SENSA

2021.09.14

cesco「The Natural Diet」──あらゆるインディミュージックをまとう、底しれぬチャーム

cesco「The Natural Diet」──あらゆるインディミュージックをまとう、底しれぬチャーム

3拍子のリズムに、アコースティックギターのフィンガーノイズアクセントが乗り、インディーフォークを彷彿させるサウンドスケープが浮び上がる。英詞を歌う、穏やかでそこはかとなく儚いボーカルが、小さな部屋に木漏れ日が差し込むようなイメージを結ばせてくれる。この世界で目を覚ましたこと。それが希望なのか、絶望なのか、まだわからない。とにかく、物語は静かに動き出した──。
 大学時代の友人、3人で結成され、現在は大阪と東京を拠点に活動しているというcesco(チェスコ)。作曲を行う3人を中心に、楽曲によってメンバーが入れ替わるというから、面白い。バンドでありながら、コレクティブ的な音楽集団と言っていいのだろう。なるほど、このデビューアルバム『The Natural Diet』に収録されている楽曲は、たしかに色とりどりのサウンドをまとっている。
 前述のM1を経て、M2は「AOR」というドストレートなタイトルが冠されている。ブラスやパーカッションを入れながら、まさにcesco流のアダルトオリエンテッドロックを実践するような、隙間の呼吸を楽しめるグルーヴを提示している。
『The Natural Diet』というアルバム名からは、どこか不穏な気配を帯びたユーモアを感じさせるが、それは気の所為だろうか。英語で綴られるリリックも、これから起こるのが愛らしいラブストーリーが展開されても、残酷な結末が待っている愛憎劇に転がってもおかしくないような余白がある。その感覚が、クセになる。
 インディというワードが前にくっ付くさまざまなジャンルを折衷、横断しながら単曲聴きでも楽しめる短編の連なりが、気づけばアルバムという醍醐味を堪能できる長編になっているような様相で紡がれる楽曲群。耳障りは終始心地いいのだけれど、ただ爽やかで洗練されたポップスを鳴らすバンドという印象だけでは終わらせない底知れぬチャーム。あなたもどこかに引っかかるポイントがきっとあるはずだ。

文:三宅正一



RELEASE INFORMATION

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cesco「The Natural Diet」
2021年9月8日(水)
Format: Digital
Label:FLAKE SOUNDS

Track:
01. Intro
02. AOR
03. Early So
04. Folks at Work
05. How do they move?
06. Partly Fine
07. Wish You Never
08. GB (I Want It)
09. What cesco stands for?
10. Paramokes Jr.
11. 4th of July
12. Wonder Bus

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@cesco_band
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