SENSA

2022.07.17

黒川侑司、初の弾き語りソロツアーで魅せた人となりと豊かな表現力。

黒川侑司、初の弾き語りソロツアーで魅せた人となりと豊かな表現力。

 ユアネスのボーカル/ギター黒川侑司が、初の弾き語りソロ・ツアーを開催した。
 現在のバンドシーンのなかでも際立った歌唱力と表現力を持ち合わせ、ユアネスのフロントマンとして活躍している黒川侑司。ユアネスとしては、昨年12月に1stフルアルバム『6 case』を発表。初期の楽曲「色の見えない少女」の再録バージョン、TVアニメ「イエスタデイをうたって」主題歌「籠の中に鳥」、坂本真綾に楽曲提供した「躍動」のセルフカバーなど収めた本作によって、"ボーカルを前面に押し出すロッバンド"としてのアイデンティティを確立した。

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 バンドの音楽性はオルタナ/ポストロックが軸だが、黒川自身は昭和の歌謡曲をはじめ、アニメソング、ボカロ曲から最新のヒット曲まで、ジャンルにとらわれず幅広い楽曲を愛聴している音楽ラバー。ここ数年はTwitter/Instagram/TikTokなどのSNS、YouTubeなどで弾き語り動画(SMAP「夜空ノムコウ」、松田聖子「赤いスイートピー」など)をたびたび投稿し、大きな注目を集めてきた。もちろん黒川の主軸はバンドのボーカリストだが、カバーを通してシンガーとしての魅力を広くアピールすることは、黒川自身とユアネスにとって計り知れない作用があるはずだ。
 昨年12月に初の弾き語りイベント「黒川侑司 弾き語りライブ "素顔の見せ方"vol.1」を東京で行われ、チケットは瞬く間にソールド・アウト。「黒川の生歌を聴きたい」という要望は全国に広がり、今回の弾き語りソロ・ツアーの開催へとつながった。
「黒川侑司 弾き語り TOUR 2022」は、6/11の仙台公演から7/16の京都公演まで全国7カ所で開催。そのなかから6/25に東京・LOFT HEAVENで行われた1部公演のライブをレポートする。

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 アコースティックギターを手にした黒川がステージに上がり、「こんにちは、黒川と言います。......わ、めっちゃ人多い(笑)」と笑顔で挨拶。「今日、めっちゃ暑かったでしょう?(この日の東京は35℃を記録)。涼しい気持ちになれるように、やらせていただきます」と、ユアネスの「凩」(EP『Shift』、『6 case』収録)をアコギの弾き語りで披露。美しくも切ないメロディ、<手を伸ばせば 届く 距離にいた/君は もういないや>というフレーズを響かせ、オーディエンスの心をグッと惹きつける。

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 ライブは弾き語りの演奏とゆったりしたMCで構成。
「今日まじくそ暑くないですか? 電車も混んでて......まあ、みんな遊びたいんですもんね」「(自分のライブが)1日の彩りになったらいいな、くらいに思っていて。みんなが"今日はいい1日だったな"と思えるようなライブができたらいいなと思っています」と語り掛けると、(マスク着用の)観客は温かい拍手で答える。

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 2曲目は「虹の形」(ミニアルバム『Ctrl+Z』収録)。黒川は、ギターと歌によってリリカルに映し出す。さらに「よし、多めに曲をやろう」と「100㎡の中で」(『Ctrl+Z』を演奏。
もともとは音楽を辞めたバンド仲間に向けられた楽曲だが、コロナ禍を経た現在、<過去に置き忘れた「物語」さえも/こだまする鼓動に かき消されてく>というフレーズにーー鋭利にかき鳴らされるアコギの響きも重なってーー強く揺さぶられた。ユアネスの楽曲の多くは古閑翔平(G / Programming)が手がけているが、情景やストーリーが浮かび上がる歌に豊かなリアリティを与えているのは、やはり黒川の歌。このツアーに参加した観客は、そのことを改めて実感したはずだ。

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「SNSでカバー動画を投稿し始めてから、以前とは違う層の人たちに知ってもらえるようになりました」というMCを挟み、カバー曲を次々と披露。まずはクリープハイプの「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」。原曲は疾走感のあるロックチューンだが、グッとテンポを落とし、歌詞に込められたストーリーを語るように綴ることで、切ない感動を生み出した。さらに泰葉の「フライディ・チャイナタウン」。シティポップのムーブメントによって再評価されている80年代の名曲だが、シンプルなギターストロークと張りのあるボーカルで原曲の良さをしっかりと際立たせていた。「自分と同世代、若い人から"黒川さんの影響で歌謡曲を聴き始めました"と言われるとめちゃくちゃ嬉しい。好きなものを素直に好きって言えるのは素晴らしい」という言葉も心に残った。カバーコーナーの最後は、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」。一つ一つの言葉を丁寧に手渡すように歌い、曲が進むにつれて壮大なスケール感を描き出すパフォーマンスはまさに圧巻。素朴なトークとダイナミックな歌のギャップもすごい。

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「今日、めっちゃ声でるわ!」からはじまったライブ後半のMCのテーマは、日常のなかに小さな幸せを見つけることの大切さ。落ち込むこともあるし、「だらしないな自分」と思うこともある。でも、ネガティブなことばかりに捉われていたら、どんどん気持ちが下がってしまう。自分を責めるのではなく、ちょっとした"いいこと"を探して集めることで、それはきっと大きな幸せにつながるはずーー。

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 黒川が話したことはそのまま、彼の音楽性、"楽曲を通して伝えたいこと"に直結していた。そのことを端的に示していたのは、初のソロ楽曲「この星からの脱出」。「この状況を抜けたら明るい未来が待ってるかも、という希望を込めて書いた」というバラードナンバー。ノスタルジックな旋律、繊細な感情の揺れを伝えるボーカルを含め、黒川のアーティスト性をダイレクトに感じ取ることができる場面だった。
さらに黒川の作詞・作曲によるユアネスの楽曲「埃をかぶった時刻表」(『Ctrl+Z』収録)。現実に押し流されていく過去の記憶や夢をテーマにした歌を叙情的に歌い上げる。

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「最後に、元気になれるような曲を。それはもちろん、僕がやってるバンドの曲です」という言葉に導かれた「pop」(『Ctrl+Z』収録)でライブ本編は終了。鳴り止まない拍手のなか、すぐにステージに戻ってきた黒川は、「本当は夜の部でやろうと思ってたんだけど(笑)」とフジファブリックの「茜色の夕日」をカバー。そして最後はユアネスの「二人静」(EP『BE ALL LIE』収録)。痛みと切なさをたっぷり含んだ声で<傷つけ合う運命ならさ/このまま何度だっていい 騙してあげる>というラインを奏で、ライブはエンディングを迎えた。
 シンガー /ソングライターとしての奥深い魅力、そして、人懐こく、リスナー思いの人となりをしっかりと表現。今回の弾き語りツアーによって黒川は、歌を歌う人としての得難い体験をしたはず。それは必ず、ユアネスの表現につながっていくだろう。

文:森朋之
写真:林直幸

RELEASE INFORMATION

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黒川侑司 feat. こーじゅん「フライディ・チャイナタウン (Acoustic Cover)」
2022年7月8日(金)
Format:Digital
Label:HIP LAND MUSIC / FRIENDSHIP.

Track:
1.フライディ・チャイナタウン (Acoustic Cover)

試聴はこちら

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黒川侑司「この星からの脱出」
2022年6月1日(水)
Format:Digital
Label:HIP LAND MUSIC / FRIENDSHIP.

Track:
1.この星からの脱出

試聴はこちら


LIVE INFORMATION
TWO-MAN LIVE TOUR 2022 "TALENT"
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2022年9月23日(金)
北海道 BESSIE HALL
OPEN 17:30 / START 18:00 
GUEST ARTIST:BBHF
Info. MOUNT ALIVE 050-3504-8700

2022年9月25日(日)
宮城 MACANA
OPEN 17:30 / START 18:00 
GUEST ARTIST:anewhite
Info. GIP 0570-01-9999

2022年10月21日(金)
愛知 ELECTRICLADYLAND(E.L.L)
OPEN 18:30 / START 19:00
GUEST ARTIST:Omoinotake
Info. SUNDAY FOLK PROMOTION 052-320-9100

2022年10月27日(木)
福岡 BEAT STATION 
OPEN 18:30 / START 19:00 
GUEST ARTIST:ねぐせ。
Info. キョードー西日本 0570-09-2424

2022年10月29日(土)
大阪 UMEDA TRAD
OPEN 17:30 / START 18:00
GUEST ARTIST:ENFANTS 
Info. GREENS 06-6882-1224

2022年10月30日(日)
岡山 CRAZYMAMA KINGDOM 
OPEN 17:30 / START 18:00 
GUEST ARTIST:Hakubi
Info.夢番地(岡山) 086-231-3531

2022年11月6日(日)
東京 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
OPEN 17:30 / START 18:00
GUEST ARTIST:マルシィ
Info. DISK GARAGE 050-5533-0888

TICKET
東京公演以外 全自由 ¥4,400(税込) *ドリンク代別
東京公演のみ 指定席 ¥4,400(税込) / 後方立ち見席 ¥4,000(税込) *ドリンク代別

ユアネス / イベントLIVE
2022年7月31日(日)
東京 下北沢フェスごっこ

2022年8月11日(木・祝)
京都 京都藝劇


レギュラーRADIO
担当:黒川侑司(Vo / Gt)
(松本大、森山公稀(odol)と週替わりでMCを担当)
FM福岡「ROOM "H"」
毎週水曜 26:00-26:55
*radikoでエリアフリー / タイムフリー 試聴可能


LINK
オフィシャルサイト
@yourness_kuro
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