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2021.10.01
teto、最強のロックバンドの姿を魅せた47都道府県ツアーファイナル公演「今のteto、間違いなく過去最高。」
「ウィーアースーパーロックバンド、teto! サンキュー!」。本編最後の「LIFE」で小池貞利はそう叫んだ。なんというか、身も蓋もない感じの言い回しだが、この言葉がこの日のライブを形容するのにぴったりだった。47都道府県ツアー「日ノ出行脚」ファイナル、Zepp DiverCity Tokyo。tetoが見せつけたのは、コロナもメンバー脱退もその他もろもろのややこしいこともすべてぶっちぎりながら突き進む、まさに「スーパー」なロックバンドの姿そのものだった。ギターボーカルとベースというバンドの最小単位になったtetoが、改めて自分たちはロックバンドであると宣言するような一夜。
思えば、このツアーが始まったのは2019年11月15日の千葉LOOKだった。途中コロナ禍の影響による延期や中止を挟んで、足かけ2年。アルバム『愛と例話』のリリースを経て、8月28日の名古屋CLUB QUATTROから9本、ついに辿り着いたこの場所。アルバムリリース前にメンバーが脱退し小池と佐藤健一郎のふたり体制となったtetoは、たぶんがむしゃらに前に進んできたのだろう。その充実ぶりは、何よりもステージから放たれる音とパフォーマンスに表れていた。
この日はサポートメンバーを加えた5人編成。ドラムにyucco(ex.2)、ギターにヨウヘイギマ(ヤングオオハラ)と熊谷太起(Helsinki Lambda Club)。長年にわたり関係を築いてきたミュージシャンの力を得て、1曲目「暖かい都会から」から半端ではない爆発力を生み出していく。マイクを掴んでステージを駆けずり回る小池。「メアリー、無理しないで」ではyuccoのパワフルなドラムが炸裂し、小池を加えた3本のギターによって分厚い音の弾幕が作られていく。倒れたマイクスタンドにぐちゃぐちゃに絡まった白いマイクコードがこんがらがって進むこのバンドそのものみたいだ。
「Pain Pain Pain」を終えた小池が「どうもtetoです!」と挨拶。「3人のおかげでツアーファイナルを迎えることができました」とサポートメンバーに感謝の意を表すと、『愛と例話』に対する満足感を語り、「どうしても伝えたいのは、音楽の光とロマンです。それを思う存分受け取ってくれ!」と告げてアルバムから「光とロマン」を繰り出す。フロアを指差しながら歌う小池、楽しそうだ。しかし驚くのはその音。以前のtetoとはもちろん違うが、それが変化というよりも真っ当な進化として響いてくる。音数は多いのにビシッと固まったアンサンブル、タイトなビート、色鮮やかなギターリフによって、小池の歌うメロディと言葉が鮮烈に心に入ってくる。ギリギリのテンションなのは相変わらずだが、昔のような危なっかしさは感じない。以前みたいにフロアも含めてくんずほぐれつ、というわけにはいかないけれど(フロアに椅子がある状態でtetoを観るなんて!)、お客さんが叫んだり暴れたりできないぶん、歌を、音楽を、まっすぐに強く届けようというバンドの意思が、その演奏に表れている。
「夏百物語」を軽快に鳴らし、「助けて! ルサンチマン!」と「ルサンチマン」に突入すると、小池は体をクネクネさせながら踊る。バックにギターが2本あるので、ハンドマイクで歌う場面も多い。続く「とめられない」でも、小池はマイクを握ってステージを右へ左へ行ったり来たり。長いマイクコードをときどきモニターに引っ掛けたりしながら、お客さんの近くまで歩み寄る。こうしてライブができる喜び、ロックバンドをやれる喜び。もちろんそれだけじゃなくて大変なことも面倒くさい思いもたくさんあるはずだが、みずみずしい生命力がそれを凌駕していくような美しいヴァイブスがZepp DiverCityに広がっていく。
一転この季節にぴったりの「蜩」ではトリプルギターの迫力を見せつけ、グジャっと一塊になったバンドサウンドとともにどこまでも転がっていく。佐藤のコーラスもいい味を出していた「溶けた銃口」でスケールの大きな風景を描き出すと、「手紙を書いてきた。聴いてくれ!」と「遊泳地」へ。生き物のように蠢きながらテンポを変えていくリズムと、アウトロで鳴り響いたヘヴィなリフ。音の質量がものすごい。それをぶん回すバンドの力と、それによって解放される楽曲のポテンシャル。最新作の楽曲が早くも生まれ変わったように聞こえてくることが、紆余曲折の中で彼らがひとつの正解を見つけ出したことを物語っている。「夢見心地で」ではギマのギターソロも決まり、「9月になること」では大迫力のバンドサウンドを背に小池が「シンギン!」とフロアにマイクを向ける。もちろんお客さんは歌えないのだが、そのぶんメンバーが声を張り上げる。今まで以上にフロアに歩み寄ることで、熱い一体感が生まれていく。
「わざわざ口に出す必要はなくて。でも今何曲か観てもらえただけで、どんなに素晴らしいツアーを回れたかは伝わったと思います。今のteto、間違いなく過去最高。そして今、間違いなく過去最高のものを観せられていると思っている」。そんな小池の言葉に拍手が送られる。サポートメンバーに何を教えられたか(熊谷にサウナの楽しみを教えてもらったとか、ギマのフレッシュさとか、yuccoの逞しさとか)を語り、佐藤に対しては「ケンイチもね、がんばってくれて......まあ、ケンイチに関してはケンイチと俺だけわかってればいい」と言葉をかける。まるでバンド始めたてのようなフレッシュさと楽しさを、今の小池は全身で感じているようだ。そのままアコースティックギターを爪弾きながら「燕」へ。切なく悲しい歌だが、優しい音が彼の言葉に実感を与えていく。〈ひとりはもう何かを見つけて/新たに歩き出している〉という歌詞が、今のtetoの姿に重なるように響く。
怒涛のように展開してきたライブは早くも終盤。熊谷のソロも効いていた「コーンポタージュ」を経て、眩い光に包まれながら「あのトワイライト」を披露すると、ドシャメシャのサウンドで景色を塗り替えるような「invisible」へ。機関銃のような佐藤のベースリフが小池のシャウトを後押しするように疾走する。これがロックだ、これがロックバンドだと全身で訴えるような渾身のパフォーマンス。「拝啓」でも今にもぶっ壊れそうなテンションでギターをかき鳴らしながら、小池はステージの床を転げ回る。
フィードバックノイズ、フルスピードで鳴らされる二拍子のスネア、一心不乱にかき鳴らされるコード。なんでロックが無敵なのか、なぜロックバンドが最強なのか、理屈抜きでわからせるような圧巻のクライマックスだ。そして最後の「LIFE」へ。ギターを鳴らしながら「ロックがいちばんかっこいいの観せれたでしょう? 結局ロックが最強! ありがとう、tetoでした」と告げ、明るく朗らかなリズムとリフが鳴らされる。そこで冒頭の発言が飛び出したのだ。それが答えであり結論。大正解だ。
アンコールではスツールに座って小池ひとりで歌い始めた「光るまち」から、メンバーが入って「手」へ。この曲もまた、こうして新たな形で演奏されることでより温かく、強く響いてくる。そしてこの曲も。「高層ビルと人工衛星」。フロアから上がる拳が待ってましたとばかりに躍る。メンバー全員でコーラスを歌いながらどこまでも上昇していくテンションが眩しい。そこにお客さんの手拍子も加わって、再びステージとフロアがひとつになり、絶頂の中でアンコールは終わりを告げた――だが、お客さんの手拍子は鳴り止まない。それに応える形で三度戻ってきた5人は『愛と例話』のオープニングを飾るショートトラック「宣誓」の〈ただ恋は多く、ただ愛は深く〉というフレーズを放り投げるようにステージに残し、颯爽とステージを去っていった。
文:小川智宏
写真:小杉歩
@teto_info
@teto__official
Official YouTube Channel
思えば、このツアーが始まったのは2019年11月15日の千葉LOOKだった。途中コロナ禍の影響による延期や中止を挟んで、足かけ2年。アルバム『愛と例話』のリリースを経て、8月28日の名古屋CLUB QUATTROから9本、ついに辿り着いたこの場所。アルバムリリース前にメンバーが脱退し小池と佐藤健一郎のふたり体制となったtetoは、たぶんがむしゃらに前に進んできたのだろう。その充実ぶりは、何よりもステージから放たれる音とパフォーマンスに表れていた。
この日はサポートメンバーを加えた5人編成。ドラムにyucco(ex.2)、ギターにヨウヘイギマ(ヤングオオハラ)と熊谷太起(Helsinki Lambda Club)。長年にわたり関係を築いてきたミュージシャンの力を得て、1曲目「暖かい都会から」から半端ではない爆発力を生み出していく。マイクを掴んでステージを駆けずり回る小池。「メアリー、無理しないで」ではyuccoのパワフルなドラムが炸裂し、小池を加えた3本のギターによって分厚い音の弾幕が作られていく。倒れたマイクスタンドにぐちゃぐちゃに絡まった白いマイクコードがこんがらがって進むこのバンドそのものみたいだ。
「Pain Pain Pain」を終えた小池が「どうもtetoです!」と挨拶。「3人のおかげでツアーファイナルを迎えることができました」とサポートメンバーに感謝の意を表すと、『愛と例話』に対する満足感を語り、「どうしても伝えたいのは、音楽の光とロマンです。それを思う存分受け取ってくれ!」と告げてアルバムから「光とロマン」を繰り出す。フロアを指差しながら歌う小池、楽しそうだ。しかし驚くのはその音。以前のtetoとはもちろん違うが、それが変化というよりも真っ当な進化として響いてくる。音数は多いのにビシッと固まったアンサンブル、タイトなビート、色鮮やかなギターリフによって、小池の歌うメロディと言葉が鮮烈に心に入ってくる。ギリギリのテンションなのは相変わらずだが、昔のような危なっかしさは感じない。以前みたいにフロアも含めてくんずほぐれつ、というわけにはいかないけれど(フロアに椅子がある状態でtetoを観るなんて!)、お客さんが叫んだり暴れたりできないぶん、歌を、音楽を、まっすぐに強く届けようというバンドの意思が、その演奏に表れている。
「夏百物語」を軽快に鳴らし、「助けて! ルサンチマン!」と「ルサンチマン」に突入すると、小池は体をクネクネさせながら踊る。バックにギターが2本あるので、ハンドマイクで歌う場面も多い。続く「とめられない」でも、小池はマイクを握ってステージを右へ左へ行ったり来たり。長いマイクコードをときどきモニターに引っ掛けたりしながら、お客さんの近くまで歩み寄る。こうしてライブができる喜び、ロックバンドをやれる喜び。もちろんそれだけじゃなくて大変なことも面倒くさい思いもたくさんあるはずだが、みずみずしい生命力がそれを凌駕していくような美しいヴァイブスがZepp DiverCityに広がっていく。
一転この季節にぴったりの「蜩」ではトリプルギターの迫力を見せつけ、グジャっと一塊になったバンドサウンドとともにどこまでも転がっていく。佐藤のコーラスもいい味を出していた「溶けた銃口」でスケールの大きな風景を描き出すと、「手紙を書いてきた。聴いてくれ!」と「遊泳地」へ。生き物のように蠢きながらテンポを変えていくリズムと、アウトロで鳴り響いたヘヴィなリフ。音の質量がものすごい。それをぶん回すバンドの力と、それによって解放される楽曲のポテンシャル。最新作の楽曲が早くも生まれ変わったように聞こえてくることが、紆余曲折の中で彼らがひとつの正解を見つけ出したことを物語っている。「夢見心地で」ではギマのギターソロも決まり、「9月になること」では大迫力のバンドサウンドを背に小池が「シンギン!」とフロアにマイクを向ける。もちろんお客さんは歌えないのだが、そのぶんメンバーが声を張り上げる。今まで以上にフロアに歩み寄ることで、熱い一体感が生まれていく。
「わざわざ口に出す必要はなくて。でも今何曲か観てもらえただけで、どんなに素晴らしいツアーを回れたかは伝わったと思います。今のteto、間違いなく過去最高。そして今、間違いなく過去最高のものを観せられていると思っている」。そんな小池の言葉に拍手が送られる。サポートメンバーに何を教えられたか(熊谷にサウナの楽しみを教えてもらったとか、ギマのフレッシュさとか、yuccoの逞しさとか)を語り、佐藤に対しては「ケンイチもね、がんばってくれて......まあ、ケンイチに関してはケンイチと俺だけわかってればいい」と言葉をかける。まるでバンド始めたてのようなフレッシュさと楽しさを、今の小池は全身で感じているようだ。そのままアコースティックギターを爪弾きながら「燕」へ。切なく悲しい歌だが、優しい音が彼の言葉に実感を与えていく。〈ひとりはもう何かを見つけて/新たに歩き出している〉という歌詞が、今のtetoの姿に重なるように響く。
怒涛のように展開してきたライブは早くも終盤。熊谷のソロも効いていた「コーンポタージュ」を経て、眩い光に包まれながら「あのトワイライト」を披露すると、ドシャメシャのサウンドで景色を塗り替えるような「invisible」へ。機関銃のような佐藤のベースリフが小池のシャウトを後押しするように疾走する。これがロックだ、これがロックバンドだと全身で訴えるような渾身のパフォーマンス。「拝啓」でも今にもぶっ壊れそうなテンションでギターをかき鳴らしながら、小池はステージの床を転げ回る。
フィードバックノイズ、フルスピードで鳴らされる二拍子のスネア、一心不乱にかき鳴らされるコード。なんでロックが無敵なのか、なぜロックバンドが最強なのか、理屈抜きでわからせるような圧巻のクライマックスだ。そして最後の「LIFE」へ。ギターを鳴らしながら「ロックがいちばんかっこいいの観せれたでしょう? 結局ロックが最強! ありがとう、tetoでした」と告げ、明るく朗らかなリズムとリフが鳴らされる。そこで冒頭の発言が飛び出したのだ。それが答えであり結論。大正解だ。
アンコールではスツールに座って小池ひとりで歌い始めた「光るまち」から、メンバーが入って「手」へ。この曲もまた、こうして新たな形で演奏されることでより温かく、強く響いてくる。そしてこの曲も。「高層ビルと人工衛星」。フロアから上がる拳が待ってましたとばかりに躍る。メンバー全員でコーラスを歌いながらどこまでも上昇していくテンションが眩しい。そこにお客さんの手拍子も加わって、再びステージとフロアがひとつになり、絶頂の中でアンコールは終わりを告げた――だが、お客さんの手拍子は鳴り止まない。それに応える形で三度戻ってきた5人は『愛と例話』のオープニングを飾るショートトラック「宣誓」の〈ただ恋は多く、ただ愛は深く〉というフレーズを放り投げるようにステージに残し、颯爽とステージを去っていった。
文:小川智宏
写真:小杉歩
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