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2021.12.07
Small Circle of Friends「Cell」──混沌とした時代、そこに生まれる感情をフラットに映し出す新作
Small Circle of Friends(以下:SCOF)が12作目となるニュー・アルバム『Cell』をリリースした。28年のキャリアを刻むSCOFは、近年ではBASI、maco marets、kojikojiなどのトラック/編曲も手掛けるアズマリキと、サステナブルな衣料を目指す〈75Clothes〉を展開するムトウサツキによる2人組。特にラッパーのmaco maretsとは繋がりが深く、1stアルバムから多くの制作を共にしており、重心の低いフロウや低めの体温感、リリシズムと歌心の共存など、いくつもの共通項を見出すことができる。
今作はオープナー・トラック「seasons change」の次の一節と共に幕を開ける。〈夏が過ぎて何処へ向かう?/今僕らは季節失って/迷い込んだこの世界で/何をしてる?/何を見てる?〉──世界中の時間/季節が失われたコロナ禍以降を描いているようでもあるが、しかしその語り口は至ってフラット。ありのままの世界を受け止め、自然体にアウトプットすることで、聴く人それぞれの様々な感情に寄り添ってくれるような懐の深さを感じさせるような1曲だ。2020年以降に制作した楽曲、それ以前に作り溜めていた楽曲が混在しているという今作は、昨年を機に激変した世界をグラデーションのように淡く、しかし確かなリアリティと共に描き出している。
〈口元マスク/ポッケにエタノール〉〈行き交う友とも間隔保ち〉と綴りつつも、〈今僕ら新しい他者との交わり学び〉とポジティブに変換する「sad song」、ドリーミーなトラックに乗せて〈荒みがちな事ばかりな今/静かにキラキラ舞う天使達が/踊り回りだした〉と歌う「I saw the Light」。その一方で、乾いた4つ打ちとパーカッシブなビートを行き来する「Sunshower」では〈アツアツでサクサクのコロッケより/大事なものがあるかよって〉と普遍的な世界を描写。また、個人的には自身の足取り、キャリアに言及した「砂漠と靴紐」も印象深い。〈なぜだろう?悟り未だ開かず/いくつになっても惑わずと成らず〉──確かなキャリアを築きながらも、常に試行錯誤しながら進んでいく自身のスタンスと現状を綴った誠実な1曲だ。
誰もが大きな変化を余儀なくされたであろう昨今。そこで生活する人間の様々な感情の機微、日常、そして過去と未来を淡々と映し出した今作には、どこまでもリアルな"今"の感情が描かれている。
文:保坂隆純
Small Circle of Friends『Cell』
2021年12月1日(水)
Format:Digital
Label:75Records
Track:
01. seasons change
02. Sunshower
03. 瓶の中のエコー
04. コノサキノサキ
05. clap song
06. sad song
07. 砂漠に靴紐
08. I saw the Light
09. snore
10. playtime / cell
11. NewType
試聴はこちら
Small Circle of Friends
ムトウサツキとアズマリキのふたり組。
1993年、United future organizationのレーベルBrownswoodよりデビュー。以来、様々な名義で17枚のフルアルバムをリリース。2005年にはインストゥルメンタルに特化したサイドプロジェクトSTUDIO75をスタートし、英国の人気DJ、ジャイルス・ピーターソンもラジオプログラムにてプレイするなど、世界的な評価を得た。アーティストのトータルプロデュースからbeat製作も多数。最新は、BASI、maco marets、kojikojiなど。2019年7月にはSmall Circle of Friendsが生み出した物語の主人公、アズマリキの別人格であるタケイフミラによる2ndアルバム『detective TAKEI FUMIRA / Five 5』をリリース。
サツキは「これからを着る」服を仕立て制作する。
音と服で毎日を暮らす。
@SCOF75
@scof75
Official YouTube Channel
今作はオープナー・トラック「seasons change」の次の一節と共に幕を開ける。〈夏が過ぎて何処へ向かう?/今僕らは季節失って/迷い込んだこの世界で/何をしてる?/何を見てる?〉──世界中の時間/季節が失われたコロナ禍以降を描いているようでもあるが、しかしその語り口は至ってフラット。ありのままの世界を受け止め、自然体にアウトプットすることで、聴く人それぞれの様々な感情に寄り添ってくれるような懐の深さを感じさせるような1曲だ。2020年以降に制作した楽曲、それ以前に作り溜めていた楽曲が混在しているという今作は、昨年を機に激変した世界をグラデーションのように淡く、しかし確かなリアリティと共に描き出している。
〈口元マスク/ポッケにエタノール〉〈行き交う友とも間隔保ち〉と綴りつつも、〈今僕ら新しい他者との交わり学び〉とポジティブに変換する「sad song」、ドリーミーなトラックに乗せて〈荒みがちな事ばかりな今/静かにキラキラ舞う天使達が/踊り回りだした〉と歌う「I saw the Light」。その一方で、乾いた4つ打ちとパーカッシブなビートを行き来する「Sunshower」では〈アツアツでサクサクのコロッケより/大事なものがあるかよって〉と普遍的な世界を描写。また、個人的には自身の足取り、キャリアに言及した「砂漠と靴紐」も印象深い。〈なぜだろう?悟り未だ開かず/いくつになっても惑わずと成らず〉──確かなキャリアを築きながらも、常に試行錯誤しながら進んでいく自身のスタンスと現状を綴った誠実な1曲だ。
誰もが大きな変化を余儀なくされたであろう昨今。そこで生活する人間の様々な感情の機微、日常、そして過去と未来を淡々と映し出した今作には、どこまでもリアルな"今"の感情が描かれている。
文:保坂隆純
RELEASE INFORMATION
Small Circle of Friends『Cell』
2021年12月1日(水)
Format:Digital
Label:75Records
Track:
01. seasons change
02. Sunshower
03. 瓶の中のエコー
04. コノサキノサキ
05. clap song
06. sad song
07. 砂漠に靴紐
08. I saw the Light
09. snore
10. playtime / cell
11. NewType
試聴はこちら
PROFILE
Small Circle of Friends
ムトウサツキとアズマリキのふたり組。
1993年、United future organizationのレーベルBrownswoodよりデビュー。以来、様々な名義で17枚のフルアルバムをリリース。2005年にはインストゥルメンタルに特化したサイドプロジェクトSTUDIO75をスタートし、英国の人気DJ、ジャイルス・ピーターソンもラジオプログラムにてプレイするなど、世界的な評価を得た。アーティストのトータルプロデュースからbeat製作も多数。最新は、BASI、maco marets、kojikojiなど。2019年7月にはSmall Circle of Friendsが生み出した物語の主人公、アズマリキの別人格であるタケイフミラによる2ndアルバム『detective TAKEI FUMIRA / Five 5』をリリース。
サツキは「これからを着る」服を仕立て制作する。
音と服で毎日を暮らす。
LINK
オフィシャルサイト@SCOF75
@scof75
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