SENSA

2022.06.04

WOMCADOLEが反骨精神を打ち出した再出発のツアー「FUCK THE FUCKIN' FUCKERS」──その真意を紐解く

WOMCADOLEが反骨精神を打ち出した再出発のツアー「FUCK THE FUCKIN' FUCKERS」──その真意を紐解く

3月に突然解禁されたこのツアータイトルを初めて聞いたとき、思わず笑ってしまったのが正直なところ。だが、このツアーがWOMCADOLEにとって、後世に語り継がれるほど重要な位置付けのツアーになるとは思ってもみなかった。

「FUCK THE FUCKIN' FUCKERS」ツアー(以下、FFFツアー)。タイトルの響きからして気持ちいいほどの反骨精神を胸に歩き出した本ツアーでは、ステージのバッグドロップやグッズなどに掲げられてきたバンドロゴが一新された。大げさかもしれないが、ロゴはバンドにとっての心臓部分。そこを入れ替えるのだから、並々ならぬ決意が感じられてしょうがない。そして、大阪・福島LIVE SQUARE 2nd LINEや地元滋賀の彦根COCOZA、浜大津B-FLATなど、WOMCADOLEにとって縁が深いライブハウスをまわる、いわば"原点回帰"のようなツアーとも言える。その中でも、自主企画「瀧昇一本目 二〇十六」(2016年)や、ミニアルバム『15cmの行方』のリリースツアー「俺らは生きているんだツアー」追加公演(2017年)など数々の節目でステージに立ってきたライブハウス、東京・下北沢SHELTER公演をもとにFFFツアーを紐解いていく。

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19:00、定刻どおりに本ツアーのSEであるKeshaの"Woman ft. The Dap-Kings Horns"が鳴り響き〈I'm a motherfucker〉と歌い上げると、本編終盤やアンコールで演奏されることの多い瞬間着火剤"ライター"をド頭から投下したかと思えば、"ドア" "黒い街" "wariniawanai" "少年X"と高BPMのナンバーを間髪入れずに連射していく。このFFFツアー、どの会場のセットリストにおいてもまず、開演からの怒涛のたたみかけがエグい。先述のとおり、バンドロゴを変えて再出発するバンドの「動きを止めてはいけない」「生きることをやめてはいけない」というメッセージが滲み出たようなオープニング劇だ。

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樋口侑希(Vo,Gt)は最初のMCで、「物騒な名前ですけれども、『FUCK THE FUCKIN' FUCKERS』。いろんなマイナスな部分を全部ぶっ壊したいなと思って、こういうツアーまわっております」と告げた。規制が多く窮屈で生きづらい現代社会、はたまた視野を広げれば、不安定な世界情勢を報じるニュースを連日目の当たりにしては、戦争を知らない世代が今まさに自分事のように日常に危機をおぼえている未曾有の事態。そんな最中、日本は東京・下北沢の地下シェルターから爆音を鳴らす。この日のWOMCADOLEのライブは、驕れる者たちに中指を立て、ここに集結した同志たちの存在価値を天高く証明しているようで、実に頼もしかった。

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FFFツアーの醍醐味として、まずは全公演セットリストが大幅に変更されることが挙げられる。作品がすでに廃盤になっているほどの初期曲から最新作まで、文字どおり新旧の楽曲を織り交ぜながら、バンドの歩みを体現していくように組まれているのが伝わってくる。最初のMC明けの"追想"はツアー4公演目にして初演奏。普段の演奏頻度は低いが、〈光を無くした未来などは/見えなくていいんだ〉と希望を歌う隠れた名曲だ。そしてもうひとつ、とにかく自由なステージングが際立っているように思う。"頂戴"のセッション的なセクションや、"深海ゲシュタルト"に入る前のイントロダクションでのギターソロプレイなど、その精神性がフロアに伝染してより自由に体を揺らしているオーディエンスの姿が眩しかった。

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セットリストは終盤に差し掛かる。「大事なものを目の前にしたとき、あんたに何ができんだ?大事なものを大事って言えたときに初めてちゃんと頑張れるんちゃうの。初めて衝突できんちゃうの。おれはそれを信じてやってまいりました。まだまだいけるかシェルター!」と樋口が啖呵を切ると、「引っ張ってやるからついて来い!」と言い放ち"軌跡"へ。誰ひとり置いていかない――フロアの一人ひとりに目をやりながら時折声を嗄らすほどに絶唱する樋口と、ロックバンドの使命を果たすべく超強力な三位一体となって音を飛ばすマツムラユウスケ(Gt,Cho)、黒野滉大(Ba)、安田吉希(Dr,Cho)の3人の構図は、続く"馬鹿なくせして"でもオーディエンスの心を掴んで離さない。中間部では樋口がステージに崩れ落ちるようにギターを引っ掻きむしる場面もあり、思わず胸が熱くなった

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WOMCADOLEのライブは、フロアとのコミュニケーションを欠かさない。"ライター"の落ちサビでは声出し禁止のためシンガロングできないフロアに向けて「十分聞こえてるぞ!」と受け止め、"頂戴"ではオーディエンスの手拍子がバンドのテンポキープを担う演出あり、"FLAG"の中間部では樋口の「聞かせろシェルター!」という叫びにオーディエンスが拳を突き上げて応えた。コロナ禍で失われつつあった接触行為、状況が緩和されるであろう近い将来に希望を託しつつ、規制をギリギリまで飛び越えて心が触れ合った瞬間だった。

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めったに演奏しない超初期曲"MONKEY"で安田が踏むツーバスと4つ打ちビートで踊り狂うフロアを見届けては、樋口が「ごちそうさまでした」と満足げな表情を浮かべたのも束の間、本編ラストはライブアンセム"アオキハルヘ"。同じ時代、同じ時間に同じ音楽で繋がっている<僕>と<君>、下北沢SHELTERも含めて会場中が相思相愛。そんな非日常のような温かい空間が、アンコールで演奏された"ラブレター""唄う"でも存分に感じられた。

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「WE ARE FROM SHIGA JAPAN. JAPANNEEDS DYNAMITE. WOMCADOLE始めます」と高らかに宣言してスタートしたこの日のライブ。彼らが持つパブリックイメージやその音楽性は、時に攻撃的で棘のある印象を受けるかもしれないが、そこにはたしかに血が通っていて、人間ならではの温度がある。ステージを去る4人を見て驚いたのは、半年ほど前にライブを観たときの4人の顔つきとまったく変わっていたこと。百戦錬磨のライブ続きで少し痩せたのかもしれないが、何か重いしがらみが取っ払われたような、すがすがしく若返ったような表情だった。それもこのFFFツアーの影響なのだろうか。今後のライブや新曲リリースが楽しみでならない。

文:栄谷悠紀
撮影:ハライタチ

WOMCADOLE「FUCK THE FUCKIN' FUCKERS」@下北沢SHELTER SET LIST
1. ライター
2. ドア
3. 黒い街
4. wariniawanai
5. 少年X
6. 追想
7. 頂戴
8. 深海ゲシュタルト
9. 応答セヨ
10. 綴リ
11. to.wani
12. mirror
13. 軌跡
14. 馬鹿なくせして
15. FLAG
16. MONKEY
17. アオキハルヘ
En1. ラブレター
En2. 唄う


LINK
オフィシャルサイト
@WOMCADOLE
@womcadole_official

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