SENSA

2021.12.11

赤い靴「OPEN THE DOOR」──酸いも甘いも噛み分けた大人のオルタナティヴポップ

赤い靴「OPEN THE DOOR」──酸いも甘いも噛み分けた大人のオルタナティヴポップ

 シンガーソングライター東川亜希子とドラマー/プロデューサー神谷洵平によるデュオ、5年ぶり4枚目のアルバム。初めて聴いたので過去の作品との比較はできないが、確実に秀作である。東川が曲を作り、神谷がアレンジするスタイルが基本だが、バックの演奏を含めて息の合いようが尋常ではない。
 プレーヤーは岡田拓郎(ギター)、隅倉弘至(ベース)、副田整歩(サックス)ら昨年のソロアルバム『Jumpei Kamiya with...』の参加メンバーが多い。ミュージシャンを自宅に招いてのホームレコーディングだったそうで、緩和と緊張のバランスが極上だ。もちろん神谷自身もドラムだけでなくいろんな楽器を弾いている。
 冒頭「STARMAN」の不穏なイントロからインパクト十分。ピアノのコード感やふわふわした歌メロとベースラインの絡みに引き込まれ、サビの多重コーラスで一気に視界が開ける。「STILL IN LOVE」や「LIFE」のペダルスティール、「彼女」のアンビエントなサックス、「FLY DRAGON」のエレキギターとサックスの絡みなど、アルバム全体のサウンドは神谷のソロからの連続性を感じさせるアメリカーナ~オルタナティヴフォーク~チェンバーポップ調。ボン・イヴェール、ビッグ・シーフ、ジェニー・ルイス、ブランディ・カーライル、エイミー・マンといった名前を思い出す。
 東川が紡ぐ親しみやすいメロディと言葉を、「LIFE」「FLY DRAGON」のようなスペーシーで尖った音色や「OPEN THE DOOR」のプレイフルなパーカッション群で彩って新鮮な印象を与える。歌とサウンドが互いに目配せし合って微笑みを交わしているような、温かくアットホームな雰囲気が横溢している。不穏だが円満、オルタナティヴだがポップなのだ。なかでも「彼女」後半の即興っぽいジャジーな展開は出色である。
 作詞は8曲のうち5曲を東川、残り3曲はfifi léger(「TRULY」)、岩見十夢(「FLY DRAGON」)、阿部芙蓉美(「星に願いをかけるように」)が手がけるが、世界観には統一感がある。酸いも甘いも噛み分けた優しさとユーモアは大人ならでは。「OPEN THE DOOR」の〈アイスクリームみたいに/幸せな瞬間/いつか空から落ちて来るかも/楽しみに待っていよう〉には歌い方込みで脱帽。「TRULY」の英語の発音もていねいで、とても真摯に作られた作品であることがどの要素を取り出してもよくわかる。

文:高岡洋詞




RELEASE INFORMATION

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赤い靴「OPEN THE DOOR」
2021年12月8日(水)
Format:Digital
Label:Make Some Records

Track:
1. STARMAN
2. STILL IN LOVE
3. TRULY
4. 彼女
5. OPEN THE DOOR
6. LIFE
7. FLY DRAGON
8. 星に願いをかけるように

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