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2022.07.13
bonobosの解散発表は、ファンにとって青天の霹靂だったに違いない。「フルアルバム」ということでいえば、2016年の『23区』以来リリースがないので、「どうなってるのかな?」という思いもあるにはあった。ただ、もちろん『23区』以降も新曲はリリースされていたし、最近のライブのMCでも「アルバムは絶賛制作中。でも歌詞が書けなくて」と蔡忠浩が笑いながらよく話していた。
何よりひさびさの新曲となった昨年リリースの「Not LOVE」が音楽的にもメッセージとしてもbonobosにしか作り得ない素晴らしい内容で、しかもそこにCRCK/LCKSや象眠舎などで幅広く活動し、シーンのキーマン的な印象もある小西遼が参加していたのも大きかった。きっとこれを機にbonobosと音楽的に呼応する下の世代との繋がりが深まって、バンドとしてのネクストシーズンが始まっていくに違いないと、勝手な妄想をしていた。
だからこそ、そんなタイミングでの解散発表は青天の霹靂だったし、やはりどうにも寂しい。解散は来年の春なので、まだもう少し時間はあるものの、全国ツアーとしてはラストとなる『迷わずにSAY!YES♡』の最終公演に、そんな少しだけ複雑な心持ちで向かった。
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2014年のファーガソン暴動にインスパイアされたモーゼス・サムニーの『Black In Deep Red, 2014』の一曲目、「power to the people」「power to the community」のシュプレヒコールが聴こえる「Power?」をSEにメンバーが登場し、ライブは「Not LOVE」からスタート。これがのっけから抜群。オートチューンをかけつつ、ハンドマイクで巧みなフロウを聴かせる蔡のボーカルも、抑制の効いたグルーヴを生み出すバンド演奏も素晴らしいし、さらにはそこに今回のツアーでサポートとして全公演を回った小西のサックスが華やかさを加え、パフォーマンスの完成度が格段に高まった印象を受ける。
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森本夏子のベースが引っ張るレゲエ~ダブ路線の「永遠式」の4から3へのリズムチェンジも気持ちがいいし、田中佑司の艶やかなエレピから始まる「In rainbow,I'm a rainbow too」での小西のフルートも非常に効果的。ツアーを回ってきたからこそのこの仕上がり具合い、やっぱり解散はもったいないなと心のどこかで思ってしまう。
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この冒頭3曲を終えて、蔡が「ありがとう!ようこそ、bonobosです!」と挨拶をすると、オーディエンスからの長く温かな拍手が起こる。この拍手には「最高!」や「こっちこそありがとう!」や、もしかしたら「何で解散しちゃうんだよ!」という涙まじりの怒りも含まれていたかもしれないが、とにかくこの日は曲間の拍手が毎回感動的で、それは結局どんな想いであれ、bonobosに対する愛以外の何ものでもなかったはずだ。
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小池龍平のギターソロも印象的な「葡萄の森」、5人編成になってからの新たな代表曲「Cruisin'Cruisin'」、長く愛されてきた「夏至にトカゲは」に続いて演奏された「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」では、アウトロで蔡のギターソロと小西のサックスソロが絡み合う白熱のセッションを聴かせる。それに対する一回目以上にボリュームを増し、延々と送られた拍手には、森本が思わず「すごいよ、史上最長の拍手じゃない?」と笑い、田中が「もうライブ終わるの?」とおどけるほどだった。
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ライブ中盤の「23区」に続いては、「まだ発表してない、bonobosの一番新しい曲をやります」と言って、新曲の「永久彗星短歌水」を披露。ドリーミーなイントロで幕を開け、蔡が「Not LOVE」にも通じるオートチューンをかけたボーカルで歌うが、リズムがよりアグレッシブなこともあり、いつになくラップに近いフロウを聴かせ、曲中には梅本浩亘が細かくハイハットを刻むトラップビートのパートも。普通のバンドならそこでシンベに行きそうなものだが、森本があくまでエレベで低音を鳴らすあたりがbonobosらしい。タイトルからして、歌詞の内容も非常に気になる。
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さらにこの次に最新シングルの「YES(vanguard mix)」を演奏。中盤の「YES」の連呼から、サイケデリックなジャムに突入して、小西のサックスソロへと至る中盤の展開がカタルシスを生み、〈星になんかなろうとしないで〉と歌う後半の切実さがどうにも胸を打つ。「vanguard」という単語の意味通りの前衛性も十分だし、ディアンジェロのバンドと比較しても決して引けを取らないであろう、そんな名曲だ。そして、「解散」というどうしてもネガティブに感じてしまう発表の後で、そうでなくても至る所に心ない「NO」が溢れるこの世の中で、正面から「YES」を掲げるbonobosが好きだなと改めて思う。
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ダンスミュージック的なグルーヴとプログレッシブな展開がスリリングな「アルペジオ」の名演を経て、最後に演奏されたのは「GOLD」。〈ありがとう さよなら みんな愛してる〉というこれまで何度となく聴いてきたフレーズがいつになく実感を伴って響く中、オーディエンスもその言葉をそのまま返すかのようなクラップで応え、本編が終了した。
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アンコールでは森本が来年の3月までたくさんライブがあることを伝え、「まだまだみんな来てくれると思うから、さよならは言わないぞ」と話し、蔡が「残りカスも残らないくらいカスカスになるまでやり切ってから終わるんで、お付き合いよろしく」と呼びかけて、チェンバーポップに傾倒した中期bonobosを代表する名曲「三月のプリズム」から、もう一度アッパーな「うつくしいひとたち」、ラストはバラードの「グッドナイト」で大団円。この日何度も送られた長く温かな拍手は、メンバーがステージを下りても鳴り止むことなく続いていた。
文:金子厚武
写真:Yumi Ikenaga
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2022年11月9日(水)
ビルボードライブ東京
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥7,000
カジュアルエリア ¥6,500(1ドリンク付)
[ご予約・お問い合せ] ビルボードライブ東京 03-3405-1133
〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F
2022年11月17日(木)
ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥7,000
カジュアルエリア ¥6,500(1ドリンク付)
[ご予約・お問い合せ] ビルボードライブ大阪 06-6342-7722
〒530-0001 大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2
【チケット情報】
BBL・法人会員先行=7月13日(水)正午12:00 ※ファンクラブ「HOKA HOKA」先行も同時受付開始。
一般予約受付開始=7月20日(水)正午12:00
Billboard Live Official Web:http://www.billboard-live.com/
@bonobosofficial
@bonobostagram
FRIENDSHIP.
何よりひさびさの新曲となった昨年リリースの「Not LOVE」が音楽的にもメッセージとしてもbonobosにしか作り得ない素晴らしい内容で、しかもそこにCRCK/LCKSや象眠舎などで幅広く活動し、シーンのキーマン的な印象もある小西遼が参加していたのも大きかった。きっとこれを機にbonobosと音楽的に呼応する下の世代との繋がりが深まって、バンドとしてのネクストシーズンが始まっていくに違いないと、勝手な妄想をしていた。
だからこそ、そんなタイミングでの解散発表は青天の霹靂だったし、やはりどうにも寂しい。解散は来年の春なので、まだもう少し時間はあるものの、全国ツアーとしてはラストとなる『迷わずにSAY!YES♡』の最終公演に、そんな少しだけ複雑な心持ちで向かった。
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2014年のファーガソン暴動にインスパイアされたモーゼス・サムニーの『Black In Deep Red, 2014』の一曲目、「power to the people」「power to the community」のシュプレヒコールが聴こえる「Power?」をSEにメンバーが登場し、ライブは「Not LOVE」からスタート。これがのっけから抜群。オートチューンをかけつつ、ハンドマイクで巧みなフロウを聴かせる蔡のボーカルも、抑制の効いたグルーヴを生み出すバンド演奏も素晴らしいし、さらにはそこに今回のツアーでサポートとして全公演を回った小西のサックスが華やかさを加え、パフォーマンスの完成度が格段に高まった印象を受ける。
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ライブ中盤の「23区」に続いては、「まだ発表してない、bonobosの一番新しい曲をやります」と言って、新曲の「永久彗星短歌水」を披露。ドリーミーなイントロで幕を開け、蔡が「Not LOVE」にも通じるオートチューンをかけたボーカルで歌うが、リズムがよりアグレッシブなこともあり、いつになくラップに近いフロウを聴かせ、曲中には梅本浩亘が細かくハイハットを刻むトラップビートのパートも。普通のバンドならそこでシンベに行きそうなものだが、森本があくまでエレベで低音を鳴らすあたりがbonobosらしい。タイトルからして、歌詞の内容も非常に気になる。
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さらにこの次に最新シングルの「YES(vanguard mix)」を演奏。中盤の「YES」の連呼から、サイケデリックなジャムに突入して、小西のサックスソロへと至る中盤の展開がカタルシスを生み、〈星になんかなろうとしないで〉と歌う後半の切実さがどうにも胸を打つ。「vanguard」という単語の意味通りの前衛性も十分だし、ディアンジェロのバンドと比較しても決して引けを取らないであろう、そんな名曲だ。そして、「解散」というどうしてもネガティブに感じてしまう発表の後で、そうでなくても至る所に心ない「NO」が溢れるこの世の中で、正面から「YES」を掲げるbonobosが好きだなと改めて思う。
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文:金子厚武
写真:Yumi Ikenaga
LIVE INFORMATION
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ビルボードライブ東京
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥7,000
カジュアルエリア ¥6,500(1ドリンク付)
[ご予約・お問い合せ] ビルボードライブ東京 03-3405-1133
〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F
2022年11月17日(木)
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サービスエリア ¥7,000
カジュアルエリア ¥6,500(1ドリンク付)
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〒530-0001 大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2
【チケット情報】
BBL・法人会員先行=7月13日(水)正午12:00 ※ファンクラブ「HOKA HOKA」先行も同時受付開始。
一般予約受付開始=7月20日(水)正午12:00
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