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2022.07.15
ゆず、Saucy Dog出演!世代やジャンルを超えた、ぴあ 50th Anniversary MUSIC COMPLEX SPECIAL EDITION
創業50周年を迎えたぴあの主催イベント「ぴあ 50th Anniversary MUSIC COMPLEX SPECIAL EDITION」が2022年7月9日(土)、神奈川・ぴあアリーナMMで開催された。出場アーティストは、ゆず、Saucy Dog。オープニングアクトとしてユアネスが登場し、幅広い年齢層のオーディエンスとともに熱気あふれるステージを繰り広げた。
イベントの幕開けを飾ったのは、福岡で結成された4ピースバンド、ユアネス。SEとして使用されたのは、ピアノとシンセが透明な青さを想起させるオリジナル曲「ZQ5QEBS」。続いてメンバーの黒川侑司(Vo&Gt)、古閑翔平(Gt/Programming)、田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)が登場し、黒川がギターを響かせながら〈「変わんないね」何てあなたもでしょう/きっと 誰かのせい〉というフレーズを描き出す。1曲目は「凩」。バンドサウンドが加わった瞬間に圧倒的なダイナミズムと鋭い疾走感が立ち上がり、オーディエンスをグッと惹きつける。強靭で厚みのあるアンサンブルのなかで、"あなた"との切ない距離感を綴った歌が広がっていくーーこの繊細なバランス感は、まさに唯一無二だ。
続いては、ピアノの旋律と〈水槽の中なら まだ少しは/深い呼吸ができる〉というラインからはじまった「日照雨」。
抑制の効いたビートとともに、ギターや鍵盤のリフレイン、微妙なニュアンスを反映させたメロディが鳴るアレンジは、ミニマルミュージックのよう。〈降りかかる劣等に/ずっと ただ幻日を抱いて〉に象徴される、シリアスな心象とリリカルな表現を併せ持った歌詞も強く心に残った。
MCで黒川は、ぴあ50周年への賛辞、このイベントに参加できたことへの喜びを述べた。さらに「ちょっとでも興味を持ってくれたら、インターネットなどで調べてくれたらうれしいです。ライブにも気軽に遊びに来てください」と語り掛け、会場からは大きな拍手が送られた。
さらに、ピアノやストリングスの音を交えた壮大なアレンジ、ファルセットを活かした美しい歌声、別れの瞬間をドラマティックに映し出す歌詞が一つになった「「私の最後の日」」、郷愁に溢れた旋律と、なかなか明日に向かって踏み出せない"私"の心情を描いた歌が共鳴する「籠の中に鳥」を演奏。筆者の近くにいた女性の観客(ゆずのTシャツを着てました)が「いいバンドだね」と呟いていたが、初めてこのバンドの音楽に触れた人も強い印象を残すアクトだったと思う。
続いては、Saucy Dog。6月に初のアリーナツアー(日本武道館2days、名古屋ガイシホール、大阪城ホール)を成功させたばかりの石原慎也(Vo/Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr/Cho)は、この日もライブバンドとしての強烈なポテンシャルを見せつけた。
オープニングは〈君が横にいなくなっただけ/ただそれだけだろう?〉というラインが染みる「煙」、そして、他の女性と会っている(であろう)恋人への複雑な思いを女性目線で描いた「シンデレラボーイ」。どちらも恋の切なさや痛みをテーマにした楽曲だが、しんみりと寂しい雰囲気だけではなく、強靭なバンドサウンドもしっかりとアピール。繊細な恋愛ソングで知られるSaucy Dogだが、その本質はやはり"ロックバンド"なのだ。
最初のMCでは、せとが「ぴあ50周年、おめでとうございます! そして、ゆずと対バンさせてくださって、ありがとうございます!」とコメント。「難しい時代がまだまだ続いていますが、みなさんが今日の朝よりもちょっとだけ明るい気持ちになっていたらいいなと思いながら、そういうライブをユアネス、ゆずと一緒にやれたらいいなと思っています」と話した。
この後は、Saucy Dogが持つ幅広い音楽性、メッセージ性を体感できるシーンが続いた。まずは7月6日にリリースされたばかりの新作EP「サニーボトル」から「Be yourself」。シンプルなギターリフを中心にした骨太なアンサンブルから届けられるのは、"君は君のままでいい"という思い。明るく、力強く、解放的なボーカルも強く心に残った。さらに「リスポーン」では、恋人同士のすれ違いを石原、せとのツインボーカルで描き出す。(この曲に限らず、Saucy Dogの音楽世界において、せとのコーラスは大きな役割を果たしている)
そして秋澤のベースソロに導かれた「雷に打たれて」からは、高揚感に溢れたアッパーチューンを次々と披露。特にインパクトがあったのは、「バンドワゴンに乗って」。バンドの活動が上手くいかず、壁にぶち当たっていた時期を色濃く反映したこの曲には、Saucy Dogを背負い、真摯に音楽を向き合ってきた石原の意思が真っ直ぐに貫かれていた。生々しいエモーションを込めまくった演奏、めちゃくちゃ楽しそうに音と歌を奏でる3人の笑顔も最高だった。
「僕らが結成当初に作った『いつか』という曲があって。ゆずさんにも『いつか』という曲がありますけど、6年くらい経って、直接"『いつか』という曲を作らせてもらいました"とお伝えすることができました」(石原)という言葉とともに「いつか」を演奏。起伏に富んだサウンドとメロディ、〈君の見る景色を全部/僕のものにしてみたかったんだ〉という歌詞によって、豊かな感動へと結びつけた。
最後は「優しさに溢れた世界で」。眼を背けたくなるような出来事が次々と起こる現在。"大切な誰かを思いながら生きていきたい"と願うこの曲のメッセージは、すべてのオーディエンスの感情を揺さぶったはずだ。
そして、ゆずのステージへ。「夏色」の音源をかけながら北川悠仁、岩沢厚治が登場すると、オーディエンスが一斉に立ち上がり、割れんばかりの拍手を送る。「ぴあ50周年、本当におめでとうございます!ユアネス、Saucy Dogから素晴らしいバトンを受け取りました。トリはゆずが務めさせていただきます!」と北川が元気いっぱいに挨拶。1曲目は岩沢のハーモニカの音色に導かれた1999年の名曲「サヨナラバス」。素朴で懐かしい旋律、バスに乗って離れていく"君"への思いを描いた歌詞が広がり、会場全体に心地よい一体感で包まれた。
軽快なバンドサウンドに誘われて観客のハンドクラップが鳴り響いた「少年」では、北川がステージの端から端まで移動し、しっかりとコミュニケーションを取る。間奏では"Y・U・Z・U"の振り付けも。観客は"マスク&声出し禁止"だが、そんなことはまったく気にならないほどの開放的なステージが繰り広げられた。
この日のイベントのために、ユアネス、Saucy Dogの楽曲をチェックしたという北川。「(Saucy Dogの)『いつか』がすごくよくて。たまたまなんですけど、ゆずにも『いつか』という曲があるんですよ(笑)」(←「そんなMCある?(笑)」という岩沢のツッコミも楽しい)という言葉から、切なくも愛らしいバラードナンバー「いつか」を演奏。繊細でロマンティックな鍵盤のフレーズに導かれた「虹」では、〈雨上がりの空に/そっと架かる虹の橋〉という歌詞がスクリーンに映し出され、北川が「心の中で一緒に歌って」と声をかける。レインボーカラーのライトとともに披露されたこの曲によって、ライブは最初のピークへ。25年のキャリアのなかで生み出された代表曲、ヒット曲がステージの上で新たな息吹を与えられ、普遍的なメッセージが響き渡る。それはまさに、ゆずにしか生み出せない音楽空間だった。
「我々、デビューして25年目を迎えました。25年経っても、俺たちは休むことなく、走り続けてます。ツアーをやって、曲を作り続けています」(北川)というMCの後は、6月29日にリリースされたニューアルバム「SEES」の楽曲を披露。まずは「君を想う」。80'sテイストを取り入れた華やかなアレンジとともに、良いことも悪いことを経験したうえで〈ここにいるよ/笑いたきゃ笑えばいいさ/愛しくちっぽけな 僕らの歌を〉と歌い上げる。そしてファンキーなイントロに導かれた「RAKUEN」では、高揚感に溢れたサウンドのなかで、"周囲を気にせず、好きにやろう!"とリスナーを鼓舞。"らしさ"をしっかり握りしめながら、ジャンルの壁を越え、常にアップデートし続ける2022年のゆずをダイレクトに体感できた。多彩な音楽性を支え、生き生きとしたグルーヴを描き出すバンドメンバー(河村吉宏/Dr、須藤優/Ba、松本ジュン/Key、真壁陽平/G)の演奏も素晴らしい。
お揃いのダンス、手拍子でハッピーに盛り上がった「タッタ」(タンバリン持参のゆずファンも多数!)の後は、「夏色」。爽やかで切ない夏の青春を描いた98年のメジャーデビュー曲を幅広い年齢層のオーディエンスが共有し、ステージと客席の距離がさらに縮まる。曲が終わった瞬間に"もう1回!"と書かれたウチワが掲げられ、〈この長い長い下り坂を〜〉というサビがもう一度響き渡る。溢れんばかりの多幸感が広がり、すべての人が笑顔になっていく。
ここで北川が改めて観客に語り掛けた。ゆずは2020年4月にオープンした"ぴあアリーナMM"のこけら落とし公演を行う予定だったが、コロナのために中止。今年6月にようやく有観客ライブを開催できた。
「2020年、コロナが最初に起きたときも"想像だにしていなかったことが起きるんだな"とビックリしたけど......ビックリすることばっかりだね」「音楽を通して、みなさんが笑顔になったり、元気になったり、悲しいことを少し忘れられたりしたら、そんな嬉しいことはないなって。今日、各ミュージシャン、そんな覚悟を持って、このステージに立ったと思ってます。明日からみんなの日々が素晴らしいものであるように、たくさんの願いを込めて、最後にこの曲を送りたいと思います」
そんな言葉に連なったのは、「栄光の架橋」。北川、岩沢、バンドメンバーが全身全霊で奏でる音、メロディ、言葉は、未来への希望の光となって会場全体をしっかりと照らし出していた。
ここでユアネス、Saucy Dogのメンバーが呼び込まれ、「AOZORA」(北川悠仁が作詞・作曲を担当したFM802×ナカバヤシACCESS!キャンペーンソング。参加シンガー/ゆず、石原慎也/Saucy Dog、はっとり/マカロニえんぴつ、林萌々子/Hump Back、花村想太/Da-iCE、Vaundy)をセッション。再び笑顔が広がり、イベントはエンディングへ。世代やジャンルを超え、音楽のポジティブなパワーをたっぷり感じられる意義深いイベントだったと思う。
文:森朋之
写真:加藤千絵(CAPS)
Saucy Dogオフィシャルサイト
ゆずオフィシャルサイト
ぴあ 50th Anniversary 「MUSIC COMPLEX SPECIAL EDITION」
イベントの幕開けを飾ったのは、福岡で結成された4ピースバンド、ユアネス。SEとして使用されたのは、ピアノとシンセが透明な青さを想起させるオリジナル曲「ZQ5QEBS」。続いてメンバーの黒川侑司(Vo&Gt)、古閑翔平(Gt/Programming)、田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)が登場し、黒川がギターを響かせながら〈「変わんないね」何てあなたもでしょう/きっと 誰かのせい〉というフレーズを描き出す。1曲目は「凩」。バンドサウンドが加わった瞬間に圧倒的なダイナミズムと鋭い疾走感が立ち上がり、オーディエンスをグッと惹きつける。強靭で厚みのあるアンサンブルのなかで、"あなた"との切ない距離感を綴った歌が広がっていくーーこの繊細なバランス感は、まさに唯一無二だ。
続いては、ピアノの旋律と〈水槽の中なら まだ少しは/深い呼吸ができる〉というラインからはじまった「日照雨」。
抑制の効いたビートとともに、ギターや鍵盤のリフレイン、微妙なニュアンスを反映させたメロディが鳴るアレンジは、ミニマルミュージックのよう。〈降りかかる劣等に/ずっと ただ幻日を抱いて〉に象徴される、シリアスな心象とリリカルな表現を併せ持った歌詞も強く心に残った。
MCで黒川は、ぴあ50周年への賛辞、このイベントに参加できたことへの喜びを述べた。さらに「ちょっとでも興味を持ってくれたら、インターネットなどで調べてくれたらうれしいです。ライブにも気軽に遊びに来てください」と語り掛け、会場からは大きな拍手が送られた。
さらに、ピアノやストリングスの音を交えた壮大なアレンジ、ファルセットを活かした美しい歌声、別れの瞬間をドラマティックに映し出す歌詞が一つになった「「私の最後の日」」、郷愁に溢れた旋律と、なかなか明日に向かって踏み出せない"私"の心情を描いた歌が共鳴する「籠の中に鳥」を演奏。筆者の近くにいた女性の観客(ゆずのTシャツを着てました)が「いいバンドだね」と呟いていたが、初めてこのバンドの音楽に触れた人も強い印象を残すアクトだったと思う。
続いては、Saucy Dog。6月に初のアリーナツアー(日本武道館2days、名古屋ガイシホール、大阪城ホール)を成功させたばかりの石原慎也(Vo/Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr/Cho)は、この日もライブバンドとしての強烈なポテンシャルを見せつけた。
オープニングは〈君が横にいなくなっただけ/ただそれだけだろう?〉というラインが染みる「煙」、そして、他の女性と会っている(であろう)恋人への複雑な思いを女性目線で描いた「シンデレラボーイ」。どちらも恋の切なさや痛みをテーマにした楽曲だが、しんみりと寂しい雰囲気だけではなく、強靭なバンドサウンドもしっかりとアピール。繊細な恋愛ソングで知られるSaucy Dogだが、その本質はやはり"ロックバンド"なのだ。
最初のMCでは、せとが「ぴあ50周年、おめでとうございます! そして、ゆずと対バンさせてくださって、ありがとうございます!」とコメント。「難しい時代がまだまだ続いていますが、みなさんが今日の朝よりもちょっとだけ明るい気持ちになっていたらいいなと思いながら、そういうライブをユアネス、ゆずと一緒にやれたらいいなと思っています」と話した。
この後は、Saucy Dogが持つ幅広い音楽性、メッセージ性を体感できるシーンが続いた。まずは7月6日にリリースされたばかりの新作EP「サニーボトル」から「Be yourself」。シンプルなギターリフを中心にした骨太なアンサンブルから届けられるのは、"君は君のままでいい"という思い。明るく、力強く、解放的なボーカルも強く心に残った。さらに「リスポーン」では、恋人同士のすれ違いを石原、せとのツインボーカルで描き出す。(この曲に限らず、Saucy Dogの音楽世界において、せとのコーラスは大きな役割を果たしている)
そして秋澤のベースソロに導かれた「雷に打たれて」からは、高揚感に溢れたアッパーチューンを次々と披露。特にインパクトがあったのは、「バンドワゴンに乗って」。バンドの活動が上手くいかず、壁にぶち当たっていた時期を色濃く反映したこの曲には、Saucy Dogを背負い、真摯に音楽を向き合ってきた石原の意思が真っ直ぐに貫かれていた。生々しいエモーションを込めまくった演奏、めちゃくちゃ楽しそうに音と歌を奏でる3人の笑顔も最高だった。
「僕らが結成当初に作った『いつか』という曲があって。ゆずさんにも『いつか』という曲がありますけど、6年くらい経って、直接"『いつか』という曲を作らせてもらいました"とお伝えすることができました」(石原)という言葉とともに「いつか」を演奏。起伏に富んだサウンドとメロディ、〈君の見る景色を全部/僕のものにしてみたかったんだ〉という歌詞によって、豊かな感動へと結びつけた。
最後は「優しさに溢れた世界で」。眼を背けたくなるような出来事が次々と起こる現在。"大切な誰かを思いながら生きていきたい"と願うこの曲のメッセージは、すべてのオーディエンスの感情を揺さぶったはずだ。
そして、ゆずのステージへ。「夏色」の音源をかけながら北川悠仁、岩沢厚治が登場すると、オーディエンスが一斉に立ち上がり、割れんばかりの拍手を送る。「ぴあ50周年、本当におめでとうございます!ユアネス、Saucy Dogから素晴らしいバトンを受け取りました。トリはゆずが務めさせていただきます!」と北川が元気いっぱいに挨拶。1曲目は岩沢のハーモニカの音色に導かれた1999年の名曲「サヨナラバス」。素朴で懐かしい旋律、バスに乗って離れていく"君"への思いを描いた歌詞が広がり、会場全体に心地よい一体感で包まれた。
軽快なバンドサウンドに誘われて観客のハンドクラップが鳴り響いた「少年」では、北川がステージの端から端まで移動し、しっかりとコミュニケーションを取る。間奏では"Y・U・Z・U"の振り付けも。観客は"マスク&声出し禁止"だが、そんなことはまったく気にならないほどの開放的なステージが繰り広げられた。
この日のイベントのために、ユアネス、Saucy Dogの楽曲をチェックしたという北川。「(Saucy Dogの)『いつか』がすごくよくて。たまたまなんですけど、ゆずにも『いつか』という曲があるんですよ(笑)」(←「そんなMCある?(笑)」という岩沢のツッコミも楽しい)という言葉から、切なくも愛らしいバラードナンバー「いつか」を演奏。繊細でロマンティックな鍵盤のフレーズに導かれた「虹」では、〈雨上がりの空に/そっと架かる虹の橋〉という歌詞がスクリーンに映し出され、北川が「心の中で一緒に歌って」と声をかける。レインボーカラーのライトとともに披露されたこの曲によって、ライブは最初のピークへ。25年のキャリアのなかで生み出された代表曲、ヒット曲がステージの上で新たな息吹を与えられ、普遍的なメッセージが響き渡る。それはまさに、ゆずにしか生み出せない音楽空間だった。
「我々、デビューして25年目を迎えました。25年経っても、俺たちは休むことなく、走り続けてます。ツアーをやって、曲を作り続けています」(北川)というMCの後は、6月29日にリリースされたニューアルバム「SEES」の楽曲を披露。まずは「君を想う」。80'sテイストを取り入れた華やかなアレンジとともに、良いことも悪いことを経験したうえで〈ここにいるよ/笑いたきゃ笑えばいいさ/愛しくちっぽけな 僕らの歌を〉と歌い上げる。そしてファンキーなイントロに導かれた「RAKUEN」では、高揚感に溢れたサウンドのなかで、"周囲を気にせず、好きにやろう!"とリスナーを鼓舞。"らしさ"をしっかり握りしめながら、ジャンルの壁を越え、常にアップデートし続ける2022年のゆずをダイレクトに体感できた。多彩な音楽性を支え、生き生きとしたグルーヴを描き出すバンドメンバー(河村吉宏/Dr、須藤優/Ba、松本ジュン/Key、真壁陽平/G)の演奏も素晴らしい。
お揃いのダンス、手拍子でハッピーに盛り上がった「タッタ」(タンバリン持参のゆずファンも多数!)の後は、「夏色」。爽やかで切ない夏の青春を描いた98年のメジャーデビュー曲を幅広い年齢層のオーディエンスが共有し、ステージと客席の距離がさらに縮まる。曲が終わった瞬間に"もう1回!"と書かれたウチワが掲げられ、〈この長い長い下り坂を〜〉というサビがもう一度響き渡る。溢れんばかりの多幸感が広がり、すべての人が笑顔になっていく。
ここで北川が改めて観客に語り掛けた。ゆずは2020年4月にオープンした"ぴあアリーナMM"のこけら落とし公演を行う予定だったが、コロナのために中止。今年6月にようやく有観客ライブを開催できた。
「2020年、コロナが最初に起きたときも"想像だにしていなかったことが起きるんだな"とビックリしたけど......ビックリすることばっかりだね」「音楽を通して、みなさんが笑顔になったり、元気になったり、悲しいことを少し忘れられたりしたら、そんな嬉しいことはないなって。今日、各ミュージシャン、そんな覚悟を持って、このステージに立ったと思ってます。明日からみんなの日々が素晴らしいものであるように、たくさんの願いを込めて、最後にこの曲を送りたいと思います」
そんな言葉に連なったのは、「栄光の架橋」。北川、岩沢、バンドメンバーが全身全霊で奏でる音、メロディ、言葉は、未来への希望の光となって会場全体をしっかりと照らし出していた。
ここでユアネス、Saucy Dogのメンバーが呼び込まれ、「AOZORA」(北川悠仁が作詞・作曲を担当したFM802×ナカバヤシACCESS!キャンペーンソング。参加シンガー/ゆず、石原慎也/Saucy Dog、はっとり/マカロニえんぴつ、林萌々子/Hump Back、花村想太/Da-iCE、Vaundy)をセッション。再び笑顔が広がり、イベントはエンディングへ。世代やジャンルを超え、音楽のポジティブなパワーをたっぷり感じられる意義深いイベントだったと思う。
文:森朋之
写真:加藤千絵(CAPS)
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