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2022.09.18
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介! カワサキケイ・パジャ海・ヨットヘヴンほか全16作品 -2022.09.17-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とサトーカンナによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
カンナ::9月12日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全16作品の中から、Part 1の5作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!まずはアルバムのリリースとなりましたkunmohile(クンモハイル)!
金子:2020年4月に結成した4ピースで、ファーストアルバムがついに完成しました。カンナさんは対バンしたことがあるとか?
カンナ:そうなんですよ。彼らがバンドを結成した初期の頃に対バンしたことがあります。すごく優しい音像だなと思っていたんですが、今回の曲を聴いて、こだわりがすごく詰まっているんだなと改めて気づかされました。
金子:カネコアヤノさんとかもレコーディングをしている伊豆スタジオを使って、この音像が作られているみたいです。リバービーでサイケな感じがうっすらありつつ、とてもオーガニックで伸びやかな音色が特徴的ですよね。踊ってばかりの国やnever young beachなど、2010年代の日本のポップスを作ってきたバンドの色も受け継ぎつつ、さらにそれを2020年代に更新していくような、すごくいいアルバムだなと感じました。
カンナ:私も好みど真ん中でした!続いてひさびさのリリースとなります、Big Animal TheoryとAmni!
金子:Big Animal Theoryとしては1年半ぶりぐらいのリリースです。Amniはファッションブランドでもあるんですけど、両者は以前にもコラボレーションをしたことがあって、今回ひさびさのコラボとなります。Big Animal TheoryとAmniはメッセージ性の部分で共振していて、今回は「様々な形で社会の中で抑圧され、脆弱さや疎外感を感じている人々に寄り添うという意思を表明したい」というところがお互いに共通する背景としてあり、コラボレーションに至ったそうです。さらにそこにオーストラリアのシンガーソングライターであるNuumも参加している。音楽性だけじゃなくて、メッセージ性も共有した上で作品を作るというのは、コラボのあり方としてとてもよいなと思いました。
カンナ:そうですよね。資料を見ていると、こんなにいろんな想いが詰め込まれた曲なんだなと感じました。ジャケットもすごくかっこいいですけど、ただかっこいいだけじゃなくて、しっかりメッセージが込められているんですね。ではPart 1からはどの曲をお送りしましょうか?
金子:カワサキケイさんの曲をかけようかなと思います。カワサキケイさんも約1年ちょっとぶりの新曲です。シャムキャッツのメンバーがやっているTETRA RECORDSからのリリースですね。先ほどkunmohileに関して、「2010年代のポップスを受け継ぎつつ、更新している」という話をしましたが、カワサキケイさんもそういう一人というか、こちらはそれこそシャムキャッツであったり、ミツメであったりのいいところを今に受け継いでる感じがします。なおかつ、そういうインディーバンドたちの感覚をシンガーソングライターとして、宅録で表現しているのが面白いところで、今回の曲はひさびさのリリースだからか、プロダクションが大きく向上している感じがしました。シンセの音色だったり、ボーカルエフェクトの使い方だったり、管楽器の音色だったり、全体的にかなりパワーアップしているなと。
カンナ:なるほど。
金子:やっぱりバンドで表現している人たちが多い中、シンガーソングライターの宅録というスタイルで、これまでに列挙したようないろんなバンドの感覚を引き継いでいる人ってあんまりいない気がするんですよね。
カンナ:そうですね。
金子:そこがおもしろいなと思うし、カワサキケイさんのキャリア的にもここからまた新しく始まっていくんだろうなという感覚がすごくあって、とてもいい曲でした。
カンナ:いい曲でしたね。私も声が特徴的だなと思いました。無理がなく力の抜けた、ちょっと温度感低めな歌声というのは、計算でやるのはすごく難しいので、これからも聴いていきたい声だなと。
金子:そのあたりはやっぱり宅録ならではのところでしょうね。
カンナ:9月12日週リリースの新譜ダイジェストPart 2でした。リリースおめでとうございます!今回初登場となりました、Kotoko Tanakaさん。
金子:弾き語りとバンドセットの両方で活動をされている方で、今回の曲はアパレルブランドのsawa takaiの秋冬コレクションへの書き下ろしの楽曲ということです。Part 1ではBig Animal TheoryとAmniのコラボレーションを紹介しましたけど、音楽とファッションの結びつきの強さを改めて感じますね。
カンナ:そうですね。本当にランウェイを歩いているときに流れてそうだなと、すごくイメージできました。
金子:Kotoko Tanakaさんはアートのエキシビジョンや映画祭など、いろんなカルチャーと関わりながら活動をされている方みたいです。僕がちゃんと知ったのはこの曲が初めてなんですけど、アシッド・フォーク的な雰囲気とポスト・パンクのヒリヒリした感じを併せ持っていて、非常にかっこいいですね。調べたらGREAT3周辺の人たちとも交流があるみたいで、GREAT3でベースを弾いているjanさんのプロジェクト、jan and naomiとかを聴いたときにも通じるかっこよさを持ってる人だなと思ったりもしました。
カンナ:たしかに、とても腑に落ちました。そしてW.K.T.K.SYNDROME!
金子:こちらも1年以上ぶりの新曲で、今回5曲入りのEPがリリースとなります。彼らは神戸のバンドで、以前FRIENDSHIP.からリリースしていたTAMIWというバンドがやっているレーベルからのリリースでもあります。The fin.も神戸出身ですけど、神戸からはサイケデリックな面白いバンドがちょこちょこ出てくるイメージで、そういうシーンがあるっぽいんですよね。
カンナ:そうなんですね。神戸は要チェックですね!
金子:全貌は掴めてないんですけど、あるような気がします(笑)。
カンナ:あはは。神戸になにがあるのか気になりますね。
金子:今回のW.K.T.K.SYNDROMEの曲はちょっとローファイがかったシューゲイズ的な音像がかっこよくて、Kurhausの新曲とも相性がいいなと感じました。
カンナ:男女が一緒に歌っている感じとか、タンバリンが鳴っている感じとか、たしかに近いものを感じました。
金子:男女っぽいじゃないですか?でもたぶんメンバーを見ると女性いないんですよね。
カンナ:え!
金子:もしかしたら女性コーラスが入っているのかもしれないけど、プロフィールを見るとメンバーは男性だけで。
カンナ:そうなんですね。W.K.T.K.SYNDROMEはすごく海外の風を感じましたけど、次にお送りしたい曲も日本とは思えないバンドでしたね。
金子:はい、Part 2では"パジャ海"ことパジャマで海なんかいかないをかけましょう!こちらもアルバムがついに完成となりました。めでたいですね。そして、めちゃめちゃ良かったですね。
カンナ:素晴らしいですね。
金子:もともとYasei Collectiveというバンドにいた別所和洋さんのソロプロジェクトとしてスタートしたわけですけど、昨年の1月からバンドになって、ついにアルバムが完成となりました。別所さんはOvallや藤原さくらさん、Keishi Tanakaさんなどいろんな方のサポートもやっていて、間違いなく実力者なんですけど、周りのメンバーもめちゃめちゃすごいです。それこそ日本のものと思えないという話で言うと、ボーカルのFiJAさんとChloeさんはそれぞれ異なるルーツを持ち、基本英語で歌っているのもあるし、あとはベースのHarunaさんとドラムのSeiyaさん。この2人もすごくて。
カンナ:本当にすごいですよね。
金子:Seiyaさんも日本とニューヨークを行き来して、本場のジャズのシーンにも関わってらっしゃるみたいで、めちゃめちゃかっこいい。女性ボーカル2人と女性のベース、男性キーボードとドラムという、バンド編成としてこのバランスもあんまりない気がして。
カンナ:そうですよね。
金子:そういうのもすごくいいなと思います。あとネオソウルとかフューチャー・ソウルと親和性があるバンドだと、良くも悪くも落ち着いた、端正な方向に行くような印象もあるんですけど、今回のアルバムを聴くと本当に"バンド"だなという感じがしました。演奏もエネルギッシュだし、ボーカルもエモーショナルだし、その感じもすごく良いなと。
カンナ:私も「やっぱり歌が上手い!」と思いました。
金子:同じボーカリストとして感じるものがある?
カンナ:そうですね。素晴らしい歌声がありつつ、ピアノの音色の美しさや、ベースとドラムのグルーヴにも耳がちゃんと向くというバランスもすごくいいなと思いました。
金子:アルバムのタイトルが『Trip』で、それぞれの楽曲ごとに違う別世界を見せてくれる多彩なアルバムというところから、このタイトルをつけているみたいなんですけど、歌詞を読むと個人の内面の問題など、いろんな心象について歌っていて、そういう意味では"マインドトリップ"できるアルバムでもあるなと思いました。英詞ですが、歌詞も読み込んでみてほしいなと。
カンナ:みなさんぜひ歌詞にも注目してみてください
カンナ:Part 3をお送りしました。リリースおめでとうございます!初登場のqOyun(コユン)!
金子:綴りが難しいですよね。
カンナ:そうなんですよね。
金子:名前からしてアート性を感じますけど、実際にボーカルの彩菜さんとベースの晴菜さんによるプロジェクトでありつつ、アートコレクティブみたいな形で活動をしているそうです。FRIENDSHIP.からリリースしているUHHO UHHO UHHOのサックスの栗原さんとかも参加されているみたいですね。曲自体もかっこよくて、お二人のそれぞれのルーツ、ジャズやソウル、ヒップホップ、レゲエなどいろんな要素が入りつつ、しかもこの曲は9分くらいあって、後半はかなり大胆な展開をしていたり、そのあたりもかっこよかったですね。
カンナ:1曲の中でいろんな物語を楽しめる良い曲ですね。私はジャケットも好きでした。扉絵みたいな感じで、物語が始まっていくよという雰囲気がありました。続いて2ヶ月連続リリースのsuL(スゥ)!
金子:FRIENDSHIP.からは2曲目のリリースですけど、やっぱり好きですね。
カンナ:私も好きです。
金子:今回は日本のハイパーポップとかも意識して取り入れていて、「僕の曲はよくチルとか心地いいみたいな感じで言われることが多かったですが、今回はいつもよりアッパーな成分もミックスできたのでとても気に入ってます」という本人のコメントも来ていて。たしかにそうなんだけど、結果的にはちょうどいいバランスというか、やっぱり心地良い(笑)。曲の長さが1分10秒ぐらいという、このコンパクトさもまた良いです。好きですね。
カンナ:気付いたら、3回ぐらい繰り返していて(笑)。
金子:でも聴けちゃいますよね。
カンナ:そうですね。ジャケットのインスタントカメラで撮ったような日常の感じも、すごく曲にフィットしているなと思いますし、ちょっと憂鬱さや繊細さも感じて、映画を観たような気分になりました。では、Part 3からは何を流しましょうか?
金子:こちらもアルバムがリリースされた、ヨットヘヴンをかけようかなと思います。ヨットヘヴンも結成が2020年で、2年と少しを経てのアルバムリリースですね。同じくFRIENDSHIP.からリリースしているバンド"路地"のメンバーが中心になって始まり、そこにTHE FOWLSというバンドもやっている安延沙希子さんがボーカルとして加わって、今のメンバーになっています。資料を読むと、"昭和歌謡を彷彿とさせるノスタルジックなサウンド"という言葉があって、たしかにそういう側面がありつつ、今こういうワードが出てくると、シティポップとかそっちに寄ったバンドが多いイメージあるじゃないですか?
カンナ:そうですね。
金子:"ヨットヘヴン"というバンド名にしても、"ヨットロック"というジャンルがありまして、それはAORとかに近しいジャンル名だったりするから、そういうイメージも若干あったり。でも彼らはソリッドで歪んだギターも取り入れていて、かなりロック色もあって、そのバランスがすごくかっこいいなと思いました。ボーカルの安延さんの声もそれに見合ってめちゃめちゃいい声だなと思いましたけど、その辺りはボーカリストとしていかがですか?
カンナ:一度聴いたら忘れられない声といいますか。ちょっと中性的で、パッと聴いたときに「女性なのかな?男性なのかな?」と思いました。それが例えばバンドの"たま"みたいな少し不思議な印象も出してくれていると感じまして、そこが魅力的だなと思いました。
金子:なるほど。路地には最近グソクムズのメンバーの人が入ったりしてるんですけど、ヨットヘヴンは家主とか台風クラブみたいなバンドともリンクするような感じがあって、そういうバンドたちに新たなシーンを作り上げていってほしいなという感じもしました。
金子:アルバムのタイトルが『健康快樂』というのも良いですよね。
カンナ:最高ですよね。一番大事!
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
サトーカンナ
ボーカル、コーラス、作詞、ナレーション、執筆など、声と言葉にかかわる幅広い活動を続ける。
バンド(Kurhaus、グッド・ライフ・フェロウズ)ではシンセサイザーやパッドの演奏も担当。
ウェブサイト / @milkcupcakes / @kannasat
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
FRIENDSHIP.
キュレーターの金子厚武とサトーカンナによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
カンナ::9月12日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全16作品の中から、Part 1の5作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!まずはアルバムのリリースとなりましたkunmohile(クンモハイル)!
金子:2020年4月に結成した4ピースで、ファーストアルバムがついに完成しました。カンナさんは対バンしたことがあるとか?
カンナ:そうなんですよ。彼らがバンドを結成した初期の頃に対バンしたことがあります。すごく優しい音像だなと思っていたんですが、今回の曲を聴いて、こだわりがすごく詰まっているんだなと改めて気づかされました。
金子:カネコアヤノさんとかもレコーディングをしている伊豆スタジオを使って、この音像が作られているみたいです。リバービーでサイケな感じがうっすらありつつ、とてもオーガニックで伸びやかな音色が特徴的ですよね。踊ってばかりの国やnever young beachなど、2010年代の日本のポップスを作ってきたバンドの色も受け継ぎつつ、さらにそれを2020年代に更新していくような、すごくいいアルバムだなと感じました。
カンナ:私も好みど真ん中でした!続いてひさびさのリリースとなります、Big Animal TheoryとAmni!
金子:Big Animal Theoryとしては1年半ぶりぐらいのリリースです。Amniはファッションブランドでもあるんですけど、両者は以前にもコラボレーションをしたことがあって、今回ひさびさのコラボとなります。Big Animal TheoryとAmniはメッセージ性の部分で共振していて、今回は「様々な形で社会の中で抑圧され、脆弱さや疎外感を感じている人々に寄り添うという意思を表明したい」というところがお互いに共通する背景としてあり、コラボレーションに至ったそうです。さらにそこにオーストラリアのシンガーソングライターであるNuumも参加している。音楽性だけじゃなくて、メッセージ性も共有した上で作品を作るというのは、コラボのあり方としてとてもよいなと思いました。
カンナ:そうですよね。資料を見ていると、こんなにいろんな想いが詰め込まれた曲なんだなと感じました。ジャケットもすごくかっこいいですけど、ただかっこいいだけじゃなくて、しっかりメッセージが込められているんですね。ではPart 1からはどの曲をお送りしましょうか?
金子:カワサキケイさんの曲をかけようかなと思います。カワサキケイさんも約1年ちょっとぶりの新曲です。シャムキャッツのメンバーがやっているTETRA RECORDSからのリリースですね。先ほどkunmohileに関して、「2010年代のポップスを受け継ぎつつ、更新している」という話をしましたが、カワサキケイさんもそういう一人というか、こちらはそれこそシャムキャッツであったり、ミツメであったりのいいところを今に受け継いでる感じがします。なおかつ、そういうインディーバンドたちの感覚をシンガーソングライターとして、宅録で表現しているのが面白いところで、今回の曲はひさびさのリリースだからか、プロダクションが大きく向上している感じがしました。シンセの音色だったり、ボーカルエフェクトの使い方だったり、管楽器の音色だったり、全体的にかなりパワーアップしているなと。
カンナ:なるほど。
金子:やっぱりバンドで表現している人たちが多い中、シンガーソングライターの宅録というスタイルで、これまでに列挙したようないろんなバンドの感覚を引き継いでいる人ってあんまりいない気がするんですよね。
カンナ:そうですね。
金子:そこがおもしろいなと思うし、カワサキケイさんのキャリア的にもここからまた新しく始まっていくんだろうなという感覚がすごくあって、とてもいい曲でした。
カンナ:いい曲でしたね。私も声が特徴的だなと思いました。無理がなく力の抜けた、ちょっと温度感低めな歌声というのは、計算でやるのはすごく難しいので、これからも聴いていきたい声だなと。
金子:そのあたりはやっぱり宅録ならではのところでしょうね。
New Release Digest Part 2
カンナ:9月12日週リリースの新譜ダイジェストPart 2でした。リリースおめでとうございます!今回初登場となりました、Kotoko Tanakaさん。
金子:弾き語りとバンドセットの両方で活動をされている方で、今回の曲はアパレルブランドのsawa takaiの秋冬コレクションへの書き下ろしの楽曲ということです。Part 1ではBig Animal TheoryとAmniのコラボレーションを紹介しましたけど、音楽とファッションの結びつきの強さを改めて感じますね。
カンナ:そうですね。本当にランウェイを歩いているときに流れてそうだなと、すごくイメージできました。
金子:Kotoko Tanakaさんはアートのエキシビジョンや映画祭など、いろんなカルチャーと関わりながら活動をされている方みたいです。僕がちゃんと知ったのはこの曲が初めてなんですけど、アシッド・フォーク的な雰囲気とポスト・パンクのヒリヒリした感じを併せ持っていて、非常にかっこいいですね。調べたらGREAT3周辺の人たちとも交流があるみたいで、GREAT3でベースを弾いているjanさんのプロジェクト、jan and naomiとかを聴いたときにも通じるかっこよさを持ってる人だなと思ったりもしました。
カンナ:たしかに、とても腑に落ちました。そしてW.K.T.K.SYNDROME!
金子:こちらも1年以上ぶりの新曲で、今回5曲入りのEPがリリースとなります。彼らは神戸のバンドで、以前FRIENDSHIP.からリリースしていたTAMIWというバンドがやっているレーベルからのリリースでもあります。The fin.も神戸出身ですけど、神戸からはサイケデリックな面白いバンドがちょこちょこ出てくるイメージで、そういうシーンがあるっぽいんですよね。
カンナ:そうなんですね。神戸は要チェックですね!
金子:全貌は掴めてないんですけど、あるような気がします(笑)。
カンナ:あはは。神戸になにがあるのか気になりますね。
金子:今回のW.K.T.K.SYNDROMEの曲はちょっとローファイがかったシューゲイズ的な音像がかっこよくて、Kurhausの新曲とも相性がいいなと感じました。
カンナ:男女が一緒に歌っている感じとか、タンバリンが鳴っている感じとか、たしかに近いものを感じました。
金子:男女っぽいじゃないですか?でもたぶんメンバーを見ると女性いないんですよね。
カンナ:え!
金子:もしかしたら女性コーラスが入っているのかもしれないけど、プロフィールを見るとメンバーは男性だけで。
カンナ:そうなんですね。W.K.T.K.SYNDROMEはすごく海外の風を感じましたけど、次にお送りしたい曲も日本とは思えないバンドでしたね。
金子:はい、Part 2では"パジャ海"ことパジャマで海なんかいかないをかけましょう!こちらもアルバムがついに完成となりました。めでたいですね。そして、めちゃめちゃ良かったですね。
カンナ:素晴らしいですね。
金子:もともとYasei Collectiveというバンドにいた別所和洋さんのソロプロジェクトとしてスタートしたわけですけど、昨年の1月からバンドになって、ついにアルバムが完成となりました。別所さんはOvallや藤原さくらさん、Keishi Tanakaさんなどいろんな方のサポートもやっていて、間違いなく実力者なんですけど、周りのメンバーもめちゃめちゃすごいです。それこそ日本のものと思えないという話で言うと、ボーカルのFiJAさんとChloeさんはそれぞれ異なるルーツを持ち、基本英語で歌っているのもあるし、あとはベースのHarunaさんとドラムのSeiyaさん。この2人もすごくて。
カンナ:本当にすごいですよね。
金子:Seiyaさんも日本とニューヨークを行き来して、本場のジャズのシーンにも関わってらっしゃるみたいで、めちゃめちゃかっこいい。女性ボーカル2人と女性のベース、男性キーボードとドラムという、バンド編成としてこのバランスもあんまりない気がして。
カンナ:そうですよね。
金子:そういうのもすごくいいなと思います。あとネオソウルとかフューチャー・ソウルと親和性があるバンドだと、良くも悪くも落ち着いた、端正な方向に行くような印象もあるんですけど、今回のアルバムを聴くと本当に"バンド"だなという感じがしました。演奏もエネルギッシュだし、ボーカルもエモーショナルだし、その感じもすごく良いなと。
カンナ:私も「やっぱり歌が上手い!」と思いました。
金子:同じボーカリストとして感じるものがある?
カンナ:そうですね。素晴らしい歌声がありつつ、ピアノの音色の美しさや、ベースとドラムのグルーヴにも耳がちゃんと向くというバランスもすごくいいなと思いました。
金子:アルバムのタイトルが『Trip』で、それぞれの楽曲ごとに違う別世界を見せてくれる多彩なアルバムというところから、このタイトルをつけているみたいなんですけど、歌詞を読むと個人の内面の問題など、いろんな心象について歌っていて、そういう意味では"マインドトリップ"できるアルバムでもあるなと思いました。英詞ですが、歌詞も読み込んでみてほしいなと。
カンナ:みなさんぜひ歌詞にも注目してみてください
New Release Digest Part 3
カンナ:Part 3をお送りしました。リリースおめでとうございます!初登場のqOyun(コユン)!
金子:綴りが難しいですよね。
カンナ:そうなんですよね。
金子:名前からしてアート性を感じますけど、実際にボーカルの彩菜さんとベースの晴菜さんによるプロジェクトでありつつ、アートコレクティブみたいな形で活動をしているそうです。FRIENDSHIP.からリリースしているUHHO UHHO UHHOのサックスの栗原さんとかも参加されているみたいですね。曲自体もかっこよくて、お二人のそれぞれのルーツ、ジャズやソウル、ヒップホップ、レゲエなどいろんな要素が入りつつ、しかもこの曲は9分くらいあって、後半はかなり大胆な展開をしていたり、そのあたりもかっこよかったですね。
カンナ:1曲の中でいろんな物語を楽しめる良い曲ですね。私はジャケットも好きでした。扉絵みたいな感じで、物語が始まっていくよという雰囲気がありました。続いて2ヶ月連続リリースのsuL(スゥ)!
金子:FRIENDSHIP.からは2曲目のリリースですけど、やっぱり好きですね。
カンナ:私も好きです。
金子:今回は日本のハイパーポップとかも意識して取り入れていて、「僕の曲はよくチルとか心地いいみたいな感じで言われることが多かったですが、今回はいつもよりアッパーな成分もミックスできたのでとても気に入ってます」という本人のコメントも来ていて。たしかにそうなんだけど、結果的にはちょうどいいバランスというか、やっぱり心地良い(笑)。曲の長さが1分10秒ぐらいという、このコンパクトさもまた良いです。好きですね。
カンナ:気付いたら、3回ぐらい繰り返していて(笑)。
金子:でも聴けちゃいますよね。
カンナ:そうですね。ジャケットのインスタントカメラで撮ったような日常の感じも、すごく曲にフィットしているなと思いますし、ちょっと憂鬱さや繊細さも感じて、映画を観たような気分になりました。では、Part 3からは何を流しましょうか?
金子:こちらもアルバムがリリースされた、ヨットヘヴンをかけようかなと思います。ヨットヘヴンも結成が2020年で、2年と少しを経てのアルバムリリースですね。同じくFRIENDSHIP.からリリースしているバンド"路地"のメンバーが中心になって始まり、そこにTHE FOWLSというバンドもやっている安延沙希子さんがボーカルとして加わって、今のメンバーになっています。資料を読むと、"昭和歌謡を彷彿とさせるノスタルジックなサウンド"という言葉があって、たしかにそういう側面がありつつ、今こういうワードが出てくると、シティポップとかそっちに寄ったバンドが多いイメージあるじゃないですか?
カンナ:そうですね。
金子:"ヨットヘヴン"というバンド名にしても、"ヨットロック"というジャンルがありまして、それはAORとかに近しいジャンル名だったりするから、そういうイメージも若干あったり。でも彼らはソリッドで歪んだギターも取り入れていて、かなりロック色もあって、そのバランスがすごくかっこいいなと思いました。ボーカルの安延さんの声もそれに見合ってめちゃめちゃいい声だなと思いましたけど、その辺りはボーカリストとしていかがですか?
カンナ:一度聴いたら忘れられない声といいますか。ちょっと中性的で、パッと聴いたときに「女性なのかな?男性なのかな?」と思いました。それが例えばバンドの"たま"みたいな少し不思議な印象も出してくれていると感じまして、そこが魅力的だなと思いました。
金子:なるほど。路地には最近グソクムズのメンバーの人が入ったりしてるんですけど、ヨットヘヴンは家主とか台風クラブみたいなバンドともリンクするような感じがあって、そういうバンドたちに新たなシーンを作り上げていってほしいなという感じもしました。
金子:アルバムのタイトルが『健康快樂』というのも良いですよね。
カンナ:最高ですよね。一番大事!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
サトーカンナ
ボーカル、コーラス、作詞、ナレーション、執筆など、声と言葉にかかわる幅広い活動を続ける。
バンド(Kurhaus、グッド・ライフ・フェロウズ)ではシンセサイザーやパッドの演奏も担当。
ウェブサイト / @milkcupcakes / @kannasat
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
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