SENSA

2021.10.15

Wataru Fujiwara「1day」──1日の時の流れに沿って描く情感豊かなサウンドスケープ

Wataru Fujiwara「1day」──1日の時の流れに沿って描く情感豊かなサウンドスケープ

 何気ない日常の時間を独自の視点で切り取り、穏やかながらも色鮮やかな音像を駆使して作り上げたアルバム『1day』。本作はトラックメイカーであるWataru Fujiwaraが手掛けたもので、他に類を見ないユニークなインストゥルメンタル作品である。
 何がユニークかというと、アルバム全体をタイトル通り1日の流れに見立てており、それぞれの楽曲で特定の時間や風景を描いているからだ。収録曲は全部で9曲。爽やかな朝をイメージした「Open Window」から始まり、浮遊感に満ちたシンセサイザーの合間から、落ち着いたビートと優しいメロディが聞こえてくる。続く「Sunrise」では神々しい朝の光が差し込んでくるかのように、スケール感のあるハーモニーが広がっていく。こういった調子で、日中を過ぎて夕刻が迫り、陽が沈んだかと思えば星屑が空に輝き、静かな夜の静寂から夢の中へと潜り込んでいくのだ。
 Wataru Fujiwaraは、WAZGOGG名義でヒップホップのトラックメイカーとして活躍している。DMC JAPANなどにも出場するほどの実力を持つビートメイカーであるが、一方でこういったチルアウト系サウンドのクリエイターとしても評価が高い。『1day』はまさに彼の手腕が目一杯発揮された作品で、アンビエント・ミュージックからローファイ・ヒップホップまでを網羅した個性的な音楽性と、彼が得意とする鮮やかで映像的なサウンドメイキングによって生み出された充実の一枚だ。
 とはいえ本作を楽しむなら、あくまでもリラックスしてBGM的に聴くのが一番だろう。きらめく星座が目に浮かぶような美しい「Stardust」、神秘的な夜の雰囲気を醸し出す「Majestic Night」と、とりわけ後半に進むにつれて心地良さが増大していく。そしてラストの「Night Dolphin」で波間に沈むような安らかな夢の世界へと誘ってくれる。一曲が短めに作られており、アルバム全部で20分ほどというサイズも、肩肘張らずに聴ける理由だ。Wataru Fujiwaraの素晴らしい才能を意識するのはさておき、まずは全身の力を抜いて、極上のダウンテンポに身を委ねてみてはどうだろうか。

文:栗本斉(音楽&旅ライター/選曲家)




RELEASE INFORMATION
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Wataru Fujiwara「1day」
2021年10月6日(水)
Format: Digital
Label:FRIENDSHIP.

Track:
1.Open Window
2.Sunrise
3.Weather
4.Works
5.Evening view
6.Sunset
7.Stardust
8.Majestic Night
9.Night Dolphin

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LINK
@WataruFujiwara_
@wataru_fujiwara_lofi
FRIENDSHIP.


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