SENSA

2021.10.16

ブルエン、SCANDAL、Novelbright、サスフォーらが出演。ひとりのブッカーが夢を叶えた夜──「GRIOTTO」@新木場コースト

ブルエン、SCANDAL、Novelbright、サスフォーらが出演。ひとりのブッカーが夢を叶えた夜──「GRIOTTO」@新木場コースト

はじまりはひとりの人間の小さな夢だった。渋谷にあるキャパ250人ほどのライブハウス、O-Crestのブッキングスタッフもりただいち氏によるイベント「GRIOTTO」の新木場スタジオコースト公演だ。10代の頃から「いつか新木場コーストでGRIOTTOをやりたい」という想いを抱き続けてきたもりた氏の強い想いによって実現したこの日は、O-Crestを拠点とするKAKASHIをオープニングアクトに、Suspended 4th、SCANDAL、BLUE ENCOUNTという錚々たるメンツが並び、そのトリにNovelbrightを抜擢。「呼ぶ側」にも「出る側」にも意志がある熱いイベントになった。

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トップバッターはKAKASHIだった。「10年やってまだ今日はオープニングアクト。でも、もりたが連れてきてくれた。今日のオープニングアクトは恥じゃない、誇りだ!」。そんな掘越颯太(Vo/Gt)の熱い言葉からも、このステージに賭ける並々ならぬ気合いが伝わってきた。バンドが歌を届ける理由が「あなた」であることをストレートに吐露する「本当の事」、ノスタルジックなメロディに忘れたくない大切なものを刻んだ「変わらないもの」。バンド結成以来、一度もメンバーチェンジをすることなく活動を続けてきた4人による衝動的で爆発力のあるギターロックサウンドは、弱さを曝け出しながら、真っ直ぐに聴き手の心の深いところをめがけて希望を投げかける。最後に、ギター1本で歌い出したラストソング「ドラマチック」では、「両手を上げられますか?」と呼びかけた掘越が、力強く両手が突きあがったフロアの光景を端から端までしっかりと見渡していた。たとえ歓声のないライブでも、きっとKAKASHIの想いは届いている。そう確信できるステージだった。

本編の一番手として、不敵な存在感を刻んだのは、Suspended 4thだ。「一言だけいいですか? 今日はあんまり喋らないつもりなので。もりただいち、ありがとう」という、鷲山和希(Vo/Gt)の言葉を皮切りに、まずは9月29日に配信されたばかりの最新曲「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」で口火を切った。ルワブ・デニス(Dr)が叩き出す切れ味の鋭いビートに、短いタームで次々に表情を変えていく澤田誠也(Gt)のギターと、どっしりと腰を落として荒々しく弦をはじく福田裕務(Ba)のスラップベース。カオスと洗練をない交ぜにしたサスフォーの凶暴なロックは、一匹狼のような媚びない姿勢を貫きながら、一気にこちらに踏み込んでくるようなキャッチーさもある。随所にジャズやファンクからの影響も色濃く感じる「BIGHEAD」や「INVERSION」を経て、壮大なバラード「Sky」で最高潮の気持ちを高めてからの人気曲「ストラトキャスター・シーサイド」まで。予告どおり多くは語らず、演奏だけでロックバンドのかっこよさを証明するステージだった。

黒を基調としたシックな衣装で身を包んだSCANDALは、全員がステージ前面のお立ち台に立ち、フロアのハンドクラップを煽った。赤と青のライティング。MAMI(Gt)のギターが心地好くドライブした疾走感溢れるロックとラップパートとがめまぐるしく展開する「A.M.D.K.J.」を1曲目に、間髪入れず、HARUNA(Vo/Gt)の「踊れー!」という掛け声で「テイクミーアウト」へと続く。骨太なロックで序盤からフロアの熱を一気に焚きつけた4人は、時々、全員が中央に集まり、その時間を心から楽しむように笑顔で演奏していた。MCでは、「対バンっていいですね」と、HARUNA。もりた氏からの熱烈なオファーを受けて、「その想いを受け取って全力でライブをやろうと思います」と伝えると、"好き"が溢れたエレクトロなポップナンバー「one more time」へとつないだ。ラストはTOMOMI(Ba)がお立ち台に腰かけてキュートに演奏した「瞬間センチメンタル」と、ポップでロックな「SCANDAL BABY」で再びフロアを湧かせて終演。今年結成15周年を迎え、ジャンルに囚われず、音楽を純粋に楽しみ続けるSCANDALの美しくしなやかな「いま」が、そのステージには凝縮されていた。

BLUE ENCOUNTは必勝のセットリストで「GRIOTTO」に乗り込んできた。田邊駿一(Vo/Gt)のファルセットを多用したサビのフレーズが中毒性を生むファンキーなロックナンバー「バッドパラドックス」からキックオフ。全プレイヤーのキメを乱発したアウトロから、そのままダークで怪しげな最新曲「囮囚」を畳みかける。江口雄也(Gt)のタッピングギターと辻村勇太(Ba)のスラップベースが複雑に絡まり合う演奏にのせて紡がれるのは、正義と悪の境目が曖昧になったSNS時代の息苦しさを吐露するような歌詞だった。2曲を終えて、はぁはぁと息を切らしながら、「ライブハウスは紛れもなく自分たちの居場所だと思います」と、田邊。「いまそこにいるあなたのために歌えれば」と思い込めて、スローバラード「YOU」を届けると、「もっと光を」「DAY×DAY」という、これまで彼らが全国のライブハウスやアリーナ、フェス会場を熱狂させてきた最強のアンセムを連発していった。最後は「渋谷O-Crestでよく歌っていた曲を」と、「HANDS」へ。〈いつでも世界を変えれるよ〉と語りかけるように歌った晴れやかなナンバーは、どんな時代でもロックバンドはそれを信じる人にとっての希望であり続けることを教えてくれる温かなフィナーレだった。

4時間にわたるイベントのトリを飾ったのはNovelbrightだ。SCANDALでも、ブルエンでもなく、あえて若手のNovelbrightをトリに託したのは、彼らと同い年でもあるというもりた氏の強い期待と信頼によるものだろう。その想いを汲むように、「俺らもしっかりトリをやれるっていうところを見せたい」と意気込みを伝えた彼らは、ファンタジー映画の幕開けのようなSE曲「El Dorado」にのせて登場した。高らかに飛躍していくサウンドがまさに1曲目にふさわしい「開幕宣言」にはじまり、ねぎ(Dr)が上体を乗り出し、スティックをくるりと回しながら性急なビートで疾走感を加速させた「Sunny drop」へ。全員がアグレッシヴに体を動かし、華のあるステージでフロアを魅了する。昔のゲーム音楽のようなキラキラしたダンスロックにコロナ禍の心情をリアルに吐露した「さよならインベーダー」のあと、竹中雄大(Vo)が伸びやかなボーカルを聴かせた「ツキミソウ」が素晴らしかった。ロックボーカリストというよりも、ディーバ(歌姫)を彷彿とさせるような繊細で力強い歌唱によって、大切な人への断ち切れない未練を切なく歌い上げた。ラストは「俺がたくさん音楽に救われたぶん、俺たちの音楽でみんなの心を癒せるような音楽を届けていけるようにがんばっていきます。また夢の先でお会いましょう!」と雄大が熱く語りかけ、「拝啓、親愛なる君へ」で終演。昨年のメジャーデビューから1年が経ち、大きく成長を遂げたバンドがジャンルレスに鳴らした全7曲には、この5人の音が重ねれば、何をやってもNovelbrightの音楽になるという確固たる自信が漲っていた。

5組のライブが終わったあと、主催のもりた氏が涙で言葉を詰まらせながら想いを伝えた。「GRIOTTO」というイベントは、5年前、自分が日本工学院の学生のときに「好きなバンドを呼んで、かっこいいイベントを作りたい」という想いで立ち上げたこと。初めてイベントスタッフとして派遣されたのが新木場コーストだったこと。いつかこの場所で「GRIOTTO」を開催したいと思い続けてきたこと。来年2月に新木場コーストの閉館が決まり、たくさんの人の協力を得て、最初で最後のコーストの「GRIOTTO」が実現したこと。5組への想い。

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7分にわたり、不器用に伝えた言葉のなかで、特に印象的だったのは「今日こういうイベントができたのは、続けてきたからなんですよ。バンドも続けてきたから、今日一緒にできています。ライブハウスでやってきたイベントがここにつがってるんです」という想いだった。

ライブハウスは「つながり」によって成立する場所だと思う。1本1本のライブがアーティストとリスナー、たくさんの関係者との「横」のつながりによって開催されていると同時に、多くのアーティストは地元の小さなハコを埋めることからはじまり、やがてアリーナやスタジアム級の大きなハコに立つことを目指して歴史という「縦」のつながりを積み重ねていく。コロナ禍にあっては一つひとつのライブハウスの小さな成功実績がライブシーン全体の再興につながっていくという側面もある。「つながり」は意味になる。意味は情熱になり、意志になる。

ひとりの人間の強い情熱や意志が伝播することで、集まった人たちの心を震わせる。この日の「GRIOTTO」は、そんなライブハウスの美しい循環がありありと体現されていた。

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@griotto_jp

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