SENSA

2021.11.14

ポニーのヒサミツ「Portable Exotica」──ポニーのヒサミツによるエキゾチカは〈どんぶらこ〉と表現したい心地よさ

ポニーのヒサミツ「Portable Exotica」──ポニーのヒサミツによるエキゾチカは〈どんぶらこ〉と表現したい心地よさ

 人を食ったような名前で活動しているけど、ポニーのヒサミツは東京を拠点に活動する男性シンガー・ソングライターで、別にポニーの被り物をしてステージに出てくるわけじゃない。ルーツ・ミュージックに根ざしたフォーク風の楽曲や、ポール・マッカートニーの影響も強く受けた宅録曲などはひそかに支持されていて、マイペースながらこだわりのあるポップ・アルバムをリリースしてきた。ちょっと鼻にかかった歌声で、シティとカントリー、自分とポール、ご近所とエキゾを力みなくつなぎ止める、その塩梅が絶妙でクセになるのだ。
 そんなポニーのヒサミツが、今回ちょっと気合が入ってるぞという感触は、新作『Portable Exotica』に先駆けて9月に配信リリースされたシングル「タイフーン・マンボ」を聴いたときからすでにあった。そして、アルバムを聴いて、さらにその感触は確信に変わった。細野さんでいうと、『TROPICAL DANDY』(1975年)から続くエキゾチカ三部作というより、それ以前、狭山の家に仲間を集めて作ったファースト・ソロ『HOSONO HOUSE』(1973年)に近いかも。エキゾチカには「ここではないどこか」を求めて妄想をたくましくした作品が少なくないけれど、彼が音楽にする「どこか」は「どこにもないどこか」ではなく「どこかにあるどこか」。だからこそ「持ち運び可能なエキゾチカ(Portable Exotica)」というタイトルなんだとも思う。
 そもそも「タイフーン・マンボ」なんていってるけど、嵐が吹き荒れるようなハラハラ感はハナからなかった。アドベンチャーというより、この世界をどんぶらこと揺れながら渡ってるような心地よさ。頼りなく見えて、自分を貫いてるからこそ生まれる音楽としての芯の強さが、この新作にはあるんだ。
 それから、お見事と感じたのはCDの帯。「あとは、ご想像力にお任せします。」とひとことだけ。大滝詠一の名言「あとは各自で」にも通じる心のボン・ボヤージュ。では1曲目の「ごあんない」から、この音楽と想像力でぼくも近所をどんぶらこしてこようか。あの角を曲がったところで「散歩娘」や「カウボーイ気取り」にばったり出会ったら、きっと楽しい。

文:松永良平




RELEASE INFORMATION

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ポニーのヒサミツ「Portable Exotica」
2021年11月3日(水)
Format:Digital / CD ¥2,500(tax in)
Label:TETRA RECORDS

Track:
01. ごあんない
02. 散歩娘
03. ハネムーン・ラグ
04. エキゾチカのポケット #1
05. 駱駝と堕落
06. カウボーイ気取り
07. 雨が癒すものは?
08. エキゾチカのポケット #2
09. 君は逃げ水
10. やわらかな愛
11. タイフーン・マンボ(Album Ver.)

試聴はこちら

PROFILE

ポニーのヒサミツアー写2021_yoko.jpgポニーのヒサミツ
1986年生まれ。細野晴臣、ポール・マッカートニー、藤子不二雄を愛し数多の古い音楽を尊敬しつつ 近年はもっぱらカントリーポップスを作り歌う。
2009年に初ライブを行い、数年は年2、3回のライブペースでのんびりと活動する。
その後、シャムキャッツのボーカル夏目率いる夏目知幸とポテトたちに参加しつつ、2013年10月、1stアルバム『休日のレコード』を発売。全くの無名なのになぜかタワレコメンに選出され戸惑う。

2014年5月には、漫画家本秀康が主宰するレーベル雷音レコードより、『休日/あのこのゆくえ』の7インチシングルをリリースする。
2016年8月、盟友1983の2ndアルバム『golden hour』に曲提供と歌唱で参加し、10月にはにカクバリズムよりムーンライダーズ「スカーレットの誓い」のカバーも収録された3曲入り7インチシングル 『羊を盗め』をリリースする。
また、同じ年の12月にはムーンライダーズのトリビュートアルバム『BRIGHT YOUNG MOONLIT KNIGHTS -We Can't Live Without a Rose- MOONRIDERS TRIBUTE ALBUM』に「犬にインタビュー」で参加する。

2016年頃からは、谷口雄(1983 etc)、渡瀬賢吾(bjons etc)、サボテン楽団(ポニーのヒサミツサポート)とともに、Spoonful of Lovin'を結成。
2018年1月17日、雷音レコードより2度目のリリースとなる7インチシング『そらまめのうた』を、同月24日に4年ぶりの2ndアルバムである『The Peanut Vendors』をリリースした。
同年の11月3日レコードの日には、LP『大瀧詠一 Cover Book-ネクスト・ジェネレーション編-『GO! GO! ARAGAIN』』にSpoonful Of Lovin'初音源となる「それはぼくじゃないよ」のカバーにて参加した。
2019年4月、自主制作のシングル『羊飼いのパイ』をリリース。ジャケットを漫画家の笠辺哲に依頼し、またミックスは元・森は生きているの岡田拓郎が手掛けた。
同年12月には、Spoonful of Lovin'初の単独音源となる『BASEBALL-CRAZY EP』をコンパクト盤にてリリースした。
2020年4月、3rdアルバム『Pのミューザック』をリリース。
2020年12月には、Eテレ『0655』おはようソング・『2355』おやすみソングとして流れる「冬毛の歌」を、ポニーのヒサミツと中川理沙の2人で歌唱した。

2021年9月28日には5枚目のシングル『タイフーン・マンボ』を配信リリース。
同年11月3日には、TETRA RECORDSより4thアルバム『Portable Exotica』をリリースする。

LINK
オフィシャルサイト
@hisamitsu_house
Official YouTube Channel
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