SENSA

2022.06.17

Saucy Dog、

Saucy Dog、"らしさ"に溢れた武道館で感じさせた進化最中のステージ

Saucy Dog、初の日本武道館公演から約1年4カ月ぶりの武道館2デイズ。360度がオーディエンスで埋まったチケットソールドアウトの2日目の模様をレポートする。

波の音がSEとして流れ、場内が暗くなると同時に、ステージ上のヴィジョンに海の映像が映り、海底に沈んだバンドセットが映し出される。この冒頭の映像演出をはじめ、Saucy Dog2年目の武道館は随所で大胆且つ華やな演出が見られ、ロックバンドとしての格段のスケールアップを感じさせた。と同時に、それでもSaucy Dogの魅力が少しも揺るがない、そんな逞しさを実感できたライブだった。

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1曲目は「BLUE」。ブルーの照明の中、力強いリズムを刻む石原慎也(Vo・G)&秋澤和貴(B)&せとゆいか(Dr)の3人。石原が景気づけに「武道館~‼」と思い切り叫ぶ。〈運命なんか知らない 僕らで作ればいいや〉と歌うSaucyなりの開幕宣言だ。〈流されて 泣かされて 世界に見放されても 僕らどこまでもこのままで 誰にも愛されなくても〉。崖っぷちの状況でも強い闘争心を胸に想いを歌い放つ曲を1曲目に据えた3人がとても頼もしく見える。

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石原が「俺たちバンドマンの歌を!」と叫び、「メトロノウム」へ。ブルーからオレンジに照明が変わり、シャープな歌とアンサンブルに呼応するように煌びやかなレーザーが舞う。ダイナミックな演奏と演出が、がっつりハマり今のSaucy Dogチームがしっかりと嚙み合っていることが伝わる。その中で3人はドラムセットを中央に、お互いに向き合って楽しそうに演奏する。いくらライブ会場の規模が大きくなろうとも、この親密な空気感は変わらないままだ。

石原が無音の中、「僕が今まで言われた一番悔しかった言葉」と呟き、「煙」が演奏された。"君"に言われたあの痛烈な言葉がメロディを伴い、ギターの旋律と共に武道館に響く。"あの時"の感情をおさめるかのように、石原は体を激しく揺らしながら歌い、右手を突き上げる。せとの歌が重なり、切れ味を増幅させる。

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せとの力強いドラムから始まる「真昼の月」の間奏ではミラーボールが回り、自然とハンドクラップが起きる。一気に6曲駆け抜けた後の初めてのMCで石原が感謝の言葉を口にする。今回の武道館2デイズを含むアリーナツアーのタイトルは「Be Yourself」。あなたらしく、自分らしくという意味のタイトルをつけた理由を話す。「こうやってたくさんの人がSaucy Dogを観にきてくれるようになったのも、僕たちが僕たちらしくやってこれたのもみんなのおかげだと思ってます。みんなの明日がちょっとでも晴れやかに、自分らしくあなたらしく生きれるようなそんな世界になったらいいなと思って今日のタイトルをつけました」。その後、このツアーのために作ったという新曲「Be Yourself」を披露。

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せとのカウントアップから始まり、歌詞がヴィジョンに映し出される。〈君は君らしくいてよ〉〈自分のために生きていいんだよ〉というメッセージがすっと心を掴むミドルテンポの力強い曲だ。すべての迷える人たちへの応援歌となるべく、〈間違えていこう 何度でも進め〉というメッセージが響く。すぐにシンガロングしたくなるような開かれたメロディだ。石原が満足気な顔を浮かべながら「良い曲ですよね」と自画自賛する様が微笑ましい。「みんなも堂々と自分らしく生きてほしいという想いを込めた曲です」。
ひときわ大きな拍手が上がったヒット曲「シンデレラボーイ」では、愛憎入り混じった恋愛模様が歌われる中、ステージからも炎が上がり、"私"の報われない思いを援護射撃する。

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中盤、石原が「ここからはスペシャルゲストをお迎えしてスペシャルなSaucy Dogをお見せしたいと思ってます」と言い、"スーパーピアニスト"村山☆潤を呼び込む。THE FIRST TAKEでも見せた4人体制による「魔法にかけられて」。そこから恒例のアコースティックセットに突入。石原が「ご着席ください」と言う前にオーディエンスが座り始めていて、Saucy Dogのライブにおいてすっかりアコースティックが根付いていることがわかる。ステージ中央、ドラムセットが置かれたエリアに右手にタンバリンを持ったせとが座り、満開の笑顔で「せとゆいか、歌います~‼」と宣言。「煙草とコーヒー」ではキュートな歌声とハンドクラップがじんわりと武道館に広がる。石原が「いや~!いい歌声!」と褒めると、せとが照れながら「うそ~!」と応える。

せとが「昨年の初めての武道館は緊急事態宣言真っただ中の時期で、想像とは違ったところもあったけど、今回はフルキャパでソールドアウトです!」と喜びを爆発させ、温かい拍手が送られる。せとが「問題です。今日は何の日でしょう?」と問いかけ、「秋澤、喋るチャンス!」と振り、秋澤がようやく口を開くが、長い間喋っていなかったからか声がガサガサ。武道館がどっと湧く。どうやら今日は1年に3回のラッキーデーとのこと。さらに多幸感を滲みながらも、せとが「コロナ禍で書いた大事な曲。大切な人を想い浮かべて訊いてほしい」と言って「いつもの帰り道」へ。陰鬱とした時代ではあるが、帰る場所がある大切さをしっとりと歌い上げる。

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照明が明るくなると、ステージ上には4人のストリングス隊の姿が。ストリングススペシャルバージョンでの「結」だ。前回の武道館は制限も多かったが、今回はフルでやりたいことを全部やってしまおうという雰囲気を感じる。石原「楽しい曲も用意しました!」ということで、ノリノリでハッピーな8人バージョンでの「ノンフィクション」。〈踏み出した足 ドアの向こう側へと まるごと愛せばいいのさ〉のところで、両腕を上げて大きく丸を作る石原。アウトロで3人の歌が重なり、どこまでも想いが広がっていく。

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「雷に打たれて」のイントロでは秋澤がステージ中央に勇ましく立ち、ベースを弾きまくる。石原もステージの端までいき、ギターを弾いて煽る。バキバキのレーザーやスモークの演出もあって、躍動感が増していく。インプロヴィゼーション調のアウトロで石原が気持ち良さそうに「イエーイ!」とシャウトしてから、「ゴーストバスター」になだれ込む。炎がガンガン上がる。あくまでも日常に根付いた情景を歌っているのに、万華鏡のようにくるくると景色が変わるソングライティング力はやはり見事だし、それを120%ヴィヴィッドに押し広げる歌と演奏と演出もまた見事だ。ここでは火花まで上がった。

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本編終盤、石原が「ここにいるみんなの人生を僕らが直接変えることはできないと思ってます。でも助けることはできるんじゃないかなと思ってます。一緒に進むことはできるんじゃないかなって思ってます。あなたの人生にSaucy Dogっていう名前がちょっとでも長く残ってくれたら嬉しいなって、このワンマンライブをするにあたって改めて思いました」とオーディエンスとスタッフにありったけの感謝の気持ちを伝える。

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アンコールではまずは再会を約束する「いつか」を演奏し、最後の曲は「グッバイ」。「今までの弱かった自分に、最低だった自分に......グッバイ~‼」という石原の晴れやかなシャウト。力強いハンドクラップの中で、3人は向き合ってもうすべて出し尽くそうという渾身のプレイを見せる。照明が満員のオーディエンスを照らす。石原が「みんな、心の中で歌える?」と問いかけるとオーディエンスが腕を突き上げて、前後に振って応える。演奏終了後、何度も深くおじぎをして、ステージの端から端まで小走りで移動し、「ありがとう!」と感謝を伝えていた3人。進化の最中のステージ。まさに大団円だった。

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文:小松香里
写真:日吉"JP"純平、白石達也

LINK
オフィシャルサイト
@saucydog_offi
@saucydog0403

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