SENSA

2021.02.08

Saucy Dog、初の武道館ライブ2Days「僕らの音楽を、あなたの人生の一部にしてくれたら。」

Saucy Dog、初の武道館ライブ2Days「僕らの音楽を、あなたの人生の一部にしてくれたら。」

 Saucy Dogが2月5日にキャリア初となる日本武道館の単独公演「Saucy Dog one-man live "send for you"」、2月6日に同会場にて対バンイベント「リベンジエピソード」を開催した。新型コロナによる緊急事態宣言下での開催となったこの日は、政府・自治体による感染防止ガイドラインに沿って、会場の動員をキャパシティの半分以下に抑え、十分なソーシャルディスタンスを確保したほか、入場時の規制入場・消毒・検温の徹底、公演中もMCや転換中に都度換気を行い、終演後には規制退場を実施。歓声やシンガロングはできないというイレギュラーな状況ではあったが、いまバンドが届けたい想いを確かに伝えるライブになった。

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Photo by 白石達也


 1日目は、ライブタイトルの「send for you」を体現するように、メンバーからお客さんへ手紙を渡すアニメーション映像から始まった。大きな拍手に包まれて、せとゆいか(Dr)、秋澤和貴(Ba)に続き、石原慎也(Vo/Gt)がステージに登場。ミラーボールが美しい光を放つなか、疾走感あふれるバンドサウンドが駆け抜ける「真昼の月」から幕を開けた。「ベース、秋澤和貴!」という石原の声を受けて、秋澤がステージ中央で堂々たるベースプレイを披露した「ナイトクロージング」、「僕が言われて、いままででいちばん悔しかった言葉」と歌い出した失恋のバラード「煙」、真冬の武道館を潮風が吹く渚へと誘うような「シーグラス」へ。ギター、ベース、ドラムというシンプルなスリーピース編成でありながら、楽曲ごとに豊かに表情を変えるバンドサウンドと石原の伸びやかな歌声。現メンバーで4年半にわたり、全国各地のライブハウスで鳴らしてきた新旧楽曲が次々に武道館に響きわたっていく。

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Photo by 白石達也


昨年9月にリリースされた最新アルバム『テイクミー』の収録曲「結」や「BLUE」といった楽曲を、電飾が彩る美しい演出と共に届けた中盤。石原が「いままで関わってくれた全ての人に感謝を届けるライブをしたいと思います」と、初武道館にかける意気込みを伝えると、両親への感謝を込めた「Humming」、アコースティック編成に移行して、ドラムのせとがボーカルをとり、かつて一緒にバンドを組んでいた先輩や友人を思い出しながら歌いたいと伝えた「へっぽこまん」など、「send for you」のタイトルどおり、これまでバンドに関わってきた人たちへの想いを大切にしながらライブは進んだ。

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Photo by 白石達也


初めてアコースティックアレンジで披露した「film」、あえて着席のままじっくりと聴かせた「コンタクトケース」のあと、「雷に打たれて」からの終盤はアップナンバーを畳みかけた。自分との葛藤を荒々しい言葉で綴った「ゴーストバスター」ではメンバーの頭上に火花が散る。いくつもの感謝を伝えたライブの終盤、改めて集まったお客さんへの感謝を伝え、「とっておきの愛の歌を」という言葉と共に、武道館公演の直前に配信リリースされた渾身のバラード「sugar」を届けると、最後のMCでは、緊急事態宣言下でライブを開催することに、「正直、不安でした」と吐露した石原。いつも通りのライブができない現状に触れて、「またいずれリベンジの武道館をやりたいです。もう1回みんなを連れてくるので、そのときを楽しみにしていてください」「僕らの音楽を、あなたの人生の一部にしてくれたら。約束は絶対に守るから」と熱くフロアに語りかけた。本編のラストは「今更だって僕は言うかな」。数々の失恋を描いてきたSaucy Dogの真骨頂とも言える切ないラブバラードで本編を締めくくった。

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Photo by 日吉"JP"純平


アンコールは、石原が足を大きく二発踏み鳴らし、代表曲「いつか」を届け、メンバーそれぞれが初武道館への想いをお客さんに伝えた。「武道館までにいろいろ言葉を考えてたけど、いまの感情は"楽しい"。それしかありません」と秋澤。「ライブをすることは難しい選択やったけど、ちょっとでも幸せに過ごせてくれてたら嬉しいです」と、せと。そして最後に石原が「晴れてコロナの野郎が静まった暁にはみんなで歌いましょう!」と叫び、本来であれば、お客さんと一緒に歌いたかった「猫の背」を、「心の中で歌って」と呼びかけて、1日目は終演。武道館という自身最大キャパの会場に立った3人だったが、最後まで飾らずにステージに立つ姿は、いつもと変わらないSaucy Dogだった。
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Photo by 白石達也



 2日目の対バン編には、THE BAWDIES、ハルカミライ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの3組をゲストに迎えて開催された。

「ロックンロールバンド、怖くないです。お祭りが始まると思って参加してください」。会場の緊張を和ますようなROY(Vo/Ba)の言葉で口火を切ったTHE BAWDIESは、いきなりフルスロットルで「IT'S TOO LATE」を投下した。ロングトーンのシャウトと熱いグルーヴで集まったお客さんを根こそぎ踊らせていく。お客さんを楽しませて、自分たちも楽しむ。そんなTHE BAWDIESのライブは、Saucy Dogがお手本のようだと憧れる理想のバンド像だ。甘酸っぱいミディアムバラード「LEMONADE」を挟み、MCでは、「音楽を楽しむ文化を止めないでイベントを開催してくれたSaucy Dogに、音楽ファンとして感謝を伝えたいです」とROY。"雨のあとには晴れがくる"というメッセージを込めた最新ナンバー「SUN AFTER THE RAIN」から、祭りの打ち上げ花火と称してお客さんを一斉にジャンプさせた「JUST BE COOL」まで。ユーモアとロックンロールへの愛情に満ちたステージでイベントのトップバッターを飾った。

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Photo by 白石達也

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Photo by 日吉"JP"純平


Saucy Dogとは同世代となるハルカミライは、初っ端から「君にしか」「カントリーロード」「ファイト!!」といった衝動的なパンクロックを間髪入れずに連投。"僕ら世界の真ん中"と高らかに宣言する「春のテーマ」、序盤から早々に上裸になった橋本学(Vo)が圧巻のアカペラを聴かせた「世界を終わらせて」など、暗闇から光へと導くような優しい歌唱にフロアからは一斉にこぶしが突きあがる。MCでは、この日が初めての武道館ライブになったことに触れて、「俺らのファンの中にはハルカミライの初武道館はワンマンがよかったって言う人もいる。でも、それが武道館だろうが、ライブハウスだろうが、友だちが誘ってくれたら、そりゃ行くよ」と、そのステージに立つ意味を迷いのない口調で伝えた橋本。「アストロビスタ」では、「俺たちもすげえバンドになろうぜ!サウシー!」と、同世代の友人を鼓舞するように叫んだ。時間が余ったからと追加した「Tough to be a Hugh」と「フュージョン」まで全14曲。4組中、断トツの曲数を詰め込んだハルカミライは、人間まるごとぶつけるような渾身のステージだった。

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Photo by 日吉"JP"純平

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Photo by 白石達也


石原が高校時代から大好きで、コピーしていたという憧れの存在、ASIAN KUNG-FU GENERATIONがトリ前に登場。ゆるやかに大空へと滑空するような最新ナンバー「ダイアローグ」を皮切りに、一瞬にして武道館をアジカンの空気で包み込む。「久々のライブでとっても楽しいです。呼んでくれてありがとうございます」。後藤正文(Vo/Gt)が手短かに感謝を伝えると、「ソラニン」「ブルートレイン」、さらに「荒野をゆけ」と、全世代のロックファンの心を撃ち抜く名曲たちを惜しげもなく披露していく。喜多建介(Gt)のエッジの効いたギターを合図にはじまった「リライト」では、会場のリアクションが一際大きくなった。ラスト1曲を残し、「こういう場所を取り戻していきたいなって、そんなふうに思いながら、今日は演奏しました」と伝えた後藤。ラストはイントロにホーリーなアレンジを施したミディアムテンポ「ボーイズ&ガールズ」が、次第に熱量を帯びてゆき、終演。"愛嬌のない社会に産まれた犬みたいにさ 「興味ない」みたいな言葉で切り捨てないでね"。そんなふうに紡がれるフレーズは、まるでSaucy Dogに捧げる歌のようにも聴こえる気がした。

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Photo by 白石達也

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Photo by 日吉"JP"純平


トリを飾ったSaucy Dogは、前日のワンマンで最後に披露された「今更だって僕は言うかな」から、しっとりとスタート。「お待たせしました。Saucy Dog、はじめます!」。力強く叫んだ石原の声は、対バンの熱演によって火が着いたのか、熱い気合が滲む。MCでは、「自分が予想していた"絶対に最高の場所になる"の"最高"をさらっと超えてきました」と、感極まったように伝えたせと。「コロナなんてぶっ飛ばしてやろうと思います!」と、石原が勇ましい言葉を投げかけた「ゴーストバスター」から、今年1月に配信リリースされた不器用な愛を綴った新たなラブバラード「sugar」まで終えたあと、武道館2Daysの最後に選んだのは「グッバイ」だった。客電をつけ、お客さん一人ひとりの表情を確認するように届けたその歌は、いままでの弱かった自分に別れを告げて、前へ進む決意を込めたバンドの大切なナンバー。それは、この日、会場に足を運んだお客さんが武道館の扉を出たあとにも続いてゆく日常に寄り添い、エールを贈るような力強いフィナーレだった。

アンコールはなく、ここで終わる予定だったが、時間が余ったということで、急遽ステージ上でメンバーが話し合い、最後に「いつか」を追加で披露。バンドと共に成長してきた代表曲で4時間におよぶイベントを締めくくった。

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Photo by 日吉"JP"純平

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Photo by 白石達也


これまでバンドが歩んできた道のりの延長線上にある「点」として、感謝を込めて作り上げた1日目のワンマン。憧れの先輩と尊敬する同世代バンドと共に作り上げた2日目の対バン。ふたつのかたちで完成させたSaucy Dogの初武道館は、ここから長く続いてゆくであろうバンド史に確かな足跡を刻む2日間だった。

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Photo by 白石達也


なお、2月5日に行われた日本武道館の単独公演「Saucy Dog one-man live "send for you"」の模様は、WOWOWにて3月16日(火)20時から放送される。
また、武道館単独公演のライブセットリストも各種ストリーミングサイトで公開されている。

取材・文:秦理絵


Saucy Dog one-man live「send for you」
2021年2月5日(金) @日本武道館 SET LIST
01. 真昼の⽉
02. 雀ノ⽋伸
03. ナイトクロージング
04. 煙
05. メトロノウム
06. シーグラス
07. 結
08. BLUE
09. 曇りのち
10. Humming
11. 寝ぐせ
12. へっぽこまん
13. film
14. コンタクトケース
15. 雷に打たれて
16. ゴーストバスター
17. バンドワゴンに乗って
18. sugar
19. 今更だって僕は⾔うかな

En01.いつか
En02.猫の背



Saucy Dog 対バンイベント「リベンジエピソード」
2021年2月6日(土) @日本武道館 SET LIST
THE BAWDIES
01. IT'S TOO LATE
02. LET'S GO BACK
03. SING YOUR SONG
04. LEMONADE
05. KEEP YOU HAPPY
06. SUN AFTER THE RAIN
07. HOT DOG
08. SKIPPIN' STONES
09. JUST BE COOL

ハルカミライ
01. 君にしか
02. カントリーロード
03. ファイト!!
04. 俺達が呼んでいる
05. 春のテーマ
06. 世界を終わらせて
07. predawn
08. 100億年先のずっと先まで
09. アストロビスタ
10. ファイト!!
11. 僕らは街を光らせた
12. PEAK'D YELLOW
13. Tough to be a Hugh
14. フュージョン

ASIAN KUNG-FU GENERATION
01. ダイアローグ
02. 君という花
03. ソラニン
04. ブルートレイン
05. 荒野を歩け
06. リライト
07 ボーイズ&ガールズ

Saucy Dog
01. 今更だって僕は⾔うかな
02. シーグラス
03. BLUE
04. 雀ノ欠伸
05. ゴーストバスター
06. バンドワゴンに乗って
07. sugar
08. グッバイ
09. いつか


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