SENSA

2020.12.29

LAMP IN TERREN、定期公演「SEARCH #023」10ヶ月ぶりの有観客開催をレポート

LAMP IN TERREN、定期公演「SEARCH #023」10ヶ月ぶりの有観客開催をレポート

毎月26日に、渋谷Star loungeで行われているLAMP IN TERRENの定期公演『SEARCH』。ようやく第23回目、"#023"のナンバリングをつけることが出来た。以前、松本大(Vo/Gt.)の声帯ポリープ切除手術による活動休止で一度足を止めたこともあったが、再び歩み出してから2020年2月まで止まらず、全22公演を続けてきた。しかし"#023"のナンバリングがつくはずだった3月26日、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で開催を断念。そこで7月からの3公演は無観客配信ライブに切り替え、『SEARCH ONLINE』と名付けて再び歩み出し、10月と11月はワンマンツアー『Progress Report』で渋谷Star loungeを訪れた。そしてようやくこの12月26日に『SEARCH #023』と題して観客を迎えることが出来た。更に年末のフェスが開催中止になってしまったこともあり、思わぬ形でこれが2020年のラストライブにもなった。
筆者は勝手に想像していた。おそらく感慨深いライブになるだろう、と。10ヶ月ぶりに『SEARCH』を有観客で開催できたことと、激動の2020年のラストライブという位置づけ。ファンの涙を誘うライブになるんじゃないかと思った。しかし、そんな予想は大幅に外れた。しんみりと噛み締めるような瞬間はなく、沢山の笑顔に溢れ、とにかくシンプルにライブを楽しむ、最高な2時間だった。

20201226_201228_8.jpg
舞台袖から活気ある円陣の掛け声が聞こえると、SEも無く颯爽とメンバーが登場。定位置につくとすぐさま一曲目に"I aroused"を披露した。中原健仁(Ba.)と川口大喜(Dr.)が互いを見ながら呼吸を確認する。アウトロのピアノからそのまま"Dreams"に繋ぐと(この繋ぎは今回の為に制作したらしい)、照明が虹色に変わり、ミラーボールが回った。
「こんばんはLAMP IN TERRENです!2020年最後のライブになりますので、今日は今の俺たちの"THE・ライブ定番曲"でやっていきたいと思います!」と松本が今回のコンセプトを叫ぶ。『SEARCH』は毎回、何かしらのテーマや企画を持ち込んで様々なライブの形を探索している。カバー曲や昔のライブの復刻セットリスト、リクエストライブや撮影可能なライブなど、全22回と配信ライブ3回で色んな試みがあった。今回のテーマは「THE・LAMP IN TERREN」というセットリストなこともあり、出だしから盛り上がる曲の連発。音源の何倍も存在感を放つ中原のベースラインと、川口のビートが心地よく絡む"Water Lily"、そして間髪入れずに"ホワイトライクミー"。イントロ一音目からフロアが上下に揺れ、クラップが揃う。定番曲というだけあって会場の一体感も素晴らしい。「楽しみ方は自由です!もっと来てもいいんじゃない!渋谷!」と松本が煽り、一気に拳を突き上げる観客。笑顔でフロアを見渡す中原と大屋真太郎(Gt.)。会場を照らす煌びやかな照明。序盤から会場は多幸感に満ちていた。そしてそんな空気をガラリと変える"亡霊と影"。妖艶な照明の元、中原のうねるベースラインが映える。ここまで次から次へと楽曲が繰り広げられていく容赦ない展開の中、曲の後半の《もう二度と戻らない昨日に/何を望んでいたんだっけ/僕はやっと夢から醒めたよ/さようなら》の一節では一瞬全ての音が消えた後に、少しだけギターを鳴らしながら枯れた声で松本が歌った。ここまで音を止めずに爆音で楽曲を繋いできたからこそ、一瞬の静寂にグッと引き込まれた。

20201226_201228_34.jpg
20201226_201228_24.jpg
「改めましてこんばんはLAMP IN TERRENです!」ともう一度挨拶をすると、「本当は色々考えて企画をやろうと思ったんですが、その矢先に中原くんが急性胃腸炎になりましてね。3人だけでスタジオ入って練習するのもな...ということで今日は"THE・LAMP IN TERREN"でセットリストを組んでおります!」と、今回のコンセプトに至った経緯を話した。そしてMC明けにスピード感のある"innocence"を勢いよく掻き鳴らし会場のボルテージを上げたところで、ヘヴィーなリフが効く"ほむらの果て"。更に4人が向き合って"緑閃光"を優しく奏で始め、互いの呼吸を確認するように大切に届けると間髪入れずに"BABY STEP"。雄大なサウンドがフィナーレのような空気感を演出する。メロディーや曲のアレンジが全く異なる4曲の流れは、如何にLAMP IN TERRENが引き出しの多いバンドかを表していた。

20201226_201228_10.jpg
20201226_201228_56.jpg
そして再びMCに突入。クリスマスの話題になったものの誰一人としてクリスマスらしい過ごし方はしておらず、話の収拾がつかないと察した松本が大屋の話の最中に"New Clothes"のイントロを弾き始めた。会場はささやかな笑いに包まれたが、更に川口がドラムフレーズを間違えてしまい、松本が笑いを堪えられず歌が中断。こんなにユニークな空気から入り込む"New Clothes"はなかなかないだろう。(2回目は素晴らしい切り替えでバッチリきまっていた。)
そんなレアな"New Clothes"を終え、"凡人ダグ"のベースを中原が一歩前に乗り出して奏でる中、「ギャグみたいな始まり方でシリアスな曲やるってたまにはいいよね。面白いとかっこよさが同じところにあってほしい。理性が保ってる状態だと飛べないでしょ?皆さんも暴れてみたらいかがですか!」と松本が上手く回収して煽った。《掘り返す度に痛いや/乾いて仕方ないや》の一節では囁きと雄叫びを瞬時に切り替える松本ならではの歌い方。ふっと力を抜いたかと思えば突然力を入れたりする。その表現力に圧倒されるが、そこに3人の完璧な呼吸感のサウンドが加わることで歌の緩急が更に際立つ。LAMP IN TERRENのグルーヴには惚れ惚れだ。

20201226_201228_32.jpg
そして盛り上がり間違いなしの"オーバーフロー"と"地球儀"を続けて披露しフロアのボルテージはピークを迎えた。しんみりなんて少しもしない。跳んだり跳ねたりするフロアを嬉しそうにみるメンバー。"オーバーフロー"のシンガロングは大屋と中原が声の出せない観客の分まで思い切り歌い叫んだ。いつもは200人入るはずが、80人にキャパ制限をしたフロア。2番でマイクを取って前に出てきた松本は、その80人を一人一人順番に見ていくように歌った。そして眩い照明にミラーボールがまわり、まるでダンスパーティーのような"地球儀"。大屋が一歩前に出てきてギターを掻き鳴らし、松本が自由自在に踊り狂う。それを見て中原は笑いながら楽しそうに弾いていた。メンバーが純粋にライブを楽しんでいるのがひしと伝わってくる。
そんな賑わいから一転、松本がぽつりぽつりと"いつものこと"を弾く。自由なテンポの歌に少しずつ3人のサウンドも入ってくると、そこに差し込むオレンジ色の照明が夕方のようで素朴だった。"オーバーフロー"と"地球儀"の爆発感から"いつものこと"で一気に落ち着くと、まるで2020年のエンドロールのような空気感が観客の心を揺らしていた。

20201226_201228_36.jpg
20201226_201228_84.jpg
長い拍手の後、ピアノの前に座った松本は「大変な1年でしたね、お互い。」と真面目なトーンで話し始めた。この一年を良かったと思える年にしたかったこと。だからこそ今だから書ける曲や、今だから出来るライブを楽しみながら届けてきたこと。そんな心の内をピアノを少し弾きながら話す。そして「目の前にいる人と全員繋いでいける気がするんだよね。自信過剰かもしれないけど(中略)俺は信じてるから。自分が今やってる事や自分の心が、これから出逢う人を仕留められると信じてる」と自信に満ちた表情で心強い言葉を吐き、"Fragile"のクラシカルなピアノを奏でた。スケールの大きい曲で本編を締め、4人はステージを去った。

アンコールを求める拍手の中、再び登場した彼等は新グッズの紹介をしたところで年末の過ごし方の話をした。上京してから初めて家で迎える年越しに戸惑う松本。メンバーにどう過ごすかを相談し、川口に話を振ろうとするも、「(松本)あ、大喜はいいや。あとでで。」「(川口)いやそれ聞かんやろ」「(松本)聞くって!」の言い合いをしたまま"eve"へ。ポケットに手を突っ込んだまま、気ままに歌う松本。たまにそうやって簡単そうに歌う時がある。でも、歌声は力強くどこまでも響く。改めてテクニカルなボーカリストだなと思った。サビが終わると一気にサウンドが厚みを増しテンポアップした。
ピアノに座ると、「で?(大喜は)何すんの?」と約束通りに聞く松本。そこからゲームの話になり、和んだ空気の中「帰ったら何もないから帰りたくないって気持ちあるんだけどなあ」と最後の曲に入る名残惜しさを噛み締める。「じゃあ、良いお年を!」と手を振り最後の1曲、"EYE"を残りの力を出し切るようにエモーショナルに歌って、ライブは幕を閉じた。

20201226_201228_93.jpg
恐らく誰もが不安を感じた1年だった。そんな中で彼等は2020年を忌み嫌うことなく、配信ライブやアルバム制作、20本のツアー完走など今だからこそできる音楽を作り、歌を届けてきた。そして1年の終わりに、これはこれで良かったんじゃないかというマインドで堂々と楽しそうにステージに立った。非常に輝かしかった。そして、そういうマインドに持っていける一つの強さの根源は、躓いたりしながらも定期公演『SEARCH』をずっと続けてきたことにあるかもしれない。彼等の様々な試みは、逆境でも立ち向かうパワーに繋がっていた。終わりよければすべてよし。LAMP IN TERRENのおかげで2020年の締めくくりが最高になった。2021年の彼らの活躍も期待したい。

文:高橋夏央
写真:浜野カズシ


SET LIST
01. I aroused
02. Dreams
03. Water Lily
04. ホワイトライクミー
05. 亡霊と影
06. innocence
07. ほむらの果て
08. 緑閃光
09. BABY STEP
10. New Clothes
11. 凡人ダグ
12. オーバーフロー
13. 地球儀
14. いつものこと
15. Fragile

Encore
01. eve
02. EYE


LINK
オフィシャルサイト
@lampinterren
@lampinterren
Official YouTube Channel
Facebook
LINE公式アカウント

気になるタグをCHECK!