SENSA

2022.04.12

音楽に自由を。マカロニえんぴつ、10年目に辿り着いた初の日本武道館

音楽に自由を。マカロニえんぴつ、10年目に辿り着いた初の日本武道館

 マカロニえんぴつの躍進を目の当たりにすると、彼らのインディーズ時代にはっとりくん(Vo/Gt)と交わした会話を思い出す。2017年、当時の最新アルバム『CHOSYOKU』を聴いたときに、それまでのマカロニえんぴつから大きく進化を遂げ、彼らの音楽的なルーツが伸び伸びと散りばめられた作風に驚いて絶賛したことがあった。興奮気味にそれを伝えると、はっとりくんは「本当に自分たちのやりたことをやったから、業界の人の反応はいいけど。一般的に受け入れられますかね......」というようなことを自信なさげに言っていたのだ。それがどうだろう。『CHOSYOKU』をきっかけに、あれよあれよとマカロニえんぴつは「万年ニューカマー」から「チケットが取れないバンド」になり、昨年は単独での横浜アリーナ公演も成功させた。そんなマカロニえんぴつが今年2月にスタートしたバンド史上最大ツアー「マカロックツアーvol.13 ~あっという間の10周年☆変わらずあなたと鳴らし廻り!篇~」。その幕開けとなる初となる日本武道館は、「自分がやりたいこと」を恐れずに表現することで成功を掴んだバンドが見せた、誰にもできない、自由すぎる初武道館だった。

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 いつものようにビートルズ「ヘイ・ブルドック」のSEでステージに登場すると、4人はたっぷりと時間をかけて、会場の2階席、3階席を見渡した。はっとりの「武道館―!」という叫びで突入した1曲目は「鳴らせ」。衝動が加速するインディーズ時代のロックナンバーで会場をぐっと温める。長谷川大喜(Key)が奏でるピアノが軽やかに踊った「レモンパイ」では人懐こいメロディに合わせて、ミラーボールの光が美しくステージを埋め尽くした。途中でレゲエやジャズへと予測不能に展開する「トマソン」に続き、高野賢也(Ba)の跳ねるベースラインが楽曲全体にはずみをつける「はしりがき」では、「走るぜー!」と叫んだはっとりがその場でダッシュするように足踏みをした。メンバー全員がマニアックなミュージックラバーであるという土台のうえで鳴らされるマカロニえんぴつのロックは、圧倒的な大衆性がありながらカオティックでもある。その絶妙なバランスが心地好い。

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「すげえじゃん!」。いまこの瞬間に自分たちが武道館に立っている。その感慨を噛みしめるような最初のMCでは、「こみあげるものはあります。おめでとう、マカロニえんぴつ(笑)」と、はっとりが自分で自分を祝福すると、会場から大きな、とても大きな拍手が湧き、ずいぶん長いことなりやまなかった。温かいムードに包まれて、「あなたが書かせてくれた曲を」と、ピアノの伴奏のみで歌い出したのは、最新アルバム『ハッピーエンドへの期待は』のなかでもきっての名曲「なんでもないよ、」。バンドの新機軸になるミニマムな音像にのせた〈ただ僕より先に死なないでほしい〉というストレートな歌詞が胸を打つ。洗練されたビートミュージック「好きだった(はずだった)」から、英国流の気品のあるロックの風格をまとった「恋人ごっこ」、はっとりがアコースティックギターの弾き語りで届けた、自身の姉への結婚式に寄せたナンバー「キスをしよう」へと、様々なテイストのラブソングが続いた。かつてRADWIMPSやゆずのラブソングを聴き、「なんで俺のことをわかってくれるんだ」と泣いたというはっとりが、いまは逆にリスナーの「なんで自分のことをわかってくれるんだ」になっている。その歌には傷つきやすくて怖がりな人間の体温が宿る。

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 中盤は総勢7名のストリングスチーム(ストレンジ・ストリングス・フォー・マカロック、略して、SSFM)を呼び込み、未練を残した別れの歌「春の嵐」から、ロックなウィンターソング「メレンゲ」へと季節を巡るように曲が進んだ。マカロニえんぴつに加わる生のストリングスは、歌に込められたヒリつく感情をぐっと増幅させる。なかでも、音源に色彩を添えた「青春と一瞬」は、退屈で儚いその刹那な美しく炙り出す名演だった。

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 福岡のライブハウスで2本同時にギターの弦が切れたこと(田辺由明(Gt))。新宿のライブハウスMarbleで「This Story」(廃盤になった『日常と君と僕の歌』収録曲)に合わせて踊らされたこと(長谷川)。ひとりで手売りのCDを作ったこと(高野)。MCで10年間の思い出を振り返ったあと、「こんな感じで10年間楽しくやってきました。これからもよろしくお願いします!」と、はっとり。まさに、その「楽しく」が嘘ではないことを証明したのが、全員が往年のハードロックロックバンドを彷彿とさせる衣装に身を包んだサウナソング「TONTTU」だろう。燃え上がる炎。はっとりがかますメロイックサイン。完璧ななりきり具合でそれをやり切ったあと、茫然と立ち尽くすフロアに浴びせかけた「ワルツのレター」は間違いなく、この日のハイライトだった。長谷川がコロナ禍の不安を込めたというシリアスな音像のなかで、はっとりが〈希望の歌を忘れたんなら おれが歌ってやるぜ〉と力強く歌った。マカロニえんぴつの歌にはいつも絶望と希望が裏表にある。

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 8分の6拍子のリズムで揺らした壮大なロックバラード「僕らが強く。」からは、ひとりではなく、誰かと共にこの先を歩くという決意を伝えるようにクライマックスへと向かう。「10年前の原動力は何かを追い求めるんじゃなくて、飢えたように何かを探すことでした。追いかけてるだけだったら、誰かの光にはなれなかった」と、ギターを掻き鳴らしながら語ったはっとり。「それは変わってないけれど、変わったものは、こんなに仲間がいることです。出会ってくれてありがとう」と感謝を伝えると、その想いを歌に託したラストナンバー「あこがれ」へとつないだ。思えば、1曲目の「鳴らせ」で〈やっぱお前じゃないとって言わせたいな〉ではじまったライブを、〈いつか誰かのあこがれになろう〉と歌われる「あこがれ」で終わらせたことも、バンドの10年目に辿り着いた初武道館に相応しかった。どちらもインディーズ時代にリリースした『アルデンテ』(2015年)の収録だ。いまやマカロニえんぴつは、多くのリスナーのあこがれであり、お前じゃないとになっている。

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 アンコールでは、祝祭感に満ちたサウンドに重厚なコーラスワークを重ねた「ハッピーエンドへの期待は」と、ファンに向けた「OKKAKE」を披露して、全20曲、2時間15分のライブを締めくくった。この日、マカロニえんぴつは、音楽とは、どこまでも自由で楽しいものであるというシンプルな感覚を残してくれた。あらゆる価値観の多様化が叫ばれる一方で、どこか画一的な正義(あるいは正解、思想)に無難に収まろうとする昨今。自由なのに、自由ではない。そんな閉塞感をぶち壊せるのがマカロニえんぴつのロックだと思う。そう思わせてくれたことが、アニバーサリーの武道館で得た大きな収穫だった。

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マカロニえんぴつ「マカロックツアーvol.13 ~あっという間の10周年☆変わらずあなたと鳴らし廻り!篇~ 」
2022年2月15日(火) 武道館公演 SET LIST
01. 鳴らせ
02. レモンパイ
03. トマソン
04. はしりがき
05. なんでもないよ、
06. 好きだった(はずだった)
07. ヤングアダルト
08. 恋人ごっこ
09. キスをしよう
10. 春の嵐
11. メレンゲ
12. 青春と一瞬
13. TONTTU
14. ワルツのレター
15. STAY with ME
16. ハートロッカー
17. 僕らが強く。
18. あこがれ

EN1. ハッピーエンドへの期待は
EN2. OKKAKE


RELEASE INFORMATION

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マカロニえんぴつ New Single「星が泳ぐ」
2022年4月15日(金)
Format:Digital

各配信サイトはこちら


LIVE INFORMATION

マカロックツアーvol.13 追加公演 ~なんたって10周年ツアーだゼ?9公演追加しました篇~
5月20日(金) 香川・ レクザムホール 大ホール(香川県県民ホール)
5月21日(土) 愛媛・ 愛媛県県民文化会館 メインホール
5月27日(金) 富山・ オーバード・ホール
5月28日(土) 福井・ フェニックス・プラザ 大ホール
6月 2日(木) 広島・ 広島文化学園HBGホール
6月 3日(金) 福岡・ 福岡市民会館 大 ホール
6月10日(金) 宮城県・ 仙台サンプラザホール
6月12日(日) 岩手県・ 岩手県民会館 大ホール
6月16日(木) 北海道・ カナモトホール (札幌市民会館)

チケット料金:全席指定6,800円(税込)
一般発売:4/16(土)10:00〜
詳細はホームページにて


LINK
オフィシャルサイト
@macarock0616
@macaroniempitsu_official

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