SENSA

2021.09.08

Saucy Dog「レイジーサンデー」──誰もが主人公になりたい時代のリアルを歌い当てる

Saucy Dog「レイジーサンデー」──誰もが主人公になりたい時代のリアルを歌い当てる

好きな曲をBGMにして、まるでMVのヒロインを演じるように、または好きな歌を自分で歌ってみたりして。TikTokなんかを見ていると、みんな主人公になりたがっている。Saucy Dogの楽曲も非常に人気で、石原慎也(Vo/G)による高い歌唱力と泣きのメロディがその魅力。何より彼らの楽曲にはリスナーが自分でも気づかなかったような感情が言葉になっていて、それを「見つけた!」という感覚が強いのではないだろうか。だから演じたり歌ってみたりして、もっともっと、自分のものにしたくなる。

今年の2月には初の武道館公演も成功させ、勢いに乗るスリーピースバンド、Saucy Dog。『レイジーサンデー』は既に5枚目のミニアルバムだが、こうして作品をリリースする時はストック曲をほとんど持たずにその時々で石原がリアルな心情を綴った曲たちを1枚にまとめていくという。だから「シンデレラボーイ」、「リスポーン」、「わけあって」あたりの流れでは恋をしたり裏切られたり疑ったり後悔したりと、どこか恋愛模様が連鎖している。自分自身の感情を深く掘り下げて、どんなに情けなかったり時にズルイと思われそうな気持ちだって言葉にして、更に相手目線の感情やセリフも生々しく盛り込んでいく。そこに曖昧さとか、飾りとか、余計なものは一切練りこまないからこそ、結果的に誰かの「見つけた!」「これ私じゃん!」という共感を生むのだろう。〈お揃いのピアスも 耳付きのカチューシャも/今じゃただ置いているだけ/忘れるくらいさ 余裕だなんて思ってた〉(「わけあって」)なんて歌詞に、心がざわざわと揺さぶられてしまう。

一人暮らしの寂しさをメロディアスに吹き飛ばそうとするような「週末グルーミー」、早朝の静寂を丁寧にバンドサウンドに映しだすアレンジも秀逸な「東京」、武道館公演でも披露された大切な1曲「sugar」など、後半も聴きどころ満載な1枚。夢を追うために上京したり、そこで出会った誰かと恋をしたり、でも寂しくて苦しかったり、家族が恋しくなったり、仲間と笑い合ったり......この全8曲の中にはそんな、とある季節の全部がギュッと詰まっている。1曲1曲、不器用な登場人物たちが色んな場面を懸命に生きていて、聴く人もきっとどこかであなた自身を見つけられたら、今を少し、愛おしく思えるかもしれない。

文:上野三樹




RELEASE INFORMATION

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aucy Dog New mini Album「レイジーサンデー」
2021年8月25日(水)
¥1,800 (¥1,980(税込))
AZCS-1101

Track:
01. なつやすみ
02. シンデレラボーイ
03. リスポーン
04. わけあって
05. 君がいない
06. 週末グルーミー
07. 東京
08. sugar

Bonus Track(CD ONLY)
09. いつもの帰り道

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LINK
オフィシャルサイト
Saucy Dog 5th mini Album「レイジーサンデー」特設サイト

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