器で演奏されるのがあるべき姿だよね」という考え方は現在もあって、当時はその風潮がもっと強かったようですね(もちろんそれも素晴らしいことだと思います)。そしてバッハの曲というのは今ほど演奏されるようなものでもなかったんですね。そんな時代の中でデビュー作としてピアノでバッハを弾いて、しかもその解釈が圧倒的だった。一気にバッハのイメージを変えたとされているのが、このグールドです。そこからバッハといえばグールド、グールドといえばバッハみたいなそういうイメージになっていきます。
僕がグールドのバッハ作品をいいなと思うのは、バッハの作品の、音符の並びとしての美しさというのと、それを超えた音楽の無限大さや自由さというのを、聴くたびに感じられるところです。音楽が生まれるのって、作曲家が譜面を書くだけじゃなくて、それを誰かが演奏して誰かが聴くことによって生み出されていると思うんですよね。グールドのバッハというのは、「作曲することと同じぐらいのパワーが、演奏にはあるんだ」ということがよくわかるんですよね。他の人の演奏とか、逆に古楽器という本来あるべきとされている形で演奏されていたら、聴こえて来なかったメロディーや和声の響きというのが、グールドの演奏からは聴こえてきたりして、そういう演奏の力というのがすごく感じられるんじゃないかなと思います。「バッハってこんなにかっこいいんだ」って、多くの人が感じたと思います。
今回ご紹介する「ゴルトベルク変奏曲」というのは2回録音されていて、1955年にデビューした時に録音したバージョンと、1981年に新録されたバージョンの2つあって、今回はその81年の方を流そうと思います。55年のバージョンと比べて、今回流すのは「アリア」なんですけれど、それだけでも収録時間が1分以上長くなっています。そういう風に時代とともにグールド自身の解釈が変わっていって、ピアノとか録音に対する意識の変化というのもあって、全く同じ曲なんですけど、違う作品にみたいなっていって、そこもまた「音楽って自由だな」「演奏ってすごいな」と思うところです。そういう風に聴き比べてみるのもおすすめです。
ということで本日は「ピアニスト/ピアノ曲」特集の前半をお送りしたんですけれども、2曲ともバッハということで。いまバッハにハマっているところもあるのでそういう選曲になりましたが、どうでしたか?良いですよね。バッハを改めて聴くというタイミングはあまりない方も多いと思いますけど、こうやって演奏と録音の力で、2,300年ぐらい前の曲でも本当に今のプレイリストに入っていてもおかしくないような素晴らしい楽曲が残されているという。いやー、音楽の父ですね。ということで次回お送りする後半は打って変わって現代の作品たちをご紹介していこうかなと思っておりますので、そちらも楽しみにしていてください。
Photo by Shaikh Sofian
3月15日(水) オンエア楽曲
odol「時間と距離と僕らの旅 (Rearrange)」スガシカオ「黄金の月」
玉置浩二の「田園」
小沢健二 feauturing スチャダラパー「今夜はブギー・バック (nice vocal)」
グレン・グールド「バッハ: ゴルトベルク変奏曲 アリア (1981録音) 」
Marta and Gyorgy Kurtag「神の時こそいと良き時 第1曲 ソナティーナ」
番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #RoomH をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Room "H"」
毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"203号室(毎週水曜日の26:00~26:55)"では、音楽番組「Room "H"」をオンエア。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、本音で(Honestly)、真心を込めて(Hearty)、気楽に(Homey) 音楽愛を語る。彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。2022年8月24日にシングル「ありえないよ。」を、同年11月30日にはシングル「Blur」をリリース。2022年6月1日にソロ第1弾シングル「この星からの脱出」をリリース。2022年7月8日にはソロ第2弾シングルでギタリスト「こーじゅん」をフィーチャリングに迎えた「フライディ・チャイナタウン (Acoustic Cover)」をリリース。
オフィシャルサイト/ @yourness_on/ @yourness_kuro
松本大
長崎県出身。2021年までLAMP IN TERRENのフロントマンとしてバンド活動し、現在次の活動に向けて準備中。
@pgt79/ @n.trueve
森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト/ @odol_jpn/ @KokiMoriyama