- TOPICS
- FEATURE
2021.07.24
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!Wez Atlas・アツキタケトモ・優河ほか全12作品 -2021.07.21-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
MISATO:7/19週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全12作品の中からまずは前半6作品ダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。はじめましてがお二組いらっしゃいますね。愛知出身のMuscle Soulとシンガーソングライターの優河さん。
金子:Muscle Soulは昨年FRIENDSHIP.からリリースしてるんですけど、この番組で紹介するのは初めて。以前紹介したTAMIWというバンドのメンバーもこのMuscle Soulに在籍していて。かなりオルタナティブな音で、LITE先輩とかとも相性が良さそうな。
MISATO:確かに、ポストロック的な感じもありますね。
金子:曲のタイトルが「Vote It!」でこの前、東京では都議会議員選挙があったわけですけど、そういうタイミングで投票を意味する言葉をタイトルに冠するあたり、社会的なメッセージも持ってるバンドなんだなって伝わってきますね。
MISATO:今後も総選挙濃厚のタイミングでMusic Videoが公開予定であったりだとか、色々と狙ってるところはあるみたいで。いやー、アウトプットが面白いですね。
金子:優河さんはFRIENDSHIP.からは初めてのリリースですけど、シンガーソングライターとしてもともとすごく評価が高くて、ROTH BART BARONのアルバムに参加するなど、いろんなアーティストとも関わりがあったり、去年はミュージカルにも出演したりとか。
MISATO:多才な方。
金子:そう。かなり活躍の幅を広げていて、今回の曲もこれまで関わってきた岡田拓郎くんだったり、あと神谷洵平さん、FRIENDSHIP.ではお馴染みの名前だったりしますけど、かなり面白い人たちがバンドとして関わっていて、とてもいい曲ですね。
MISATO:いいですねー。pandagolffは2ヶ月ぶりの新曲。
金子:なんだか、いつもとちょっとイメージ違いますね。
MISATO:違いますねー。ちょっとポップスの感じもあっていいですね。
MISATO:そして、永原真夏さん!
金子:真夏ちゃん、いいですね。
MISATO:ドルフィンキックが似合うの、私、ジュディマリだけだと思ってたんですけど。
金子:あはは。
MISATO:「くじら12号」(笑)! futuresのEPもとってもいいですね。
金子:いいですよね。このレゲエとかダブとかの感じもありつつ、バンドサウンドだけどクラブで聴きたい感じっていうのは独特だなって。
MISATO:CITY HIP MUSICを掲げてるというのは毎回紹介させてもらってましたけど、それを体現してる曲だなと。おしゃれさ、チルさ、でもちゃんとビートがあって、横で揺れられるし。
MISATO:さらにもう1曲ですね、Wez Atlasくんが控えております。
金子:キャリア初のミニアルバム「Chicken Soup For One」という作品がリリースになったんですけど、最近ね、starRoさんと一緒にやった「Zuum!!」とかもランキングに入ってきて話題になってましたけど、今回のミニアルバムにはあの曲は入ってなくて、コンセプチュアルにこのアルバムに向けて作ってきた曲たちが収録されていて。この「Chicken Soup For One」というタイトル、チキンスープとはなんぞや、という感じだと思うんですけど。
MISATO:うんうん。
金子:チキンスープはアメリカの文化で風邪を引いたときにおばあちゃんが作ってくれる食べ物であり、日々の自分を安らげてくれるものだったり、そういう内省的な、メンタル的な部分を支えてくれるものが作品全体のテーマになっていて。だから音楽性もアッパーなものというよりは、わりとチルだったりとか、メロウだったり、そういう曲たちでまとめられている作品で、とても聴き心地が良い作品になってます。
MISATO:今はチキンスープの代わりに、自分との対話で痛みを和らげようとしてる、というのがすごく印象的だなぁと思っていますが。
金子:そうですね。メンタルヘルスのこととかって、この一年すごく言われるようになっていて、特にアーティスト、ものを作る人たちというのは何かしら支えが必要で。デジタルの時代になってインディペンデントのアーティストが一人で作品を世に送り出せるって、とても良いことではあるんだけど、逆に言うと後ろ盾がない分、メンタルをやられちゃうこともある。そういう中で、例えば、FRIENDSHIP.はディストリビューターでもあるけど、レーベル的な役割も果たしていて、一緒に作品を作っていく場所でもあるから、FRIENDSHIP.みたいなサービスがあることの意味を改めて考えさせてくれるところもあるなぁと、個人的に思いましたね。
MISATO:これをきっかけに、自分一人ではその才能をどう世に発信していいか分からないという方は、FRIENDSHIP.にご連絡いただきたいですね。何かできることがあるかもしれない。
金子:このアルバムにはプロデューサーでVivaOlaくんがかなり関わっていて、もともと仲が良かったという関係性もありつつ、VivaOlaくんはVivaOlaくんでFRIENDSHIP.からアーティストして作品もリリースしているので、そういう関係性もいろいろ見えてくる作品かなと思います。
MISATO:従来のラッパーの方のリリックはもう少し棘があるというか、力があるというか、自分のことを歌うにしても自分がやってきた賞賛に値するような言葉が並んでる印象の方が強かったですけど、まさに内省的な、「こんなことも言っちゃっていいの?ラッパーって言っていいんだ!」という、新しい一つのスタイルを見せてくれたというか。これを書くことが、内省的に生きることが強さなんだなと最終的に感じさせてもらったんですけど。すごい作品ですね。
金子:さらけ出せる強さというか。良い作品だと思います。
MISATO:7月19日週リリースの新譜ダイジェスト part 2、なんだか今週ははじめましてのご挨拶が多いですね。ラッパーの RUNE999、 シンガーソングライターのみらん、そしてFreeTEMPO!活動を再開して、FRIENDSHIP.よりリリース、ということですね。
金子:FreeTEMPOは10年ぶりの活動再開で。
MISATO:嬉しい!
金子:ちょっと前に出たHANDSOMEBOY TECHNIQUEのアルバムは12年ぶりでしたけど、今度は10年ぶりということで。
MISATO:いやー、二桁はすごいですし、FRIENDSHIP.を選んでいただけて嬉しいです。
金子:そうですよね。もともと2000年代にハウスやラウンジとかの文脈ですごく評価されていた人で、後期の作品は結構ポップス寄りになってきていて。
現時点での最新のアルバム、10年前ですけど、「LIFE」というアルバムにはキリンジの堀込泰行さんとか、TAHITI 80のボーカルのグザヴィエとかがゲストで参加していて、かなり華やかな作品だったんですけど、そこから10年を経てね。
MISATO:今どんな風に曲を作っているのか、作り方もきっと変わったでしょうし、こだわる部分も変わったと思う。
金子:この「Peace」を聴いても当時の印象とは少し変化していて、それがアルバムとなると、より全貌が見えてくるんじゃないかと思うんですよね。
MISATO:ちょっとポップス要素とか強いなぁと思いました。私としては、ハウスに出会って、日本人のハウスで、「あ、イケてる!」と思った一人だったので、すごく嬉しい。活動再開すると思ってなかったから。そして、RUNE999さんも初めてですね。
金子:はじめまして、ですね。この人はキャリアがなかなかすごくて、もともとジュノンスーパーボーイコンテスト、ファイナリスト、ファッションモデルで活躍しつつ、仮面ライダーにも出演したり。
MISATO:ナリタ役!
金子:ね!という人がラッパーとして活動を始めて。
MISATO:多才な人が多いな、今週。すごいですね。
金子:それこそ、さっきのWezくんのときの話じゃないけど、こっちはいかにもラッパーらしいセルフボースト、自分のことや地元のこととかを言ってるリリックで、音的にもトラップでまさに今のヒップホップの流れをやっている人で。
MISATO:そして、みらんさんも声がいいですね。耳に残る。
金子:FRIENDSHIP.的にはカネコアヤノさんとかにも通じるような、ちょっとノスタルジックな雰囲気もありますよね。バレーボウイズという、インディー好きな方だったらご存知かもしれない、もう解散しちゃったんですけど、その元メンバーと一緒に作品を作っていて、あのバンドにも通じるノスタルジックな感じもあり、良いシンガーだと思いますね。
MISATO:さらに、ioniさん毎回いいですよね。
金子:ioniさんは毎回かっこいいですよね。
MISATO:奥行きと立体感を感じる。広い空間の中で聴きたいですね。いいです。
金子:その表情が物語ってますね(笑)。
MISATO:いいです!マスク越しにも伝わっちゃう(笑)。そして、Layaさん。いいです、好きです。
金子:いいですよね。こういうある意味王道なポップ・シンガーもちゃんとFRIENDSHIP.からリリースしてくれてるのが良いですね。
MISATO:しかも、このポップさなんだけど、東京出身っていう日本のアイデンティティをちゃんと持ってる方が歌ってるのがすごくいいですよね。
金子:その上でちゃんとグローバルにも広がる可能性がある。
MISATO:日本からこういう方が出てくるんだ!というのが嬉しいですね。
金子:そして、アツキタケトモ。アルバムが遂に完成しまして。
MISATO:おめでとうございます!いやー、すごいですね。
金子:毎週のように彼の曲は紹介してきましたが、もともとこのアルバムのコンセプトがしっかりあった上で、その中からシングルを切って行くようなイメージだったらしく、アルバム全体でのまとまりがすごくあって。さっき「日本的」みたいな話もちょっとありましたけど、その点でもアツキタケトモさんはやっぱり面白くて、改めてまとまった作品を聴くと、サウンドメイクはかなり攻めてるんですよね。世界基準と言ってもいいのかもしれないけれど、いわゆるインディーR&Bみたいなものだったり、最近のエレクトロニックミュージックの面白さっていうのもかなり入ってる。
でもやっぱりすごくJ-POPなんです。こういうサウンドメイクだと洋楽的になりがちだと思うんだけど、例えば、米津玄師さんはそういう攻めたサウンドメイクと、歌謡曲っぽいラインのいいとこどりを上手くやっていて、「Lemon」はまさにそういう曲だったと思う。それに対して、アツキさんはよりJ-POP的な雰囲気がある。で、SNSを覗いたら「Bedroom Covers」という、自分が影響を受けたアーティストの曲を独自にカバーする企画をやられてて、大沢誉志幸さん、オフコース、槇原敬之さんなど、日本語のポップスの素晴らしい人たちの曲を、今のサウンドメイクにのせて、今のリズム解釈でカバーするというもので。こういう人はなかなかいないんですよね。
MISATO:そうですね。そのさじ加減というか、洋楽要素とJ-POP要素何パーセントぐらいにするかによって全然完成形が変わってくると思うので。米津さんとかは、それが絶妙で上手だと思うんですけど、アツキさんはだいぶJ-POPに寄せながら、大衆的な音に聴かせてくれるっていうマジックにかけられてます。
金子:米津さんはもともとボカロからの流れだったり、もうちょっとロックバンド的な流れだと思うんですけど、アツキさんはそっちではない。声の加工とかはすごくいろいろレイヤーが重ねられていたり、あとマスタリングも海外エンジニアがやっていて、音に対してすごくこだわってるんだけど、ミックスで言うとボーカルがすごく前に出ていて、その辺りは日本的な、J-POP的なミックスだったりとか、バランス感覚が珍しいと思うんですよね。
MISATO:アツキタケトモ「しあわせのうた」、アルバム通しても3曲インタールードっぽい感じで作ってたりとか、構成が洋楽テイストではあるんですよね。プロフィールを見るとジェイムス・ブレイクも好きとか、そのあたりのミックスの塩梅というのも、声を抜かしたところは確かにそういう風にやってる、さっきの厚武さんの話にも通じるなと思って。
金子:そうですね。
MISATO:声が際立ってるところに関しては狙っている層がはっきりしてるな、という印象があります。音楽好きはもちろんだけど、分かる人には分かってもらうけど、もっとお茶の間に届けたいんだなという、アツキタケトモさんの想いっていうんですかね。
金子:「しあわせのうた」はこのアルバムの中でも一番アッパーなダンス・トラックで、こういう曲も出来るんだって感じがするし、すごく広がりそうな曲であり、アルバムなんじゃないかと思います。
MISATO:とてもライブ映えもするでしょうし、ライブが出来るような時期になったら観てみたいですね。このアルバムがどういう構成になってセットリストに組まれるのかとか。
金子:確かに。このままの流れでやっても面白いし、それを入れ替えて、過去曲も組み合わせてとか、そういうことをやってくれそうな気もしますね。
FM福岡で毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"303号室"(毎週水曜日の27:00~27:55)では、FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」をオンエア。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週水曜日 27:00~27:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
FRIENDSHIP.
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
MISATO:7/19週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜、全12作品の中からまずは前半6作品ダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。はじめましてがお二組いらっしゃいますね。愛知出身のMuscle Soulとシンガーソングライターの優河さん。
金子:Muscle Soulは昨年FRIENDSHIP.からリリースしてるんですけど、この番組で紹介するのは初めて。以前紹介したTAMIWというバンドのメンバーもこのMuscle Soulに在籍していて。かなりオルタナティブな音で、LITE先輩とかとも相性が良さそうな。
MISATO:確かに、ポストロック的な感じもありますね。
金子:曲のタイトルが「Vote It!」でこの前、東京では都議会議員選挙があったわけですけど、そういうタイミングで投票を意味する言葉をタイトルに冠するあたり、社会的なメッセージも持ってるバンドなんだなって伝わってきますね。
MISATO:今後も総選挙濃厚のタイミングでMusic Videoが公開予定であったりだとか、色々と狙ってるところはあるみたいで。いやー、アウトプットが面白いですね。
金子:優河さんはFRIENDSHIP.からは初めてのリリースですけど、シンガーソングライターとしてもともとすごく評価が高くて、ROTH BART BARONのアルバムに参加するなど、いろんなアーティストとも関わりがあったり、去年はミュージカルにも出演したりとか。
MISATO:多才な方。
金子:そう。かなり活躍の幅を広げていて、今回の曲もこれまで関わってきた岡田拓郎くんだったり、あと神谷洵平さん、FRIENDSHIP.ではお馴染みの名前だったりしますけど、かなり面白い人たちがバンドとして関わっていて、とてもいい曲ですね。
MISATO:いいですねー。pandagolffは2ヶ月ぶりの新曲。
金子:なんだか、いつもとちょっとイメージ違いますね。
MISATO:違いますねー。ちょっとポップスの感じもあっていいですね。
MISATO:そして、永原真夏さん!
金子:真夏ちゃん、いいですね。
MISATO:ドルフィンキックが似合うの、私、ジュディマリだけだと思ってたんですけど。
金子:あはは。
MISATO:「くじら12号」(笑)! futuresのEPもとってもいいですね。
金子:いいですよね。このレゲエとかダブとかの感じもありつつ、バンドサウンドだけどクラブで聴きたい感じっていうのは独特だなって。
MISATO:CITY HIP MUSICを掲げてるというのは毎回紹介させてもらってましたけど、それを体現してる曲だなと。おしゃれさ、チルさ、でもちゃんとビートがあって、横で揺れられるし。
MISATO:さらにもう1曲ですね、Wez Atlasくんが控えております。
金子:キャリア初のミニアルバム「Chicken Soup For One」という作品がリリースになったんですけど、最近ね、starRoさんと一緒にやった「Zuum!!」とかもランキングに入ってきて話題になってましたけど、今回のミニアルバムにはあの曲は入ってなくて、コンセプチュアルにこのアルバムに向けて作ってきた曲たちが収録されていて。この「Chicken Soup For One」というタイトル、チキンスープとはなんぞや、という感じだと思うんですけど。
MISATO:うんうん。
金子:チキンスープはアメリカの文化で風邪を引いたときにおばあちゃんが作ってくれる食べ物であり、日々の自分を安らげてくれるものだったり、そういう内省的な、メンタル的な部分を支えてくれるものが作品全体のテーマになっていて。だから音楽性もアッパーなものというよりは、わりとチルだったりとか、メロウだったり、そういう曲たちでまとめられている作品で、とても聴き心地が良い作品になってます。
MISATO:今はチキンスープの代わりに、自分との対話で痛みを和らげようとしてる、というのがすごく印象的だなぁと思っていますが。
金子:そうですね。メンタルヘルスのこととかって、この一年すごく言われるようになっていて、特にアーティスト、ものを作る人たちというのは何かしら支えが必要で。デジタルの時代になってインディペンデントのアーティストが一人で作品を世に送り出せるって、とても良いことではあるんだけど、逆に言うと後ろ盾がない分、メンタルをやられちゃうこともある。そういう中で、例えば、FRIENDSHIP.はディストリビューターでもあるけど、レーベル的な役割も果たしていて、一緒に作品を作っていく場所でもあるから、FRIENDSHIP.みたいなサービスがあることの意味を改めて考えさせてくれるところもあるなぁと、個人的に思いましたね。
MISATO:これをきっかけに、自分一人ではその才能をどう世に発信していいか分からないという方は、FRIENDSHIP.にご連絡いただきたいですね。何かできることがあるかもしれない。
金子:このアルバムにはプロデューサーでVivaOlaくんがかなり関わっていて、もともと仲が良かったという関係性もありつつ、VivaOlaくんはVivaOlaくんでFRIENDSHIP.からアーティストして作品もリリースしているので、そういう関係性もいろいろ見えてくる作品かなと思います。
MISATO:従来のラッパーの方のリリックはもう少し棘があるというか、力があるというか、自分のことを歌うにしても自分がやってきた賞賛に値するような言葉が並んでる印象の方が強かったですけど、まさに内省的な、「こんなことも言っちゃっていいの?ラッパーって言っていいんだ!」という、新しい一つのスタイルを見せてくれたというか。これを書くことが、内省的に生きることが強さなんだなと最終的に感じさせてもらったんですけど。すごい作品ですね。
金子:さらけ出せる強さというか。良い作品だと思います。
New Release Digest Part 2
MISATO:7月19日週リリースの新譜ダイジェスト part 2、なんだか今週ははじめましてのご挨拶が多いですね。ラッパーの RUNE999、 シンガーソングライターのみらん、そしてFreeTEMPO!活動を再開して、FRIENDSHIP.よりリリース、ということですね。
金子:FreeTEMPOは10年ぶりの活動再開で。
MISATO:嬉しい!
金子:ちょっと前に出たHANDSOMEBOY TECHNIQUEのアルバムは12年ぶりでしたけど、今度は10年ぶりということで。
MISATO:いやー、二桁はすごいですし、FRIENDSHIP.を選んでいただけて嬉しいです。
金子:そうですよね。もともと2000年代にハウスやラウンジとかの文脈ですごく評価されていた人で、後期の作品は結構ポップス寄りになってきていて。
現時点での最新のアルバム、10年前ですけど、「LIFE」というアルバムにはキリンジの堀込泰行さんとか、TAHITI 80のボーカルのグザヴィエとかがゲストで参加していて、かなり華やかな作品だったんですけど、そこから10年を経てね。
MISATO:今どんな風に曲を作っているのか、作り方もきっと変わったでしょうし、こだわる部分も変わったと思う。
金子:この「Peace」を聴いても当時の印象とは少し変化していて、それがアルバムとなると、より全貌が見えてくるんじゃないかと思うんですよね。
MISATO:ちょっとポップス要素とか強いなぁと思いました。私としては、ハウスに出会って、日本人のハウスで、「あ、イケてる!」と思った一人だったので、すごく嬉しい。活動再開すると思ってなかったから。そして、RUNE999さんも初めてですね。
金子:はじめまして、ですね。この人はキャリアがなかなかすごくて、もともとジュノンスーパーボーイコンテスト、ファイナリスト、ファッションモデルで活躍しつつ、仮面ライダーにも出演したり。
MISATO:ナリタ役!
金子:ね!という人がラッパーとして活動を始めて。
MISATO:多才な人が多いな、今週。すごいですね。
金子:それこそ、さっきのWezくんのときの話じゃないけど、こっちはいかにもラッパーらしいセルフボースト、自分のことや地元のこととかを言ってるリリックで、音的にもトラップでまさに今のヒップホップの流れをやっている人で。
MISATO:そして、みらんさんも声がいいですね。耳に残る。
金子:FRIENDSHIP.的にはカネコアヤノさんとかにも通じるような、ちょっとノスタルジックな雰囲気もありますよね。バレーボウイズという、インディー好きな方だったらご存知かもしれない、もう解散しちゃったんですけど、その元メンバーと一緒に作品を作っていて、あのバンドにも通じるノスタルジックな感じもあり、良いシンガーだと思いますね。
MISATO:さらに、ioniさん毎回いいですよね。
金子:ioniさんは毎回かっこいいですよね。
MISATO:奥行きと立体感を感じる。広い空間の中で聴きたいですね。いいです。
金子:その表情が物語ってますね(笑)。
MISATO:いいです!マスク越しにも伝わっちゃう(笑)。そして、Layaさん。いいです、好きです。
金子:いいですよね。こういうある意味王道なポップ・シンガーもちゃんとFRIENDSHIP.からリリースしてくれてるのが良いですね。
MISATO:しかも、このポップさなんだけど、東京出身っていう日本のアイデンティティをちゃんと持ってる方が歌ってるのがすごくいいですよね。
金子:その上でちゃんとグローバルにも広がる可能性がある。
MISATO:日本からこういう方が出てくるんだ!というのが嬉しいですね。
金子:そして、アツキタケトモ。アルバムが遂に完成しまして。
MISATO:おめでとうございます!いやー、すごいですね。
金子:毎週のように彼の曲は紹介してきましたが、もともとこのアルバムのコンセプトがしっかりあった上で、その中からシングルを切って行くようなイメージだったらしく、アルバム全体でのまとまりがすごくあって。さっき「日本的」みたいな話もちょっとありましたけど、その点でもアツキタケトモさんはやっぱり面白くて、改めてまとまった作品を聴くと、サウンドメイクはかなり攻めてるんですよね。世界基準と言ってもいいのかもしれないけれど、いわゆるインディーR&Bみたいなものだったり、最近のエレクトロニックミュージックの面白さっていうのもかなり入ってる。
でもやっぱりすごくJ-POPなんです。こういうサウンドメイクだと洋楽的になりがちだと思うんだけど、例えば、米津玄師さんはそういう攻めたサウンドメイクと、歌謡曲っぽいラインのいいとこどりを上手くやっていて、「Lemon」はまさにそういう曲だったと思う。それに対して、アツキさんはよりJ-POP的な雰囲気がある。で、SNSを覗いたら「Bedroom Covers」という、自分が影響を受けたアーティストの曲を独自にカバーする企画をやられてて、大沢誉志幸さん、オフコース、槇原敬之さんなど、日本語のポップスの素晴らしい人たちの曲を、今のサウンドメイクにのせて、今のリズム解釈でカバーするというもので。こういう人はなかなかいないんですよね。
MISATO:そうですね。そのさじ加減というか、洋楽要素とJ-POP要素何パーセントぐらいにするかによって全然完成形が変わってくると思うので。米津さんとかは、それが絶妙で上手だと思うんですけど、アツキさんはだいぶJ-POPに寄せながら、大衆的な音に聴かせてくれるっていうマジックにかけられてます。
金子:米津さんはもともとボカロからの流れだったり、もうちょっとロックバンド的な流れだと思うんですけど、アツキさんはそっちではない。声の加工とかはすごくいろいろレイヤーが重ねられていたり、あとマスタリングも海外エンジニアがやっていて、音に対してすごくこだわってるんだけど、ミックスで言うとボーカルがすごく前に出ていて、その辺りは日本的な、J-POP的なミックスだったりとか、バランス感覚が珍しいと思うんですよね。
MISATO:アツキタケトモ「しあわせのうた」、アルバム通しても3曲インタールードっぽい感じで作ってたりとか、構成が洋楽テイストではあるんですよね。プロフィールを見るとジェイムス・ブレイクも好きとか、そのあたりのミックスの塩梅というのも、声を抜かしたところは確かにそういう風にやってる、さっきの厚武さんの話にも通じるなと思って。
金子:そうですね。
MISATO:声が際立ってるところに関しては狙っている層がはっきりしてるな、という印象があります。音楽好きはもちろんだけど、分かる人には分かってもらうけど、もっとお茶の間に届けたいんだなという、アツキタケトモさんの想いっていうんですかね。
金子:「しあわせのうた」はこのアルバムの中でも一番アッパーなダンス・トラックで、こういう曲も出来るんだって感じがするし、すごく広がりそうな曲であり、アルバムなんじゃないかと思います。
MISATO:とてもライブ映えもするでしょうし、ライブが出来るような時期になったら観てみたいですね。このアルバムがどういう構成になってセットリストに組まれるのかとか。
金子:確かに。このままの流れでやっても面白いし、それを入れ替えて、過去曲も組み合わせてとか、そういうことをやってくれそうな気もしますね。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FM福岡で毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"303号室"(毎週水曜日の27:00~27:55)では、FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」をオンエア。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週水曜日 27:00~27:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
LINK
FM福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」FRIENDSHIP.