SENSA

2021.12.25

THE KEBABS、初のホールツアー「椅子」完走。どこまでも自由で遊び心があふれた大忘年会

THE KEBABS、初のホールツアー「椅子」完走。どこまでも自由で遊び心があふれた大忘年会

 THE KEBABSはアベンジャーズだ。スーパーヒーローが集結するロックバンドの究極体。ずっとそんなイメージが個人的にはあったから、10月20日にリリースされたTHE KEBABSの最新アルバム『セカンド』のメインビジュアルが、メンバー全員がヒーローに扮するアメコミ風のイラストなのは痛快だった。

 ボーカルがa flood of circleの佐々木亮介、ベースがUNISON SQUARE GARDENの田淵智也、ギターが元serial TV dramaの新井弘毅で、ドラムが元ART-SCHOOLの鈴木浩之。THE KEBABSは、それぞれに別のバンドやプロデュース業で音楽活動をしている生粋のバンドマンによるサイドプロジェクト的なロックバンドだ。辣腕の中堅バンドマンが本気で遊べるバンドを組んだら、どうなるのか。その結果、どこまでも自由でピュアで衝動的な、まさにロックバンドの本質そのもののような存在になってしまった、というのがTHE KEBABSなのだと思う。

 そんなTHE KEBABSが東名阪で開催してきた初の東名阪ホールツアーは座席ありのライブということで、タイトルもそのまんま「椅子」。そのツアーファイナルとなった有楽町のヒューリックホール東京は二部構成でおこなわれ、熱く、エモく、笑いの絶えない大忘年会になった。

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 SEにのせてメンバーが登場。フラッドでは1年中革ジャン姿の佐々木だが、THE KEBABSでは赤いチェックのロングシャツという出で立ちだ。初っ端から重たいグルーヴを聴かせる「食事」から、鈴木の性急なビートが炸裂する「枕を変えたら眠れない」へ。ゴリゴリに尖った音と生活に密着した肩肘を張らない歌詞とのギャップに痺れる。『セカンド』のオープニングナンバーでもあるメロディアスな「ロバート・デ・ニーロ」では〈僕は寝転んで〉という歌詞に合わせて、佐々木がステージに寝っ転がりながら歌っている。田淵の抉るようなベースが口火を切った「やさしくされたい」、泥臭いファンクロックで踊らせた「チェンソーだ!」のあと、「(ドリンクの)おかわりを取ってくるんで......紹介します!ギター新井弘毅」と袖に捌けた佐々木。残されたメンバーはアドリブのセッションでフロアを湧かせた。「先輩、すみません(笑)!」と再び佐々木がステージに戻り、「ジャンケンはグー」へ。ステージ際でギターソロを聴かせる新井のそばに田淵も寄り添うと、佐々木がマイクスタンドを移動。その場でコーラスをするという自由すぎるパフォーマンスに目が忙しい。

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 それぞれに命をかけている、と言ってもいいぐらいの本業があるからこそ、THE KEBABSはどこまでも自由になれる。そんなTHE KEBABSの本領が発揮されたのが、プログレッシヴなアプローチでおどろおどろしい空間を作り上げた「ホラー映画を観よう」。さらに、浜辺に打ち寄せる波の音をきっかけに田淵が美しい口笛を聴かせたスカパンクなサマーソング「サマバケ」だった。経験豊かなプレイヤー陣による高度な音楽的遊びは、「遊び」とはいえ、一切妥協がないうえに奥深い。

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 ライブの中盤、『セカンド』に収録されたまさかのバラード曲「ラビュラ」は感動的だった。佐々木と田淵によるツインボーカルで歌い上げるロマンチックなメロディに〈生きてるだけで幸せだよ〉というポジティブなメッセージがのる。今年も海には行けなかった。祭りもなかった。それでも〈会えたじゃん〉と豪快に歌う。音楽というのは、決して目の前のある現実を変えることはできない。だけど、明日もまた世界と対峙できる自分へと変えてくれる、そんな無敵のパワーがある。「ラビュラ」のような、そういう音楽をきっと私たちはロックンロールと呼ぶのだと思った。

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 ネガティブなことは予期せずに訪れる。ハッピーなことは自分で作れる。佐々木のプラス思考なマインドが全開になったMCで「気をつけてください。急に来るから......新曲は急に来るから!」と超高速ロックンロール「急に来る」に突入した。ライブに向けたリハーサルで田淵の無茶ぶりに端を発して作ることになった新曲だという。その曲の長いブレイクでは、「急に来る」というタイトルが偶然にも会場である「ヒューリック」と同じ母音ということで、u・u・i・uで韻を踏んでメンバー紹介をしてみせる佐々木のフリースタイルにフロアは大盛り上がりだった。終盤にかけては、執拗にループするリフが昂揚感を生む「てんとう虫の夏」、佐々木のシャウトを合図にクレイジーに暴れまくった「おねがいヘルプミー」を畳みかけ、本編のラストは「夢がいっぱい」で終演。佐々木と田淵のツインボーカルの下で、そのポジティブなエネルギーを増幅させるような新井のギターが伸び伸びと響きわたっていた。

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 5分間の換気タイムを挟んだあとはリクエストコーナーへ。スタッフとお客さんによって「おかしのはなし」「まばゆいpart2」と「ガソリン」が選ばれると、その場でライブ音源を流し、メンバーのために思い出す時間が設けられていた。本来なら何を見せられてるんだ?とツッコむ場面かもしれないが、むしろこのスーパーバンドの練習シーンを見られるのは貴重。なかでも「おかしのはなし」に苦戦した新井は「もう1回聞かせて」と不安そうながら、本番ではきっちりキレのいいパフォーマンスに仕上げてくるのが流石だった。第二部はリクエストで選ばれた3曲だけかと思いきや、さらに「THE KEBABSは忙しい」「ジャキジャキハート」と「THE KEBABSのテーマ」を加えた全6曲をノンストップで披露。怒涛のパフォーマンスで約2時間のライブは大団円を迎えた。

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 なお、THE KEBABSは来年1月から、全国5ヵ所のツアー「THE KEBABS 常勝 -『セカンド』Release Tour-」を開催する。現在ユニゾンは年明けまで続く「Patrick Vegee」ツアー中だし、フラッドも最新アルバム「伝説の夜を君と」のリリースツアーが来年2月からスタートする。それぞれ忙しい活動の合間を縫ってツアーを組み込むあたりは、サイドプロジェクトとはいえ、彼らがTHE KEBABSという居場所をとても大切にしているからだろう。ぜひ、この機会に中堅バンドマンたちの本気の遊びが作り上げる凄みを体感してもらいたい。

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写真:Viola Kam (V'z Twinkle)

THE KEBABS「椅子」
2021年12月15日(水)有楽町 ヒューリックホール東京 SET LIST
[第1部]
01. 食事
02. 枕を変えたら眠れない
03. ロバート・デ・ニーロ
04. オーロラソース
05. ピアノのある部屋で
06. テストソング
07. やさしくされたい
08. チェンソーだ!
09. ジャンケンはグー
10. ホラー映画を観よう
11. サマバケ
12. うれしいきもち
13. ラビュラ
14. 急に来る
15. 恐竜あらわる
16. てんとう虫の夏
17. おねがいヘルプミー
18. 猿でもできる
19. 夢がいっぱい

[第2部]
01. おかしのはなし
02. THE KEBABSは忙しい
03. まばゆいpart2
04. ガソリン
05. ジャキジャキハート
06. THE KEBABSのテーマ

LIVE INFORMATION

THE KEBABS 常勝 -「セカンド」Release Tour-
2022年1月12日(水)京都府 磔磔
2022年1月13日(木)岡山県 YEBISU YA PRO
2022年1月18日(火)福岡県 INSA
2022年1月24日(月)千葉県 KASHIWA PALOOZA
2022年3月04日(金)北海道 cube garden

LINK
オフィシャルサイト
@kebabs_band

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