SENSA

2021.11.12

Mercy Woodpecker「光をあつめて」──葛藤や後悔もみずみずしく鳴らすギターロックの光

Mercy Woodpecker「光をあつめて」──葛藤や後悔もみずみずしく鳴らすギターロックの光

こんなにみずみずしさで勝負できるロックバンド、久しぶりに出会った気がする。熊本発、2016年結成の4人組、Mercy Woodpecker。初めての全国流通盤となる1stアルバムは、その名も『光をあつめて』だ。ジャケットには、大小も色も様々なキラキラのガラス玉を封じ込めたガラス瓶が光る。うん、まさに、このガラス瓶は、アルバムそのものだ。様々な色を持ち、乱反射する、光のような12曲が、今作には詰まっている。
とは言え、描かれているのは光そのものだけではない。光を描く原動力になっていると思えるような葛藤や後悔が、ずらりと歌詞に並んでいる。それらをMercy Woodpeckerが歌い鳴らすと、みずみずしく響いてくるのだ。直江晋太郎(G・Vo)のまっすぐな歌声や、エモーショナルな演奏があるからこそ、このような印象を受けるのだと思う。
オープナーの「a-t-m」を経て、2ビートで疾走していく「シガーナイン」へ。続くのは、ひと癖あるギターと〈片っぽの靴のままじゃ/真っ直ぐに歩けない〉という歌詞がシンクロしている「青の証明」。さらに、リズムアプローチに引き込まれる「沈む」から、骨太なグルーヴと爽やかなメロディのコントラストが鮮やかな「日陰に咲く」へと向かう。中盤は、〈きれいな毒を飲み干して さあ!〉という一節を筆頭に、まさにサブリミナル効果のようなメッセージを感じる「subliminal」、鋭利なサウンドと男の子的な世界観が炸裂する「幽霊彗星」、歌を音としても使っているような聴き心地の「nocturne」と、深度を増していく。ハイライトは、アコースティックサウンドが素朴で温かい「宇宙船の窓から」と、先行リリースされたキラーチューン「さよならスターライト」の流れ。まさに降り注ぐ光の中へと連れていき、そこから現実に戻るようなインタールードの「-」と、トドメを刺す「empty」で幕を下ろす。まるで、ギターロックの宇宙旅行をしているような気分になる12曲だ。
ギターロックと呼ばれるバンドがたくさん世に現れた2000年代。その道を究める者、独自の道を探す者など、各々が歴史を重ねていった。だけど、ジャンルが膨れ上がったからか、単純に時の流れか、いつの間にか「ギターロック」という言葉が与えてくれるワクワク感は、薄れていったように思う。でも、2021年、Mercy Woodpeckerが現れた。みんな、これが「ギターロック」だぜ!そう触れ回りたくなるような、ワクワクする快作の誕生だ。願わくば、この『光をあつめて』が、ロックシーンそのものの光になりますように。

文:高橋美穂




RELEASE INFORMATION

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Mercy Woodpecker「光をあつめて」
2021年11月3日(水)
Format:CD
Label:MASH HUNT
全12曲収録 / ¥2,200(税込)

2021年11月10日(水)
Format:Digital
Label:MASH HUNT
全12曲収録

Track:
01. a-t-m
02. シガーナイン
03. 青の証明
04. 沈む
05. 日陰に咲く
06. subliminal
07. 幽霊彗星
08. nocturne
09. 宇宙船の窓から
10. さよならスターライト
11. ー
12. empty

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PROFILE

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Mercy Woodpecker
2016年熊本にて結成。九州を中心にライブ活動を中心に精力的に 活動を行う4人組ギターロックバンド。
THE ORAL CIGARETTESやフレデリック、Saucy Dogを排出したMASH A&R主催のオーディションイベント「MASH HUNT LIVE Vol.3」に出演。
情緒的なロックサウンドに繊細ながらも力強い歌声が聴く人を惹きつける楽曲が特徴的、誰もが共感し、グッとと惹きつけられるVo直江が描き出す歌詞。エモーショナルなメロディーラインが心地よく耳から離れない。情景の見える歌詞とメロディーセンスは初期のBUMP OF CHICKEN、RADWIMPSや[Alexandros]を彷彿させる。


LINK
オフィシャルサイト
@MercyWoodpecker
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