SENSA

2022.01.17

The Cheserasera、すべてを出し尽くした活休止前ラストワンマン。「人生の相棒」という音楽

The Cheserasera、すべてを出し尽くした活休止前ラストワンマン。「人生の相棒」という音楽

 昨年11月にThe Cheseraseraは活動休止を発表した。理由は「長く活動してきた中で、メンバーが疲れを感じていたり、自分と向き合う時間を設けた方がいいと考えたため」と、公式発表のコメントに書かれていた。2009年に始動した前身バンド昼行灯時代から12年。2014年に一度はメジャーデビューを果たしたケセラセラは、2017年から自主レーベルを立ち上げ、再びインディーズに戻ってライブハウスに根差した活動を続けてきた。身も蓋もない言い方になってしまうが、彼らはいまのところバカ売れしたバンドではないと思う。だが、「自分たちが本当にやりたいこと」に一度も嘘をつかず、しぶとく、泥臭く、誠実に、世界でたったひとつのロックを追い求め続けてきたバンドだ。そんなケセラセラが1月9日に下北沢シャングリラで開催した活休前ラストライブは、バンドのこれまでのすべてを出し尽くし、笑顔と涙にまみれながら次の再会を約束する一夜になった。

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じんわりとフロアを温めるように「good morning」からライブは幕を開けた。シーケンスやシンセサイザーの類は一切使わない。約12年間にわたり、裸一貫でライブハウスに立ち続け、研ぎ澄まされてきたケセラセラのステージは、まさにスリーピースバンドの美学そのものというようなストイックに削ぎ落されたロックショーだ。「懐かしい歌を」と宍戸翼(Vo/Gt)。焦燥感を抱きながら全力で駆け抜けるような「賛美歌」に続き、「どんどんいきます!」と勢いを加速させた「最後の恋」では、西田裕作(Ba)が頭上で手を叩き、フロアの手拍子を煽った。「自分が歌いたいことを歌ってこられたのは、(その音楽を)いいぞ、いいぞって言ってくれた人たちのおかげです」と、これまでの活動を振り返った宍戸。集まったお客さんとのしばしの別れとなる一夜に寄せて、「僕が歌っているときに泣いていたとしても、寂しいからじゃなくて、いい歌だなと思ってるからなので。勘違いしないでください」と冗談っぽく笑っていた。フロアの後方で見ていた私の位置から、実際に宍戸が泣いている表情は見えなかったが、時々声が震える。終演後、本人に聞くと、「ずっと泣いていた」と言っていた(とはいえ、最近は涙もろくなって、普段のライブでも泣きっぱなしらしいが)。

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 美代一貴(Dr)の性急なドラムが口火を切り、西田が荒ぶるベースラインを繰り出した「カナリア」、ファルセット交じりのボーカルが繊細なメロディを紡いだ「seen」。バンドのオールタイムなディスコグラフィーで組まれたセットリストは1曲1曲がハイライトだった。美代が半生を振り返った感情だだ漏れのMCに続けて、その美代が詩曲の全体観を手がけた「白雪」と「うたかたの日々」「ラストワルツ」を3曲続けて演奏するという流れも粋だった。ともすると、しんみりした空気になりそうな会場の雰囲気を察してか、西田は得意の星うらないトークでお客さんを和ませる。演奏も、MCも、この3人のバランス感があってこそのケセラセラであることを、改めて感じさせるようなシーンが続いた。

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 ライブがクライマックスに向かうなか、「BLUE」から「春風に沿って」へと、秋から冬、そして春へと季節を巡るような2曲を続けて披露した流れは、ケセラセラというバンドと一緒に積み重ねてきた記憶の断片が蘇るような名演だった。疾走するビートにのせて、ストレートにエモーショナルな感情をぶつけるその楽曲には、〈写真〉ではなく、心のなかに刻んだ消えない思い出を胸に生きる人の息遣いが綴られていた。〈それじゃまた会える日まで/寂しい時はすぐ駆けつけるよ〉(「春風に沿って」)。そんなふうに歌われる歌詞は、その楽曲が作られた当時の意味とは関係なく、いまこの瞬間にバンドからお客さんに伝えたいメッセージにように感じられてならなかった。

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 「自分に嘘をつかない音楽を作り続けてきました」。本編最後のMCでそう振り返った宍戸は、自分たちの音楽を受け取ってくれた人たちに対して「他人に思えなくて。本当に愛しています」、「ちょっとだけ、あ、友だちいるかもってなれたんですよね」と、リスナーの存在が自分を変えてくれたと語り、最後に「またこのバンドでステージに立てる日を夢みています。ひとまず今日までありがとうございました」と感謝を伝えた。ラストのタームでは1曲歌うごとに、その曲に込めた想いを丁寧に言葉にしていった。「自分を見失いそうなときに思い出してください」と伝えた「東京タワー」、「自分で描いた未来をダメにしないで。信じて大丈夫です」とつないだ「ファンファーレ」、「最低で最愛でやっぱり最低な愛の歌です」と感情をぶちまけた「I Hate Love Song」。ケセラセラというバンドは、この醜くも素晴らしい世界で、なんとか自分の居場所を見つけ、折り合いをつけながら生きていく方法を模索するような歌をずっと歌い続けてきたバンドだ。その歌は、この日、この場所で、しばしの別れを告げるリスナーへの餞として、優しく、力強く、会場に響きわたっていた。

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 再びステージに登場するなり、美代が、「ファンファーレ」のときに力が入り過ぎてドラムスティックが折れていたことを明かしたアンコール。リリース当時の想いは忘れてしまったけれど、いまは、想いは繋がっていく、というような解釈で歌いたいと伝えた「消えないロンリー」にはじまり、トリプルアンコールの「SHORT HOPE」まで。文字通りすべてを出し尽くすような渾身のパフォーマンスで全24曲のライブを締めくくった。アンコールの演奏中には、メンバーへのサプライズとして、ファンの有志が開演前にお客さん一人ひとりに配っていたポンポンが照明の光を浴びてキラキラと光っていた。それは「充電期間に入るケセラセラが、また戻ってこられる場所として、今日がずっと輝き続けるように」、そんな願いを込めて用意されたものだという。いいバンドには、いいファンが集まる。

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 ロックバンドの音楽はライブハウスで鳴っているときこそいちばん美しく輝く。それはケセラセラも例外ではないと思う。だが、同時に日常のなかで、イヤフォンのなかで鳴らされるとき、無条件に自分の味方になってくれるのもロックバンドの音楽だ。「次に会えるときは、もっとかっこいいバンドになっていると思います」。ライブ中、宍戸はそんなふうに再会の約束を交わした。活休が寂しくないと言えば嘘になるが、The Cheseraseraの音楽が私たちにとって人生の相棒であることはこれからもきっと変わらない。再び会う日まで、彼らの音楽と共に生き続けたいと思う。

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写真:そらおあきら

The Cheserasera ワンマンツアー~追加公演~
2022年1月9日(日)東京・下北沢シャングリラ SET LIST
01. good morning
02. 賛美歌
03. 風に吹かれて
04. 最後の恋
05. Youth
06. カナリア
07. No.8
08. seen
09. 白雪
10. うたかたの日々
11. ラストワルツ
12. ひとりごと
13. 幻
14. BLUE
15. 春風に沿って
16. 東京タワー
17. ファンファーレ
18. 月と太陽の日々
19. I Hate Love Song
Encore
01. 消えないロンリー
02. でくの坊
Encore 2
01. Drape
02. さよなら光
Encore 03
01. SHORT HOPE

LINK
オフィシャルサイト
@The_Cheserasera

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