SENSA

2021.12.10

シノエフヒ「updraft/waterfront」──"流動体"として新たな表現を探し彷徨うドキュメント

シノエフヒ「updraft/waterfront」──"流動体"として新たな表現を探し彷徨うドキュメント

2人組のポストロック・バンドであったノクターンがバンド名をシノエフヒに改名したのは昨年の8月。しかし同年にはねねちゃん(Dr / Cho)が活動休止(その後脱退)し、現在はじょぶず(Vo/Gt)が一人で活動を継続。まったくバンドなんて流動体だ。本作は現名義で初となる6曲入りのミニアルバムである。最初と最後の曲名を並べたタイトルが示すように、一人ぼっちになってしまった孤独な人間がupdraft(=上昇気流)に乗っかって、様々な場所をさまよいながら、今いる場所とは異なる地上の水辺(=waterfront)にたどり着く、ロードムービーのようなコンセプトを忍ばせている。

じょぶずの流麗なギター・フレーズを際立たせたバンド・サウンドが核ではあるが、一人になったこともあって発想はより自由に。「ソア区域」では訥々とポエトリーリーディングで進んでいくが、〈一人で賛美歌を口遊む〉という歌詞のあと、賛美歌「荒野の果てに」になだれ込んでいく展開はポスト・ロックというよりプログレッシブ・ロック的なアプローチ。一方、「露天商」は2本のアコースティック・ギターが絡み合う繊細な楽曲。最近のライブと地続きである、巧みな弾き語りスタイルも収められている。

全編通じてじょぶずの声は透き通っているが、どこか不安で揺らぎ、時化ている。孤独と空虚と悲しみで溢れそうな歌は自分の憑き物を落とすかのようにも聴こえるし、最終曲「waterfront」でも象徴的に歌われる"流動体"として、新たな表現を探すために彷徨っている様がドキュメントされているようだ。

11月26日、吉祥寺のGALLERY IROでの展示『光の還る処へ』に足を運んだ。写真家の松田凪、本作のジャケットデザインも手掛けているイラストレーターの三上唯、そしてシノエフヒの三人展である。それぞれの作品がブースごとに展示されているのではなく、写真とイラストは交じり合うようにレイアウトされている。そしてその隙間を縫うようにシノエフヒによる音楽が会場を満たす、三者のクリエイティブが一体となったこの空間が一つの作品だという試みを強く感じた展示であった。それをパートの違うものが集まったバンドとなぞらえるのは少し強引だが、このアルバムも含めて今のシノエフヒには、流動体としてのフレキシブルな表現のアイデアが渦巻いていることを察知している。

文:峯大貴



RELEASE INFORMATION
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シノエフヒ「updraft/waterfront」
2021年12月1日(水)
Format:Digital

Track:
1. updraft
2. ソア区域
3. 水の王冠
4. 露天商
5. アフネ、ここだよ
6. waterfront

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PROFILE

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シノエフヒ
エモーショナル・ポストロックバンド
詩と音楽の祈りを.

shinoefuhi
emotional postrock band
This dedicates you poetic and music pray.


LINK
@shinoefuhi
FRIENDSHIP.

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